23 バルボア星まで何光年?
俺達はそれまで惑星エルフィニアのあった場所から7万光年の宙域にいた。
エルフィニアが消えたあの時、すぐに超空間航法という――なんか俺のイメージする『ワープ』みたいな――技術で謎空間に入った俺達だったが、その空間では宇宙がまるっきり見えなかったので途中で謎空間を出てもらったのだ。
「で、そのバルボア星まで謎空間ならどれくらいで着くんだ?」
バトゥが呆れて答えた。
「あと31万光年ですから計算の時間を含まると約6時間ですね。計算の時間がかかるんですよ」
え、そうなの? そういえばさっきも謎空間に入るときになんか時間がかかってたな。
「行先の座標が決まったら、いろいろ計算しなければダメなの」
「計算ってなにを計算するミュ?」
「超空間の出口がちゃんと確保できるかとか重力の井戸が近くにないかとか諸々よ」
へ~よく知ってるなぁ。まるで宇宙が初めてだなんで見えないな!
「10歳の子供でも習うことだわ」
ムギホシも呆れがちに笑う。
「でも超空間航法とは驚きの技術だな。31万後年がたったの6時間で行けるなんて」
「今の技術でどれくらいの速さなの?」
今度はムギホシからバトゥに質問が飛んだ。
「今はクラス5の超空間エンジンが時速1,1428光年ですね」
「わからないくらい早いニャ」
「しかし、最新鋭の戦艦でクラス5ですから普通の宇宙船ならクラス0.5でも上出来ですよ。500年前のエルフィンⅡはクラス3ですけどね!」
そう言って何故か胸を張るバトゥ、
なんでも『超空間航法』とは、『超空間』に入ることによって光の速さを超える手段を手に入れるようだ。その『速さ』が『超空間エンジン』の種類によって低い順でクラス1からクラス5に分かれているってことだ。
クラス1が遅くてクラス5が速いってことだな。
でもクラス1が時速で言うと約3800光年だから通常空間で移動するより断然に早い。ちなみにクラス5が時速11万5000光年だってさ。
『通常空間』に途中で戻る場合は、その都度計算しなくちゃ外に出られない、というか外に出られるかは出たあとに決まるというか……。外に出ても、良くて恒星の中とかだったりもするそうだ。くわばらくわばら。
「ニャ、ニャ――わかったニャ!!」
突然、虎鉄が叫んだ。
「なにをわかったんだ?」
虎鉄が自らを説得するかのように語り出す。
「ムギホシが最初に会ったときのこと覚えてるニャ? あの時、ムギホシは『最低1000年は掛かる』って言っミャ!」
「よくそんなことを覚えているなぁ」
「その時は『超空間航法』でって言わニャかったのかミュ?」
「そうね。言ったわね」
ムギホシも言ったことは覚えているそうだ。ひょっとして忘れているのは俺だけなのか?
「それだけ距離は離れているし、時間もかかるからわからないって例えとして話したのよ」
「ちなみに今わかっている範囲では10億光年ですね。でもチキューという星はまだ見つかっていませんね」
「そして地球の場所も地図がないかわからないってことか」
「だから、わかったんニャ。地図があっても今の技術だと難しいってことニャ。と、いうことはニャ」
「と、いうことは?」
「新しい技術を作るニャ! クラス6とか7とか遅すぎるから、いっそ別の新しい技術だニャ!」
そこまで聞いてバトゥは褒めるように言った。
「コテツ様の発想力は素晴らしい! ……して、その新しい技術とは?」
「それはまだニャ!」続けて――「そのうち考えつくミャ!」と自信満々に話す虎鉄さん。
新しい技術ねえ……。レベルが上がって新しい魔法とかスキルで行くのが早そうな気がする。
そんな感じで話していた俺達だったがバトゥが気付いたように皆に話かけた。
「そういえば、宇宙をご覧になっていかがですか?」
バトゥ以外の3名はようやく宇宙を見れたのだ。俺と虎鉄は星の子に初めて会った時に一瞬だけ宇宙に出たけど、のんびり見るのはこの時が初めてだ。
「静かね……」
ムギホシがしみじみと呟く。俺も同感だ。
しかし、虎鉄は違ったのだ。
「宇宙に出たいニャ!」
それってもしや……
「もちろん生身で出たいミャ!」
そうなのか。やっぱりそうだったか。虎鉄なら体調管理機能を必ず試したいと言うだろうなーと思ってたよ。
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虎鉄はハッチを開けて
もちろん俺も続いて出て行った。
二人とも宇宙用のスペーススーツも着ている。だって怖いんだもの。虎鉄は「怖いことなんてないニャ」と言っていたが、みんなして止めたのだ。
実はナビも大丈夫だって保障していた。今のレベルであれば30秒まで生身で宇宙に出ることができるみたいだ。
でも、最初から生身で宇宙に出るのは危険だし、30秒経って船の中に戻れるとは限らないので、とりあえずスペーススーツを着てからにしてみようとなった。
「ニャーこれが無重力ミャ!」
楽しそうにくるくる回る虎鉄さん。
俺はエルフィンⅡの外装につかまってそれを見ている。
「そんなところにいないでタツローも遊んだら?」
ムギホシがハッチを開いて出てきた。
「……よし、俺も泳ぐぞ!」
つかまっていた手を放す。
「移動する時にはスラスターを使ってね」
ムギホシが自分の腰を触って「ここのスラスターよ」と教えてくれた。
その後、3人の遊びは鬼ごっこに発展してバトゥが止めるまで続いたという――。
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そして6時間後――
「あれが惑星バルボアか!」
「大きさはエルフィニアよりちょっと大きいニャ!」
俺達は新しい惑星との出会いに感動していた。
次回は3月27日0:00で更新します。
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