初代組+主人公♀
【時間軸】
10年後、雨天続きのアジト内
6月が近づくにつれ、雨天が続くようになった5月末。
今日も外は雨が降り、休日であるにも関わらず、外に出るのが億劫だと、拗ねた気持ちのまま土足禁止のエリアを歩いていたら奈月は、深く溜息をついていた。
そんな彼女の周りには、顔が整っている7人組がいた。初代ボンゴレファミリーの霧を除く6名と、初代シモンファミリーのボス、シモン・コザァートだ。
10年前に彼女が出会ったかつての初代のマフィア達。10年経った今では、様々なデータの組み合わせにより、10代目のボンゴレファミリーの傘下にある新たな組織として存在しており、現代に蘇っていた。
「ナツキ、なんかすっごくつまらなさそうだものね。」
「まぁ、折角の休みだってのに、何かしようにも雨が降ってるせいで何もできねー状態になっちまったからな……。」
「出かける気満々だったのに、雨がなかなか止まないせいで、完全に拗ねてしまってるな……」
「色々と計画してみたいだし、それが全部パーになったから、やる気がなくなったんだと思うよ。」
「先週までは雨じゃなかったのに……って何回か文句言ってたけど、こんなに天気って変わるもの?」
「最近は環境の変化による異常気象が度々観測されておりますからなぁ……。
今回のこの天気の変化も、温暖化とやらが関わってきているのやもしれませぬ。」
「確かに、我々が過ごしていた時代に比べたら究極に温度は上がっている。
科学や技術の発展とやらは、目を張るものがあるし、それにより整っていくインフラも否定はできんが、それに従属するように、環境が壊れていくと言うのは、どうも見過ごせんな。」
「人が住まう場所を作るために、自然もだいぶ減らされている。だが、開拓しなくては生活が厳しくなる程、技術が遥かに進歩している……うまく自然と技術を融合させることができれば、これも防げそうなものではあるが、簡単にいかないと言うのが現実だな……。」
蘇った初代達は、口々に現在の環境変化に関して言及する。
自分達が一度生きて終わりを迎えた時代から、全く想像ができなかった未来の現状に、少しだけ戸惑いを抱きながら。
「5月なのに暑過ぎるものね……」
「そうだな……。昔は5月でもここまで暑くなかったぞ……」
「私もついつい着流しに……。この暑さでは、普段の格好だとすぐに汗が出てきてしまうもので……」
「だろうな。雨月の普段の和装はかなり暑そうだった。」
「この暑さではカソックも究極に厳しいものだ。」
「流石に肉体がある状態じゃ、コートなんて自殺行為にしかならないしね……」
「道理で全員薄着なわけだ……。まぁ、オレも薄着にしたけどさ。」
現在の自分達の格好を見ながら、これが5月か?と疑問をあげる初代達。
話すのもめんどくさいと思っていた奈月は、無言で彼らの話を聞きながら、その疑問に内心で何度も頷いていた。
彼女の前世の生活圏だった令和の時代では、平成の世である今以上の異常気象、異常災害が発生していたため、まだマシな方だと言いたいところだが、それでもこのままじゃこっちの日本もひどい環境になりそうだと考えながら。
しかし、それはそれとして、折角多忙期ではないためゆっくり出来る時間ができたと言うのに、こうまで雨天続きになられては、やることがすぐになくなってしまい、暇以外の何物でもない。
折角買い物だったり、動物園や水族館へ足を運んだりと、やりたいことがあったと言うのに、雨天ばかりでは外に出るのも億劫になる。
アジト内に、何かしら体を動かせるような娯楽室や、映画鑑賞が出来るシアタールームなど作るべきだろうか……と考えながら、奈月は何度目かわからない溜息を吐いた。
そんな中、不意に視界に入った自身のスリッパ。今いる場所は、ゆっくりとした時間を過ごせるように作っていた和室が並ぶ旅館エリア。
有名な老舗旅館を再現したもので、度々足を運んでくる自身の知り合いが休めるようにと温泉なども引いている場所だ。
