風邪を引いてしまった晴の妹を心配してやってきた大空は、彼女の元気を願う。
主♀×京子(主→寄り?)
時間軸:10年前、並盛町の梅雨の日
……こちらは私情ですが、リボーンのロールオンフレグランス3種を使ってみて個人的に感じた香り方なんですけど
雲雀さんモデル→存在感をめちゃくちゃ主張してくる
骸モデル→最初はめっちゃ存在感あるけど割と早く薄れてたまに主張してくる
リボーンモデル→存在感あまりない?と思ったら体温が上がったり動いたりした時、不意に存在感を主張してくる
って感じでお前らな……となってる作者です。
時期は梅雨。雨がよく降り、晴れ間は時々、晴れたかと思えば雨が降り、濡れ鼠になってしまうことも度々ある頃。
雨が降る中、ボンゴレ10代目、沢田奈月は、買い物袋を片手に提げて、ある場所へと向かっていた。
「こんにちはー。京ちゃんの様子を見にきましたー。」
それは、彼女のファミリーの1人であり、晴の守護者と言う立場を持つ笹川了平の家。
しかし、彼女は了平に会いに来たのではなく、その妹であり同級生でもある笹川京子に会いに来たのだ。
「うむ!よく来てくれた、奈月!すまんな。急に呼び出してしまって。オレでは看病が難しくてな……」
チャイムを鳴らして声をかければ、玄関の扉が開き、中からマスクを着けた了平が困ったような表情をして顔を出した。
了平に上がってくれと言われ、奈月が笹川家に足を踏み入れてみると、室内がかなりごちゃごちゃになっていた。
「……なんですかこれ?」
「……すまん。普段は親と京子が家事をしていてな………。だが、親は仕事に行っており、京子は風邪を引いている状態のため、オレがなんとかせねばと………」
「そしたらごちゃごちゃになってしまったと?」
「…………うむ。」
「………今度、先輩のような脳きn……コホンッ……家事に慣れていない人でも家事マスターに近づける簡単なマニュアルを作ってお渡ししますね。」
「すまん……助かる……。」
「いえいえ。もしも一人暮らしをすることになったり、実家から離れたり、御結婚なさった時に奥さんの手助けしたい時などにも使える技術ですから、覚えていて損はないので、そのための手助けですからお気にならず。(あと、余計な仕事を増やすんじゃねーってのもあるけど。)」
『……何やら口が悪くなってるような気がするのですがナツキ?』
《Dさんうるさい。》
ちらっとヤジを飛ばしてきた自身の師に、念話の要領で言い返しながら、奈月はあたりに散らばっているものを手早く片付けていく。
「ぬおお……!?どんどん綺麗になっていく!!」
「(……どんだけ家事できないんだよこの人。)」
慣れている人間からすると大袈裟に驚いているようにしか見えない状態の了平に対して、呆れたような表情を浮かべながらも、丁寧に片付けを済ませた奈月は、やれやれと首を振る。
そして、目をキラキラと輝かせている了平に視線を向けては口を開いた。
「台所はどこですか?」
「ん!?ああ、こっちだ!」
了平に案内され、たどり着いた台所は綺麗だった。おそらくだが、他の家事をしようとして、台所は手付かずだったのだろう。
そのことに安堵しながらも、奈月は手にしていた買い物袋を置く。
「京ちゃんに食欲はありましたか?」
「一応はあるようだが、喉が痛いと……」
「なら、たまご粥に食べやすく切った葉物野菜を入れて持っていきましょうか。台所、使いますよ。」
「あ、ああ。奈月。オレに出来ることはないだろうか?」
「ちょっと待っててください。」
そう告げて奈月は、荷物の中に入れていた果物ナイフを取り出して、いくつか買ってきたりんごの皮を剥き、丁寧に種を取る。
そして、均等に4等分にしたあと、許可は降りたことだしと言わんばかりに台所の中から大根おろしなどを作るために使うおろし器を取り出す。
