彼女の前に現れたのは、まさかまさかの者達だった……!?
なんか、めちゃくちゃやりたくなってしまったもので……。
別枠で話を書こうかと思いましたが、短編に番外集として載せます。
オリキャラ大量発生注意!!現在はハーメルン限定掲載です。
長くなったら新規で新しい枠を作り垂れ流していきます。
それは、並盛町の中で突然起こった奇跡の話。
その日はなんの変哲もない日常が流れている穏やかな春の昼下がりのことだった。
強い春風が町を吹き抜け、桜の花びらを回せる中、並盛町のある山の中に何かが落下する音が響き渡る。
その音は、何やら重たいもの……木の上から人が落っこちるような音だった。
音は3つ程あり、どれも大人の落下音だった。
「い……っつつ……な、何が起こって………?」
「う……っ……その声……まさかとは思うけどリョウ……?」
「……は?」
落下した人のうち、1人がゆっくりと起き上がり、頭を抑える中、2人目の声がその場に響く。
あまりにも聞き慣れた声だったため、起き上がった男は一瞬だけ呆気に取られたのち、慌てて声の方を振り返る。
「スイ!?おま、今までどこ行ってたんだよ!?」
「いや、うん。正直言って死んだと思っていたんだけど、なんで生きてんだろうね?」
「待て待て待て待て。死んだと思ってたってなんだおい。」
「そのままの意味だよ。身投げしたはずなんだけどな……」
「うん、頼むからオレを置いてお前まで死ぬんじゃねーよ。んなことされたらオレも後を追って死ぬぞガチ目に。」
「だって、サクちゃんがいない世界とか、正直言ってどうでもよかったからさぁ……」
「気持ちはわかるけどよ。せめて地元に戻って来い、頼むから。そうすりゃオレとお前でなんか出来るだろ。1番はサクも一緒にいることだけど。」
荒々しい口調で言葉を話すのは
かつて、何よりも大切な幼馴染みの女性を失ってしまった悲しい過去を持つ2人組だ。
互いにリョウ、スイと相手の名前を呼び合っており、小さい頃からずっと、長い付き合いを持っていた。
それは、2人が口にするサクと言う女性も同じだったのだが、その女性は自ら命を投げ出してしまい、2人の前から永遠に消えてしまったのだ。
その女性が命を落としたことを知ったのは、女性が失踪して1週間経ったあと、地元にあった砂浜で、既に生き絶えた状態で見つかったと言うニュースを観た時だった。
今もなお、2人にはその時の記憶が焼きついていて離れない。もはや白とは言えない程に顔色は悪くなっており、死後硬直も起こしていた変わり果てた彼女の姿は、2人のトラウマとなり、精神を抉るには十分すぎる程のものだったと言えるだろう。
……2人が、後追いで命を絶ってしまおうかと思ってしまった程だったのだから。
呆れたように言葉を紡ぐ竜雅に、困ったような表情を見せる翠星。2人がとんでもない話を交わす中、もう1人の男が目を覚ます。
その男はゆらりと起き上がり、一瞬だけ頭に走る痛みに表情を歪める。
「……さっきからうるさいな。しかも、随分と聞き覚えのある声だし……。なんでいるんだ、君らが。」
少しだけ苛立ちを帯びた声音で言葉を紡ぐ声に、竜雅と翠星は驚いたように目を丸くする。
そして、勢いよく声の方へと振り返れば、そこには明らかに外国の血が入っているとわかる容姿をしている青年の姿があった。
青年の名前は、フェリクス・アキラ・レオンハート。フランス人と日本人の両親を持つ青年であり、かつては竜雅達と同じ大学に通っていた男だ。
日本では
秋良は、兄と共に、両親が興した会社を継ぎ、日本側の支部を担当していた社長子息で、2人には内緒にしていたが、竜雅達がサクと呼んでいる幼馴染みである女性と付き合っていたことがあった。
大学の時から、彼らの幼馴染みだった女性に想いを寄せ、彼女の本来の性格を知ってもなお、愛していた彼は、日本側の会社をまとめる若社長として生活していた。