彼女が築き上げた新たなボンゴレファミリーのアジト……完璧なセキュリティを施した上で、広大な敷地を購入し、和洋折衷様々なデザインを組み込んだ、ある種の巨大な施設であるそこは、和風の部屋に宿泊し、温泉を堪能することができる旅館エリアと宿泊できる洋室が並ぶホテルエリアがあり、ボンゴレ側に属する多くのファミリーが自由に行き来できるようにされている。
今日はすでに仕事を終えているからと、護衛としてついてきた7人と共にそこに来ていた奈月は、自身が履いているスリッパを見つめたのち、その足をさっと軽く後ろに引く。
「「「「「「「???」」」」」」」
急な行動に、不思議に思った初代達は、奈月に視線を向けて疑問府を頭上に浮かべる。
そんな彼らを気にすることなく足を引いた奈月は、ある言葉と共に足を振り上げた。
「あ〜した天気にな〜れ……!!」
「ぶ!?」
「…………あ。」
「「「「「「「ん゛っっ」」」」」」」
時折サンダルなどを履いている子供がやっていることがある天気占いの要領で、蹴り出された奈月のスリッパ。
しかし、それは天気占いのように、裏表のどちらかを向けて床に転がる前に、書類を片手に旅館エリアに足を運んでいた初代ボンゴレの霧の守護者、D・スペードの顔面にヒットしてしまった。
前を確認していなかった……とばかりに声を漏らしてしまった奈月に、まさかのトラブルを目撃してしまい、吹き出しそうになるジョット達。
奈月が飛ばしたスリッパを、見事なまでの顔面キャッチをしてしまったD・スペードは、勢いよくスリッパがクリティカルヒットした顔面を抑えながら、その場にしゃがみこむ。
「っ〜〜〜〜〜!!」
どうやら相当痛かったようで、言葉らしい言葉は発することなく、痛みに悶えている。
その姿を見て奈月は一歩、また一歩と後ろに退がっていく。
「ヌ……フフフ……っ……随分と楽しげなことをしてますねぇ、ナツキ?私も混ぜてもらえますか……?」
口は笑っているが目は笑っておらず、軽く青筋を立てているDを見て、奈月はダラダラと冷や汗を流す。
明らかに怒っている様子の自身の幻術の師に、引き攣った笑みを浮かべた。
「あ……はは……は……ご、ごめんなさ─────い!!!」
「待ちなさい馬鹿弟子!!」
脱兎の如く逃げ出した奈月を、Dは怒鳴りつけながら追いかけ始める。
一部始終を見ていた初代達は、とうとう堪えきれなくなり、その場で笑い声を上げた。
「ふっはははは!!何てタイミングで来たんだD……!!」
「あっはははははははは!!もうダメ!!こんなの堪えきれないって!!」
「べしんって……っ……べしんって顔面にスリッパ!!Dの顔面にスリッパが!!あははははははははは!!」
「見事なまでにクリティカルヒットじゃねーか!!」
「ナイスヒットだよナツキ……っ」
「こ、これは、笑うなと言う方が無理な話でござるな……フッ……フフフフ……っ」
「はははは!!究極に愉快なことになってしまったな!!!」
綺麗なまでにクリティカルヒットを叩き出した奈月に称賛の声をかけながら、もはや笑うこと以外ができなくなってしまった初代達。
そんな中、室内を走り回っていた奈月が彼らの元に戻って来たことにより、Dに笑っている姿を目撃される。
「プリーモ!!コザァート!!G!!ランポウ!!アラウディ!!雨月!!ナックル!!お前達も仕置きをされたいのですか!!?」
「おっと、まずい。逃げるぞお前達!!」
「「「「「「了解!!」」」」」」
怒りの矛先が自分達にも向けられたことに気づいたジョットは、すかさずその場にいる全員に逃げるぞと声をかけては、近づいてきた奈月の手を取り、そのまま廊下を走り出した。
「うわ!?」
「さっきまで暇だったが、一瞬にして賑やかになってしまったな。行くぞ、ナツキ。Dに捕まらないように、鬼ごっこの始まりだ!!」
「鬼ごっこって捕まったら絶対タダじゃ済まないと思うんだけど!?」
「それは仕方ないな。死ぬ気で逃げ回るぞ!」
「逃げるってどこに!?」
「「「「「「「Dが諦めるまで!」」」」」」」
「誰が諦めるものですか!!待ちなさい!!」
「待てと言われて待つ人間はいないと思うぞ。」
自分よりも足の早いジョットに引っ張られる形で逃走劇に突入してしまう奈月。
彼女達の追いかけっこは、彼女のファミリーが戻って来るまで続くのだった。