Fate/Blue archive -キヴォトス聖杯戦争- 作:ゴッホカッター
でもつよつよの公式供給もらったので執筆頑張るぞい!
"話をまとめると、クラフトチェンバーが作っちゃったのはなんでも願いを叶えられる『聖杯』っていうオーパーツで、キャスターさんはそれを使う権利を巡って戦う『聖杯戦争』のために呼ばれた『サーヴァント』のひとりなんだね"
「漫画やゲームのお話みたいですね、先生!」
「ええ、飲み込みが早くて助かるわ……なんだか色々とイレギュラーが起きていて頭が痛いけれど」
先生が目覚めて1時間後。
先生、アロナ、キャスターの3名は情報のすり合わせに励んでいた。
擦り合わせとは言っても、ほとんどがキャスターから先生とアロナへの聖杯戦争についてのレクチャーである。なおキャスターの側はキヴォトスの治安にドン引きしていた。
「マスターの証言や情報収集、推理の結果を統合すると——こうなるわね」
①クラフトチェンバーとやらで不完全な聖杯が出来上がる
②不完全な聖杯が完全になろうと手当たり次第に物を取り込み、巻き込まれた
③
④
⑤引っこ抜いてからまる1日経過後に
"……アロナ、心配かけちゃってごめんね"
「落ち着きのない犬みたいにグルグル歩き回るわ、立ち止まったかと思えば泣き出すわでまともに会話ができる状態じゃなかったわね。うまく会話可能にできてよかったわ」
「キャスター!!それは言わないでって言ったじゃないですか!!」
くすりと笑うキャスター。ぽこぽこと怒るアロナ。自分が寝こけている間にここまで遠慮のないやり取りができるのなら、この2人の相性は悪くないようだ、と先生は思う。素直なアロナを大人であるキャスターがうまくいなしているというのもあるが。
閑話休題。
「さて、現状が認識できたところで、これからの話をしましょうか……私たちキャスター陣営の大目標は、『聖杯からマスターを分離して、この聖杯戦争を1秒でも早く終わらせる』ことよ」
"キャスターは願いを叶えにきたんじゃ……?"
「そんな悠長に構えてると取り返しのつかないことになるわよ。マスターの体が」
"えっ"
先生の顔から血の気が引く。素朴な疑問に対する返答は、端的にして深刻だった。
「マスターのパス越しにざっと解析を試みたけれど、今回の聖杯は脱落したサーヴァントが増えるほど願いを叶えるための魔力が増えるタイプよ。今すぐにどうこう、ということはないと思うけれど……順調に聖杯戦争が進んだ場合、魔力に圧迫された『マスターの人間の部分』が、徐々に変質していく可能性があるわ」
「……だ、大丈夫ですよ先生!私が絶対に守ってみせますから!」
ふんす、と気合を入れるアロナだが、その顔色は良くない。自身の肩に先生の命を乗せるのは戦術指揮の時と同じだが、初めて経験する種類の害あるものから継続して先生を守り続けるというのは重圧のようだった。
「目的を達成する上で一番ハードルが高いのは、"箱"のエネルギーが切れてマスターの護りが失われるよりも先に
"番人がいるんだね"
「ええ。今回の聖杯戦争では、聖杯自身が呼び出した、聖杯戦争の進行・監督が役割の特別なサーヴァント——『ルーラー』が、聖杯を守っているわ」
心の底からうんざりした顔で、キャスターは溜息を吐き出した。
「そしてまあ最悪なことに——ルーラーとして召喚されたのは、若くて夢見がちだった頃の私なの」
★
————時間は少し遡り、聖杯の稼働直後のこと。
「……先生ッ!!何があったの!?無事!?」
地下室から響く異音に気づいた当番生徒……空崎ヒナがクラフトチェンバーに駆けつけた時、状況は粗方収束していた。
竜巻でも吹き荒れたかのように荒れ果てた部屋。その中心に佇む艶やかな青い髪の少女と、少女が手に持つ黄金の杯。——先生の姿は、部屋のどこにも姿の見当たらない。