そんな時に彼は、社会に出た彼らの幼馴染みと再会し、側にいたいと願い、何度もアプローチをしていた過去がある。
彼の想い……それを無碍にすることはできないし、周りからもすすめられると言うカタチで、なんとか彼女もお試しで恋人になることを承諾してくれたのだが、最後は彼女が自分よりも相応しい人がいるからと彼女の方からその繋がりを絶ったのだ。
そして、その繋がりが絶たれた2ヶ月後にその女性は突如失踪し、その後1週間経ったのちに遺体として見つかったと言うニュースを見ることになった。
様々な調査の末、その女性が自殺によるものだったことを知り、彼女を深く愛していた彼は、原因がなんだったのかを探偵を雇うことで調査し、会社と身内の問題により、すでに彼女の精神が限界を迎えたことを把握し、その原因の一つとなった彼女の勤め先を倒産させると言う報復を行った。
もちろん、倒産の原因が自分であることなど把握させないように様々な手を回して。
「お前……大学で同じ学部だった……確か、鷹坂秋良……だったか?」
「覚えていたんだ。あまり君達とは関わった覚えはないんだけど。」
「サクちゃんのことをじっと見つめていた奴だったから嫌でも覚えてるよ。」
「だな。しかも、サクに対して明らかな恋慕持ち……オレ達が覚えねーわけがねーだろ。」
「……言われてみればそうだったね。君達は桜奈に対してかなり過保護だった上、想いを寄せていた。
それこそ、彼女に近寄ろうとした男をさりげなく牽制して追い返す程にね。オレも散々牽制された記憶しかないよ。」
“おかげで彼女の記憶には、オレの名前も記憶も残っていなかったよ”……と不敵な笑みを浮かべながら告げてくる秋良に、竜雅と翠星は不快感を表に出す。
彼の言葉の意味……それは、自分達が知らないところで大切な幼馴染みである女性、桜奈と何かしらの交流を持っていたことがあるというものが含まれていたために。
「ああ。言っておくけど、オレはお前達が警戒しているストーカーや強姦未遂を引き起こした犯罪者共とは違うよ。
オレは純粋に桜奈を愛していたし、彼女を傷つけるようなことは誓ってやっていない。
……まぁ、数ヶ月程交際ののち、結婚を申し込んだら振られてしまったけどね。
自分なんかよりも相応しい女性はきっと現れるから、こちらのことは忘れてほしい……と言われてね。
オレ側からすれば、桜奈意外の女性を深く愛せるわけがなかったんだけど……」
「はぁ!?ちょっと鷹坂!!何サクちゃんに結婚を申し込んでんの!?」
「つかてめ!!どこでサクに会いやがった!?なんでてめーがサクと恋人になってんだよ!?」
「うるさいと言っているだろう。全く……桜奈もよく君らのような賑やかな連中と過ごせたな。オレだったら絶対に無理。
まぁ、彼女の身の回りを考えれば、君らのような人間の元にいる方が気を使うことなく過ごせたのだろうとわかるけどね。
結局のところ……オレは、君らのように、彼女が無条件に甘えられる身内にはなれなかったのだから。」
“羨ましい限りだよ”……と、目を伏せながら言ってくる秋良に、竜雅と翠星は思わず無言になる。
普段の自分達であれば、当然だろうと胸を張り、ドヤ顔を晒していたところではあるが、秋良があまりにも真剣に、そして、本気で悲しんでいることがわかったため、それができなかったのだ。
「……あー……その、なんだ。本気でサクのことを想ってくれてサンキュー。」
「……そっちは、サクちゃんの訃報ってどこで知ったの?」
「ニュースと新聞。桜奈は、オレと別れたあとに父親を亡くされてしまったらしいな。雇っていた探偵から聞かされたよ。
その後、父親の葬儀を終わらせ、親族としての勤めを果たしたのち失踪……そして、1週間経った辺りで遺体として見つかったそうじゃないか。
死因は自殺……高台から海へと身を投げ、そのまま溺死したらしいね。」
「待って、サラッと探偵雇ったって言った?」
