Fate/Blue archive -キヴォトス聖杯戦争-   作:ゴッホカッター

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前の投稿から一ヶ月以上経過していてまことに申し訳ない
遅筆ですがこれからも書き上がり次第投稿していきますので何卒…(土下座)


ゲヘナ学園/地獄より来たる師

-ゲヘナ学園 食堂-

 

美食研究会、という部活がある。

名前に違わず食事に関する探究活動を行う集まりであり、SNSで発信される飲食店のレビューは信頼性が高い。

ここまでであればありふれた部活動であるが——それ以上に有名なのが、問題児としての顔。飲食店を爆破する、水族館を襲撃して展示されていた希少魚を強奪するなどの蛮行はキヴォトス中に轟いており、『温泉開発部』と並ぶゲヘナ産要注意テロリストとしてマークを受けている。

 

そんな美食研究会のルーチンワークに給食部の部長である愛清フウカの拉致がある。

強奪した食材の調理を任せたい時、単純に足として車が欲しい時など、彼女を攫って給食部の車に乗り込むのが活動の始まりだ。

 

この日も、ある海岸に大量に発生した魚を釣った端から調理して食べるという計画を立てた美食研究会の面々は、いつものようにフウカを攫おうと食堂を襲撃した。

 

ただ、常ならぬ出来事として。

 

一騎当千、邪智暴虐のテロリストである彼女たちが——給食部に返り討ちにされて捕縛されるという、前代未聞の出来事が起こっていた。

 

 

——どうしてこんなことになってしまったのだろう。

 

獅子堂イズミは、倒れ伏す美食研究会のメンバーを前に腰を抜かしてへたりこんでいた。

 

思えば、今日の給食部は何か変だった。

 

いつもこの時間は給食を待つ生徒たちでごった返しているはずの食堂に、殆ど人が残っていなかった。給食部の部員である愛清フウカと牛牧ジュリしかいないはずの食堂のカウンターの向こう側に、3人目の人影が立っていたのである。

 

ハルナとアカリは非常に興味をそそられた様子だったが、もたもたしていては魚がいなくなってしまう。3人目に対する検証は後日として、いつも通りにフウカを拉致しようとした、次の瞬間——

 

「雀六輪」

 

ひゅう、と一陣の風が吹いたかと思うと、イズミ以外の3人が糸の切れた人形のように倒れてしまった。

 

「マスターから話は聞いていまちたが、本当に人攫いが襲ってくるとは……この学校の治安はどうなっているんでちか?」

 

「ほ、本当に倒しちゃった……凄いです紅先生!」

 

フウカとジュリに尊敬の目で見つめられている3人目。頭に雀の被り物を乗せた、割烹着姿のとても小柄な女の子。腰に佩かれた長刀を見て、ハルナたちはあれに殴られて気を失ったのだと理解する。

 

「安心するでち。峰打ちで済ませまちた……強めに打ったので一晩は起きられないでちょうが」

 

「えーっと、誰……?給食部の新入生の子?」

 

「……期間限定の助っ人のようなものでち」

 

「なんで期間限定なのぉ……正直ずっといてほしい……!!」

 

何故か目を逸らす自称助っ人と、さめざめと涙を流すフウカ。よくよく見れば割烹着の下はゲヘナ学園の制服ではない。よその学校の生徒を連れてきたのだろうか。

 

「兎も角。今は明日の仕込みとご主人への料理教室の最中。乱暴なお客様にはお引取り願いまちゅ」

 

「うう……お魚食べ放題がぁ……」

 

メンバーのうち3人がのされてしまい、足も調達できていない。釣り放題食べ放題は諦めざるを得なかった。

 

「きちんと給食を食べに来る分には歓迎しまちゅが——次に襲ってきた時には、その舌を三枚に下ろすでち」

 

「えっ」

 

「あちきの剣は()()()()()()()()でち。おまえ様たちにとっては、何よりも避けたい罰ではないでちか?」

 

鯉口を切る音。鋭い視線——この子は本気で舌を斬る気だと、背筋に怖気が走り抜けた。

 

「失礼しましたーーー!!!」

 

イズミは脱兎の如くその場を離れた……「持って帰るでち」と投げつけられた、簀巻きにされた3人を引き摺りながら。

 

 

「さて、ご主人の料理についてでちゅが——一朝一夕での改善は非常に難しいと言わざるを得まちぇん」

 

