猫と俺の オブ ユニバース   作:滝ノ水ネロ

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30 ナビのバージョンアップ

『バージョンアップを開始します

 旧ナビゲーションシステムは終了します

 ありがとうございました』

 

 

この言葉を反芻して俺は眠りに落ちてしまった。

 

そして――

 

覚醒した時にはなぜか雪山の麓に服を着て立ってたのだ。

 

となりには虎鉄も立っている。俺同様に今目覚めたようだ。

 

『やあ、今ナビゲーションシステムのバージョンアップ中だよ』

 

ソプラノの声が心の中に響く。「やあ」だけなのか。困った星の子だなぁ。

 

『ナビの様子がおかしくてね。旧バージョンをアンインストールして新バージョンを入れたいなって』

 

いきなりの本題に入ったな! 

 

「そのために来たんだった、もう地球に連れてってくれても良いけど……」

 

『ん? それは解決済みの話だよ?』

 

帰る手段は渡したってことなのかな……。オーバーロードの言うことはわかんないなぁ。

 

「こんばんわニャ。その前にここは何処か教えてほしいミャ」

 

おお、そうだね。虎鉄さんは人の言う通りにはならない男だね。

 

『あ、ごめんよ。話を急ぎ過ぎたね。ここはちょっと遠くにある星の山の中さ』

 

「ちょっと遠くって「星の中」ということはバルボア星ではないんだよね」

 

『ご名答。僕からしたら近所の星系だと思うけどね』

 

「えーまたどこかに連れてこられたのか!」

 

「ムギホシとバトゥは置いてきぼりかニャ!」

 

俺と虎鉄は憤慨する。

 

『いや、それはちょっと違って君達の意識だけを連れてきたんだ。心配しなくても身体は今もバルボア星にあるよ。だから、雪山だけど寒くはないでしょ?』

 

あ、そういえばそうだな。体調管理機能が働いてるのかと思ったのだけど温度を感じない。しかし今はバージョンアップ中だから体調管理機能も動いでないかも。

 

「星の子もこんなことができるようになったんだ」

 

「ひょっとしたら自慢したいのかもニャ」

 

『……だからバージョンアップが済んだらもとのバルボア星に戻れるよ。おそらく朝までに帰れるさ』

 

「なんか一拍置いたニャ。しかし、そういうことは早く言ってほしいニャ」

 

ごもっともです。

 

「で、なんで俺達を呼んだの? バージョンアップするなら勝手にやってもらってもいいのに?」

 

一番最初はそもそも俺達の意見は聞かなかったのに、とは言わなかった。大人ですから!

 

『いやぁ、色々あるんだよ。バージョンアップとテストは一組にやるべきとかね……』

 

そんな意見を言う人が星の子の知り合いにいたのか。あ、別の星の子(いるのか?)のとかかな。

 

聞いたら予想通りはぐらかされた。

 

『ナビゲーションシステムのアップデートと他にも色々調整したくてね』

 

「なにをどう変えるのか言って欲しいミャ」

 

そうそう俺もそれを言いたかった。ホントだよ。

 

『そうだね。予告は大事だね! それでは――

 

 まずは脅威度の表示をもう少し細かくするよ。

 

 これまでは青色と赤色に分かれていて紫色があったから明確じゃなったけど、

 

 これを白・黄・緑・青・紫・赤・黒の順番にします。

 

 脅威度の一番低いものが白色で相手にならない強さで、一番高いのが黒色でむしろ喧嘩を売ったら危険というかすぐ死ぬ、場合によっては存在すら消されるかも、なレベルです。真ん中の青色が君達と同じ強さだと考えてもらえれば。

 

 また、相手の強さは装備を含んだ強さに見直したよ。今まではテキトーすぎたから、もっと厳密にしたい。

 

 でも君達みたいに相手の「攻撃力」と「防御力」とか出してもいいけど……面倒くさいからヤメ。

 

 そして、好感度は青・緑・黄・紫・赤に変更です。理由は脅威度と同じだよ。

 

 好感度0がフラットの黄色で、青色が良好、赤が最悪って感じかな。

 

 あとは、相手を見た時の表示も変更したよ。

 

 「名称」に「種族」も最初から表示して、「年齢」「性別」は表示しないことにしました。君達もできれば見たくないって思ってるみたいだし。

 

 その他のも最初から表示されることは増えているから期待してね。

 

 レベルとスキルは今のところ変えないでいこうかなーと思うけど、ステータスのパラメーターはあまり見てないようなので表示は取りやめにしたよ。

 

 いいよね?』

 

いきなり聞かれたのでびっくりした。

 

「うん、正直そんなに見てないので……」

 

「オイラは見てるニャ」

 

『それじゃあ、階層を1段階下げておくにするよ。見えるから安心してほしい』

 

「ほっ」と安心する虎鉄。自分の強さに興味があるんだな。俺はないな!

