Fate/Blue archive -キヴォトス聖杯戦争-   作:ゴッホカッター

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書く→消す→書く→書いた部分を後回しにした方がいいことに気づく→書く
辛いですね…苦しいですね…でも創作するってそういうことなんですよね…


D.U.シラトリ地区/開戦の狼煙

-第3業務地区 廃ビル-

 

D.U.シラトリ区の中心近く、近代的な業務地区のひとつ。季節柄既に太陽は沈み、家路を急いだり街へ繰り出したりする生徒が増え始める時間。

 

そんな地区の外れに、打ち捨てられた廃ビルがあった。あちこちのビルに灯りが灯り始める中、真っ暗なままのそこは、既にルーラーによって彼女の為の神殿として整えられていた。

 

彼女が今行っているのは転移魔術の為の儀式。予告通りにD.U.に着いていないサーヴァントとマスターの反応を捉え、ばらけるように適当に転移させようとしていたところだった。

 

「……む?」

 

そんな作業の中、杖を輝かせていたルーラーはふと首を傾げる。

 

「妙ですね。サーヴァントの数が多い」

 

この聖杯の呼び出したサーヴァントの数はルーラーである自分を含めて14騎のはずだが、既にD.U.に到着しているサーヴァントと自治区外のサーヴァントを合わせると16騎の反応がある。

裁定者としては看過できない事態であった。

 

「不正な手段で参加したサーヴァントがいるということでしょうか……?とりあえず、各々のサーヴァントを把握しなければ」

 

調査をすることに決めたルーラーは、ごそごそと懐を探りだす。取り出された竜の牙は窓から放り出され、骨で出来た竜となってシラトリ区の各地へと飛び去った。

 

「……厳粛なる裁定を。円滑な運営を。聖杯に相応しい勇者を選ぶ儀式に、瑕疵があってはいけませんから」

 

ある種の欺瞞に満ちた呟きだった。本来起こり得ない世界で、破損をヒトで補った聖杯が本来の仕様ではあり得ない14組の主従を選んで行う聖杯戦争。瑕疵の有無を問うのであれば、始まりからして破綻している。

ルーラーの膝の上で、抱え込まれた聖杯がチカリと瞬いた。

 

————キヴォトスでの聖杯戦争が、幕を開けようとしていた。

 

 

 

 

 

 

-D.U.シラトリ区 トライスクエア-

 

市民たちの憩いの場として知られるその広場は、変わり果てた姿になっていた。

あちこちで燃え上がる炎。巨大なものが通過したような破壊痕。日常茶飯事の生徒同士の銃撃戦によるものとは違う、まるで地震に見舞われたかのような惨事。

消火活動を行う市民や生徒の姿は見えない。だが、誰がそれを責めることが出来ようか。トライスクエアをこの姿にした元凶は、今もなお広場に居座っているのだから。

 

芝生を焼き、空気を熱し、路面のアスファルトを溶かしながら鎮座している——炎の大蛇。それは噴水を囲むようにとぐろを巻き、鎌首をもたげて周囲を睥睨していた。

 

「たむろしていた者たちは追い散らし、粗方のものは焼きました。狼煙には十分かと思いますが、如何でしょうか。ますたぁ?」

 

大蛇の口から、その禍々しい姿に似合わぬ鈴を転がすような可愛らしい声が響く。

何を隠そう、彼女こそは聖杯戦争に招かれたサーヴァントの一人——バーサーカー。独り言のように呟かれる言葉は、彼女のマスターへの念話が漏れ出たものだ。

 

「……ふむ?5分後には隣のブロックに移動して再び同じことを……ええ、ええ!!その意気です、ますたぁ!!あなたの恋を阻むもの全て、この炎で焼き尽くして差し上げます!!」

 

そんな彼女が受けた指示は、更なる破壊。嬉々として受諾したバーサーカーは、トライスクエアに隣接する区画——第3業務地区へとその眼を向けた。

彼女の昂る感情に呼応して、その身を構成する炎はより激しく燃え盛る。広場のあちこちに撒き散らされた残り火も同様に火勢を増し、広場の外への延焼を始めていた。

このまま放っておけばD.U.のみならずキヴォトス全土を火の海にしかねないと思わせる威容。

 

「————そ、そこまでです!止まりなさい!ヴァルキューレ生活安全局です!」

 

「マスター。声が震えておられますが」

 

