Fate/Blue archive -キヴォトス聖杯戦争-   作:ゴッホカッター

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シャーレのキャスター/プロローグ

『願い』というのは、ヒトの活動の原点だ。

生物としての本能に根差した原始的なモノ、高次に発達した精神を充足させるためのモノ……千差万別な願いを叶える為に生きていると言っても過言ではない。

 

では、もしも。

 

全ての過程を省略して、思うがままにあらゆる願いを叶えるチャンスが転がってきたのなら——ヒトは、どのように行動するのだろうか。

 

 

それは、『名もなき神々の王女』が目覚めかけた事件の後、キヴォトスの空が赤く染まるより少し前のこと。

 

連邦捜査部シャーレの顧問である先生と、その秘書AIであるアロナは、難しい顔で黙り込んでいた。

 

"……アロナ、どうしようこれ"

 

「え、えぇっと……」

 

連邦捜査部シャーレの地下には、『クラフトチェンバー』という施設が存在する。

ありとあらゆる物質を生成できるという触れ込みの、3Dプリンターのようなすごい版のような機械なのだが、ある程度のカテゴリの中からランダムに物体を製造する『ジェネレート』と狙ったものを生成する『テイラーメイド』の二種の機能を持っている。

今回、先生とアロナは『ジェネレート』の機能で製造を行った……はずなのだが。

 

"カウントが『99:99:99』から1秒も動かないね"

 

「こ、壊れちゃったんでしょうか……?誰か修理できそうな人に連絡しましょう!」

 

"エンジニア部にも無理じゃないかなぁ……"

 

チェンバーの1つがおかしくなってしまった。これまでかかった最長製造時間の18時間を大きく超えた、液晶が表示できる最大の数値のままフリーズしてしまったのである。

 

「うーん……解析してみましたが、チェンバー自体は普通に動いてるみたいですね。ブースターをかけてみましょうか?」

 

"オーパーツだし、下手に触らない方がいいんだろうけど……ずっと使えないのも困るしね。お願い、アロナ"

 

果たして、クラフトチェンバーはブースターチケットを通常の3倍ほど飲み込んだ後、異音を奏で、常にない様子でガタガタと震え、先生の頭の中が連邦生徒会への釈明でいっぱいになりはじめた頃、黒煙を噴きながら製造完了の通知を飛ばして動きを止めた。

 

"アロナ?ホントに大丈夫かなこれ!?"

 

「………大丈夫です、きっと!とにかく今は出来上がったものを確認しましょう!」

 

"そ、そうだね……なんだろう、これ"

 

チェンバーから取り出されたそれは、所々のパーツが欠けた豪奢な杯のような形をしていた。

 

"優勝カップ?新しいオーパーツかな?"

 

「見たことのない形ですね。でも、あれだけ時間がかかるのにこれ1つしか出来てないなんて——先生ッ!?」

 

"え——うわっ!?"

 

突然風が吹き荒れる。発生源は、先生が手に持ったオーパーツらしき杯だ。

それは掃除機のような激しい吸引でもって、書類、筆記用具、ファイル類、クラフトチェンバーが生成していた他のオーパーツ。固定されていないものを片っ端からその口に投げ入れていく。

 

それは2人に対しても例外ではなく。

部屋の中の軽いものを粗方吸い込み終わった吸引は、先生とシッテムの箱にも牙を剥く。

 

"な——"

 

「保護を——ダメです、間に合わな……きゃああああっ!?」

 

抵抗の暇すらなく、先生が頭から呑み込まれ、手に携えていた"シッテムの箱"もそれに続き——始まった時と同じように、唐突に吸引が停止した。

 

床に転がった杯はカタカタと震え始め——激しい光の渦を立ち昇らせた。

 

 

かくして、何気ないはずだった日常に落とされた大きすぎる聖杯(きせき)によって、物語は軋み始める。

 

