空桜の花弁は七色に輝く   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 幼い雷の少年の記憶。
 琥白の大空に、雷の少年は恋い焦がれる

 ランボ→奈月
 場所:10年前、大空の少女の寝室で


早く明日になぁれ【雷→主♀】

 ボンゴレ10代目である少女は、周りに好かれやすい少女だ。

 それは、同級生から年上、年下まで幅広く、多くの人から好感を持たれ、なかなか1人で行動を取ることが少ないと言える程だった。

 この好かれやすさは外だけに留まらず、自宅の方でも発揮している。

 

「ランボ。寝る支度はすませた?」

 

「うん!すませたもんね!オレっち偉い子!」

 

「そうだね。ランボはとっても偉い子だよ。」

 

 奈月の元に走り寄るのは小さな少年、ランボ。

 日本にいる最強のヒットマンであるリボーンを暗殺することを目的として、ボヴィーノファミリーからやって来た男の子だ。

 沢田家に転がり込んで来た時、ランボは何度かリボーンの暗殺を企てたが、今の彼は暗殺よりも出会った奈月を優先している。

 それがハッキリとわかるのが、日頃の生活の様子にある。

 

 まず、ランボはよく、奈月と奈月の母親である奈々の手伝いをしていることがある。

 取り込んだ洗濯物を畳んだり、流し台に用意されている踏み台に乗ってプラスチックでできた器を洗ったり、奈月に抱っこされながらではあるが、机の上を拭いたりと、様々なことをしているのだ。

 しかも、それは全て言われたからやっているのではなく、自ら進んでやると言っているのである。

 

 その成長の仕方は、あのリボーンですらも認めた上で、自身を反省する原因になる程だ。

 預かっている身だからと、奈月が定期的に連絡を取り合っているボヴィーノファミリーのボスは、ランボのその成長っぷりによく涙を流して感動している。

 

 次に、お手伝いがない時のランボは、5歳児からでも勉強することができる簡単なドリルを使って勉強をしていることがある。

 これは、たまたま奈々と買い物に行った時にランボが見つけて来たものではあるのだが、「ナツが勉強するなら、ランボさんも勉強する!」と言って持って来たのである。

 最初、奈々はかなり驚いていた。5歳の子供であれば、遊びたい時が多いと思っていたのだ。

 しかし、すぐに幼稚園から勉強している子供が世の中には沢山いることを思い出し、1日にどれだけやるかページを決めて勉強していこうという話になった。

 

 急に勉強をすると言い出したランボに、これまた沢田家に居候しているビアンキが、どうして勉強をしようと思ったのかを聞いたことがあった。

 それに対してランボは……

 

 ─────……少しでも勉強ができるようになれば、ナツを助けることができるもんね!オレっちもナツを助けるの!

 

 ……と理由を述べた。

 流石は5歳児というべきか、どうやら彼は側にいてくれるしっかり者の女の子にかなり影響されたらしい。

 

 他にも彼は……

 

 ─────……ナツはねー……いつもオレっちに優しくしてくれてるの。頑張ってくれてるの。オレっちが小さいから沢山のことをしてくれるの。だからオレっちも頑張るんだよー。

 

 ……という言葉を残している。

 幼いながらも、彼女がどれだけ沢山のことをやって来ているのかを理解しているらしく、彼女の手助けをしたいと考えているようなのだ。

 その話を聞いたビアンキは、彼の思いの中に、別の想いが混ざっていることにいち早く気がつき、5歳児のランボでもわかりやすいように、最近は勉強を見ていることがある。

 

 ランボはその姿を決して奈月には見せたりしない。自分が勉強している姿を見せたら、間違いなく奈月は自分のことよりランボのことを優先しようとするため、絶対に見せることはしない。

 いつかビックリさせちゃうもんね!と言う考えのもと、頑張っているのである。

 

 そんな彼の楽しみは、2日に1回は必ずある、奈月とのお休みの日。翌日まで奈月を独り占めできる特別な夜だ。

 寝支度を済ませたあとは、ずっと奈月と2人きりで過ごせるこの夜は、ランボにとって、1番好きな夜だった。

 

「ねーねー、ナツ。オレっち、今日はこの絵本を読んでほしいもんね。」

 

