コーディネーターを騙る一般転生娘は生き残りたい 作:ガンオンの亡霊
ラ・ロシュフーコー - 『道徳的反省』
「フラガ大尉が
「あのボウズが書き換えたOS見てないのか? あんなもん俺に扱えるかよ」
「なら元に戻させて……」
「んで、のろくさ出ていって的になれと?」
「それは……」
アークエンジェルの艦橋にて、今後の方策を練るために生き残った士官による話し合いの場が設けられていた。
とは言っても、生き残ったのはマリュー・ラミアス大尉、ムウ・ラ・フラガ大尉、ナタル・バジルール少尉の3名しか居ないのだが。
目下の争点は、脱出時に予想されるザフトの攻撃に対しての戦力、つまり搭載する2機のモビルスーツについてである。
「では、あのアストレイとかいうモビルスーツは……」
「アストレイの嬢ちゃんもコーディネーターなんだろ? だったら俺に扱えるとは思えんのだがね」
「それにあの機体は連合のものではない……のですよね?」
マリューの問いに、この場に参加していたマユラが首肯する。
「
それに、とマユラは言葉を続ける。
「あれを接収したとしても、結局はストライクと同じです。コーディネーター用のOSにしても
「そりゃまあ……そうだろうな」
「
アストレイのOSがナチュラルに扱えるものではないという言葉はもちろん嘘だが、士官らにそれを確かめる術はない。
他国の所有物を強引に検めることは出来ないし、強引に実行に移したとして、それが原因で協力を得られなくなることは極力避けたい。
マユラの言葉に、士官達は頭に手をやりため息をつく。
「戦闘に協力してもらえるなら、それは我々としても助かる話ではあるのだが」
「オーブが謳う中立の理念はいいのかよ。他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しないってやつ」
ムウが諳んじるオーブの理念。
大戦当初から中立の理念を貫くオーブ本国は未だに戦火に見舞われておらず、だからこそオーブに属するここヘリオポリスにてGAT-Xシリーズやアークエンジェルが製造されていたのだ。もっとも、オーブが連合に手を貸したという事実は、それはそれで大問題ではあるのだが。
だからこそ、自分達の裁量でオーブのパイロットに戦闘に参加させて良いものかと頭を抱えることとなる。重大な外交問題になりかねないからだ。
「何度も言いますが、私はあくまでオーブ軍ではなくモルゲンレーテ社所属のテストパイロット。つまり民間人であり、国の意向と私の意志は関係ありません」
マユラの言葉に、士官達3人は思案顔になり顎に手をやる。
相対するザフトや連合の上層部が額面通りに受け取ってくれるかなどわからないが、それでも事実は事実だ。
「機体に関しても、これをザフトに渡すわけにはいきません。危機を脱するための戦闘なら本社も納得するでしょう」
「しかし、この問題は一度月の本部に判断を求めては……」
「通信の回復を待ってる時間があるとは思えんけどね、俺は」
「それに、私は守りたいんです! そのために用意した
「……仕方ない、か。艦長、少尉、俺も彼女に頼った方がいいと思うぜ、この状況は」
「確かに、戦力はいくらあっても足りないものね……」
困り顔で頭を搔いたムウが、根負けしてマユラが戦闘に参加することを認める。そしてマリューも追認すれば、話はもう決まったも同然だった。
これを認めれば、モルゲンレーテ社のモビルスーツとテストパイロットが
戦力を確保したいが、あくまで軍規も尊重したいナタルとしてはモビルスーツのみ接収して連合軍人が扱うべきであると考えるが、現実問題としてモビルスーツを扱える軍人はおらず、また、大尉2人を説き伏せるだけの代替案をナタルは持ち合わせていなかった。
「それじゃ、あとは脱出後に関してね。行き先だけど……」
「それなら私に考えがあります」
話し合いはまだ、終わりそうにない。
■ーーーーーーーーーーーー■