「うーん、未完成の聖杯が、周りのものを取り込んで完成したようですね……聖杯が取り込んだリソースの中に金羊の毛が含まれていたせいで私が呼ばれた、といったところでしょうか」
「……あなたは、誰?先生は何処なの」
物語の中から飛び出してきたような可憐な少女に銃口が突きつけられる。彼女の独り言の意味はヒナには全く理解できなかったが、部屋の荒れ果てようの原因であることだけは想像がついた。
「あ、家主の方ですか?それとも聖杯戦争の主催者の方でしょうか?勝手に上がり込んでしまって申し訳ありません。私は聖杯戦争を監督する裁定者の役割を与えられたサーヴァントです。真名は……名乗ってもいいのですが、ひとまずルーラーと呼んでいただければ」
「言っていることが理解できない。ここは連邦捜査部シャーレの施設で、許可のない立ち入りはできないことになっているわ。どこから侵入したの?」
「私はこちらの聖杯に召喚されたマスターのいないサーヴァントなのですけど……もしかして魔術のことを知らない一般の方ですか?それにしては肉体に強い神秘を宿しておられるような……うーん?」
「……噛み合わないわね」
話が噛み合わないのも当然のことで、二者の立ち位置は世界からして異なる。
キヴォトスに住まう、少女の形をした『忘れられた神々』——生徒。
キヴォトスではないどこかの世界で、人類史に足跡を刻んで『英霊の座』へと召し上げられ、願望器である聖杯の招きに応じて現世に招かれた英雄の映し身——サーヴァント。
聖杯とサーヴァントはかつてミレニアムの廃墟に現れた生徒たちと同じく、異なる世界からの来訪者。「学園都市キヴォトス」という
「このままでは埒が開きませんし、ひとまず話を戻しましょうか……私が召喚された時にはもう部屋はこんな感じだったのですけれど、この部屋にどなたかいらっしゃったのですか?」
「ここにはシャーレの先生がいたはず。この部屋は出入り口が一箇所しかない袋小路で、私がここに駆け込む時に誰ともすれ違わなかった。部屋の中からあの人が消えてあなたが現れた以上、あなたが関与しているのでしょう?」
「そう仰られましても、本当に私には何のことだか——あっ」
うんうんと唸っていたルーラーが手を打った。
その視線は手に持った聖杯に注がれている。
「もしかして、聖杯の基幹部分に組み込まれている方のことでしょうか?」
「…………は?」
「分離すると聖杯が機能しないくらいの基礎部分に組み込まれていたので、てっきり元々この仕様だったのかと……そうですか、物質の取り込みに巻き込まれてしまったのですね。お気の毒です」
ルーラーは、本来
「何を……言ってるの?」
「この聖杯、どうも不完全な状態で鍛造されたらしくて……機能を補おうと部屋の中の物を手当たり次第に取り込んだようなのです。先生という方はそれに巻き込まれて、聖杯のパーツの一部になってしまったんだと思います」
「————」
ヒナの顔から血の気が引いていく。馴染みのない単語の羅列ではあったが、何かとてつもなく悪いことが先生の身に起こっていることだけは理解できた。
何か手を打たなければ、と加熱する思考の中で、自然と視線が愛銃に落ち——
「…………それを、渡して」
「はい?」
「あなたの言ってることはひとつも理解できないけれど、そのオーパーツとあなたがここに現れて、先生がいなくなったのは確か。拘束して取り調べをさせてもらう」
「えっと、困ります。私は聖杯戦争の運営と監督をしないといけませんし、聖杯は聖杯戦争の勝者に与えられるモノ。ルーラーとして、聖杯戦争の完了までは私以外の手に委ねるわけにはいきません」
「従う気がないのなら力づくになる」
「でも、私が知っていることは先ほどの話で全て——きゃあっ!?」
終幕:デストロイヤーが火を噴いた。