だが、今キヴォトスで行われているのは、英雄の跋扈する聖杯戦争。炎の厄災とでも呼ぶべきその暴虐には、当然待ったがかけられる。

 

燃え上がる炎を掻き消しながら現れたのは、1組のマスターとサーヴァント。ヴァルキューレ生活安全局の生徒——中務キリノと、彼女の契約サーヴァントであるランサー。

彼女たちは他のヴァルキューレ生たちが避難誘導を行っている中で、サーヴァントの仕業であると察知したランサーの進言により騒動の元凶を討つためにここに来たのだ——が、思った以上の化け物にキリノは若干腰が引けている。

 

「こ、怖がってなどいられません!我々があの化け物を止めなければ、市民の皆さんが危ないんですから!……本官はランサーさんを援護することしかできませんが……」

 

「お気になさらず。前で戦うのは私の方が向いておりますので。

……躊躇いなく戦いに赴くのも勇士ですが、恐怖を覚えながらも誰かのために立ち上がるのもまた勇士の姿。良いマスターを得られて私は幸運です」

 

キリノを見て頬を緩め、ランサーが前に進み出る。その手にはいつの間にか飾り気のない光の槍が握られており、腰から伸びた光の翼が彼女の体を宙に浮かせていた。

 

「主の意に従い、無辜の民を守るためにあなたを討ちましょう——お覚悟を。悪竜」

 

「まあ、ひどい呼び方。この姿ではそう呼ばれるのも致し方なくはありますが、傷つきますね」

 

ランサーが宙を駆ける。バーサーカーが体の炎を滾らせる。

 

——竜殺しへの挑戦が始まった。

 

 

 

 

 

-D.U.シラトリ区 シラトリ近隣公園-

 

時刻は午後8時。遊び場にしている子供達や、運動に使っている大人もとっくに帰宅し、人っ子一人いなくなっているはずの公園は、異様な様相を呈していた。

 

ぞろぞろと列を成して公園から出てくる全身に包帯を巻いたミイラ。その合間を縫って飛び回る金色のスカラベと共に、彼らはのそのそとD.U.各地へ向かって歩き出していく。

 

「————出ませい、出ませい!おいでませい!」

 

季節外れのハロウィンじみた光景を生み出しているのは、聖杯に招かれたサーヴァント。頭頂部から突き出たジャッカルの長耳が特徴的な褐色肌の女魔術師が杖を振るっていた。

 

「ふう、これだけ呼べば各区の偵察は十分行えるでしょう。戦をするのなら情報収集は念入りに行っておくべきですからね」

 

「お疲れ様、キャスター」

 

そう言って魔術師——アビドス高校で召喚されたキャスターのサーヴァントに飲み物を手渡したのは、彼女のマスターである砂狼シロコ。

 

「良い心がけですよ契約者……んぐ、甘酸っぱくて美味です。果実水の仲間でしょうか?」

 

「特製のエナジードリンク。それでこれからどうするの?他の陣営を襲う?」

 

輝く目でキャスターを見つめるシロコ。

聖杯戦争。戦って勝ち残った最後の一組が万能の願望器を得られる争い。

砂に埋もれてしまったアビドスの環境を改善できるかもしれない、またとないチャンスであり——入念な準備と大胆な行動で成果を勝ち取るという点では、彼女の好む銀行強盗と相通じるところのあるイベントであった。

 

「契約者。ここに来るまでにも話しましたが、私は積極的な攻勢に向いたサーヴァントではありません」

 

「ん……」

 

シロコの耳がしょんぼりと萎れる。若干の罪悪感を覚えながらも、キャスターは言葉を続けた。

 

「この公園はそれなりの霊地。今は死霊魔術の行使のための簡単な陣地を整えてあるだけですが、拠点として整備して攻め込んでくるのを待——むっ」

 

言葉を途中で打ち切り、頭上の耳をピンと立てるキャスター。

D.U.に散ったミイラ達。そのうち隣接区に放たれた個体の反応が次々と消え始めたのだ。

ミイラの消滅は止まらず、消滅位置はどんどん公園に近づいている——それはつまり、ミイラを辿ってこちらに敵が近づきつつあるということ。

 

「っ、散らしていたはずなのに動きが早い……!契約者!備えを!」

 

「ん」

 

シロコが頷いて戦闘態勢に入り、キャスターはその間にも簡易な防御結界を準備する。

ミイラの消滅は止まっていたが、代わって近づいてくるのはサーヴァントの反応。地形に沿わず、高速で真っ直ぐこちらに近づいてくるそれは、恐らく空を飛んでいる。

 