これより始まるのは、キヴォトスにおける最初の聖杯戦争。

 

D.U.シラトリ区を舞台に、10校から選ばれた生徒(マスター)と彼女たちに招かれた14騎のサーヴァントが繰り広げる大乱戦。

 

「騎士様に守ってもらえるなんて、なんだかこそばゆいなぁ」

「……ああ。マスターを守る騎士であることが、私の願いだ」

異聞のブリテンを焼いた『炎の厄災』。太陽の騎士の着名(ギフト)を受けた妖精騎士——【ティーパーティーのセイバー】

 

「変数が……多すぎる……!!」

「序盤は情報収集と魔力の貯蓄に徹するはずだったのに!どうしてこうなってしまうのだわーーー!?」

生真面目に責務を全うする優等生。ヒトを愛する冥界の女主人——【セミナーのランサー】

 

「……お弁当、食べますか?」

「頂きましょう。神務遂行の為には補給も重要ですので」

神々の怒りの具現。魔を討つための戦女神——【RABBIT小隊のアーチャー】

 

「ライダー!おいらもそれ乗りたい!乗せろ!」

「危ないのとついでに教育にも悪いからダメだぞ」

堂々とした自信に満ちた若武者。三頭の悪竜を討った竜殺し(ドラゴンスレイヤー)——【レッドウィンターのライダー】

 

「マスターの料理が美味しすぎる!!こんな美味しい料理が食べられる私はきっと特別なサーヴァントに違いありません……!!」

「喜んでもらえて嬉しいな。お代わりいる?」

侠客と女怪の融合霊基。センシティブ・メンタルの鉄鞭使い——【玄武商会のアサシン】

 

「さっさとこの馬鹿騒ぎの幕を引いてしまいましょう?勝ち残りの算段を付けなくていい戦は得意なの、私」

「……そうだね。私達で全部終わらせよう。バーサーカー」

仇の首を斬る為に国二つを滅ぼした妄執の怪物。狂い咲きの復讐姫——【風紀委員会のバーサーカー】

 

そして——

 

 

先生が目を覚ますと、そこは壁と天井の崩れた青空の見える教室だった。

 

"ここは……『シッテムの箱』の……"

 

「——()()()()()!先生が起きましたよ!良かったぁ……!!」

 

「だからそのうち起きると言ったでしょう。心配性が過ぎるわよ、マスター」

 

二つの人影が、先生の顔を覗き込んでいた。

1人はこの空間の主であるアロナ。随分と心配をかけてしまったらしく、涙目になってしまっている。

もう1人は知らない人影。ローブを纏い、フードで顔を隠した、学校の机とはミスマッチな格好をした()()()()()が、眉間に皺を寄せながらこちらを覗き込んでいた。

 

"アロナと一緒にあのオーパーツに吸い込まれて……それからどうなったんだっけ……?"

 

「マスター。調子はどう?何かしら感覚が欠落しているだとか、気分が悪いとかはあるかしら」

 

"何ともない、と思います。むしろ普段より調子がいいくらいで……あなたが私たちを助けてくれたんですか?"

 

「不調が起こっていないのなら良かったけれど、『助けた』と言うには少し語弊があるわね……魂と精神だけを肉体から離脱させるのは久しぶりだったけれど、うまく行ったようで何よりだわ」

 

"なんて???"

 

さらりと明かされたとんでもない真実に、先生が目を剥く。フードの女性は大きくため息をついて椅子から立ち上がった。

 

「かなり事情が込み入っているから、順を追って説明するわ……私は"キャスター"。貴方たち2人ののサーヴァント。このふざけた聖杯戦争を終わらせるために現界した。巻き込んですまないけど、協力してもらうわよ」

 

 




Q.プロの書いたApocryphaですら赤陣営のマスターを天草四郎1人にしたのに、14人の生徒と14騎のサーヴァントの関係を書きながら聖杯戦争を!?
A.でっ……できらぁ!!!

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