招かれざる客を返したしばらく後。仕込みと片付けを終えたジュリは、紅先生こと紅閻魔——ジュリが呼び出した『セイバー』のサーヴァントと、レシピノートを挟んで向き合っていた。

 

「ご主人のレシピに問題はありまちぇん。調理の手際も及第点。マスターが昔『先生』と行った検証の結果と合わせて考えても、それらを超えたところで何かが起きているのでち」

 

豚汁を使った検証。ジュリが調理に携わる度合いを変えて、それぞれの味を確認した実験の記録。

……『先生』がほとんど仕上げたはずの豚汁に、おたまを差し入れただけで味がおかしくなったと書いてあったのには、流石の紅閻魔も己の眼を疑ったものである。

 

「実験と検証を重ねて、普通の味にできる条件を探っていくしかないと思うでち。即効性のある案が出せなくて申し訳ありまちぇんが——」

 

「紅先生。聖杯戦争の聖杯は、何でも願いが叶うんですよね」

 

俯いていたジュリが顔を上げる。思い詰めた視線が、紅閻魔を真っ直ぐに射抜いていた。

 

「変な力が働いてるせいで私の料理がああなってしまうのなら、もしかしたら——」

 

願望器を使っての料理下手の改善。

普段の紅閻魔であれば、他力本願は良くないと諌めただろう。

 

「……そうでちね。アレはあちきには馴染みのないものでちが、聞けば何でも願いを叶えるとか。呪いや祟りの類であれば解くこともできるはずでち」

 

だが今回ばかりは、紅閻魔はそれを否定できなかった。

自分は少なくとも、物理法則に従った料理ができた。食材を焼けば火が通ったし、塩を入れれば塩辛くなった。味見ができなくとも、真っ当なレシピに従って作りさえすればそうそうおかしな料理にはならなかったのだ。

ジュリ(ご主人)はそうではない。他の人間が料理を作れる手順をなぞっているのに、不思議な力のせいで再現することができない。

 

紅閻魔は召喚されてからまだそれほど経っていない。だが、ぎっしりと書き込まれたレシピ帳を見れば、己と契約したマスターが正直者で心根が優しく、料理に真摯に向き合おうとしているということは容易に理解できていた。

異常法則の解明であれ、聖杯の獲得であれ——この理不尽を自分の手で取り除かねばならないと、紅閻魔は静かに誓った。

 

 

-便利屋68 事務所-

 

ハルカの爆弾が大爆発。無傷で済ませなければならなかったターゲットは大破。

電話越しに響く依頼主の怒鳴り声、ポストに投げ込まれていた「家賃滞納3ヶ月目」の通知。

重い空気の中、便利屋の社長陸八魔アルは事務所で頭を抱えていた。

 

依頼の達成による名声、報酬、そして何より愛する事務所の家賃……

それを今の便利屋で得ることは殆ど不可能と言ってよかった。

 

「どうしたらいいのよ……」

 

「まあまあ。いつものことじゃない?」

 

「いつものことになりつつあるのが問題なの!!任務成功率がダダ下がりじゃない!このままじゃ信頼にも関わるわ!!」

 

「もう手遅れな気がしないでもないけど……」

 

「そんな後ろ向きな考え方はダメよ!事業の衰退はそういうところから始まいったあ!!?」

 

ムツキ室長とカヨコ課長に檄を飛ばそうと、アルは机を叩いて立ち上がり——妙な角度で掌に食い込んだ机の角に悶絶した。

 

「〜〜〜〜〜〜ッ!!??」

 

「アアアアル様!!?大丈夫ですか!?」

 

「だい……じょうぶ……じゃないかも……!!」

 

わたわたと手当を試みるハルカを制止しながら、アルは痛む手に息を吹きかけたりさすったりを試みる。が、効果はなかった。鈍痛に加えてピリピリとした痺れと、火で炙ったような灼熱感まで追加される始末である。

 

「なんだかどんどん熱くなってきているのだけど……!?私の右手どうしちゃったの!?怖くて見れない!!」

 

「ああもう社長、薬塗ってあげるから手を——何これ」

 

「あははは!アルちゃんのアザ光ってる!おもしろーい!」

 

「アザが光ってるって何!?その冗談は面白くないわよムツキ室長!!?」

 

カヨコとムツキの珍妙な反応に更に己の手を見ることへの恐怖心が高まるアル。その間にもどんどん手は熱くなっていく。焼けた火箸を押し当てる拷問というのはこんな感じなのかしら、とアルが思い始めた矢先。

 