「あ、貴女は……」
「あの、キラくんいる?」
「キラだったら……」
トールくんが指差す先。壁にしつらえられた二段ベッドの上段で、キラくんは座ったまま眠っていた。あぁ~~~寝顔もかわいい……。
この時期しか味わえないキラくんを堪能……もとい優しいお姉さんがメンタルケアしてあげたかったけれど、あれだけの戦闘をした後だし、眠ってしまうのも無理はないだろう。
「あ、あの!」
「ん?」
「マユラさん、ですよね。あのモビルスーツでザフトのジンと戦ったっていう」
去り際に、トールくんがそう問いかけてくる。
「その……恐くないんですか? モビルスーツで戦うのって」
「恐いよ? すっごく恐い。当たり前じゃん」
「そうです……よね」
当たり前でしょ!なんてミリアリアちゃんに怒られて、トールくんがしゅんとなる。
戦闘に巻き込まれた彼は、戦いが恐いなんてことはわかっていたはずだ。たぶん、だからこそ、歳も近い女の子の私に気を使って、何か話しかけようとしてくれたはずだ。
知っていたことだけど、やっぱり彼はいい子だ。原作を何度も見て彼の人柄は知っていたつもりだったけれど、やっぱりいざ会って話をするのとはわけが違う。
気まずい雰囲気の彼らに、優しく微笑みかける。
「でもね、もっと恐いことがあるから戦えるの」
「え?」
「やれることがあるのに、やらなかったら。守れるものがあるのに、守れなかったら。きっと私は死ぬまで後悔する。だから私は、守りたいものを守るために戦うの」
あの推しCPとかこの推しCPとかその推しCPとかね。
私が守りたいものがなんであるか、彼らは良いように解釈してくれたようだ。といっても彼らに正解がわかるわけないのだけれど。
彼らはたぶん、ヘリオポリスやその市民達、オーブの人達を守るために戦っていると思っているはずだ。
そして、戦争なんて勝手にやっていろという自分達の主張との差に、良心がちくちくと苛まれているはずだ。
「あれ? 貴女は……」
「あ、ごめん、起こしちゃったか」
話し声で起こしてしまったのだろうか。寝ぼけた瞳でこちらを捉えたキラがベッドから降りてくる。
なんだかんだ、戦闘やその後のごたごたで彼とはあまり話せていなかった。
助けられたお礼もちゃんと言えてないし、言った通りにコロニー内でアグニを使わずに戦いを終えたことを褒めてだっていない。
「あの、ありがとうございました」
「ありがとね、キラくん」
口を開いたのは同時だった。
互いが互いに、全く同じタイミングでお礼を言い合って、思わず笑みがこぼれる。
戸惑って言葉を続けようとするキラくんの口を人差し指で制し、先にこちらの言いたいことを言わせてもらう。
「さっきの戦闘さ、助けてくれてありがとね」
「それは、こちらこそ……!」
「助けに行ったつもりだったけど、私だけじゃきっと勝てなかった。だから、ありがと」
キラくんがまた口を開こうとした直前、艦内に鳴り響いた警報がそれを遮った。
原作通り、アークエンジェルがコロニー内にいるうちに仕掛けてきたようだ。
こちらはコロニーへの損害を考慮してまともに反撃出来ず、逆にザフトは撃ち放題。やりにくいったらありゃしない。
警報とアナウンスに、否応なしに身体が強張って呼吸が浅くなる。
初陣はやり遂げたし、この戦闘が起こることも知っていたし、その覚悟も出来ていたはずなのに、いざその時が訪れるとこの様だ。
息を何度かに分けて吐き出して、少し気持ちを落ち着ける。
「それじゃ私、行かなくちゃ」
「ま、また戦うんですか……?」
「戦えるモビルスーツは2機しかなくて、扱える軍人さんもいないからね」
そのことに触れると、キラくんはバツが悪そうに視線を逸らす。
「とにかくさ。私、頑張るから。みんなでオーブに帰ろうね?」
キラくん達にそう言って、格納庫へ向けて駆け出す。
きっと大丈夫。キラくんも後から来てくれるはずだと、そう信じて。
木村長門守重成様、誤字報告ありがとうございます。