「困った」
俺は何回目かの「困った」を繰り替えしている。
あれから30分、別行動だったバトゥが待ち合わせ場所にやって来た。
なんと彼もめでたく再発行にはならずに失敗……というか、再発行は問題なくできるが、再発行するにはお金が2万クレジット(それでも再発行なので安い)かかるとのことだ。
しょうがない。霊理力を使ってもらって金をゲットするか? または隠れてなにか売るか? どちらも非合法よりだけど……。
「もう日も暮れてきたニャ」
「この街を出てエルフィンⅡで寝るとかどう?」
ムギホシもやり過ぎたと考えているのか声が沈みがちだ。
「しかし、それじゃあ解決にはならないですね……」
バトゥも最初に無駄使いしたから元気がない。俺ももしアレがあると知っていたら文句なしに買ったよ。
「しっかし、日暮れなのに暑いなぁ」
もう夕暮れ時だけど気温は下がらずまだ40度だ。
「オイラも喉が渇いたニャ。お水ちょうだいミャ」
ちょっと休憩するかと思って、前方にある公園にような広場があるから、そこの木陰に避難する俺達。
「私もちょっとクールダウンしますね……」
バトゥも樹に凭れて休憩モードだ。
俺も虎鉄とムギホシの分の水をアイテムボックスから出す。
この水は例の魔法の水だ。SPが尽きた時も飲めるように溜めていたのをアイテムボックスに入れてある。量は50立方メートルだから余裕で泳げるほどだ。
俺達3人は、ボトルに入れた水で喉を潤した。
「うまいニャ」
「前に飲んだ時も思ったんだけどタツローの水っておいしいわね」
突然褒められて嬉しいような恥ずかしいような。
しばらく水を飲みながら風に当たっていると、一人のおじさんが話しかけてきた。
「なんだか美味しそうだね。ひょっとしてそれは水かい? それだったら俺にもすこし恵んでくれないかね?」
おじさんはヒューマン族で好感度は青色だった。
「いいですよ。入れるものは持ってますか?」
「いいのかね!? この容器にお願いできるかな」
そう言って、2リットルサイズの容器を取りだした。
「それじゃあ、どうぞ」
初めて説明するけどアイテムボックスに入れたものを取り出すときは、取り出したいものをイメージすればOKだ。量も指定できるスグレものである。
「どうやって出したんだね……? ひょっとして霊理力かね。初めて見たよ」
「まあ、そんなものですよ」
先方がそれで納得すれば問題ないかな。星神様の思し召しだし。
しかし、良い飲みっぷり。もうすっからかんだ。
「美味い! こんなに美味い水は初めて飲んだよ。まさに甘露だ。良ければもう1杯入れてくれないか? もちろんお金は払うよ!」
そんなに美味しかったのか。お金を払うって……。
「これはビジネスチャンスですニャ」
「実は水の販売は考えていたんだよ。でも売るのは許可取らないとダメだから……」
それを聞いて、おじさんは笑った。
「いつの話をしているんだい。今は水の販売だけはフリーだよ」
なんでもこの星は昔から水が枯渇しているから今は水を持っていたら、何は無くても分け与えねばならないそうだ。もちろん水は高いからタダでとはならずに、持っている人に価格の決定権はあるって話だ。でも、双方合意のもとに決めるのが普通だってさ。
「この星はそんな決まりがあったとは私も知らなかったです」
バトゥは水を飲まないアンドロイドだからしょうがないよ。
「それじゃあ、この水はこの容器で3000クレジットでどうだろう?」
オジサンが俺を慮って先に価格を提示してくれた。
「では、2000クレジットでいいですよ」
「なんで値下げするんだい……」
オジサンは不思議そうにしていたけど最後には折れて2000クレジットになった。
なんかタダのものを売るから後ろめたい気がちょっとしてるんだよね。
でも、このあとオジサンの友達とか知り合いに口コミで広がって、水は3時間で40万クレジットになった。あいがたいね。
とりあえずお金が工面できた段階でバトゥは身分証明書を再発行するために走った訳だが……。
これで宿の泊まれるぞ。はぁ、つかれた……。
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そのあと、モーテルみたいな宿泊施設に泊まった俺達。
眠ろうとベットに入った時のそれは起きた。
『バージョンアップを開始します』
え! なんだって!? そう思いながら俺は眠りに落ちて行った。
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