ミサイルのドタバタから1日。明日この星を出ることになった。
エルフィンⅡの準備も万端だ。
俺達にとって残すことはムギホシだけだ。
俺と虎鉄は朝起きてからムギホシを探していたが、神殿の食堂(と俺達は呼んでいるけど違うかもしれない)で彼女を見つけた。
もう昼食の食事の時間か。長い間彷徨っていたみたいだな。
「ムギホシ、探したよ」
「どこにいたのミャ?」
「え? 探してたの。ちょっとバトゥのところにね」
なんだ、バトゥのところか。行違ったみたいだ。
「わたしになにかご用? お別れは明日でしょう?」
俺と虎鉄は最後だと心に決めて口を開いた。
「俺達と――」
と、喋り始めてストップが掛けられる。
そうムギホシが止めたのだ。
「ここでお別れ。
一族は死んだ。
あとはわたしだけ。
ここは聖地。一族の墓もここ。
星神様と共にあれ」
いつにもまして真面目な、そして辛そうな表情をするムギホシ。
でも俺達も負けてはいられない。
「でも、ムギホシに一緒に来てほしい」
「一緒に宇宙に行ってほしいニャ!」
「俺達をもっと助けてほしい。
自分勝手な話だけど、俺達が帰れることになったらまたこの星に戻ってこればいい
もっとムギホシと冒険したいんだ」
「オイラを放っておいたらすぐ強くなるニャ。ムギホシなんかすぐ追い抜いてやるミャ」
彼女はずっと黙っている。
「それに星の子……星神のメッセージを伝えるよ」
ムギホシは揺れたように見えた。
「エンシャント・グレーター・アラクネと戦った時に星神に会ったって言ったけど、実はそれだけじゃないんだ。それは――」
「言わなくていいわ。聞きたくもない……!」
意固地だ。こうなったら勝負が先だな。
「勝負しよう。1体1だ。負けたらもうこの話はしない。勝ったら一緒に来てほしい」
「…………」
「受けてくれるかな?」
「…………受けるわ」
虎鉄は「よっしゃニャ」とガッツポーズだ。まだ戦う前だぞ? でも一歩は進んだな!
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勝敗は参ったと言うか戦闘が維持できないと負けというわかりやすい勝負だ。
命のやりとりはしない。これはムギホシからの厳命だ。
それ以外は基本なんでもありだ。
でも今回は必殺技のスキルみ禁止とした。しかし、ムギホシは「あら、使ってもいいのに」なんて言っていたから、放ってもいいが当たらないということか、それにそれほどレベル差はないぞと思ったがなにも言わないでおいた。下っ端のセリフそのままだしね。
おそらくこの星で最強はムギホシ。
今の俺のレベルはLV38で、彼女の脅威度は実は赤より紫だ。
本当は一つでも攻撃魔法が覚えたらよかったのにと思うがレベルは上げられなかった。
まあ、やるしかない。
さっきも言ったが、命のやり取りではない。だから……いや、ならば1本とれる。
虎鉄を見る。
グーサインだ。やるだけやってみろと真剣な顔でサムズアップだ。
バトゥを見る。
表情は読めない。今回の審判をお願いした。アンドロイドならこういう時は適しているだろう。バトゥの開始の声を待っている。
最後にムギホシの全身を眺める。
身長は140センチ。最初から白く輝く剣を出して呟いた。
「剣こそエルフの道、星神様と共にあれ」
そういえばその剣の名前は「ライトケイン」というらしい。「ケイン」だから「剣」じゃなくて「杖」の一種なのかな。
今考えるところではないな。そろそろかな。
バトゥが右手を挙げて――
「はじめ!」
そして下げた。
ムギホシはやはり動かないか。
それなら、まずは物理防御力UPの魔法Ⅰ、土防の魔法Ⅰ、風防の魔法Ⅰだ。
土属性の防御の魔法と風属性の防御の魔法、これを物理防御力UPの魔法と合わせると防御力は単純に2倍近くに高めることができる。
発動するまで1秒もかからない。
そのあとはデバフだ。弱体化の魔法、乱れ撃ちだ!
赤寄りの紫なら多少レジられても入るはず!
