31
俺達は再挑戦してみた。
で、結果は同じで山の麓に戻ってきた。
「これはちょっと休憩だミャ……」
「そうだな、また30分経ったから残りは2時間だな……」
「モンスターを倒していかないことがいいのかニャァ」
「あの風の吹く中だと移動速度は雪土竜《つちもぐら》の方が早いぞ」
「オイラが隠密(忍び足+隠れ蓑)のスキルを使って……ダメかミャ。そうするとオイラだけ行けるけど、それは離れ離れになるからニャー」
そうなのである。虎鉄一人だと隠密で突破できるのだ。しかし、『君達は二人のパーティだからそのつもりで』という星の子の発言に反することになるのだ。
しかも、この斜面が雪土竜しかモンスターは出ないと決まったわけではない。虎鉄の隠密が効かないモンスターもいるかもしれないのだ。
「これはリタイヤかミャァ」
虎鉄の言葉が空しく風に流れていく――。
こうなったら、絶壁も方に行ってみるか? 絶壁の方は強風の吹き下ろしはないぞ。いやいや待て。あの高さはジャンプとか無理だし氷でスベスベのピカピカだからフリークライミングでも登れないぞ。
足場があれば余裕なのになー。なんとかし……て…………!
「そうか! 虎鉄、絶壁の方に行こう!」
「お、なにか良いアイデアが浮かんだニャ」
俺達は急いで絶壁へと走っていった。
********************************
「やったぜ! 残りあと10分!」
「成功ニャ! それも頂上に到達ミャ!」
絶壁を登るためにとった手段とは――
水術の魔法と氷術の魔法を使って絶壁に足場を作ろうZE作戦!だったのである。
氷術を足場にして、絶壁と氷術の足場を水術で固定するのだ。
ここは気温マイナス20度前後だから水術のすぐに凍ってしまう。
その凍ってしまう前に絶壁に足場を固定しなかればダメで、その時間差の調整に一番時間が掛かった。
でも成功したあとはひたすら足場を作ってジャンプしての繰り返し(下を見るのが厳禁!)で無事登頂に成功というわけだ。
本音は、こっちにはモンスターが1体しかいなくてよかった~、だ。
1体しかいなくてよかったと言ったけど、めっちゃデカいモンスターで言ってみれば氷の孔雀の巨鳥、それも口から氷弾を撃つモンスター。その名もブリザード・ピーコックだ。
こっちは足場を作りつつジャンプで氷弾を避けつつ、俺は魔法で虎鉄は石を投げて攻撃する。たまにこっちの向けて体当たりしてくるのが怖い。
でも、滅茶苦茶強かったけど火が弱点とわかりやすかったので斃すことができた。
そして俺達が頂上に着いた時、強風と豪雪も静まった。不思議だ。
頂上は3メートルの広さの何故か雪ではなく草原がだった。中央には小さな祠が鎮座して二人を迎えている。
「変わったところだニャ」
「下界を見ると、果てしない雪の山々と雪原に覆われたところだが綺麗だな」
今はすっかりと晴れて雲一つとない天気だ。
「あれ? あれはなんミャ?」
虎鉄は傾斜の方の雪原を見ている。頂上の10メートルくらい下になんか埋まってるのか?
あれは……人?
