空桜の花弁は七色に輝く   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 それは水無月に訪れた特別な一時。
 生誕の霧が贈られたのは、桜の花との穏やかな時間。

 骸主♀
【時間軸】
 10年後の未来、水無月の一時




 ……あ……あれ……?誕生日ストーリーのはずが、なんか微妙にアダルティな方角に……?
 と、とにかく Buon compleanno!六道骸!


霧は桜を独占する【骸主♀】

 雨天が度々訪れる水無月の9日。

 ボンゴレ10代目ファミリーの霧の守護者である六道骸は、アジト内にある一つの部屋へと向かっていた。

 彼が向かっていたのは、彼が仕える10代目のボス、沢田奈月が過ごしている私室である。

 

 似たような景色が広がるアジト内部。しかし、彼が歩いている廊下の先には、一際大きく、豪勢な扉が存在していた。

 そこまでたどり着いた骸は、目の前にある扉を3回ノックしようと手を伸ばす。

 

「ん?ああ、骸だね。入っていいよ。」

 

「クフフフ……やはりあなたの気配の感知能力は凄まじいですね。ノックしようとしたのですが……」

 

「いや、だってみんなの気配わかりやすいから。」

 

「おやおや……」

 

 部屋の中から聞こえてきた声に、骸は何度か瞬きをしたのち、小さく笑って扉に手をかける。

 静かに扉を開けてみれば、広い部屋の中央にある人が集まれるエリアに備え付けられたソファーに、彼が仕えている貝の女王が腰をかけており、その手元には小説と思わしき本が握られており、彼女の目の前にあるテーブルの上には自分で淹れたのであろう紅茶と、色とりどりのお菓子が盛り付けられている大皿が複数あった。

 

「……もしかしなくとも、そのお菓子、全部あなたが作ったんですか?」

 

「ん?うん。今日はお休みで暇だったからお菓子作ったんだけど、思った以上にできちゃって、もう紅茶飲みながら食べ切るしかないかって。」

 

「何やってるんですかあなたは……。」

 

 道理で部屋が甘い匂いで満たされてるわけですよ……と骸は苦笑いをこぼす。

 ……この部屋には、貝の女王ことボンゴレファミリー10代目ボス、沢田奈月……として生まれ落ちた女性である小鳥遊桜奈が趣味で自由に使える本格的なキッチンが備え付けられている。

 これは、彼女の趣味が菓子作りや料理と言ったものであるため、アジトを作り上げる際、折角だからと彼女のファミリーと、アジトの建築を任された建築士が用意したものだった。

 ボンゴレファミリーは、日本とイタリアにいくつかアジトを作っているのだが、どのアジトの女王の私室にはそれが用意されており、気まぐれに女王が何かしら作って口にしていることがあるのである。

 女王の部屋に複数人が座って寛げる場所があるのも、それが原因で、度々彼女の部屋はファミリーや、今や彼女側についている暗殺部隊、ヴァリアーの人間など、様々な人間の溜まり場となっているのだ。

 しかし、この日はどうやら他の人間は女王の私室には足を運んでいなかったようで、部屋には骸だけがやってきていた。

 

「骸も食べる?今日のお菓子、なかなか美味しくできたんだよね。」

 

「そうなんですか?それならいただきましょうか。あなたが作る数々のお菓子は大好きなんです。」

 

「ん。好きなとこに座っていいよ。今日はこの部屋に誰も来ないし。」

 

「…………は?」

 

 不意に、桜奈から告げられた言葉に骸は呆気に取られる。

 いつもは誰かしら存在している女王の私室。例え先約がいたとしても、当たり前のように部屋に乱入しては寛ぐファミリーとヴァリアーなどの傘下達。

 そのため、誰も来ない方が珍しく、当たり前のように発生する乱入イベントもすでに慣れたものだったと言うのに、誰も来ないと断言する桜奈に、骸は軽く混乱した。

 

「だから、今日は他の人は来ないんだよ。わたしが来ないように言ったからね。

 後日みんなには、こっちの手料理とか、お手製のカクテルとか、そう言ったものを作るから、今日1日は部屋にこないでねって人払いを済ませておいたんだよ。」

 

 骸の反応に、いつもの調子を崩すことなく、自身が飲み切ってしまった1人分のティーポットの洗浄を行い、2人分の紅茶を淹れることができる大きめのティーポットに紅茶を淹れていく桜奈。