「……見えた。多分あれ」

 

シロコが指さしたのは、空に浮かぶ星に混ざって見える異質な白い点。その点はぐんぐん大きくなり、やがて翼を持つ鋭角なシルエットを結び——

キャスターの防御結界を砕き、公園のど真ん中に着弾した。

 

「————よし、着いたぞマスター。ミイラの大元はここだ」

 

「……………………」

 

天から舞い降りたのは純白の飛竜。その背から小柄な影がひらりと飛び降りる。

ごつい戦棍を携えた、銀髪碧眼の美しい若武者。猫のような純白の尻尾を揺らしながら、真っ直ぐにこちらを見据えている。

その小脇に抱えられた子供——推定彼女のマスター——はぐったりとしており、どうも意識がないようだった。

 

「……ライダーのサーヴァント」

 

簡易とはいえこちらの張った結界をぶち破って傷一つない。ライダークラスに標準的に備わっている魔除けのアミュレット程度の対魔力を超えた能力を持っていることは明らかだった。

 

「ああ、うん。お前たちが街中に放ったミイラをオレのマスターが怖がっていてな。やめてもらおうと思って来たんだ」

 

「……そのマスターは気絶しているみたいだけど、いいの?」

 

「む?本当だ……マスター、起きなさい。マスター!」

 

持ち上げた子供の頬をぺちぺちと優しく叩くライダー。苦しげにむにゃむにゃと呻いていた子供はやがてゆっくりと目を開き——

 

「————ライダー!!」

 

怒声と共にライダーに殴りかかった。グーで。

 

「こらマスター。いきなり人を叩いたりしてはダメだぞ。目的地に着いたので起こしただけだ」

 

「飛ぶスピードでおいらを気絶させておいて何を言うんだーーーっ!!」

 

マスター——レッドウィンター連邦学院の書記長、連河チェリノの繰り出すグルグルパンチを受けながら、ライダーは彼女を子猫でも吊るすように襟首を摘み上げて持ち上げた。

 

「……小脇に抱えて飛んだのはまずかったか?」

 

「当たり前だ!口から晩御飯が飛び出すかと思ったぞ!」

 

「す、すまなかった。次からは気をつけよう。元気をつけるために明日の朝に熊を料理してあげるから許しておくれ、小さなチェリノ」

 

チェリノの剣幕に僅かにたじろぐライダー。怒りはもっともと言えばそうなのだが、パートナーがあんな感じでは大変だろうな、とシロコは思う……チェリノほどではないにせよ、シロコもキャスターにとってはそこそこ大変なマスターだということには思い至っていない。

 

「うう……こんな怖い思いをしたのも全部お前たちのミイラのせいだ!」

 

最終的に、チェリノの怒りの矛先はアビドスのキャスター陣営に向いた。

 

「粛清だ!ヤツらを粛清しろ、ライダー!」

 

「うーん、ミイラの放逐を止めてもらうだけのつもりだったが……まあ、いずれは戦わねばならない定めだし、間違った命令ではないな!戦ろう!」

 

「な……!?」

 

「ん、望むところ」

 

あっけらかんと言い放ってメイスの素振りを始めるライダーと、銃の安全装置を解除するシロコ。

 

「うう、どうしてこんなことに……!」

 

誰かのせいにしたいが、ミイラを放った自分の顔しか思い浮かばないキャスター。

 

他の戦場と比較すればカジュアルかつゆるい雰囲気で、しかし確かに弾丸と神秘の飛び交う戦端は開かれた。

 

 

 

 

-D.U.シラトリ区 コーギータウン-

 

 

「参ったねえ。後少しで入れたのに問答無用で飛ばされるとは……」

 

「ミカ様たちとはぐれちゃいましたね」

 

トリニティのライダー陣営は、シラトリ区の中心にほど近い電気商店街に飛ばされていた。

本来であれば指定の刻限までにシラトリ区内に到着できる計算であり、セイバー陣営との分断は避けられるはずだったのだが——想定外のトラブル(線路の爆破)による遅延により、間に合わなかった格好である。

 

「うーん、現代の街は凄いなあ。下手するとあたしが迷子になりそう」

 

「あはは……このあたりは結構詳しいので、案内は任せてください」

 

