コーディネーターを騙る一般転生娘は生き残りたい   作:ガンオンの亡霊

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やむをえざるときの戦いは正しく、武器のほかに希望を絶たれるときは武器もまた神聖である。

マキァヴェリ - 『リヴィウス論』


PHASE-03 深潭へ至る旅路

「ジンが3機も!? 多すぎんでしょう……がぁ!」

 

地下工廠に併設された地下試験場を抜け、コロニー内へ飛び出してすぐのこと。

よく知った道をビーグルとは比較にならない速度で辿れば、そこにはストライク(GAT-X105)を取り囲むジン3機の姿があった。PS装甲を展開するストライクが今すぐ堕とされるということはないだろうけど、その動きは未だにたどたどしいままだ。

たぶん、ジン3機の相手に必死でOSの書き換えに集中出来ていないんだ。あれじゃいくらストライクだって……!

 

逸る気持ちを抑えつけて、敢えて機体を減速させて地表に近付ける。そうして地表を蹴り、再びスラスターを噴かせると、漸くこちらに向き直ったジンの1機にシールドごとぶつかっていく。

この子にはPS装甲が無いんだから、全速でぶつかりでもしたら最悪機体がバラバラになる。こちとら推しCP成立を見るまでは絶対に死ねないのだ。特攻なんて御免こうむる。

 

ストライクへ重斬刀を向けるジンを突き飛ばし、そのまま別のジンに短銃身仕様の(ショートバレル)ビームライフルで連続して射撃を加える。

 

「やっぱりまだ集弾が甘い……!? いや、FCS(火器管制システム)との連動の方か……!」

 

ジンのコックピット部を狙った射撃は狙いを逸れて初弾はコロニーの地面に、続く2射目が76mm重突撃機銃ごとジンの右腕部を撃ち抜いた。さらに追撃を加える前にアラートが鳴り、考えるよりも先にスラスターを噴かして回避機動をとれば、先程までの位置に76mm重突撃機銃のAP弾をばら撒く3機目ジンの姿があった。

 

不意討ちできる間に1機くらい仕留めたかったのに……!

しかし、こういう時に欲を出せば余計な隙を晒し、取り返しのつかないミスに繋がる。いかに被弾を減らし、どんなに小さくとも優位を積み重ねていくのが多対一の基本だ。伊達に連ザをやり込んだわけじゃない!

 

 

シールドで機体を庇いながら、進行方向とは逆に地表を蹴り、スラスターを噴かせて切り返す。

バースト射撃を加えていたジンのパイロットは、アストレイのマニューバに追従して即座に照準し直すが、アストレイのFCSがジンをロックする方が僅かに早かった。

そうして射撃を加える直前に視界の端に灰色の巨体が映り、その場を飛びずさる。ほんの僅かに遅れてシールドを重斬刀が掠め、衝撃がコックピットを揺らした。

 

「生意気なんだよ! ナチュラルがモビルスーツなど!」

「ぐっ……やっぱ居る、よね……!」

 

クルーゼ隊の一員にしてパーソナルカラー持ち。外伝では叢雲劾とも交戦するほどの、文句無しのエースパイロット。ミゲル・アイマン。

やたらと良い声の接触回線が一瞬混線した気もしたけれど、ガノタ特有の願望かるくる幻聴の線も捨てきれず、死なないためにもひとまず頭の片隅へ追いやることにした。もし幻覚じゃなければ一緒にINVOKE歌って欲しい一生のお願いだから……!

 

下がるアストレイと追いすがるジン。

一度、二度と重斬刀がシールドを叩き、機体が揺さぶられる。

そうして体勢を立て直せないまま、下からすくい上げるように放たれた一撃がシールドの下部を捉え、把持し切れなかったシールドがマニュピレーターを離れてはね飛ばされてしまう。

 

苦し紛れにイーゲルシュテルンを撃つけれど、直撃を嫌ったミゲル機はそれを回避。

そのままビームライフルでの追撃よりも回避を優先すれば、直前まで機体があった位置を76mm重突撃機銃の斉射が襲う。3機目のジンだ。

 

 

少し距離が開いて、先程より少し視野が広がる。右腕部を損傷したジンが体勢を立て直し、左腕で重斬刀を引き抜く姿が目に入る。

こちらも間に左腕でビームサーベルを抜くけれど、左右で異なる装備を十全に扱う自信なんてない。

左右から挟み込むようにして切り込んでくるミゲル機と損傷機。

 

迎え撃つ? どちらから? 重突撃機銃装備のジンはどうする? やはり避けるべき? どちらに?

 

複数の選択肢が浮かんでは掻き消える。

モビルスーツ戦という円舞曲(ワルツ)の最中では、その一拍の遅れが致命的な隙となる。

 

慌てて後方へ飛びずさったアストレイに76mm重突撃機銃を向けるジンを視界の端で捉えて歯噛みする。今撃たれたら回避しきることは難しいだろう。

回避機動の最中、せめてもの抵抗とばかりに一か八かでビームライフルを向けるけれどジンの方が早い。

FCSがロックを完了するよりも先に、ロックされたことを告げるアラートがコックピットに鳴り響き、思わず身を強ばらせた。

 

 

「このぉぉ!」

「ストライク……!?」

 

 

ジンが引き金(トリガー)を引く寸前、先程までとは比較にならない鋭敏な動きでストライクがジンの懐に飛び込み、その勢いのままショルダータックルの要領でジンの胴体部を打ち据えた。コックピットの中身はたまったものじゃないだろう。