爆発音と共に、事務所の天井が崩れ落ちた。

 

「な、ななななな何ーーーーー!!!??」

 

「アル様、お下がりください!」

 

「ロケット砲でも誤爆されたのかな……」

 

「カチコミじゃなーい?ほらこの前やらかしちゃった依頼人だいぶ怒ってたし」

 

動揺、嘆息、享楽。それぞれらしいリアクションを取りながらも、いつものフォーメーションで飛来物に対して戦闘体制に移行する便利屋68。

 

「ゴホッゴホッ、ぶぇっくしょい!!なんじゃこの召喚手荒すぎじゃろ!!」

 

「……人?」

 

もうもうと立ち込める粉塵の向こうから咳き込みと盛大なくしゃみが聞こえる。バラバラと破片が降り注ぐ中、天井をぶち抜いて降ってきた人影は足を組んで来客用ソファーに腰掛けていた。

 

粉塵が薄くなり現れたのは——濡羽色の黒髪を持つ、少女の形をした何かの姿。ゆっくりと開かれた炎のような瞳が、真っ直ぐにアルを射抜く。

 

「令呪を持っているのは……そなたか。問おう、そなたがわしの——」

 

それに対して、アルは——

 

「へ、へ」

 

「うん?」

 

「変態不審者ーーーーー!!??」

 

「えっ」

 

着衣がマントと帽子のみで他が素っ裸の不審者に対して、絹を裂くような悲鳴を上げた。

謎の人物(変態不審者)は辺りを見回した後自身の体を見下ろし、該当する人物が己であることを確認して——速やかな弁解に移行した。

 

「あー、これは召喚の不具合のせいでじゃな……まあマントがある分(帝都で)喚ばれた時よりはマシ————」

 

「死んでください死んでくださいアル様に変なものを見せる変態は死んでッ!!」

 

「へぶっ!?」

 

アルが悲鳴を上げたとなれば、当然の如くハルカに着火する。ショットガンの保身なき零距離射撃により、怪人裸マントはもんどりうってひっくり返った。

 

「うわァァァァァァァ!!!!」

 

「なんじゃあああああ!!??」

 

かくして。

聖杯戦争最後の主従の対面は、なんともぐだぐだとした始まりとなったのだった。

 

 

「————まあ裸マントの不審者が天井ぶち抜きながら降ってきたらつい撃っちゃっても仕方ないよネ。わしが同じ立場でも撃ってるし。なんじゃこれ苦すっぱ」

 

不幸なすれ違いによるぐだぐだとしたすったもんだが落ち着いた後。

ゲヘナ学園の一般的な制服(カヨコのおさがり)をマントの下に着て全裸の不審者でなくなった不審者——アーチャーのサーヴァントは、アルの淹れたコーヒーを啜っていた。

 

「それで?あなたは昔の偉い人のお化けで、聖杯戦争とかいう謎の儀式で呼ばれた……ってことでいいんだっけ?」

 

「それでだいたい合っとる。でも普通聖杯戦争っていうのは魔術師とかいうろくでなし共が参加する儀式で、マスターは狙ってわしらサーヴァントを呼ぶはずなんじゃよ。何もしとらんってどういうことなの……」

 

カヨコの問いに首を捻りながら答えるアーチャー。

正式な儀式を介さない、偶然によるサーヴァント召喚。アーチャーは知る由もないことだが、異なる世界(冬木の四次五次)で事例がないわけではない。それらの事例でもそれらしい陣や詠唱程度は用意されていたのだが。

 

「私たちも社長とずっと一緒にいたけど、変な儀式とかはしてなかったと思う……急に手にピカピカ光る変なアザができたりしてたけど」

 

「家賃の督促状が来てもだもだうねうねしてたじゃん。多分アレだよアレ」

 

「あーそれじゃなそれ。令呪。もだもだうねうねで呼ばれてたら嫌すぎるんじゃが……まあ呼んだ呼ばないはこの際どうでもよい。重要なのは今そなたがわしと契約しており、わしのマスターであるということじゃ」

 

「私がマスターであなたがサーヴァント……じゃあ、あなたは私の従者ってことになるのかしら?」

 

「いや?わしが主でそなたが家臣じゃ。異論はあるか?」

 

わずかながら和んでいた雰囲気が瞬時に張り詰める。

ジャコン、という音が静まり返った部屋に響く。ハルカが愛銃のリロードを行った音だった。銃口は真っ直ぐにアーチャーに向けられており、トリガーに指が掛かっている。

 

