コーディネーターを騙る一般転生娘は生き残りたい   作:ガンオンの亡霊

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運命と運命をとりまく衣裳は、人生を一幕の芝居にする。上演がすすむに従って、いちばん律義な人間も、ついには自己の意志に反して役者にさせられてしまう。

シャンフォール - 『格言と反省』


PHASE-06 崩壊の大地

ナスカ級の搭載機数は6機。ローラシア級の搭載機数も同じく6機。

クルーゼ隊はナスカ級ヴェサリウスとローラシア級ガモフで構成されているから、搭載機数は最大で12機。

先ほどの戦闘で撃墜したジンが2機分、片腕を損傷したジンが1機分、本編外での戦闘により損傷して修理中のミゲル専用ジンで1機分、合わせて4機分は稼働状態にないと考えて、あちらの戦力は最大でも8機。

 

それに、搭載機数の上限が溢れるような状態で、モビルスーツの奪取作戦なんてやるものだろうか。

奪取された機体は正史ならまだ投入されないはずだから、参戦してくるとしても勝手に出てくるアスランのイージスだけのはず。

正史でこの戦闘に投入された機体はジン3機だったし、案外、クルーゼ隊の予備戦力は払底しているのかもしれない。

 

『熱紋照合、ジンです! 数は9!』

「いやだから多すぎんでしょうが!」

 

原作知識というチートを用いて敵の戦力予想をしている最中にオペレーターからそんな通信が入って、思わずコックピット内で叫んでしまった。でもこれは叫ばせて欲しい。これ原作の3倍の数だよこれ!

先ほどの戦力予想は何だったのか。搭載機数の記憶が間違っていた? それともクルーゼ隊の戦力が拡充されている……?

いや、まずはここを生き延びないと話にならない。考えるのは後だ。

 

 

「マユラ・ラバッツ、アストレイ出ます!」

 

 

電磁式カタパルトの加速に押し出され、コロニー内へ機体が射出される。内臓を一瞬後ろに置き忘れてきたかのような錯覚を覚えるほどの加速だ。殺人的な加速の某モビルスーツには乗りたくないな。

など考えていても現実が変わるわけではない。正面遠くにスラスターの光が6つ、コロニーの外壁に穴を開けて別角度から侵入してきた光が3つ。

 

『くそ! 奴ら、拠点攻撃用の装備してやがる! コロニー内であんなもんぶっ放すつもりか!』

 

通信機から、怒鳴るようなムウの声。

拠点攻撃用の装備ということは、M66キャニス 短距離誘導弾発射筒(大型ミサイルランチャー)M69バルルス改 特火重粒子砲(大型ビーム砲)を携えてきているのだろう。どちらも過大とも言える火力の装備だけど、可能ならストライクのPS装甲でも防げないバルルス改持ちの機体から対処したい。

アークエンジェルを防衛・協同するため、アークエンジェルの射線に入らないよう留意しつつ傍に控える。あんな数を単騎で相手取るなんて出来ないし、アークエンジェルを堕とされるわけにもいかない。

 

 

『敵機さらに侵入! 熱紋照合……これは、イージスです!』

『もう実戦に投入してきたというの……!?』

「やっぱ出てくるかズラめ……!」

 

通信機からはイージスの襲来を告げるオペレーターの声。

十中八九、アスラン・ザラが駆るイージスだろう。

通信機を切ったまま、せめてもの呪詛を吐き出す。

 

『キラ・ヤマト。ストライク、いきます!』

 

ほぼ同じタイミングで、ソードストライカー装備のストライクが射出されてくる。

自分以外にも戦える私という存在がいることで彼が戦わなくなってしまわないか心配していたけれど、杞憂に終わってくれたらしい。

っと、知らないふり知らないふり……。本来の私は、彼がまた戦いに来るなんて思っていないはずだ。

 

「キラくん!? なんでまた……!」

『マユラさんだけに戦わせるわけにはいきません!』

「キラくん……ありがと、ほんとに心強いよ」

 

心強いのは心からの本音だ。

来てくれないとあんな数相手に勝てるわけないし、正直なところ不安しかなかった。

 

「キラくんはアークエンジェルに取りつこうとする敵機の対処をお願いね? 絶対に無理だけはしないで」

『わかりました。マユラさんも無理しないでください』

「私も同じようなことしかしないから大丈夫。墜とすのはアークエンジェルの火器に任せましょ」

 

戦艦はモビルスーツ相手に無力。

ガンダム世界のお約束とも言える図式だけど、それはモビルスーツが全てにおいて戦艦を上回るというわけではない。

その圧倒的な積載量(ペイロード)によって実現される戦闘艦の火力と装甲はモビルスーツの比ではなく、取りつかせさえしなければ易々と墜とされることはない。

私達はアークエンジェルの重要区画への攻撃軌道に入ったジンを妨害すれば良く、あとはアークエンジェルが火力を発揮してくれればジンを墜としてくれるはずだ。

 

