真宵が狩魔冥に会う、と言うと従妹の少女は顔を曇らせた。
「わたくし……あのかた、キライ、です」
人見知りなところがあるとはいえ、春美がはっきりと敵意を表すのはめずらしい。
「まあ、確かにちょっとハゲシイところはあるけど、そんな悪いひとじゃないよ」
「何を言ってるんですか。真宵さまを有罪にしようとした人じゃないですか!」
「あー、そういえばそうだったねえ」
言われてから初めて気づいたようにのんびりと答え、春美はあきれたように口を開ける。
「そんなヒトゴトのように……あろうことか、真宵さまに罪をなすりつけようとしたんですよ!」
「いやー、でもアレはしかたないよ。自分でも犯人としかおもえなかったもん」
「真宵さまは人が良すぎます! 罪もない人を犯人だと言うなんて! そんなヒドいことばかりしてる人じゃないですか!」
「うううん……でもそれがお仕事だし、そのために弁護士が……なるほどくんがいるんでしょ」
「でも……でも……」
引っ込みがつかないが、反論するだけの言葉がもう出てこない。
「あのさ、あたしが誘拐された時、メイさんは撃たれてケガしてたのに証拠品を届けてくれたんだ。
あたしが奥の院に居たときも、必死でからくり錠を解除してくれたのはメイさんなんだよね」
「…………」
「いや、その時はあたしじゃなかったのか」
あはは、と笑う前で春美はうつむき、服のすそをギュッと握りしめる。
「……アレはわたくしが……わたくしが……」
目の前の従妹を罪に落とすための手助けをしてしまった。なにも知らなかったとは言え、敬愛する真宵にしたことを思うと消えてしまいたくなる。
真宵は春美の頭にそっと手を置く。
「うん、はみちゃんのせいじゃないし、もう済んだことだよ」
その手が暖かくて、春美は必死で涙をこらえる。
「たぶんね、メイさんってすごく真っすぐだと思うんだ。仕事にいっしょけんめい向き合って、ちょっと行き過ぎちゃったりして。チョトツモーシンでぶつかって行っちゃうの」
なるほどくんにどしーんってさ、と笑いかけ、春美の口元もゆるむ。
「そりゃ自分が犯人だって言われちゃった時はショックだったけど、メイさんが悪いわけじゃないから」
「……そう、ですね」
奥の院で怒りをぶつけたときの、ひどくショックを受けた冥の顔を思い出すと少し罪悪感が湧いた。
真宵にしたことを許すのはできないが、悪い人でもないかもしれない、とやっと思えた。
「でもさ、まっすぐなあの性格ってちょっとアコガレちゃうな」
ゆるんだ春美の表情が急に真顔になる。
「あたしってぐるぐる考えちゃうからさ。メイさんって頭もいいし同い年なのにすごくオトナっぽくてカッコイイよね。あたしもメイさんみたいにビシバシやってみようかなあ、はみちゃん。……はみちゃん?」
真宵の言葉にどんどん春美の眉はゆがみ、しまいにはプイッと顔をそらしてしまった。
「やっぱり、あのかたキライです!」
「ええっ!?」
分かってくれたと思った途端の手のひら返しに、真宵はハテナをいくつも浮かべるしかなかった。