 突拍子もないことにフリーズした骸は、しばらくの間思考を止めたが、すぐに意識をハッキリさせて、紅茶を淹れている女王の元に近寄る。

 

「え、ちょ、それ、どう言う……?」

 

「そのまんまの意味。ほら、骸って今日誕生日でしょ?だから、今日1日はフリーにしておいたんだよ。わたしのことを骸に独占してもらおうかと思って。」

 

 “嫌だった?”と問いかけて来る桜奈に、骸は目を丸くする。

 しかし、すぐに彼女の嫌だったかと言う問いかけを否定するように首を左右に振り、青天と黄昏の2色を宿す瞳を輝かせる。

 

「嫌なわけないでしょう!?なんなんですかそのサプライズ!!」

 

 すぐにでも勢いよく抱きつきたい衝動に駆られたが、目の前で手際よく紅茶を準備する彼女の邪魔をするわけにもいかないとグッと堪えて、声音だけでその喜びを表現する。

 骸の反応を見た桜奈は、小さく笑みを浮かべながら、用意できた紅茶と、もう一つのティーカップとソーサーを持ち、自身がのんびりとティータイムをしていたテーブルにまで戻る。

 

「実を言うと、お菓子を作り過ぎたって言葉は嘘。この時間帯になったら必ず来る骸のために沢山作っていたって言うのが事実だよ。

 本当は、昨日から骸と一緒に一泊二日の旅行とかも考えていたんだけど、あいにくと天気が悪かったからね。

 どうしたもんかと考えた結果、アジト内でもできるような誕生日プレゼントを……」

 

 桜奈の説明が不自然に止まる。

 それもそうだろう。何故なら骸が座っていた彼女に抱きついて、そのまま勢いよくソファーに倒れ込んでしまったのだから。

 しかし、骸に冷静な部分はあったようで、桜奈と一緒にソファーに倒れ込む際、彼女に負担がかからないようにと、さりげなくフォローはされていた。

 

「……いきなり抱きつかれてビックリしたんだけど。」

 

「思いがけないサプライズを仕掛けられた僕の方がもっとビックリしました。」

 

「ふふ……そっか。じゃあ、サプライズ成功……だね。」

 

 穏やかに笑いながら、抱きついてくる骸の頭を優しく撫でる桜奈。

 普段は頭を撫でる側である骸は、突然のことに一瞬驚いたような様子を見せるが、すぐに気持ち良さげに目を細める。

 骸のこんな表情、初めて見たかも……などと考えながら、桜奈は骸の頭をしばらく撫でたあと、自身より一回り大きな背中を数回叩いた。

 そろそろ抱きつくのをやめて起き上がってくれと言うように。

 彼女の意図に気づいた骸は、静かに体を起こして、自身の下敷きになっていた桜奈を優しく起き上がらせた。

 

「まぁ、そう言うわけだから、今日は2人だけで過ごそ。まずは折角沢山お菓子作ったし、紅茶も淹れたからこれらを食べながらのんびりと部屋で一緒に過ごして、ご飯の時間になったらわたしが料理を作ってあげるよ。

 骸が観たがってた映画のレンタルもあるから映画も観れるし、わたしにできることなら何でもお願いを聞いてあげるよ。」

 

「まさに至れり尽くせりですね。こんな風にあなたを……桜奈を独占できるなんて夢のようです。」

 

「夢じゃないんだよなぁ……」

 

 起き上がってソファーに座り直した桜奈は、今からの予定丁寧に説明した。

 桜奈本人は夢じゃないと語るが、夢だと思ってしまう程のサービスの大きさに骸は幸せそうな笑顔を見せる。

 

「で?このプレゼント、受け取ってもらえるよね?」

 

「当たり前じゃないですか。あなたから独占していいと言われたんですよ?だから、遠慮なくいただきます。あなたを現実の方で独占できることなど滅多にないのですから。」

 

 暖かな笑顔を見せる桜の花に、骸は穏やかな笑みを返しては、自身を見つめてくる彼女の唇に自身の唇を優しく重ねる。

 春のような暖かなひと時を受け取ると伝えるように。

 

 

 …………………

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 …………………

 

 