「何やってんだお前……?」
「ん?ああ……桜奈が身投げに至った理由を探偵に調べさせていたんだよ。もっと早く、彼女の精神に寄り添うことができていれば……その傷を癒すことができていれば……同じ大学に通っていたから、君の本来の性格を知っているから我慢しなくてもいいと言っていれば、彼女にそのような道を辿らせなくても済んでいたかもしれなかったのにと、後悔してね。
それで、せめてものケジメとして探偵を雇い、調べさせていたんだ。お金なら沢山あったから。」
「「うっわ、すっげームカつくこと言い出したんだけどコイツ。」」
「大企業を興した両親持ちを舐めないでもらえる?オレと兄に代替わりしても企業は成功させ、尚且つ広げていたんだよ。」
「そういやこいつやべーボンボンだった。」
「確か、世界の金持ちランキングでもTOP20入りするレベルだっけ?」
「ああ。ついでに言うと年収ランキングも上位に入っていたな。」
「当然だろ。一応は世界規模でトップクラスの企業なんだよ、オレと兄の会社は。君らが当たり前のように利用していた施設の中にも傘下はあったはずだけど?」
「「……マジ?」」
「ああ。ちょうど出張する時の資料がある。新店舗の下見として足を運ぶ予定だったんだけど……これを見たらわかるんじゃない?」
「「…………ゲ……マジで利用したことがある施設の名前が書いてあるし………」」
手渡された資料を見て、表情を歪める竜雅と翠星。随分とオレは嫌われているらしいと考えながら、資料を取り上げて収めた秋良は、再び静かに口を開く。
「話を続けるよ。探偵の話によると、どうやら桜奈が働いていた会社は、無能の集まりと言っても過言ではないレベルだったらしいね。
仕事が出来る人間は約3割弱……あとは、まぁ、なかなかにお粗末な結果だったみたいだよ。
パワハラやセクハラ、モラハラやマタハラなどのハラスメントはかなりあった上、仕事の効率はあまりにも悪く、残業をしてる人間もかなりいたみたいだし、さらに言うと、労基に引っかからないと言うタチの悪さもあったみたいでね。
そのような会社の中の一つの部署で、桜奈は働いていたんだけど、ほとんどワンマンに近い状態だったんだよ。
だけど、周りは桜奈の異常性に気づけていなかったようで、仕事ができる人と言う認識のもと、様々な仕事を任せていたみたいだ。
本来ならば、精神がすり減っていてもおかしくなかったはずなのに……ね。
まぁ、これは彼女の上手く隠す技術が働いてしまった結果だろうけど。」
「「!?」」
秋良から告げられた言葉に、竜雅と翠星は目を見開く。まさか、そのような劣悪な環境で桜奈が働いていたとは思わなかったのだ。
その様子から、秋良は一度目を細める。そして、小さく溜息を吐いたのち、静かに口を開いた。
「……どうやら、仕事に関しては君達にも隠していたようだね。余計な心配はかけたくないと気丈に振る舞う桜奈らしい判断だ。
でも、せめて幼馴染みである君達には話しておいてほしかったな。そうすれば……もっと早く自身の限界に気づいてもらえていただろうに。」
「「…………。」」
秋良の言葉に、竜雅と翠星は顔を見合わせる。その表情はどこか悲しみに溢れていた。
……2人は、彼女が黙っていた理由にすぐに行き着いた。警察官と言う立場に身を置いていたために、自身のことに意識を回させないようにしていたのだと。
彼女の性格を把握しているからこそ、たどり着けた答えだった。
「………この話はやめよう。気分が暗くなる。」
「………そうだね。ところで、その会社はどうしたの?」
「ん?ああ……あの会社は倒産させておいたけど。やりようによっては正攻法で落とせる程度の小物企業だったし。」
「「それに関してはグッジョブ……だけど巻き込まれた人らは南無……」」
「言っておくけど、倒産させる前に、しっかりとオレの報復に関係ない社員達には別の会社を斡旋しておいたからね?