「これですりおろしリンゴを作ってください。気をつけないと指の皮とか削りかねませんから、ゆっくりやってくださいよ。血まみれにはなりたくないでしょう?」
“京ちゃんに余計な心配をかけたくないでしょう?”と口にする奈月に、了平は小さく頷き、すりおろしリンゴを作り始める。
それを見た奈月は、すかさずレトルトのおかゆを取り出し、器に移し替えたあと、ラップをしてレンジで温める。
そして、たまご粥に必要な卵を、スクランブルエッグにするためにフライパンを取り出した。
「(固形物が食べれそうだったら、もっと別のものを食べさせることができるんだけど、喉が痛いとなると難しいかな……。一応、ゼリーやプリンも買ってきたし、冷蔵庫の中に入れておくか。)」
様々なことを考えながら、奈月は手際よく作業を続けていく。
大切な親友に早く元気になってほしいと願いながら。
…………………
………………………………
……………………………………………
❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ❦ஐ*:.٭
……………………………………………
………………………………
…………………
「京ちゃん。調子はどうかな?」
「え!?なっちゃ……ケホッ……ケホッ……っ」
「おっと……驚かせちゃったみたいだね。了平さんに呼ばれたんだよ。入ってもいいかな?」
「でも……」
「大丈夫。ちゃんとマスクはしてるから。ね?」
「………う、うん……。」
あれからしばらくして、奈月はできたものを運び、了平に教えられた京子の部屋に足を運んでいた。
まさかの人物の来訪に、驚いた京子は、大きな声を出してしまい、その場で咳き込む。
すぐに驚かしてしまったことを謝罪した奈月は、京子が入室許可を出すのを待って、部屋の中に足を運ぶ。
そこには、パジャマ姿の京子がマスクをして座り込んでおり、まだ下がりきってない熱の影響か、少しだけ顔を赤らめている。
「……こんにちは。了平さんから聞いたよ。天気が急に崩れた時、洗濯物を取り込んでから風邪を引いちゃったんだってね。」
「うん……。ねぇ、なっちゃん……あまりこっち見ないで……。今の私、身だしなみを整えてないから、恥ずかしいから……」
「何を言ってるの。京ちゃんはどんな姿でも可愛らしい女の子だよ。」
「もう……」
奈月の言葉に、熱とは違う原因から顔を赤くする。どんな時でもこの人はそう言うんだから、と言わんばかりに。
それを知ってか知らずか、奈月は小さく笑ったまま、京子の側に近寄る。
「たまご粥とすりおろしリンゴ、それと水を持って来たけど、食べれそうかな?」
「うん。」
「あーんでもしてあげようか?」
「!?も、もう……なっちゃんってば……」
揶揄うような口調で告げられた言葉に、京子はさらに顔を真っ赤にして拗ねたような表情を見せる。
それを見て、少しは元気が出たかなと笑った奈月は、静かにその場から立ち上がった。
「部屋の外にいるから、お粥とリンゴを食べて薬を飲みなよ。何か必要なものがあったら言って。持ってくるから。」
「うん。ありがとう、なっちゃん。」
マスク越しでもわかるように、京子が小さく笑ったのを見た奈月は、一旦部屋の外に出る。
待っている間、本でも読んどくかと持ってきた小説を開き、しばらくの間、読書に耽るのだった。
…………しばらくして……
「なっちゃん。食べ終わったよ。」
「ん。じゃあ、また部屋に入るよ。」
聞こえてきた京子の声に反応を返した奈月は、再び部屋に足を踏み入れる。
丁寧にお皿が重ねられているのを見た奈月は、小さく笑ったのち、ベッドに座っている京子に近寄っては、優しく横抱きにしたあとベッドに寝転がした。
「しっかりと薬も飲んだなら、ちゃんと療養しないとね。」
「いきなりお姫様みたいに抱っこされてびっくりしちゃった……」
「ごめんごめん。でも、体が弱ってるお姫様は優しく抱っこしてあげないとね。」
