高い丘から荒野の中にある円形の都市バルボア・シティを望んでいる。
「ナビによると直径は116kmだそうだ。向かって左向こうがターミナルだって」
「ターミナルだけで三分の一はあるニャ」
茶色い荒野にそこだけ唐突に都市が現れるんだもんな。スゲー。
「わたしも初めて。これが都会というものなの?」
「田舎ですよ。エルフィニアが栄えていた時はこんなところは比較にならないほど都会でしたよ」
へ~バトゥは都会だったエルフィニアを見たことがあるんだ。
それでもバルボア・シティは地球の日本より高いビルが幾つか立ち並ぶ都市だった。
しかし、ムギホシに貸してもらった双眼鏡を除くと高いビルの谷間には小さなバラックが立ち並んでいるみたいだ。心なしかインドのイメージだよな。
「さあ、いきましょうか。あなた方の泊まる場所も必要でしょうし」
バトゥ・ムギホシ組が先頭について縦に2台で走り出す。
俺は気持ちが高まるのを感じた。
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バルボア・シティに着いてみたら簡単に街には入ることができた。
簡単に言ってしまえば「ド」が付くくらいのスルーだった。
俺達みたいな非合法極まりない星の入り方なんてしないのだろう。港だけは厳重みたいだ。
「タツロー様の『魔法』は便利で驚きますが使うのは控えてくださいね」とバトゥの言葉だ。
「わたし達の霊理力にも似たようなことをできる人達はいるけど、あれほど強くはないわ」
そういえばムギホシの霊理力は見たことはないなぁ。今度見せてもらおう。
「それよりもこの人の多さときたら東京の新宿に行ったみたいニャ!」
俺の足を引っ張って「見て見て」とはしゃぐ虎鉄君。昔テレビで新宿は見たことがあるらしい。しかし、俺もコロナショック以降はこんな人手は久しぶりだ。
なので俺もちょっと浮かれている。この活気は東京以上だ!
「あの人は犬人間? あ、コボルト族なんだ。へ~」
と視界に映る世界が眩しすぎて目が離せない。
「あの人はなんニャ。猫に似てるけど大きいし、もっと人間じゃニャくてヒューマン族に近いような感じがするミャ」
「あの人はキャットマン族よ。ケットシー族とは違う人種よ」
「ナビが出ているけど、あまりにびっくりして見るのを忘れたのニャ!」
「見物はこれくらいにして、ちょっと店に入りましょう」
店!? この宇宙で初めての「店」!? 緊張してきたぞ。
バトゥの案内で飲食店系というかパブというか、ようするに酒場のような店を構えのところに入った俺達。
昔の西部劇に出てきそうな店だなー。
「ここならやっとヘルムを脱げるわ。この星は砂埃が酷いわね」
「この星に来て初めてのノーマルタイプのムギホシだミャ」
ヘルメットを脱いで180センチから140センチになったムギホシを虎鉄はノーマル・タイプと呼ぶのか。俺も真似しよう。
「で、こんな店、入っても大丈夫? 高くはないの?」
初めてのバーに行った若者のように心配になる俺。
「大丈夫ですよ。ここなら私のヘソクリでなんとかなります」
このヘソクリの話が出たので行きのホバーバイクで出た「お金」に関する話をしよう。
ヘソクリとは、ゴブリンどもの奴隷だった彼が230年我慢して集めたお金だ。まさに爪に火を点すような努力だっただろう。
その金額は11万クレジット。この宇宙でお金の単位だ。「この宇宙で」と言ったが主に人間の活動範囲で使われる単位で、
さっきこの店に入るまでに行商人がいたのでタマゴ(「よく売れているココティの卵」とナビには出てたけど「ココティ」って?)と果物の値段を見ることができた。タマゴ1個は20クレジット、リンゴみたいな果物は1個400クレジットだったから、日本の円と大体同じ物価で円に置き換えてもよいかなぁと思う。
ムギホシは一切クレジットを持ってきていなかった。金のことは頭が回らなかったそうだ。まあ、あの状況ならしょうがなうよね。あと昔からお金を使うことってなかったんだろうな。
そういえば、この星では物々交換も可能とのこと。
でも、やる時は見ヶ〆料が必要な場合が多いので注意が必要で推奨はされていないとのことだ。
ギャングとかテリトリーとか。
この辺りはバトゥも詳しそうだ。
店を構える時は都市に支払う税金や場所の使用料は別途かかる、ってこれは普通だな。
ここまでは、この都市に来るまでに道中で聞いた話だ。
と、ここで店のウェイター(ヒューマン族だった)が飲み物を運んできた。
「みなさん、まだ不慣れだと思いますので私が勝手の頼ませていただきました。申し訳ありません」
バトゥは頭を下げる。
「あと、ここまで連れてきていただいたお礼です」
「そんなこといいのに……」
俺は突然の謝罪とお礼に戸惑ってしまった。
「そうだミュ。このあともやってもらいたいことが一杯あるニャ!」
バトゥは微笑んだのか「^_^」の表情だ。
「どうぞ、召し上がってください。アルコールにような刺激のある要素は入っておりません」
俺とムギホシは同じものだ。ナビによると紅茶と似たような飲料水だそうだ。
「おいしいよ。ムギホシもおいしいよね」
「うん、わたしはこれが気に入ったわ」
そんな中、虎鉄は打ち震えていた……。
「どうしたの……? 玉葱とかチョコとか入っていたのか?」
虎鉄は、ぼろぼろと涙を落とした。。
「バトゥはん、なんちゅうもんを飲ましてくれたんミャ……」
その虎鉄の反応を見て、俺は気が付いた……!
「まさか、あのまさか……」
口を開くがうまく声が出ない。
1分ほどだろうか虎鉄の反応を見ていた3人だが、バトゥさんがようやく打ち明けた――。
「それはケットシー族に大好物です。コスモ・ル~チュといいます」
愕然とする虎鉄。
「あの味そっくりニャ! 無理だと諦めたのが3カ月前ニャ、もうダメかとおもったニャ……」
それほどアノ嗜好品と一緒の味なのか。それにしても『コスモ・ル~チュ』って……。
「あのー話がわからないのだけど? お金の話は済んだのかしら?」
あ、すみません。あと虎鉄は笑顔で食べてましたとさ。良かったな。俺も嬉しいよ!
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