虎鉄は走った。それも今日一番の速さで。
「生きてるニャ! 急いで癒しの魔法をお願いミャ!」
こうしてはいられない! 俺を急いで要救助者に向かった。
おそらく4分くらいだろう。俺は癒しの魔法を連発している。虎鉄も要救助者の手とか足をひたすらさすっていた。
要救助者は、見た目はムギホシよりちょっと小さく見えるのでおそらく10歳くらいの男の子だ(歳はかからないが)。髪は長く腰まで届くくらいの黒い長髪、肌は寒いのかわからないが真っ白な肌の美少年だった。服装は着物に似ている。琉球か中国系の服装だ。かなり寒いかもしれない。だからないよりはマシかなっと思ってトリニティ・ファング・ドッグの毛皮を巻いてあげている。
先ほどから、なぜナビを見ないのかとお怒りになる諸兄の方達もいるかもしれない。
それは、ナビがうんともすんとも表示が出なくなったからでございます。なんだよーよりによってこんな時かよーと思ったが、スキルは正常に動いたから良しとする。
「ん……ここは…………」
おお、目が覚めたか、よかった! 虎鉄もおつかれさま。
「大丈夫かい。なんでこんなところで倒れてたのか聞かないけど、とりあえず無事で良かった。見つけた人は隣にいる彼だよ」
色々聞きたいけど、もう時間がないのだ。もうすぐここでの冒険の時間は終わる
「立てるかミャ。オイラは虎鉄――」
少年は立ち上がって自分の腰にある剣を抜いて叫んだ。
「お前たちには渡さない! 剣を抜け!!」
俺と虎鉄もとっさのことで驚いた。なんて言えば良いのだろう。
「なにも取らないし、君とは戦いたくもない」
俺は言いたいことを言う。そして、さらに言った。
「もしも、ここに何かがあるんだったら君にあげるよ」
それを聞いた彼は混乱しているような驚いているのかわからない表情をして
「本当か……?」
と、俺達に質問をする。
「「もちろん(ニャ)」」
「あ、俺の名前は達郎って言うんだ。もう行かなくちゃダメだからあとはまた会った時にでも」
「ここにあるものはあげるニャ。代わりになにかもらえるならコスモ・ル~チュをちょうだいニャ!」
なんと今言うか。まあ、しょうがないけども。
俺達の身体が透き通っていく――
「「じゃあ、またね(ニャ)」」
少年は慌ててこちらを見て叫ぶ。
「俺の名前は――…………」
あ~名前聞けなかったな。残念だけど一度会えたんだ。また会えるさ。
そして意識は遠ざかる……。
あ! 報酬!! なにを……もら……える…………の…………
+++++++++++++++++++++++++++++++++
【???】
+++++++++++++++++++++++++++++++++
頂上から帰りの道程は、行きの過酷な道と同じとは信じられなかった。
霊峰マンザの山は、風や雪はおろかモンスターもまったく襲って来ないとはおそらく古文書にあった通りだろう。
麓まで下りて、そこから聖域の村ザンピークまでは2時間ほどで帰れるとは、と彼は思った。
村に入ると村人や駐留していた兵士が出迎えてくれる。
その中でもひと際大きな兵士が咽び泣きながら言った。
「おかえりなさいませ。必ず帰ってくると信じておりました」
「当たり前だ。帰って来ると言っただろう。……とはいえ、不思議なことがあったんだ」
少年はそう言って微笑した。
「貴方が笑うとは珍しいことがあるものですな。そんなに不思議なことが起こったのですか」
「そうか、珍しいか……」
少年は黙って今では遠くにあるマンザの山を見る。
「……コスモ・ル~チュをしているか?」
先ほどの兵士は知らなかったのだろう。周りの兵士や村人にも聞き周って答えた。
「それは、なんでしょう? 秘宝とも関係するので?」
「そうか……。いや、すまなかった。そういえば見せていなかったな」
少年は懐から布に包まれたものを出して中身を見せた。
「これが例のマリの腕輪だ」
それを見た人々は歓声を上げる。
感極まったひと際大きな兵士が叫んだ。
「これでジーン族の七王国を統べるのはウェスタ族のアダル王だ!」
人々はその名を呼ぶ。
「アダル王!」
「アダル王!」
「アダル王!」
その光景を眺めながら少年アダルは違うことを考えていた。
「あのヒューマン族とケットシー族……不思議な奴らだったな」
また会えるだろうか、と呟いた言葉は風に消えた。
次回は3月28日24時に更新します。
読んでいただきありがとうございます。
よろしければ感想などお願いします。