暗闇の魔法Ⅱ、毒詛の魔法Ⅱ、緊縛の魔法Ⅱ、睡眠の魔法Ⅱ、麻痺の魔法Ⅰ……SPが尽きるまで連発だ!
……
……
……
「「!!」」
彼女が若干ブレた。いけるぞ!
「もらった―――」
その瞬間、俺の記憶は途切れた。
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「どうなった?」
俺は少し気を失っていたようだ。
「顎を揺らされたニャ。見えニャかったけどミャ」
「そんなに上のレベルか……。レベルではなく戦いのやり方かな。すまん、虎鉄の方が勝てたかも」
そう言うと虎鉄は苦笑いをして答えた。
「無理ニャ……本当にだミャ」
「星の子のメッセージを伝え損ねてしまった……」
俺達は茫然としながら悔しさに打ちひしがれていた。
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【視点ムギホシ】
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エルフィンⅡの機体が白く輝く。
わたしはあの二人が冒険に出て行ったあと毎日この宇宙艇のコックピットに足を運んでいる。
「ちょっと悩んでいるの」
わたしの呟きに反応する人がいた。
「あなたとは良い仲間達だと思っていました」
後ろに立っているはバトゥだ。
その彼が不意に質問してくる。
「あなたはひょっとしてルーンの民の生き残りだけではないのでは?」
「どうしてわかるの?」
「ゴブリン達は理由や目的も言わずに私をこの地に連れた来ました。ルーンの民が滅んだ、この呪われた星へと。しかし、あなたを見て気づいたのです。私の主人はドワーフの科学者でルーンの民と交流してました」
突然の告白だった。
「そんな……」
「この甲冑を見覚えがあります。あなたがルーンの民の生き残り……最後の王族なのですね」
わたしはあまりのことに絶句してしまう。
「だったら外に出るべきですよ」
「……」
「あなたの先代の王も言ってましたよ。今度生まれる子には外を見せたいと」
目を見開いて彼を見る。
「祖父を知ってるの?」
「祖父だけではありません。あなたの父上と母上も会いました。みんなの意見です。外を見せたいと」
衝撃だった。
気が付くと彼の言葉を繰り返していた。
「そうだったの……」
自分の頬を濡らしているのは……。
「私は外の見回りをしてきます」
わたしは一人コックピットに座っていた。
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朝になった。新しい旅の門出だ。
つい暗い気持ちになるところを強制的に明るくさせようとする俺。
「……おはようニャ」
と言ってるそばから暗いなあ。
「そう言うなって。このあとは楽しいことがいっぱいさぁ!」
「……よけい暗くなるニャ」
そんなこと言うなよ。傷つくなぁ……。
俺と虎鉄が食堂に入ると、そこにはムギホシとバトゥが揃って待っていた。
「わたしも行く。新しい世界に」
俺達二人は抱き合って喜んだ!
そして、ムギホシと握手だ。ムギホシは、俺が右手で虎鉄が左手で握手した。
その3人を眺めて顔が「^_^」になるバトゥーク78。
「目が笑ってるニャ!」
「これってどうなってるんだ?」
「わたしに聞かないでよ」
「いいではないですか。4人でバルボア星に向けて出発です」
俺達は笑いあった。こんなに笑ったのはいつ以来だろうか。
「あ、それじゃあ星神様のメッセージも伝えていいかな?」
「そういえば、そんなことを言ってたわね。いいわ、聞くわ」
口調はなんか軽すぎかもと思ったけど、逆に緊張しているよにも見えるな。
「では……『もう外に行きなよ。心配無用だよ、君が知ってるあそこを調べてね』だって」
「星神様も宇宙で出ろだってニャ」
「でも『君が知ってるあそこを調べろ』ってのはわかんないな。わかる?」
顎に手を当てて考えるムギホシ。
彼女が突然、走り出す。
「もしかして――」
なんだなんだと残りの3人を駆け出した。
その時だった。けたたましいアラームが鳴り、その後に続く爆発の音と地響きがしたのは……。
そして、大音声の声が響いた。
『――聞いてるかぁ。
泣く子も黙るアビゲイル・ローゼス団のスラッシュ様とは俺のことだ!
愛する弟のリリアムを殺したのは誰だ! 出てこい!!
殺してやる! 俺のこの星間爆撃機でなぁ!!!』
読んでいただきありがとうございます。
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