この戦闘で最も警戒すべき相手はアスラン・ザラのイージスと、ミゲル・アイマンのジンだ。

アスランはヘリオポリスにキラが居たのかを確認しに来たのが主目的で、アークエンジェルを墜とすつもりはあまりないはず。

けれど、キラくんはそっちの対処で手一杯になるだろうから、不味いことには変わりない。

 

 

戦端を開いたのはジン部隊だった。

M66キャニス 短距離誘導弾発射筒(大型ミサイルランチャー)M68パルデュス 3連装短距離誘導弾発射筒(脚部小型ミサイルランチャー)による、大小入り混じったミサイルの斉射。

二十を超えるミサイルの群れが、アークエンジェルへ向けて放たれる。

 

『迎撃!』

対空防御ミサイル(コリントス)撃て(って)ぇー!』

『照準、マニュアルでこっちに寄越せ!』

 

艦尾大型ミサイル発射管のうち、外側に左右6門ずつ配置された計12門から対空防御ミサイル(コリントスM114)がミサイル群へ放たれる。

同時に、各所に配置された75mm対空自動バルカン砲塔システム(イーゲルシュテルン)が起動し、ミサイルを迎撃する。

ミサイルの大多数は撃ち落され、数発はアークエンジェルを外れて地表へ降り注ぐ。

直後、黒煙を切り裂くように225cm連装高エネルギー収束火線砲(ゴットフリートMk.71)から光条が放たれるけれど、ジン部隊はこれを散開して回避。3手に別れて左右と上方から仕掛けるつもりだ。

 

 

「キラくん! 私たちも!」

「はい!」

 

アストレイが左側を、ストライクが右側を抑えるべく別れたその時だ。

上方へ向かうジンのうち、M69バルルス改 特火重粒子砲(大型ビーム砲)装備の1機が直上からストライクへ襲い掛かる。

さらに、やや後方に控えていたイージスもその動きに連動するようにストライクへ迫っていく。

 

おそらく、ストライクへ向かっていったあのジンがミゲル機だろう。

ストライクは気がかりだけど、こちら側の3機のジンを捌きながらあちらの援護をする余裕なんてない。

 

左側のジン部隊へ牽制とばかりにビームライフルを撃ちこむけれど、所詮はロックオンも完了せず闇雲に撃っているだけだ。難なく回避され、2度目のミサイル斉射が行われる。

半数ほどは撃破出来たようだけど、1~2発はアークエンジェルに、残りは地表に着弾してしまう。

そして、ミサイルの爆炎に紛れて、バルルス改装備のジンがアークエンジェルの懐へ飛び込もうと加速するのが見えた。

あれを許せばアークエンジェルの火砲にとって死角になる。

 

「まずは……あなたから―――!」

 

フットペダルを踏み、機体を前進させながら照準する。

こちらの姿を認めたジンが、バルルス改をこちらへ向ける。

総毛立つような感覚。直撃を受ければ間違いなく撃墜される。つまり、死ぬ。

 

気がつけば、ロック完了前にトリガーを引いていた。

バルルス改装備のジンに直撃こそしなかったが、回避を強要して射撃の暇を失わせるくらいの効果はあった。

 

そのジンを援護しようとしたのか、随伴していたミサイル装備のジンが上方からこちらを狙う。そうやって動きが鈍くなったジンをゴットフリートMk.71の火線が絡め取って、抵抗の余地もなく火球に変える。

仲間の死に動揺したか、アークエンジェルの火力に慄いたか、バルルス改装備のジンの回避運動が乱れた。FCSが捉える。夢中でトリガーを引けば、放たれた光条は吸い込まれるようにジンの胸部を貫いて、内部から迸るエネルギーの奔流が機体を四散させた。

アークエンジェルの左側へ迫っていたジン3機のうち2機が瞬く間に墜ち、残る1機も少し距離を取る。あのバルルス改装備機も放っておいたらすぐにまた攻勢に転じてくるだろうけど、今はキラくんや他のジンの動向が気になるから追撃はしない。

 

 

 

視線を巡らせば……いた。キラくんのストライクはバルルス改装備のジンとイージスと交戦している。損傷は無さそうだけど、アークエンジェルから引き離されつつある。

そして直掩機が減ったアークエンジェルに、残りのジン5機が取り付こうとしていた。

 

手早く状況確認を終え、アークエンジェルの直掩につくため移動する。

アークエンジェルは地表を離れて、目測で100メートル弱ほどの高度を取っている。

火砲の配置上、上方への火力は十分だけど、艦体下方へは火力を発揮しづらいはずだ。たしか、原作ではそれを補うために船をバレルロールさせていたこともあったはずだ。

 

アストレイを低空飛行させてアークエンジェルの下をくぐって艦体右方へ出てみれば、ちょうどミサイル装備のジンが艦体下方目掛けて飛び込んでくるところだった。あれは止めないと不味い。あちらにとっても、アストレイは攻撃ポジションに陣取る邪魔な敵だろうから排除しにかかるはずだ。

早撃ちとばかりに、ショートバレルビームライフルで射撃を加える。FCSのロックが不十分でも構わない。マニュアルの粗末な照準でも牽制くらいにはなる。

 