 あれから骸は、桜奈から贈られた彼女との時間を満喫した。

 テーブルに並べられた沢山の手作りのお菓子を2人で分け合って食べながら、彼女が借りてきたと言う映画を観て、時には寄り添うようにくっついて休憩して……。

 学生の頃はそんな時間も沢山あって、しょっちゅう他のファミリーと衝突することもあったが、仕事をするようになった今は、彼女とのんびり過ごせるような時間は滅多に得ることができず、彼女の方針に従いながらの作業ばかりをこなしていたため、このひと時はとても貴重だった。

 

 その上、今日1日はずっと桜奈を独占できるなどと言われたのだ。誰かが邪魔をしてくることもなく、ひたすら彼女を愛でることも、甘やかすことも、甘やかされることも全て思うがままな時間は、骸にとっては楽園のようなものなのだ。

 

「骸って食べ物に好き嫌いがないよね。ああ、でも、チョコレートは好物だったね。」

 

「チョコレートは小さい時は滅多に食べることができませんでしたからね。

 なんせ、僕の周りの人間がアレだったので、必要最低限の食事しか与えられず、甘味などはあまり食べることができなかったんです。

 だから、チョコレートは好きですよ。あの甘味と苦味が絶妙に混ざり合って溶けていくのが最高です。

 料理に好き嫌いがないのも、そんな環境にあったから……と言うのもありますが、1番の理由は、桜奈が作る料理はどれも美味しくて……。

 初めて食べた温かみのある料理が桜奈の手料理だったので、どれもついつい沢山食べてしまうんですよ。」

 

「……そう言えば、骸を観察してみると、雇ってる料理人さん達の料理に比べて、わたしが作る料理を食べる時の方が箸の進みが早いね。え?そんな理由で箸の進みが早かったのきみ……?」

 

「そんな理由ってなんですか。これもまた立派な理由ですよ。確かに桜奈が雇った料理人達の料理も悪くはないですが、やっぱり僕が1番好きなのは桜奈の手料理です。

 味もそうですが、すごく落ち着くんですよ。あなたが作る手料理は。」

 

「そうなんだ……?」

 

 キョトンとした表情をしながら、骸が口にした料理評に首を傾げる桜奈。

 そんな彼女を見て、骸はやれやれと肩をすくめる。言葉の意味を全く理解していない彼女に、少しだけ呆れてしまっていた。

 

 ─────……愛しい女性の手料理の方が、一流の料理人の料理よりも、チョコレートよりも美味しいと思うのは当然だと言うのに、なぜこの子はそれを理解してくれないのでしょうね?

 

 “僕の想いは沢山伝えているはずなのですが”……と少しだけ拗ねた気持ちになりながらも、骸は目の前に広がる沢山の料理を食べ進める。

 そんな彼の感情など知らずに桜奈は自分用の食事を食べながら、次はどの映画を観ようかと考えていた。

 

「そう言えば桜奈。確かあなた、雲雀恭弥が誕生日の時、一緒にお風呂に入っていたそうじゃないですか。」

 

「……なんで知ってんの?」

 

「雲雀恭弥から自慢されましたが?」

 

「あの人……なんでよりによって骸を煽るかな……。」

 

 そんな中問われた質問に、桜奈は呆れたような様子で遠い目をする。

 余計なことをと言わんばかりに、用意していた食事に合わせて作った飲み物を飲みながら。

 

「雲雀恭弥がいいなら僕も構いませんよね?」

 

「ん。まぁ、そうなると思って入浴用の水着は用意しているよ。」

 

「……言い出したのは僕ですが、なんで用意周到なんですか。」

 

「きみが恭弥さんとしょっちゅう張り合うからだね。」

 

 軽くドヤ顔をしながら伝えてくる桜奈に、骸は流石だと言わんばかりに苦笑いをこぼした。

 しかし、それはそれとして彼女と一緒に入浴することができると言うのはツッコミどころはあれど、抗い難い誘惑で、骸は少しだけ考え込むような様子を見せる。

 

「……では、入浴時間になったら一緒に入りましょうか。折角用意してくださったのですから、それも受け取らせてもらいますよ?」

 

「ん。構わないよ。」

 

「ですが、あまりそう易々と混浴を承諾したらダメですよ?ただでさえあなたは周りから好かれ易く、そう言った感情も抱かれやすいのですから。」

 

「だから本当に信頼と信用を置ける人にしか許してないよ。その点を骸はちゃんとクリアしてるから、わたしは骸の前でも普通に肌を晒すし、警戒心も抱かない。」

 