「……役割はサーヴァントなのに、あなたの方が立場が上なんだ?ふぅん」

 

「そりゃわし国持ち大名じゃし……はは、マスター。おぬし随分と部下に慕われておるようじゃな?」

 

毒気の含まれたムツキの言葉を、アーチャーは涼やかに流す。

剣呑な雰囲気を出している3人は、アーチャーを侮っているわけではない。

これはある種の忠義の現れ。慕っている社長を強引に下に置く気であれば、相手が何であれ暴力による制圧も辞さないという構えだ。

 

「部下はこんな調子じゃが、そなたはどうする?わしは聖杯に大して興味はない。わしに仕え働き、戦争を勝ち抜いた暁には聖杯は丸ごとそなたにくれてやってもよいぞ——『どんな願いも叶う』などという触れ込みじゃ。欲しかろう?」

 

ごくり、とアルは唾を飲み込む。

きっとアーチャーは嘘を言っていない。彼女の下で真摯に働いて結果を出せば、本当に聖杯を下賜してくれるのだろう。

何でも願いが叶う——例えば、使いきれないくらいのお金。事務所の家賃で頭を抱えることも、社員たちに苦労をかけることもない。仕事も受けたくないものを受けずに済んで、理想のアウトローに一歩近づける。

千載一遇の機会だ。利を考えれば受けるべきだ、と思いながら顔を上げて——社員たちの顔が目に入った。

 

「……願いを叶えてもらう気はないわ。なんでも願いの叶う宝物なんて眉唾だし、私の夢はそんなものに頼って叶えてもらうものじゃないもの」

 

「うむ。そこは正直わしもそう思う……で?聖杯戦争に参加せぬのであればどうする?」

 

アルの答えを聞いて、凄絶に笑うアーチャー。

聖杯戦争に参戦しないのであれば、アーチャーは不要となる。

内心で慌てふためきながらも、アルは己の出した答えを続ける。

 

「聖杯戦争に参加しないなんて言ったかしら?」

 

「何?」

 

「あなたを我が社にスカウトするわ、アーチャー。経営顧問はもういるから、そうね……技術顧問はどうかしら」

 

「……どういうことじゃ?」

 

「その威厳ある佇まい、不敵な笑顔……私にはわかる。アーチャー、あなた超一流のアウトローでしょう!あなたと一緒に聖杯戦争を戦いながら、そのノウハウを取り入れさせてほしいの!」

 

突拍子もない斜め上の返答に、アーチャーは暫し目を丸くしてアルのことを眺めていたが——やがて肩を震わせて呵呵大笑を響かせた。

 

「どっちかといえばローは作る側だったんじゃが……まあ生臭坊主でキャンプファイヤーしたり将軍追放したりしたからのう!アウトローには違いないわ!うはは!」

 

アーチャーの脳裏に浮かぶのは、己を呼んだ声。切羽詰まった、今契約しているマスターのものではない——『助けてやってほしい』という懇願。

 

応える義理など全くなかった。が、英霊の身で他にやることがあるわけでもなし。物見遊山気分で召喚に応じてみれば、むせ返るような硝煙の臭いに反して血の臭いの薄い奇天烈な世界である。

契約したマスターも中々に愉快だ。何やら気質と目標が噛み合っていないようだが、この手の人間は嫌いではない。前に呼ばれた時よりも楽しい戦になりそうだ。

 

「わしは新しきもの、面白きものは好きじゃ。そしてこの街は目新しく、そなたは中々に面白い——良かろう!この聖杯戦争が終わるまで、この第六天魔王織田信長が、そなたの技術顧問となってやろうではないか!うはははははは!」

 

かくして、便利屋68のアーチャー——織田信長は、そのまま技術顧問へと就任した。

彼女の笑い声を聞いてやってきた事務所の家主に天井の穴を見られ、大噴火と共に叩き出される5分前の出来事である。




給食部のセイバー陣営……呼ばれた直後に厨房のヘルプに入り、普段の労働環境を憐んで涙をこぼした。
便利屋68のアーチャー陣営……配布☆1織田信長。クラス:アタッカー ポジション:MIDDLE 攻撃タイプ:爆発 防御タイプ:軽装甲 「星が3つくらい取られてるんじゃが???」
ぐだぐだマシマシ態度アマメ。Redlineの方が怖すぎる。

ゲヘナなのに和鯖になってしまった。獄卒と第六天魔王で地獄っぽくはあるからまあええやろの精神。
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