コーディネーターを騙る一般転生娘は生き残りたい 作:ガンオンの亡霊
倉田百三 - 『愛と認識との出発』
『あ、あの! マユラさんもお気をつけて』
さっきのキラくんの言葉や表情を思い出す。
はぁ〜〜〜尊い……DestinyやFreedomの成長したキラくんもいいけどSEED序盤の年相応の幼さが残るキラくんからしか摂取出来ない栄養素というのは確かに存在するわけでこれは以前から仮説としては存在していたがこちらの世界へ転生して実在が証明されてしまったのだ今年のノーベル賞は貰ったな。年相応の幼さが残るキラくんからしか摂取できない栄養素が万病に効き不老不死の霊薬と同程度の価値があることは確定的に明らかで英語で言うとアニメじゃない。
戦いになんて向かない優しい少年のキラくん。
けれど戦えるモビルスーツはストライクしかなくて、それを操れるのは自分しかいなくて、状況に迫られ周囲に望まれ、自分や相手が命を失うことへの忌避感や親しい人達守りたい人達が殺されることへの恐怖や
色々なものに迫られ、板挟みになって苛まれて、それでも状況に押しつぶされることなく誰かの為に立ち上がれる彼は間違いなく私が大好きなガンダム作品の主人公で、その精神は何よりも美しく尊いものだ。
そのキラくんの前に現れた
同じ国に属して同じ民間人という立場にあることは彼に親近感を抱かせるだろうし、連合軍人に対するものと比べて心理的なハードルや壁は些か低くなるはず。これがもし、もっと歳上の正規軍人だったりしたら、彼が戦わない理由となってしまう。
戦う覚悟が定まるまでのキラくんは、心の奥底にある弱音の周りを義務感や正義感でガチガチに固めてかろうじて折れずにいる状態で、戦うための理由や状況が必要なのだ。ストライク以外にモビルスーツがあり、それを駆り戦えるような軍人がいたら、彼の弱音を押し止めている堤防にヒビを入れることになりかねない。
だって、誰だって思うだろう。戦う役目の人が戦う力を持っているんだから、自分は戦わなくて良いだろうと。もちろんそんな彼を頼り、追い詰めて戦いに赴かせることは出来るだろうけれど、そんな状態で武器を取らせて誰かを撃たせたくはない。
そんなキラくんが漏らす、弱音ともとれる僅かなサイン。
戦える力を持っているけれど自分と同じ民間人だから全てを委ねるわけにもいかなくて、けれど自分以外に戦える人がいることは頼もしくて、この絶望的な状況に差す数少ない救いの光ともいえる存在。誰だって、そんな存在には居なくならないでと願うものだ。
気をつけてという言葉は彼の純粋な優しさから出た言葉だろうけれど、転生ガノタ特有の審美眼は、キラくんの表情から滲み出る助けを求めるような色を見逃さなかった。
こんなの、貴女を頼りにしていますと言われているようなものだ。故に、私がガノタ故に、にへらにへらとだらしない顔でニチャってしまうのは仕方がないと言える。あぁ〜〜〜戦士として戦うしかなくて追い詰められてるキラくんが垣間見せる弱音……尊い……尊死という言葉は大袈裟で好きじゃなかったけどこの胸のきゅんきゅんはバイタルにも影響を出しているほどでつまりこれが高まると尊死するってコト……!?