「ん?ああ、パンケーキを作る話だね。私も小さい時によく読んでもらっていたよ。」

 

「本当?」

 

「うん。その本を読んでもらった時は、いつもパンケーキを食べる夢を見ていたかな。朝起きたらかなりお腹空いていたよ。」

 

「あははは!ナツ、食いしん坊ー!」

 

「食いしん坊って言うな。甘いものが好きって言ってくれ。」

 

 拗ねたような表情を見せながらも、近寄って来たランボを優しく抱き上げ、自室の方へと歩いていく奈月。

 彼女の腕に抱かれて移動するランボは、くふくふと笑いながら、普段は見ることがない表情をする奈月の腕の中で過ごす。

 彼女の肩越しに見えたリボーンには、あっかんべーを見せて。

 彼に挑発されたリボーンが、何かにヒビを入れたような様子を見せたが、奈月はそれに気づかなかった。

 

 程なくしてたどり着いた奈月の自室。

 綺麗に整頓されており、危ないものはそっと端の方へと避けられているその部屋には静寂のみが広がっている。

 この部屋は、日中と夜中でよく姿を変えるのだ。全ては部屋で過ごす人が危なくないようにするための、奈月の配慮と言えるだろう。

 

「よいしょ。なんかランボ、少しずつ大きくなってるね。ちょっとだけ重さが出て来てるよ。」

 

「本当?オレっち、いつかナツを抱っこできるようになるかな?」

 

「なると思うよ。外国の人って、日本の人に比べたら結構大きくなるからね。ランボが大人になる頃……いや、もしかしたら10歳ぐらいになる頃には、私の身長を超えちゃってるかもね。」

 

「!だったらオレっちもナツを抱っこできるもんね!いっつも抱っこしてくれてるから、オレっちもナツを抱っこしていろんなところ歩くー!」

 

「いろんなところを歩くのはちょっと勘弁してほしいな。恥ずかしいから。」

 

「え〜……」

 

「拗ねないの。」

 

 奈月に軽くツッコミをされながらも、ランボは部屋のベッドに飛び乗る。

 それを追うようにしてベッドに座った奈月は、すぐにサイドテーブルに置いてあったスタンドライトの電源を入れ、ほのかな灯りで部屋を照らし始めた。

 

「さてと……トイレは済ませたかな?」

 

「うん!ナツに抱っこされる前に終わらせておいたよ!」

 

「ならばよし。トイレに行き忘れちゃったりすると、夜中に行きたくなっちゃうからね。ちゃんと済ませていたようで何よりだよ。」

 

「だって、ナツのベッドでおねしょしたくないもんね!ママンのベッドでもおねしょしたくないもんね!

 だからオレっち、ちゃんと寝る前にトイレは済ませてるんだよー!イタリアにいた時は、何回か忘れちゃったけど。」

 

「あれま……。イタリアでは何回かやっちゃったのね。」

 

「やっちゃったもんね。ボスに怒られた〜……」

 

「はは……。まぁ、確かに、おねしょって後始末が大変って聞くし、何より、いつかボヴィーノファミリーを継がせたい子が何回もおねしょをするようだと、周りから何を言われるかわからないから、そりゃ怒るよ。」

 

「だから今はしてないもんね!偉い?」

 

「うん。ランボは偉い子だよ。」

 

「えへへ〜……ランボさん、偉い子!」

 

 ふにゃっと笑顔を見せるランボの頭を優しく撫でながら、笑顔を見せる奈月。

 彼女の笑顔を見たランボは、どこか胸あたりがポカポカするような感覚を覚え、上機嫌に笑い声を漏らす。

 そんな彼をしばらくの間撫でた奈月は、ランボを膝に乗せてから絵本を開く。

 彼女が絵本を開いたのを確認したランボは、すぐにその表情をワクワクに染め、奈月が寒くないようにと毛布を自分と彼女にしっかりとかけながら絵本に視線を落とした。

 それを合図に、絵本の読み聞かせは始まる。静かな部屋の中には、穏やかな少女が絵本を朗読する声と、絵本の絵に目を輝かせ、時に声を漏らす明るい少年の声がこだました。

 

「……ランボ?」

 