 “骸が本気でそれを望むならば、わたし自身、そう言うのも構わないしね”……と、わずかに流れてきた桜奈の本音に、骸は一瞬口に含んでいた飲み物を吹き出しかけてしまい、そのまま咽せる。

 目の前で繰り広げられた一連の動作を見て、桜奈は顔を逸らしてべっと舌を出した。

 彼女の反応から、わざと本音を流し込んできたことに気づいた骸は、口直し用に用意されていた水を飲み、なんとか落ち着きを取り戻す。

 

「桜奈。あまり僕を煽らないでください。本気で襲いますよ。」

 

「いつだったか骸がしてきたことと同じことをやり返しただけですよー。」

 

「確かに同じことを僕もやりましたけど……!!」

 

 悪戯っぽく笑いながら、いつだったかやられたことをやり返したのだと桜奈から告げられた骸は、10年前の記憶を思い返す。

 繋がりを得て、それを使って桜奈と接触し、一回逃げようと家出に誘った夏の終わり……“本当は、キスだけに留めることなくすぐにでも体を重ねて深く繋がりたい気持ちがある”と、一度だけ彼女に伝えていたことを。

 それと同じことをされだと聞かされ、骸は顔を赤くする。あの時の自分と同じように、先程の桜奈の本音には、確かな色の感情が混ざっていたことにも気がつきながら。

 

「まぁ、さっきも言ったように、きみが本気で望んでいるなら、わたしもそれに応えるつもりだよ。

 ただの一時の感情に任せたものじゃなく、ちゃんと生じる責任を取ってくれるならね。」

 

「っ〜〜〜〜!!桜奈!!あなたは僕の理性をどうしたいのですか!?」

 

「さぁ、どうしたいんでしょう?」

 

 クスクスと笑いながら告げてくる桜奈を、骸は湿り気のある目を向ける。

 繋がりを通じて彼女から感じ取れたのは、本気にしても構わないと言う感情のみ。

 何て人だと頭を抱えたくなりながらも、彼女の言葉一つ一つに喜びが湧いてくるのも現実で、骸は自身を落ち着かせるために、静かに飲み物を口にした。

 

 

 

 …………………

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 桜奈に振り回されながら過ごすことになってしまった誕生日。

 しかし、骸は楽しいと言う気持ちと悶々とする気持ちに挟まれながらも、桜奈を独占することができる誕生日を満喫していた。

 彼が観たかったと言っていた映画のうち、すでにDVDとなっているものは全て鑑賞し、それが終わったら、今度はゆっくりと会話をしながらティータイムを楽しみ、ずっと座っているのもあれだからと言う理由から、アジト内に備え付けられているトレーニングジムで汗を流し、ゆっくりと過ごしたいと考えたら上層階にある庭園を散歩して、やりたいことを思いついたら、今度はそれをこなす。

 

 雨が降ってるからアジト内でできることをしよう、と言う理由から、外には一歩も出ていなかったため、時折桜奈に想いを寄せているファミリー達から羨望の眼差しや恨めしいと言わんばかりの眼差しを向けられたが、誰1人として2人の邪魔をする者はおらず、まさに、桜奈と2人だけの世界を骸は過ごすことができた。

 穏やかな時間を過ごしていたはずだと言うのに、時間は次々と過ぎていき、楽しさや幸福を感じていたら、時間は早く過ぎるものだと、桜奈と出会わなければ感じることなどなかったであろう感想を胸に抱いて。

 

「今日1日、楽しんでもらえたかな?」

 

 不意に、骸は桜奈から一言問いかけられる。

 時は夜。夕飯も、入浴も全て済ませ、寝支度も終わらせた遅くの時間。

 明日の朝、起きたら独占できる時間は終わるからと言う理由から、桜奈の私室にあるキングサイズの天蓋付きベッドで、共に寝ようとしていたタイミングだった。

 不意打ちの問いかけに、一瞬だけ骸は目を丸くする。しかし、すぐに小さく笑っては、ゆっくりと頷いた。

 

「はい。こんな風に桜奈を独占できたのは、あなたの家出を手伝った時以来だったので、とても楽しめました。

 このまま時が止まってしまえばいいのにと思ってしまう程に、幸せな時間でしたよ。」

 

 骸の答えを聞いて、桜奈は笑顔を見せる。雨天でなければ、アジトの外でもっと楽しいことができたかもしれないけど……と思わなくもないが、目の前にいる大切な心の片割れが幸せならばそれでいいかと、及第点を自身に与えながら。

