コーディネーターを騙る一般転生娘は生き残りたい   作:ガンオンの亡霊

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戦争では大半のことが不確実だ。真相を見通し、克服する知力が必要だ。

クラウゼヴィッツ - 『戦争論』


PHASE-08 戦場の霧

『では、ユーラシア連邦の宇宙要塞(アルテミス)へ向かうのは反対と?』

『はい』

 

艦長席にて、マリュー・ラミアスは先ほどの会話を思い出す。

 

『同じ地球連合とはいえ、貴女方(大西洋連邦)あちら(ユーラシア連邦)はあくまで別組織なのですよね?』

『他組織の最新鋭艦(アークエンジェル)新型機動兵器(ストライク)を見逃してくれるはずがない、と?』

『加えて、アストレイ(こっちのこと)もですね。機体なりデータなり接収されるでしょうけど、さすがに看過できません』

 

ナタル・バジルール少尉の提言で、脱出後は宇宙要塞アルテミスへ向かう案が出ていたが、協力関係にある少女(マユラ・ラバッツ)が真っ向から否定する。

確かに、拘束されて無理やり取り上げられるような極端なことにはならないだろうけど、ユーラシア連邦が最新鋭艦(アークエンジェル)新型機動兵器(ストライク)、そしてオーブのモビルスーツ(アストレイ)をタダで見逃すとは思えなかった。

それに……

 

『それに、コーディネーター(キラくんと私)が何もされないという保証は?』

『それは……』

 

言われて気付く。彼女の懸念は最もだった。

地球連合(ナチュラル側)に付くコーディネーターは貴重で、地球連合内でもほとんど見かけることはない。

コーディネーターだからとその場で殺されることは無くとも、彼女らの利用価値は計り知れず、連行されたが最後、祖国の土を踏めるかすらわからないだろう。

考えないでもない可能性だったが、友軍だからと少し甘く見ていたところは否定できない。

 

 

『しかし、補給はどうする。武器弾薬どころか水すら不足しているんだぞ、我々は』

『月・地球方面の途中には、その……デブリベルトがあります。そこで補給を……』

『デブリベルトって、まさか……』

 

有史以来、人類が地球圏でまき散らした宇宙のゴミ(スペースデブリ)

それらが月と地球の引力に引かれ、デブリベルトと呼ばれるデブリ群を形成していた。

その中には、戦闘で破壊された軍艦や民間の輸送船も含まれるだろう。

月の大西洋連邦宇宙軍司令部への進路上に存在するそこは、確かに身を潜めつつ物資を補給できる場所だった。

 

『気は進まないけれど……』

『やるしかない、だろうぜ』

『たしかにそれならば……』

 

その上、アルテミスへ向かう案は他の懸念もあった。

ヘリオポリスから最寄りに位置する地球連合の要塞、アルテミス。

フラガ大尉曰く、交戦したザフトの部隊はクルーゼ隊で、指揮官のラウ・ル・クルーゼが大尉の言う通りの厄介な人物であれば、最寄りの拠点へ向かうアークエンジェルの動向は読みやすいだろう。

デブリベルトで補給しつつ移動するというアイデアは、ザフトの目を欺ける妙案に思えた。

 

 

「しっかしあの子、何者なのかね」

「と、言うと?」

「あの年齢でモビルスーツの開発チームに居たんだろ? その上戦闘をこなして、行き先の判断も悪くないときた。コーディネーターってのはみんなあんな感じなのかね」

「キラ・ヤマトにしてもそうです。ラミアス大尉の話では、戦闘中にストライクのOSを書き換えたと聞きますが」

「俺達としちゃあ助かるんだが、ね」

 

そんなのを相手を戦っているのか、と。艦橋クルーの考えが言外に伝わってきて、頭を振る。

何事もなくデブリベルトに辿り着ける保証もない今、気を抜くにはまだ早すぎた。

協力を申し出てくれた学生達(キラくんの友人達)が艦橋へ入ってきて、思考が中断される。

真新しい連合の制服に身を包み、緊張した面持ちの彼ら。彼らを守るためにも、まだまだ気を抜くわけにはいかなかった。

 

 

 

■――――――――――■

 

 

 

「ふむ……」

 

ナスカ級ヴェサリウスの艦橋にて、ラウ・ル・クルーゼが首を捻る。

ヘリオポリスで確認した熱源は2つ。月方面への移動を始めた熱源が1つと、アルテミスへ向かう熱源が1つだ。

足付き(アークエンジェル)が宇宙要塞アルテミスへ向かうと読み、ヴェサリウスとガモフで追い込み漁を仕掛けたのだが、どうやら読みが外れたらしい。

対象を捕捉できないまま、先行して待ち構えていたヴェサリウスと索敵追尾していたガモフが合流してしまった。

 

航路変更のために推進器を使えば、ヴェサリウスかガモフの熱源探知に引っかかるはず。

そうならなかったということは、足付きはアルテミス方面へ向かっていたなかったとする方が自然だ。

真っすぐ月へ向かう愚鈍な敵か、こちらの裏を掻ける抜け目のない敵か、クルーゼは判断しかねていた。

 

とはいえ、足付きは月方面へ向かったと見て間違いない。

慣性での静粛航行を行っていると仮定すれば、月への航路に送り込んだローラシア級のウィッテンでも追いつけないということはない。

念のための保険としての采配だったが、功を奏したようだ。

 

「とはいえあちらの戦力では危うい、か。急げよアデス」

「はっ」

 

 

こちらが本命と仮定していたため、戦力はこちらに集めていた。

このヴェサリウスにはクルーゼ機のシグーと、出頭させていたアスラン・ザラのイージスに、ジンが2機。

随行するガモフには残る3機の鹵獲兵器とジン3機を搭載している。

モビルスーツ10機を擁するこちらと比べ、ウィッテンにはオロールとマシューのジンが2機と、移乗させたラスティのジンのみだ。

 

ジン9機を投入した先ほどの戦闘でさえ、あれを撃沈できなかったばかりか、ミゲル・アイマンを失うこととなった。

それだけ油断できない相手であり、ローラシア級1隻とジン3機でどうにかなる相手とは考えづらい。

しかし……

 

「彼ならば仕掛ける、だろうからな」

 

ラスティ・マッケンジーの性格上、負傷していようが劣勢だろうが命令違反を犯そうが、間違いなく仕掛けるだろう。

慕っていたミゲル・アイマンの仇討ちともなれば猶更、彼の中に仕掛けないという選択肢はない。

負傷した身で、先ほどのアスランのように勝手に出撃されても困るから本命ではない月航路へ行かせたのだが、裏目に出たようだ。

 

どうなるかな、と、クルーゼは独り言ちる。

その視線は、遥か宇宙(そら)の彼方、月の方向へ向けられていた。

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