キラくんのOS書き換え並の思考速度で妄想しながらにへらにへらとだらしない笑みを浮かべる姿は、
しかし今の私には許される。だって活発系巨乳赤髪ショート美少女ぞ? ルッキズム万歳。なお転生前の年齢は考慮しないものとする。
思考の沼に沈みながら補給物資を運んでいると、大きな振動がまたヘリオポリスを襲った。
ラウ・ル・クルーゼとムウ・ラ・フラガの戦闘がコロニー内でも始まったか? もう少し余裕があるかと思ったけれど、案外時間は無かったらしい。
ヘリオポリス崩壊の一因にもなりうるアグニはなるべく撃たないようにキラくんに言ってきたけど、クルーゼのシグー相手にそんな余裕があるかは正直なところわからない。
予備の兵装や補給物資を詰め込んだコンテナを抱えてアストレイを走らせる。
そうして地表に出るや、再度の大きな衝撃と共に、あの船が姿を現した。
アークエンジェル級強襲機動特装艦
これからの大戦を生き抜き、重要な役割を果たす艦である。
アークエンジェルと
こちらも物資の搬入を優先したい都合、追撃戦には移らない。というかこんな出会ったばかりの寄り合い所帯で母艦攻撃を仕掛けるような余裕はない。
それより、クルーゼ機が撤退した以上、次は原作のあのシーンだ。
私も合流を急がないと……。
■ーーーーーーーーー■
「君、コーディネーターだろう」
アークエンジェルのカタパルトデッキ上、アストレイの隣に駐機させたストライクから降りたキラを、地球連合の兵士達が囲う。運良くザフトの襲撃を生き延び、アークエンジェルを始動させた連合の軍人達だ。
その中の一人、ムウ・ラ・フラガ。
“エンデュミオンの鷹”の二つ名を持つ連合のエースパイロットにして、ラウ・ル・クルーゼとの戦闘を終えた彼もまた、アークエンジェルへと乗艦し、他の兵士たちと共にキラ達を囲んでいた。
そのムウがキラへ問いかける。君はコーディネーターなのかと。
その言葉に、周囲の兵士達の間にどよめきが起こる。
当然だ。連合とザフトの戦いは、言わばナチュラルとコーディネーターの戦いという図式になりつつあり、大多数の連合兵士はコーディネーター
そして目の前の少年は、十分に訓練を受けたナチュラルのパイロット達が扱えなかったモビルスーツを手足の如く扱ってみせた。その事実がムウ・ラ・フラガの問いかけの説得力を増し、
「……はい」
それでも尚、キラは問いかけを肯定する。
途端に、ナタル・バジルールに付き従い輪の片隅にいた歩兵達が、肩から提げていた自動小銃を手にキラへと向き直る。
「お前ら何考えてんだよ! さっきの見てなかったのか!?」
すかさず、
コーディネーターとナチュラルが共存し、比較的両者の溝が浅いオーブ首長国連邦の空気感。そのバックグラウンドがあったとしても、
そして、
「彼の言う通りです、連合の方々。生まれがなんだって言うんですか」
ザフトと戦った
そのモビルスーツから現れた人物のシルエットはどう見ても少女のそれで、昇降ワイヤーでデッキに降り立ち、パイロットスーツのヘルメットを脱いだ彼女に視線が集中する。
束の間訪れた静寂。
「コーディネーターでも彼は敵じゃありません。それに、
少女の言葉に、再び緊張が走る。
キラとマユラに向けられる視線。大人でもたじろぐであろうそれを意に介した様子もなく、マユラは
「彼女の言う通りよ。銃を下ろしなさい」
「あー、その、なんだ。悪かったな、とんだ騒ぎにしちまって」
騒ぎを収めるべく、マリュー・ラミアスとムウ・ラ・フラガが進み出る。
「俺はただ聞きたかっただけなんだよね。ここにくる道中、
やれやれだなと、そう言い残してムウはこの場を去ろうとする。
そして彼を呼び止めたナタルに、状況は終わっていないこと、コロニーの外にいるクルーゼ隊の追撃を受ける可能性が高いことを告げる。
連合の新型機動兵器に新造艦。ザフトからしたら是が非でも奪取もしくは破壊したい対象を抱えている以上、のんびりしている暇はないのだと。
この場で最上位に当たるマリューとムウが彼らに対する姿勢を示したこと、そして次の戦いに備えるため、兵士達は解散していく。
機体の整備や物資の探索・搬入、出港準備と、不足している人手に比してやらなければならないことはあまりにも多い。
困惑した視線を向けるキラに、マユラは困ったような笑みを返すことしか出来なかった。
garaasaa様 誤字報告ありがとうございます。
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