 しかし、その思考はすぐに骸の方へと向けられることとなった。真剣な声音で、自身の名前を呼ばれたために。

 

「……先程の話ですが、僕が本気で望むのであれば、本当にあなたはその体を許してくれるんですか?」

 

 紡がれた言葉に、桜奈は一瞬だけ目を丸くする。

 しかし、すぐに彼が何を言いたいのか理解しては、納得したような表情を見せた。

 

「わたしは、骸となら別に構わないよ?」

 

 小さく笑いながら告げられたのは肯定の言葉。

 彼がよく使っている感情の流入を使うことにより、それが真実であることを伝えながら。

 それを聞いた骸は、驚いたような表情を見せるが、一度だけ目を閉じて、しばらくしてから目蓋を開ける。

 そして、ベッドに座っていた桜奈を、彼は優しく押し倒した。

 

「その言葉、違えないでくださいよ。」

 

 呟くように告げられた言葉に、桜奈は数回瞬きを繰り返す。

 しかし、すぐに表情を穏やかなものへと変えては、自身を組み敷く骸の頬に手を伸ばして優しく撫でる。

 

「今のわたしが、言葉を違えると思う?」

 

 寝る手前だったこともあり、解かれている長い藍色の髪が、カーテンのように垂れ下がる中、頬を撫でた手をそのままずらして優しく触れる。

 そして、桜奈は自身を見下ろしている骸の首の後ろに両腕を回して、自ら彼の唇に、自身のそれをそっと重ねた。

 

「……全く、あなたには本当に敵いませんね。」

 

「ちょっと攻め過ぎた?」

 

「ええ……かなり煽られていて限界です。」

 

「そっか。じゃあ、そんな骸にはこの言葉を送ろうか。」

 

 一呼吸置き、桜奈は骸に穏やかな眼差しを向ける。

 しばらくの間、青天と黄昏の瞳を見つめ、緩やかに口を開いた。

 

「お誕生日おめでとう、骸。きみが本気で望んでいるみたいだから、今日最後のプレゼントは、わたしってことでいいかな?

 言っとくけど、一線を本気で越えるんだから、その代わり最期までわたしの面倒を見てよ?

 それが、これからの行動に伴う責任。それをちゃんと引き受けると言うのなら、わたしを骸にあげる。」

 

 “どうする?”と穏やかに、だけどイタズラっぽさも含まれた笑みを浮かべ、垂れ下がっている藍色の髪を優しく抱きしめながら言ってくる桜奈に、骸の理性は完全に奪われる。

 

「……完全なる同意……と言うことで良いようですね。安心してください。元から僕は、あなたの側で永久を過ごすと決めています。

 それに、これまで以上に深い関係を築くのであれば、ちゃんと責任を取るつもりでしたから、念を押すように言わなくとも問題はありませんよ。」

 

 普段の調子は崩すことなく、しかし、確かな色情が含まれる熱を帯びた声音で、桜奈に言葉を返した骸は、無防備に晒されている彼女の首筋に、赤い花を一つ咲かせる。

 

「言っときますけど、完全に理性がどっか行ってしまったようなので、ストップをかけられても止めることはできませんよ。

 これまでずっと、なんとか我慢してきましたが、同意されたならば、もはや我慢も必要ありません。

 多少の激しさはあれど、手ひどく抱くことだけは絶対にしませんが、今夜は眠れないと思ってください。」

 

「ん……まぁ、なんとなくそうなるかなとは思ってた。……前世にいた後輩が見せてきた創作の中にあったイチャラブ(意味深)シーンに描かれていた女の子みたいに、気絶しなきゃいいんだけど……」

 

「その時は少し噛み付くかもしれませんね。そうすれば意識は飛ばないでしょう?」

 

「歯型だけはつけないでいただけると助かるかなぁ……」

 

「まぁ、努力はしますよ。あったらあったで、周りの反応が気になるところですが……それで僕以外の男に、同じようなことをされてしまうあなたの姿は見たくありませんから。」

 

 劣情が宿る2色の瞳を桜奈に向けながら、骸は口元に笑みを浮かべる。

 そして、自身を受け入れる様子しか見せていない彼女に深く口付けを施しながら、身にまとう衣服と肌の隙間に自身の手を滑り込ませる。

 求めていた桜の花が本当の意味でようやく手に入るのだと、抑えきれない歓喜と色情に身を任せて。

 

 

 

 

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