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【視点:虎鉄】
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オイラとムギホシは、ナイセンの待ち受けたビルの屋上で戦っていた。
空では、達郎が宇宙空母と一騎打ちを始めている。もう今はこちらの様子とか見れないだろうな。ナビは自分だけに使用するべきだろう。
向こうはナイセンと強襲型のアサルト・ドロイド兵10体。
アサルト・ドロイド兵は普通の歩兵タイプと違って、より背が高くって鎧とか盾とか装備して強そうだ。実際、脅威度は青でオイラと同等の強さだ。しかも霊理力のジャマーなんてものも使っている。
そしてムギホシからの攻撃は守りに徹しているのか、オイラをムギホシを離そうとしているのか、そのお互いの思惑通りオイラ対ナイセンとムギホシ対アサルト・ドロイド兵になっていた。
しかし、ムギホシはライトケインを光らせつつ徐々に圧していく。
アサルト・ドロイド兵を1体ライトケインで刺し貫いた。
「腹が立つけど斬るよりやっぱり刺した方がいいわね」
ムギホシは独り言る。なにを言ってるのだろう? ライトケインの使い方の話かな……。
でも、もうあちらは大丈夫だな。こっちはナイセンに集中しよう。自分より強い人を心配するのもなんだかなって感じだ。
ナイセンの方は、今まで闘って奴の魔理力をさらに知ることができた。
アイツは雷の使い手だ。両手から黒い稲妻を出す。初めてやられた時は驚いたね。避けてたけど。
それでも、これまではお互い軽い運動のような戦いをしてたが……
「そろそろ本気を出すニャ」
「それがいいと僕も思ってたところだよ」
オイラとナイセンは小さく笑った。
実は、俺の方は最初の数回――ハンター・ユニオンの前で戦った時しか影分身を使ってはいない。
ドローン兵の大半以降は影分身を使ってないのだ。
それは、この時を見越してあえてそうしている。
なぜならレベルが50から更に上がってスキルが強くなっているからに他ならない。
今がそれを使う時だ!
ナイセンの両腕からこれまでにない程の稲妻の束が迸る。
同時にオイラはイメージする。影分身【弐】を!
その分身の数は3体から5体に増えたのだ。それもSPの回復量が『40pt/秒』になったので、やりようによっては永遠に影分身しまくれるわけだ。
オイラの動きもAGI最大値アップⅣだから常人には何十人、いや百人くらいに見えたかもしれない。
なんといってもレベル55だからな!
ナイセンの稲妻は己の360度全域をカバーしながら撃ってくる。
でも、影分身【弐】には追いつけないんだな。
ちなみにオイラの『双子猫又のナイフ』は今は『双子猫又の苦無【姉】』と『忍刀【弟】』になっている。姉弟の切れ味は惚れ惚れするほどだ。その双子猫又がナイセンを切り刻む。
ナイセンの顔が歪んでゆく。その顔が見たかったんだよ!
……
……
……
もうそろそろ影分身を使って3分は経ったかなぁ……何分経ったかあやふやだ……なんだか手足の感覚がなくなって自分が火の玉になったような……気がする…………
オイラとナイセンは炎が燃え盛る中、立っていた。
ナイセンは全身が傷ついている。特に片腕は斬られだらりと下げ、反対側の腹のみぞうちも深く斬られている。
オイラも知らぬ間に全身所々に裂傷と火傷だ。感覚はない……けど。
「あと一息よ。手は出さないと決めたわ。だから勝ちなさい、コテツ!」
あ、ムギホシはもう終わったのか……。流石だなぁ。
その時、下の地上から声がしてきた。どうやら街の住人達がシェルターから出てきたらしい。
下にいるハンター達がまだ早いと喚いている。
「海賊はやっつけたんだろう?」
「まだコテツ兄貴とムギホシの姐さんが戦ってるよ!」
「あそこに――」とビルの屋上の方を指し示して見ているハンター達と住人達の様子が目に浮かぶ。
禍々しい笑みを浮かべているナイセン。
その笑みが邪魔臭いぜ。いくぞ、ナイセン!
オイラの影分身【弐】と手裏剣【火】、そしてナイセンの雷が激突する!!