堪らずに二歩三歩と後退するジンと、ロック完了を告げる電子音。

僅かな覚悟と共に二度引き金(トリガー)を引けば、淡い緑の光条にコックピットを撃ち抜かれたジンがヘリオポリスの大地に倒れ伏した。

 

ストライクの豹変に戸惑うように動きが鈍っていた残りの2機。しかし流石と言うべきか、すぐに戦意を取り戻して向かってくる。

損傷機がアストレイを牽制し、ミゲル機がストライクを狙うつもりらしい。

 

重斬刀を振りかざすミゲル機を、対装甲用コンバットナイフ(アーマーシュナイダー)を抜いたストライクが迎え撃つ。重斬刀の間合いに入るまさに直前のところで、ストライクは動いた。

スラスターの推力をも使って目にも止まらぬ速さで踏み込み、重斬刀の間合いの内側に入り込んで左腕部でジンの右腕を制する。

そしてカウンターでも決めるように、ジンの胴体上部に右腕に装備した対装甲用コンバットナイフ(アーマーシュナイダー)を突き入れた。

 

 

一見、ただの小ぶりなナイフにしか見えないあの装備(アーマーシュナイダー)だが、仕込まれた超振動モーターが刀身を超速振動させ、通常装甲程度ならば易々と貫き、切り裂く程の性能がある。

ジンを仮想敵として造られたモビルスーツ(GATシリーズ)の制式採用装備なのだから、当然と言えば当然なのだが。

 

装甲を貫通し、内部構造にまで達したアーマーシュナイダーが火花を撒き散らす。

それでもなお抵抗しようとするミゲル機。

ストライクは左手に逆手に持った2本目のアーマーシュナイダーを振り下ろし、頭部の根元にあたる部分に上方から突き入れた。

ジンは駆動系に不具合を起こしたのか、見る見る動きが鈍っていく。

となればあとは原作と同じようなことになるはずだ。

 

「危ない! 離れて!」

「えっ……!?」

 

後ろに跳んで損傷したジンの重斬刀を避けながらストライクに警告を発するのとほぼ同時に、ミゲル機からパイロットが脱出していった。

直後、後退しようとするストライクを巻き込み、自爆装置を作動させたミゲル機が内部からの爆発で弾け飛んだ。

 

爆炎と黒煙を振り払ってみれば、損傷したジンが重斬刀を放り捨て、脱出したパイロットを抱えて離脱していく姿がモニターに映し出された。

 

「勝っ、た……?」

 

思わず言葉がこぼれ落ちる。

ひとまずの戦闘が終わったと自覚した途端に身体から力が抜けて、シートに身を委ねて大きく息をついた。

 

 

 

■ーーーーーーーーー■

 

 

 

「貴女は確か……モルゲンレーテの」

「マユラ・ラバッツです。マリュー・ラミアス大尉」

 

マユラと名乗ったあの女性はどうやらモルゲンレーテの、つまりオーブの人らしい。

着慣れた様子の赤と白のパイロットスーツのヘルメットを脱いだ時、僕ら(特にトール)から驚愕の声が漏れた。

 

先程の戦闘で助けてくれて、今はストライクの脇に駐機してあるモビルスーツから降りてきたあの人が、1つしか歳が違わないと知った僕らはまず驚いた。そして、何故同年代の女の子がモビルスーツに乗っているのか、そもそもこの機体は何だと、興味は尽きなかった。

マリューと名乗った地球連合の人に言われた作業をこなしながら、2人の会話に聞き耳を立てる。

 

 

曰く、モルゲンレーテでは地球連合の新型だけでなくオーブの新型(アストレイ)も開発していたこと。

自分はオーブ軍ではなく、あくまでモルゲンレーテ社所属のテストパイロット。つまりは民間人だということ。

アストレイを放棄して避難するわけにもいかず、かと言ってモビルスーツを搬出・輸送する手段も無かったため、やむを得ず戦闘に加わったこと。

避難が完了するまでの間、可能なら協力関係を築きたいこと等々。

 

 

僕らと同じオーブの民間人で、しかも歳もほとんど変わらなくて、今回も巻き込まれる形で戦闘に参加したという。

似た境遇の彼女に親近感を覚えると同時に、自分以外にモビルスーツを扱える人がいることに少し安堵する。

 

 

「ストライクのパイロット君。えっと……キラ、くんだっけ?」

「は、はい!」

 

マユラさんのことを考えていたところに、当の本人から映像通信が入ってうわずった声で返事をしてしまう。それがなんだか少し恥ずかしい。

 

「私はこれからアストレイの補給物資を取りに行くから、ここはよろしくね? あと、ランチャー装備の320mm超高インパルス砲(アグニ)は本当に危ないとき以外は使わないでね」

「それはどういう……?」

()()()()()()()

 

そう告げるマユラさんの言葉と表情には、有無を言わせない強い力があった。了解の返事を返す僕の顔は、きっと緊張で強ばっていただろう。

 

「って言ってもまたザフトが来るかわかんないし、すぐ戻ってくるからきっと大丈夫だよ! じゃあまた後でね!」

「あ、あの! マユラさんもお気をつけて」

 

通信を切ろうとするマユラさんを、思わず呼び止めてそう言っていた。

マユラさんは一瞬驚いたような表情を浮かべ、すぐに花が咲いたような笑顔を浮かべながらお礼を口にするや通信を切り、行ってしまった。

 

それからしばらく経ってからのことだった。地球軍のMA(モビルアーマー)とザフトのMS(モビルスーツ)がヘリオポリスに飛び込んできたのは。

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