吐き出された鋼の嵐はルーラーに届き、その体をサッカーボールのように吹き飛ばす。
霊体であるサーヴァントは、本来であれば通常兵器で傷付けることはできない。
それでもルーラーは何かしらの加工が施された礼装なのではないか、という警戒から防御のための魔力壁を張っていたのだが……キヴォトスの生徒特有の神秘の籠った弾丸は、即席の魔力壁を容易く食い破ってルーラーの体を打ち据える。
「いたっ、いたたたたたっ……!!やめてください!!」
とはいえ、サーヴァントが超常の存在であることに変わりはない。
弾幕に晒されながらも、ルーラーが片手に握った杖が少し動いた次の瞬間——空中に夥しい数の魔法陣が渦巻いた。
「!?何、これは……!!」
「
行使されたのは、ルーラーが使い慣れた攻撃魔術。
展開された魔法陣の全てから光の砲弾が炸裂し、ヒナを部屋の外まで吹き飛ばした。
「あいたたた……死ぬかと思いました。まさか一般人に正面から殺されかけるとは。恐ろしい場所に呼ばれてしまったものです」
ルーラーがよろよろと起き上がる。全身が
……ただ、命に届く傷はひとつもない。治癒魔術が得手であるルーラーにとっては、片手間に治してしまえる傷だった。受けた傷を癒やしながらも、聖杯から魔力を引き出して別の魔術を編み上げていく。
「ルーラーが聖杯の魔力を使うのはあまり良くないですけど、これも聖杯を守るためですから仕方ありませんよね……ごめんなさい、聖杯戦争が終われば、この方はきちんと直してからお返ししますから!」
そうして彼女は忽然と姿を消す。聖杯の魔力を使った、空間跳躍。尋常な手段では追跡できない、神秘の成し得る理不尽の行使。空崎ヒナが瓦礫から這い出す一瞬の間に、地下室はもぬけの殻になっていた。
「ッ……!!何処に、消えた……!!絶対に見つけ出してやる……!!」
……それでも、心折れることなく。
空崎ヒナは、黒い風のようにシャーレから飛び出した。
★
走る。走る。D.U.中を駆け回る。わずかな手掛かりも見落とさないように、目を見開いて、隅までくまなく見て回る。裏路地も虱潰しにして、時々
アレが消えて、シャーレを飛び出した後。要領を得ない絶叫で風紀委員の皆に事態を伝えてからどれくらい経っただろうか。いつの間にか日が暮れていた。
「ううぅ……ぁぁぁぁぁあああ…!!!」
喉の奥から嗚咽が溢れる。また、先生を守れなかった。
何も出来ない己を呪う。先生を失わせた彼女を憎む。ぐちゃぐちゃの感情を吐き出しながら、アスファルトを掻きむしり、殴りつけ、砕きながら血で汚す。
どれくらいそうして蹲っていただろうか。ぽつぽつと雨の雫が当たり始めたのを機に、のろのろと体を起こす。いつまでもこうしてはいられない。先生を探して、助け出さなくてはいけないのだから。
じくじくと痛む右手に視線が落ちる。八つ当たりの途中でそうなったのか、
「……そろそろ気は済んだかしら」
頭上から降ってきた声に、顔を上げる。いつの間にか、隣に女が佇んでいた。
知らない顔だ。喪服を纏った、憂いを帯びた未亡人といった風体の女性。憐憫と僅かな苛立ちの籠もった視線がヒナを見下ろしている。
「己の無力を嘆く時間なんて無意味極まるのだから、程々にしておきなさいな……まあ、今回は私を召喚する呼び水になったのだから例外なのだけれど」
ぎゃりぎゃりという異音。彼女が携えた
「……あなたは、だれ」
「————サーヴァント、バーサーカー。貴女の呪いと憎悪に応えて現界した、貴女の共犯者よ。私のマスター?」
彼女は霧雨の降りしきる中、昏い微笑を湛えてヒナに手を差し伸べていた。
キヴォトス人→サーヴァント、サーヴァント→キヴォトス人の攻撃は、だいたいキヴォトス人がキヴォトス人を攻撃したくらいのパワーバランスを想定しております。