弁護士やハローワーク、他にも様々な専門家を介して、倒産させた会社より何倍も仕事がやりやすく、尚且つ教育も福利厚生も高水準の場所を手配するくらいのフォローはする。
優秀な社員はオレの会社に、海外での仕事に興味がある社員には兄の会社を紹介したしね。
ついでに、企業を劣悪にしていた老害共は凄腕であり、尚且つ高評価だった探偵を複数雇うことでことごとく社会から排除させてもらった。
今頃牢獄に放り込まれるなり路頭に迷うなりしているんじゃない?恨みを買っていた連中に命を狙われて恐怖に震えたりもしているかもね。」
不敵に笑いながらそのようなことを言ってくる秋良に、竜雅と翠星は顔を青くしてドン引きする。
強い恋慕と世界でトップクラスと称されるカリスマ若手社長と金をブレンドしたら、ここまでとんでもないことになってしまうのかと。
……この2人も凄腕の警察官と言う立場を持ち合わせた結果、桜奈に害を及ぼそうとしていた犯罪者をことごとく排除していたため、言えることではないのだが……。
「……ところで、ここはどこ?オレは出張で海外に向かう予定だったんだけど、気がついたらここにいたよ。」
「それに関しては、オレ達もちょっとわからなくてさ。オレは、サクちゃんがいない世界なんてどうでもよくて、後を追うために身を投げたはずなんだけど。」
「オレは……確か、犯人と対峙していたところ、潜伏していたらしい犯人の仲間に背後取られちまって……そこから記憶が……」
「うん、待って?それって下手したら殉職してない?ねぇ?それ、オレが助かった場合、めちゃくちゃオレがショック受けるヤツなんだけど?え?首吊るよ?もしくは服毒するか一酸化で終わるけど?」
「……君達幼馴染み組は後追いがデフォルトなの?」
竜雅と翠星のやり取りに、思わず秋良がツッコミを入れてしまう。
もしやこの幼馴染み組は、3人で一緒に依存していたのかと困惑の表情を浮かべた。
同時に、この2人の発言から自身も命を落としている可能性が高いと考えた秋良は、記憶を辿るように考え込む。
「……君ら2人の言葉でオレが乗っていた飛行機の片方のエンジンがおかしくなってたのを思い出したよ。
大きな爆発音のようなものが聞こえて、窓の外を見た時に火を見た記憶がある。」
「……それ、下手したら墜落してない?」
「なんで3人揃って命の危険に晒されてんだよ……」
まさかの事実に、今度は竜雅と翠星が困惑する。もし、この場にいる全員の言葉が正解だと言うのであれば、ここにいる3人は命を落としてしまっている可能性がかなりあると言うことになるのだから。
辺りに気まずい沈黙が訪れる。いったい自分達はどうなってしまったのか……わからない結末に、頭を悩ませる。
「……え?リョウ?スイ?それに、なんで秋良さんまで…………」
「「「!!?」」」
そんな中聞こえてきた声に、3人はビックリして目を見開く。聞いたことがない声のはずなのに、どこか聞き覚えのあるような雰囲気を持ち、一瞬にして愛おしさが爆発するような感覚は、3人の記憶に刻まれているものと全く同じものだった。
勢いよく声の方へと振り向いてみれば、そこには秋良によく似たプラチナブロンドと、べっこう飴のような琥珀色の瞳を持ち、外国の血が流れていることがハッキリとわかる容姿をした女性が1人。
そんな彼女の姿に、ある穏やかな女性の面影を感じ取った3人は、特に打ち合わせなどしていないと言うのに、同時に口を開いていた。
「「「桜奈!!!?」」」
紡がれた言葉は1人の女性を呼ぶ言葉。
同時に目の前にいる琥珀色の姿に、1人の春の陽だまりのように温かかったら、穏やかな女性の姿が重なるのだった。