艦体下方を目掛けて急降下機動をとっていたジンは、ビームを回避するために急制動をかけ、無理やり水平方向に回避機動をとる。

しかしその高度は、未だアークエンジェルの制空圏だ。

アークエンジェルのやや右上方に位置するジンへ、数門の75mm対空自動バルカン砲塔システム(イーゲルシュテルン)の砲門が向けられる。直後、ジンは75mm弾の斉射を浴びて爆散した。

それを見届ける暇もなく、コックピット内にロックアラートが鳴り響く。

 

「くっ……!」

 

考える暇もなく、咄嗟にフットペダルを踏み抜く。

上方へのあまりに急な加速に、視界がブラックアウトしそうになる。

しかし、こうしていなければ今頃ミサイルの斉射で死んでいた。

どうやら、残存のジンのうちどれかが、アークエンジェルの反撃を掻い潜りながらこちらへ打ち込んできたらしい。

 

慌てて視線を巡らせれば、直掩機(アストレイ)を脅威と捉えたジンが排除に動き出していた。

ひっきりなしにロックアラートが鳴り、重突撃銃や小型ミサイルランチャーの射撃に追い回される。

 

『嬢ちゃんどけ! 射線がとれん!』

「そんなこと、言ったってーーー!」

 

通信機越しにムウさんの怒鳴り声。

けれど、アークエンジェルの射線を意識して回避機動を取る余裕なんてない。

包囲されないように必死で、気づけばアークエンジェルよりもかなり上方へ上方へ追い詰められていた。

 

「しまっーーー!」

 

さらにその上方。ヘリオポリスの雲の中から、バルルス改をこちらへ向けるジンが現れる。さっき左側で見逃した奴だ。

回避は間に合わない。咄嗟にシールドを構えて、再び失態に気がつく。

このシールドは、さっきの戦闘で重斬刀を何度か受けたやつをそのまま装備してきている。果たしてこれで防げるのか?

最悪のイメージが脳裏を過ぎり、小さく悲鳴を漏らす。

 

『マユラさん!』

 

バルルス改が発射される直前、砲身を何かが斬り裂いた。

あれは、ソードストライクのビームブーメラン(マイダスメッサー)か。

ミゲル機とイージスとの交戦の最中、こちらの危機を察知して投げてくれたようだ。

 

「キラくん後ろ!」

 

しかし、当然それは大きな隙だ。

ストライクの後方では、ミゲル機がバルルス改の射撃体勢に入っている。

直後、私は信じられないものを見る。

 

 

バルルス改が放たれる直前、ストライクが大きくバランスを崩す。

いや、あれは自分から崩したんだ。

機体を前に倒し、ビームの火線と平行に射撃を躱す。ストライクの背部を掠めたビームはヘリオポリスのシャフトの一部を削り取った。

ストライクはそのまま、機体を翻して回転させながら左腕のロケットアンカー(パンツァーアイゼン)を射出して、重突撃銃をアストレイに向けるジンの右腕を捕らえる。そして、推力にモノをいわせて、回転の勢いのまま別のジンに叩きつけた。

 

「すご……」と、思わず声が漏れる。

 

ストライクは機体を反らせて、弧を描いて戻っていったビームブーメランを掴むことなく避けた。

受け止められなかったビームブーメランは、その速度を殺されることなくストライクの後方へと飛んでいく。ミゲル機の方向へと。

 

咄嗟に上方へ逃れようとするけれど、間に合わずに脚部を大腿部から切断されて体勢を崩す。

ミゲル機からすれば、ストライクの影から突然ビームブーメランが現れて飛来したような具合だろう。あちらもあちらで、そんな不意打ちに反応出来るのは十分に化け物だ。

 

そして私も、ただ見惚れていたわけではない。

体勢を立て直そうとするミゲル機へのロック完了を告げる電子音が鳴り、引き金を引く。2度走った光条はジンの胸部を貫き、そのパイロットごと機体を爆ぜさせた。

対艦刀を抜いてジンへ向かおうとしていたストライクは方向を変えて、今度はイージスへと向かっていく。

 

 

 

「そうだ、アークエンジェル!」

 

下方のアークエンジェルを確認しようとした瞬間、ゴットフリートの火線が放たれる。

さっきロケットアンカーで衝突させられたジン2機を狙った攻撃のようだ。

しかしジンはそれを回避して、目標を失ったその暴力的な熱量はヘリオポリスのメインシャフトに襲いかかる。

 

『しまった……!』

 

多くの人命を預かるコロニーのメインシャフトと言えども、戦闘艦すら轟沈させうる火力に耐えられる道理は無かった。

戦闘により度重なる損傷を受けていたヘリオポリスはついに限界を迎え、その巨体を軋ませて崩壊を始めてしまった。地表に巨大な地割れが走り、外壁がブロック単位で分解していく。

コロニー内の空気が急速に流れ出し、暴力的なまでの気流に機体の制御を持っていかれる。

 

大地が崩壊し、全てが失われる。

まさに天災が如き惨事に抗えるはずもなく、私はアストレイのコックピットで小さくなって無力な祈りを捧げることしか出来なかった。

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