「もう……なっちゃんってすぐにそんなこと言うんだから……。」
「私に対して気障ったらしいオッドアイのお兄さんや、凄腕ヒットマンの2人がしょっちゅう周りにいるもんで。」
イタズラっぽく笑いながら、奈月は京子に布団を優しくかける。そして、彼女の頭を優しく撫でたあと、その額にあぬるくなってしまった冷えピタをそっと剥がしたあと、新しい冷えピタを入れ替えるように貼った。
「固形物が入るかわからなかったから出さなかったんだけど……はい。これ。もし入らないようだったら冷蔵庫におさめておくけど……」
冷たい冷えピタに、少しだけ気持ち良さげに表情を緩めた京子に、奈月はあるものを見せる。
それは、うさぎ型に切ったリンゴだった。
「ふふ……かわいいうさぎさんだぁ……」
うさぎのリンゴを見た京子は、どこかふにゃんとした無邪気な笑顔を見せる。
その姿に、奈月は思わずドキッとしてしまう。同性とはいえ、無邪気と無防備と幼さが混ざったような表情を見せる京子は、とても可愛らしいものだったのだ。
自分が男じゃなくてよかった……と少しだけ考えながら、奈月は京子の頭を優しく撫でる。
「食べる?」
「うん。」
「じゃあ、起き上がったままの方が良かったかな。」
京子の背中に手を添え、優しく起き上がらせる奈月。優しい温もりと匂いを持つ彼女に起き上がらせてもらった京子は、少しだけ自身の胸がだかなるのを感じ取りながらも、ゆっくりと起き上がる。
「はい。口を開けて。」
穏やかな声音で口を開けるように言ってきた奈月に、京子は少しだけ躊躇いながらも、マスクを外してうさぎのリンゴを口にする。
「どうかな?」
「すごく甘くて美味しい!」
「よかった。蜜がたっぷり入ったリンゴを買った甲斐があったよ。喉が痛くても、蜜リンゴならしっかり食べることができると思っていたんだ。」
笑顔でリンゴの感想を口にした京子に、奈月は微笑み返しながら、うさぎリンゴを食べさせ続ける。
程なくしてリンゴがなくなり、奈月は京子の部屋にあった食器類を持っていくために準備をした。
しかし、そんな中、京子が少しだけ寂しそうな表情をしていることに気づく。
「どうかしたの、京ちゃん?」
じっと見つめられたため、奈月は京子に優しく話しかける。
すると、京子は驚いたような表情を一瞬見せた。だが、すぐに恥ずかしそうな様子を見せたあと、静かに口を開く。
「……もう、帰っちゃうのかなって思って。」
ぽつりと紡がれた言葉に、今度は奈月が目を丸くする。しかし、その表情はすぐに笑へと塗り潰し、ベッドに寝転がる京子に近寄る。
そして、彼女の額に一度優しくキスを落として、緩やかに撫でた。
「ずっと側にいることはできないけど、京ちゃんの親がお仕事から帰ってくるまではこの家にいるから、何かあったら電話のコールを鳴らして。
君のお兄さんだけではちょっと家事が心許ないしから、手伝ってるよ。」
穏やかな笑みを浮かべながら、しばらくの間は京子の家にいることを伝えて来る奈月に、京子は何度か瞬きをする。
しかし、すぐに安心したような笑を浮かべては、布団を口元まで引っ張り上げた。
「……よかった。」
小さく呟かれた安堵の言葉。そのあと京子は静かに瞼を閉じて寝息を立て始める。
その姿を見つめた奈月は、しばらくの間、京子の頭を優しく撫でたのち、布団とマスクに隠されている唇へとそっと自身の唇を重ねる。
「……1番は、わたしに風邪を移してくれたらいいんだけど、そしたら京ちゃんが心配しちゃうよね。
3重の布に阻まれて、わたしがそれをもらうことはできないけど……まぁ、御呪いってことで。
ゆっくりでもいい。ちゃんと完治させて、また元気な姿を見せてね、京ちゃん。」
誰に聞かせるわけでもなく、穏やかな声音で言葉を紡いだ奈月は、食器が重なるおぼんを持ち上げて、静かに部屋を出ていく。
……自身がキスを落としたことを、京子に知られていることには気づかずに。