 しばらくして、穏やかな朗読の声は疑問の声に変わる。先程まで笑い声などをあげていたランボの声が聞こえなくなったことに気づいた奈月は、静かな声で彼の名前を呼ぶ。

 しかし、その声に対する返事は全くなく、穏やかな寝息だけが聞こえている。

 絵本を閉じ、膝の上にいるランボへと視線を向けてみれば、彼は完全に目を瞑っており、すやすやと夢の中へと旅立っていた。

 

「……おやすみ、ランボ。」

 

 いつものように、頬を軽くつっついてランボが眠っているかどうかを確認した奈月は、優しく微笑んでランボをゆっくりと横たわらせる。

 寝返りを打って、落っこちてしまわないようにと、自分の体を柵の代わりにしながら、スタンドライトの電源を切った。

 しっかりと毛布をランボにかけて、彼が風邪をひかないように、怖い夢を見ないようにと、一つのおまじないとして、小さな額にキスを落としてから静かに抱きしめる。

 そして、自身もゆっくりと目を閉じて、緩やかに呼吸を繰り返せば、彼女もまた、夢の中へと旅立った。

 

 ……部屋に奈月の寝息が聞こえるようになった頃、先に眠っていたはずのランボが静かに目を開ける。

 実をいうと彼は、奈月が眠りに落ちるまで寝たフリをしていたのだ。

 

 普段ならば、寝たフリをしていればすぐに気づいてしまう奈月だが、この日は疲れていたのか、彼が寝たフリをしていたことに気づいていなかったらしい。

 ランボは少しだけ心配してしまったが、それはそれとして、目の前で眠っている大好きな女の子のことをジッと見つめていた。

 

 いつもならば見ることがない奈月の寝顔。初めて見ることになったそれを見て、ランボは少しだけ胸を高鳴らせる。

 奈月にはよく抱っこしてもらっているランボだが、抱っこの高さでは彼女の顔を近くで見ることはほとんどない。

 眉毛とまつ毛は、髪の色と同じなんだ。唇はこんな色だったんだ。まつ毛はこんなに長かったんだ……初めて見つける奈月の特徴、奈月の姿がそこには広がっていた。

 

 ─────……触ったら怒るかな?いつもナツがやってくれてるみたいに、頭を撫でたら起きちゃうかな?沢山のことをしてもらってるから、オレっちもナツに何かお返しがしたいのにな………。

 

 そんなことを考えながら、ランボは奈月の寝顔をジッと見つめる。

 しかし、不意に閉ざされた目蓋に彼は視線を向け、少しの間瞬きをする。

 

 ─────……ナツの目、見えない。オレンジ味の飴玉みたいな、キラキラの目……綺麗なのに……。

 

 普段の奈月が自身に向けてくれている優しい目……太陽のような、飴玉のような、どこか眩しい明るい瞳。

 眠っているから仕方ないとはいえ、目蓋の裏に隠れてしまっているそれが見えないことに、ランボは少しだけ寂しさを感じる。

 

「……おやすみだもんね、ナツ。」

 

 ─────……明日にならないとナツは目を開けない。キラキラの目は明日にならないと見ることができない。

 

 ─────……寝顔を見ることができたのは嬉しいし、なんだかちょっぴりドキドキしたけど、やっぱり起きてるナツが好き。

 

 そう考えたランボは、彼女の真似をするようにして、眠っている奈月の頬にキスを落とす。

 その瞬間、彼はどことなく顔が熱くなるのを感じた。寝顔を見つめていた時以上に胸はドキドキと早鐘を打つ。

 なんだか恥ずかしくなり、急いで毛布の中へと潜り込み、そのまま目蓋を静かに閉じた。

 

「…………まさか、真似っこされるとはね。」

 

 その一部始終を、実は奈月に全て把握されており、少しだけ彼女の頬が赤くなっていることに気づかずに。

 そして、そのことを10年経った先で、一つの話題、思い出として度々出されることになることも……小さな彼は知らなかった。

 

 

 




 最近、体調が乱高下してるし、ゲームのイベを走らないとだしでバタバタしてる作者です←
 冷えたり暑くなったり……なんなんだ今の時期は………(~_~;)
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