ビルを見上げて感嘆の声を上げるライダーに少し胸を張るヒフミ。

コーギータウンは『廃盤になっているものでなければなんでも手に入る』と噂の電気街。シャーレに通うついでに立ち寄れるのもあり、ブラックマーケットに流れるほどでもないレアグッズを手に入れるために足を運ぶことが多かった。

 

「こんなに子供が集まってるの、生きてる時も見たことないかも」

 

「キヴォトスは学園都市ですから。それでも夜なので大人の方が多いと思いますけど」

 

「学園都市か……あたしはあんまり知らないんだよね、学校のこと。通ったことないし」

 

会話しながら歩く2人を気に留めるものはいない。

ライダーは召喚された時のマント姿ではなく、シンプルなスーツに野暮めの黒縁眼鏡という格好である。なんとなくこれをかけないといけない気がする、というのは本人の弁だ。

ヒフミはといえば、普段は二つに分けて括っている髪を下ろし、白のパンツスーツに濃い黒のサングラスというどこぞの組織の構成員風といった風情のコーディネート。彼女がトリニティ総合学園の関係者であると言われても誰も信じないだろう。

……最もヒフミのスーツは裏地にペロロの顔がプリントされたモモフレンズと洋服店のコラボグッズであるため、そういう意味ではいつも通りと言えるのかもしれない。

 

「ライ……勝津女さんの時代は学校がなかったんですか?」

 

「うん。教育っていうのは親が子供にしてあげるものだったからね。ローマの方では似たようなものもあったみたいだけど、それも一部の上流階級だけだし」

 

ライダーの脳裏に過ぎるのは、2人の娘のこと。まだ女王ではなかった頃、部族を継げるようにと夫と共に色々なことを教えた思い出。

……結局、教えたことが役立つことはなかったのだけれど。

 

「だからどの子供も同じ内容の教育を受けられる、っていうのは新鮮かな……あ、セイバーのマスターから連絡はあった?」

 

「あ、はい。モモトークが来てました。ミカ様とセイバーさんはプラドアベニューに飛ばされてたみたいですね。ここからはちょっと遠いです」

 

ちょうど通知が飛んだスマホに目を落とす。美術館が立ち並ぶプラドアベニューはコーギータウンからは2区画ほど離れており、合流には多少時間を食いそうだった。

 

「んー、じゃあこっちに来てもらうしかないね。連絡してあげてくれる?」

 

「えっ?」

 

戦車がある分機動力は当然こちらが上だ。こちらがプラドアベニューに向かうべきではないだろうか、とヒフミは口にしようとして。

 

「あたし達は出向けない。今から戦わないといけないからね」

 

————違和感。

弾かれたようにヒフミが周りを見回す。雑踏の喧騒がいつの間にか消えている。ライダーとヒフミが足を止めたのと同時に、周りの人間が立ち止まっていた。

 

「良くないモノに取り憑かれてるね、この子達。スキルか宝具か知らないけど、間違いなくどこかのサーヴァントの仕業だ」

 

雑踏に見えていた人々が動き出す。2人を逃すまいとするように、ぐるりと囲んで人垣を作った。

 

「…………寒い」

 

「おなかが、すいた——」

 

「ひっ……!?」

 

スケバン、ヘルメット団、アリウスの生徒——心ここに在らずといった風な虚ろな目をした不良生徒たちは、うわ言をブツブツと呟いている。

異様な雰囲気に押されて後ずさったヒフミに、跳ね上がるように銃口が向けられた。

 

「大丈夫、マスターのことは必ずあたしが守るから————約束されざる守護の車輪(チャリオット・オブ・ブディカ)!!」

 

対応したのはライダーの宝具の真名解放。出現した勢いで周りの不良生徒を弾き飛ばしながら、その守護の力を存分に発揮し始める。

 

「囲まれてるから飛んで逃げる!追ってくるだろうから戦いながらセイバーたちのいる方に向かうよ!」

 

解けた赤い髪が靡く。スーツから戦装束にに戻ったライダーが叫んでいた。

キヴォトスの人間は頑丈だと聞いている。突破力に重きを置かないライダーの戦車に跳ね飛ばされた程度であれば病院にすら行かずに済むだろうが、それはそれとして巻き込まれただけの子供になるべく怪我をさせたくない、という彼女の甘さだった。

 

「は、はい!」

 

「しっかり捕まって————!」

 

戦車が上昇する。ヒフミは振り落とされないように必死にしがみつきながら戦車の外に目を向けて——ビルの屋上に立つ影が目に入った。

 