……
……
……
二人は背を向けて立ち尽くしている。
どうやら両者相打ちのようだ。致命傷には届かない一撃だったが紙一重ように思えた。
屋上は火の海だ。そろそろこの屋上も崩落しそうだ。
次が最期だ――
二人とも足元が覚束ない。
おそらくオイラもナイセンもは限界だ。
その時、屋上にあったガンシップが燃えているのが見える。
炎に燃えるガンシップが落ちてゆく……――あれはナイセンが乗ってきたやつか……もしかしてこれを見越して魔理力を使っていたのか!
地上に落ちたガンシップが大爆発を引き起こす。
それはハンターと住人がこっちを眺めていた場所だった。
おそらく地上も火の海だ。
「……僕に逃げろってことかな」
奴は邪悪な笑みを浮かている。
「逃がさねえニャ……待てミャ、待てミャ……!
オイラは動こうとしても動けない。
「そう言われても嫌だね。逃げるよ……」
そう言って奴は炎の向こうに消えていってしまった。
意識を失う瞬間、オイラを抱いてくれたのは――
「よく頑張ったわ」
ムギホシだったか……ありがとう…………。
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意識を失ったのは1分ほどだったみたいだ。
なぜかオイラの身体の傷も癒えている。
地上の惨状は酷いの一言だったけど火はムギホシが霊理力で消したのだという!
ハンターと住人はどうした? 怪我人は? 考えたくはないけど死者が出ていないよね……?
空を見ると、達郎は今が最後の攻撃中だから呼べない。でも、あれは勝つな!
ラシャヴァティ支部長が「こっちに来い」とオイラとムギホシを呼ぶ。
「『癒しの術』だったな。あれはタツローだけしか使えないのだろうか? 困ったな、今は病院、いや医者自体もこの状況だと動けないそうだ……」
「ギルギン、息をしろ! これが終わったらランク12だ!!」
「オジサンっ、大丈夫よ。がんばって! また美味しいお水を一緒に飲みましょうよ……」
『バルボアの牙』のガントやマルルさんが負傷者に一生懸命の声を掛けている。意識を失っている負傷者だけでも100人は超えていた。
「コテツ、どうにかならないか? 同じ霊理力の使い手だろう。ムギホシでもいい。頼む、お願いだから、頼む……」
ラシャヴァティ支部長が慟哭する。
「わたしがやるわ」
「え! ムギホシはやれるのかニャ。初耳ミャ!」
「霊理力の『力』の源は生命の生きる力よ。みんなのその力を集めて足りない人に分配することもできるはず……」
『はず』ってそれは、やったことないんじゃないかと言いそうになって止めた。
「できるわ。おそらく10日は霊理力は使えないというけど」
「……お願いするニャ。ムギホシならできるニャ!」
ラシャヴァティ支部長をはじめ『バルボアの牙』のメンバーやマルルさん、そしてロブロイと他のハンター達、街の住人達の全員がムギホシを見ている。
みんな祈っている――
ムギホシの全身が銀色に輝く――漆黒の鎧が今、白銀となった。
オイラ達は銀に満ちた世界にいる。
そして空からダイアモンドダストのような銀色の光が落ちてきた。
ムギホシ以外のオイラ達みんなが口を開けて彼女を見つめる。
「やったわ」
倒れそうになったムギホシを支えようとしてけど背が足りない! でもラシャヴァティ支部長も気づいていたから良かった。
「あれ? 兄貴の勝負はどうなった?」
「それを言うなら俺の美味しい水はどこにいった? 夢か?」
さっきまで意識がなかった負傷者もみんな目を覚まして起きていく。
「女神の祝福だ……」
ぽつりとロブロイの言った言葉がそこにいたすべての人に伝播した。
ムギホシは聖女だ!と街のみんなが声を上げる。
ムギホシ姐さんは最高だ! ムギホシ万歳! ハンター達も街の住人達も泣きながら笑っての大騒ぎだ。
「なにがあったの?」
空から降りてきたエルフィンⅡ改の達郎とバトゥは不思議な表情だったとさ。
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次回は第二章の完結です。