「どうしました?」と聞く受付嬢を絶句して見つめる俺達に後ろから声が掛かった。
「どうしたんだ? 揉め事か?」
振り向くと亜人族の男達が並んで立っている。
今、こちらに話しかけたのは――
『名称:ジャガーマン族
性別:♂
年齢:24歳 』
だと思う。真ん中いるし一歩前に出ているし。
他の人達は「ジャガーマン族」二人と「ヒューマン族」と「ベアマン族」で、全員男で年齢も22歳から24歳だ。32歳の俺から見ると若いねぇ。
ナビによると「ジャガーマン族」がジャガー、「ベアマン族」が熊《ベア》の亜人だそうだ。
とりあえずジャガーマン族A,B,Cと呼ぶことにする。
「なんだー? 初めてのクエストでなにか問題があったのか。受付嬢が困っているぞ?」
ベアマン族の男がそう言いながら、5人とも俺達を無視して受付の女性に近づいた。
「おっさん、邪魔。用が済んだらどけっての」
俺に言ってるの?と思ったら、ヘルメットを着用中の180センチバージョンにムギホシに向けてあった。そして、軽く肩を当ててムギホシの前に出るジャガーマン族B。
「フロア変わったんだ。探したぜぇ。仕事ももう終わりだろ? 食事な行こうぜ」
紫色の髪をしたヒューマン族が言った。
男達は受付のカウンター越に女性を取り囲んで喋りだす。
この女の人を探してたって言ったな。カスハラか?
受付の女性は最初苦笑していたが今は泣きそうな顔になっている。
なんだ? この人達。あ、髪を触ってる。これは許せん。言ってやらねば、なあ虎鉄さん。
ようやく他の受付の女性達が気が付いて警備員を呼びに行こうとした、その時だった。
「まだ用件は終わったないわよ。あと私の肩に当たったけど謝罪はないのだけど」
え? ムギホシさん、トラブルに自ら入ってゆくタイプなの?
「デカいからって舐めるニャだミュ」
虎鉄さんもやはり武闘派なのだった。
「そうです……。まだ用件は済んでません……」
そう言ってヘルプの声を上げる受付の女性(ちなみに彼女はドッグマン族でシーズーみたいだ)。
「いいじゃん、もう終わったの! サイナラ~」
と言って、ジャガーマン族Cはまたムギホシの肩を小突いた。
「ランク1のビギナーとお子様はもう帰れ。俺達はランク11だぞ」
この「お子様」は虎鉄向けに言ったな。
終わったな……俺はそう思った。
先ほどから表示されていたが、そいつらの脅威度はたまに一瞬赤色の変わるが、基本は青色の真っ青だったからである。ん、ちょっとおかしいな。ナビに故障とかあるんだろうか。
でもランク11でもこの程度なのか。
その一瞬だった――
もう一度彼女の肩を押そうしたジャガーマン族C。ムギホシはその腕を取って――
5人の荒くれ者をあっという間にノしてしまう彼女(180センチバージョン)。
たぶん30秒はかかってないような気がする。戦闘行為不能状態だ。
「バカね。念のためヘルメットをしてたけど、これでランク11ならしなくていいわ」
そう言ってヘルメットを脱いでノーマルタイプのムギホシになる。
虎鉄も参加できずに終わって「早すぎニャ……」と気落ちしていた。
ナビを見ようとしたら何故か表示はでなかったが、6人は「ううっ」と言っていたり悶絶してたりしてムギホシを見ているから命に別条はないと思う。
その後、警備員達がその6人を運んでいった。ご愁傷様です。
そして面倒なハンター達がいなくなってお礼を言う受付の女性、だったのだが……
「……でも、ここの施設を壊してしまいましたね」
また面倒なことが起こってしまった!
受付カウンターの周辺とフロアがボロボロで……。
ムギホシは基本掌底打ちだが、5人は銃を使ったのだ。
その後、偉い人(「フロア長」と表示された)から「登録初日、それもクエストを受ける前にこれとは初めてだ!」と叱られた俺達は「とりあえず施設が直るまで数日は出入り禁止」と言われ、まさか一日の内に2回も絶句するとは思わなかった……。
おそらく十日くらいだと言ってくれたが……。
「ちなみに……素材の売買ができないのですか?」
同席していた受付の女性(この時、名前を教えてくれた。「マルル」というらしい)は、
「当たり前ですね……。すみません」
と謝罪付きで教えてくれた。
あのハンター達5人は別フロアに連れて行かれたのでどうなったかは知らない。むちゃくちゃ沈んでたな。ご愁傷様です。
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