「……London bridge is falling down.Falling down, falling down————」

 

何事かを口ずさむ見覚えのある生徒。蘇るのは、エデン条約に関わる一連の事件の記憶。

アズサを追った先で会敵したアリウスの生徒……アズサが家族だという部隊の1人。あの時とはまるで違う、花が咲いたような無邪気な笑顔で——あの時と同じミサイルランチャーをこちらに向けていた。

 

「アリウススクワッドの……!?」

 

「————My fair lady♪」

 

直後、ライダーの駆る戦車の頭上にミサイルの豪雨が降り注ぎ——あたり一帯は紅蓮の炎に呑み込まれた。

 

 

爆炎と粉塵を見下ろして、その下手人——戒野ミサキは愉快そうにくすくすと笑っていた。

普段の寡黙で感情表現に乏しい彼女とは程遠い姿であり、彼女の家族や先生が見れば異常事態が起こっているのだと察するだろう。

笑うという行動にそぐわない、不吉で不気味な雰囲気。路上に打ち捨てられたクマのぬいぐるみのようなそれは、外的要因によって齎された変化だった。

 

「うまくいったね」

 

「ね」

 

何もない虚空から響いた声に答えるミサキ。屋上の暗がりから滲み出るようにして、ボロ布を纏った銀髪の子供が現れる。

彼女はミサキのサーヴァント——アリウスのアサシン。

不良生徒たちに取り憑いた『良くないモノ』の正体であり、魔力経路を通じてミサキの精神を汚染している元凶でもある、怨霊の集合体。

 

「でも、思ったよりダメージ入ってないみたいだね」

 

「大丈夫だよ。『霧』の準備はできそうだもん」

 

ため息をつくミサキとニコニコと笑うアサシン。

ライダーとそのマスターが傷を負った様子も、戦車が破損した様子もない。

だがミサイルの爆撃は離陸しようとしていた戦車を叩き落とし、衝撃は一時的とはいえ制御を麻痺させた。そこへパニックホラーのゾンビのように不良生徒たちが群がり、取り付き、攻撃を始める。

そして、彼女たちの銃口から立ち上る硝煙が、ミサキのミサイルが残した炎が、巻き上げられた粉塵が——不自然な灰色の霧になって、コーギータウンの路地に立ちこめていく。

 

アサシンの宝具『暗黒霧都(ザ・ミスト)』。ロンドンスモッグの再現である、硫酸の霧の結界。

不良生徒たちに憑いたアサシンの一部はしっくりと馴染んでしまい、今やアサシンの一部と言える存在と化した彼女たちは宝具の片鱗すらも行使し始めていた。

 

「あのサーヴァント、わたしたちのおかあさんになってくれるかな?」

 

「どうだろうね?楽しみだね……ほら、行こう?」

 

「うん」

 

アサシンが無垢に笑うミサキの手を取る。

何も知らないものが見たのであれば、姉ぶろうとする妹とそれに付き合う姉のような微笑ましいものに感じたかもしれないそれは……子供を家族の元から連れ去る人外の導きに他ならない。

 

この学園都市で打ち捨てられた子供たちと、彼女らに帰る場所(母の胎内)を指し示した反英雄。

————聖杯戦争の枠組みを越えた厄災が、キヴォトスに放たれようとしていた。

 

 




紹介含めたら多分全陣営の顔出しが済んだ。

ルーラー…総勢15騎のキャスター3騎はミスではありません。
ヴァルキューレのランサー陣営…市民のために戦うマスターは勇士。ワルキューレポイントが上昇しました。
■■■■のバーサーカー陣営…ブレーキの壊れた暴走機関車。冬木第四次のキャスター陣営と同系統のヤバさを持っている。
アビドスのキャスター陣営…キャスターその3。あーっいけません契約者!銀行を襲ってはいけません!
レッドウィンターのライダー陣営…子育て(?)再び。小さなヤースカヤと比べてどっちが手を焼くかは未知。
トリニティのライダー陣営…ヒフミ(スーツ)。着ているスーツはいわゆる「ぱっと見普通に見えるけどわかる人にはわかるコラボグッズ」枠。胸元に黄色やピンクの刺繍がある。ライダーの服装のイメージはフーカ先生(他所行きの姿)。
アリウスのアサシン陣営…本ssではキヴォトス人も我々と同じ過程で生まれてくるものとして扱います。
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