 

『最後にスキルは変えないけど上方修正を行います!』

 

「おお、神レベルの運営か!?」

 

「そうなのミャ?」

 

虎鉄はゲームやらなかったから知らないのさ。下方修正ばっかの運営死ぬべし。

 

『なんか喜んでくれて嬉しいよ。では――

 

 達郎君に向けてだけど、宇宙船用にスキルの距離&範囲が増加させたよ。

 

 今までのアクティブスキルのバフは有効範囲が数メートルと近かったものが、数十メートルに増加させました。

 あと相手単体ではなくグループでも可能にしたんだ。

 でも自分だけしか効果がないスキルは変わらず自分だけだよ。

 たとえば癒しの魔法はグループでOK、ぬすむはNG。

 

 デバフも単体・グループ選択可で、範囲が広がった。半径500メートル。これはレベルによって増える。

 

 虎鉄君もこれから攻撃スキルとか増えていくから、今回のバージョンアップの恩恵が大きいよ。

 

 と、まぁこんなものかな』

 

「ニャら、楽しみにしておくミャ」

 

まあ、ちょっと使い方が変わるだけかな。やることは変わりなく基本「命大事に」だな。

 

『これで説明は終了! ……では実技試験いってみよう!』

 

「それでこの場所か」

 

「雪山とかやな予感がするミャ」

 

*********************************

 

この山はこの星の山脈の最高峰で標高2万メートルもあるそうだ。山脈に属しているけど独立峰だと言うことらしい。

 

これを今から登るそうな……。

 

でもレベルは38だし2万メートルとか余裕かも。体調管理機能も今は働いているし、もっとも意思だけの存在じゃなくて仮の体(自分にそっくり!)を借りている。そうしないとテストにならないそうだ。でも気温の感覚だけはナシにしてくれた。ありがてえ。

 

そしてこの山に特徴があって、一つはその形状だ。簡単に言えば三角錐を中心線で縦に割った形と言えばいいだろうか。だから、片面が絶壁になっているのだ。2万メートルの大絶壁だ。

 

しかも、絶壁の反対の斜面のある方をみると、傾斜45度の急斜面が待っている。

 

絶壁と比べればまだいけるかなと思うけど、頂上から吹き下ろす風と雪が行く手を阻む。

 

星の子曰く、斜面の方はモンスターも大量にいるらしい。しかも倒しても経験値が入るのは実技試験が終わった時までおあずけとのこと。理由は実技試験だから! 殺す気か!!

 

 

『3時間で登れるだけ登ったら実技試験は自動的に終了だよ』

 

あと3時間もやらされるのか~。

 

「実技試験を終わったら何かちょうだいニャ!」

 

虎鉄君、はっきり言って偉いな!

 

『ん~いいけどなにをもらえるかは君たちの行動によって変わる、としようかな』

 

「それでいいニャ!」

 

「報酬がなにもないのはやめたいなぁ。ちなみの頂上まで行ったらどうなるの?」

 

『達郎君面白こと言うね。それはないから考えなくてもいいよフフフ』

 

その笑いが怖い。絶壁の方はやめておくべきってそういうこと?

 

『あ、最後に言っておくよ。君達は二人のパーティだからそのつもりで」

 

そんなこと当たり前ではないか?と思ったが星の子の声がゲームの始まりを告げた。

 

『それじゃ、はじめ!』

 

 

*********************************

 

 

それじゃあ、とりあえず山道の方で行ってみようか。

 

と思ったのも束の間、麓にいるだけで凄い強風だ。この強風に加えて今は大丈夫だが上に行くにしたがって雪が降ってくるんだもんな……。

 

「ちょっと少し登ってみるミャ!」

 

虎鉄は相変わらず気が早いな。

 

でも走って出て行ったが風と雪原で思うように進めないようだ。これは時速2キロあるかないかのレベルだろう。

 

これは厳しい! と思ってたら虎鉄の周りで何やら影が忍び寄る。

 

モコモコっと斜面が雪が盛り上がるのが見えた。それも虎鉄の周囲に沢山だ。

 

「虎鉄ー! 見えてるか? モンスターだ!」

 

視界に表示が出る。

 

『名称:雪土竜(ゆきもぐら)雪土竜

 種族:モンスター

 脅威度:青 好感度:赤』

 

脅威度は青で勝てるけど数が多い! その数24体。まだまだ増えている。

 

走ってると遅くなってしまう。俺と虎鉄が200メートルは離れていた。

 

そういえば、デバフの有効距離が伸びたんだった。バージョンアップしてよかった!

 

暗闇の魔法、緊縛の魔法 睡眠の魔法、麻痺の魔法の乱れ撃ちだ。

 

虎鉄に追いついて今度は爆炎術の魔法を撃つ!

 

でも、まだまだ湧いて出る雪土竜の数は半端ないほどだ。

 

もう200体は倒しただろう。

 

俺達は物量に押されて斜面の下まで戻らせてしまった。

 

ここまでで時間は36分。残り後1時間24分……。

 

上に上がれずにおしまいなんてやだなーって思ってたときはあったなぁ。




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