仮面ライダードラーグ NEW GENERATION RYUKI   作:ちはや聖

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第1話 ドラゴンとの邂逅

 何もかもが反転した世界、人間の住む場所ではない世界で今日も戦士たちは戦いを繰り広げていた。

 スクラップになった車が散乱する地下駐車場に銃弾が飛び交い、剣が交じ合う。

 

「やめろ」

 

 戦士たちの殺し合いから一歩離れたところにいた少年は、無地のカードデッキを手に耳を塞ぐ。それでも彼らは戦いの手を止めず、少年の耳には金属音と火花の飛び散る音が響いた。

 

「もうやめてくれ!」

 

 少年の姿は気づけば彼らと同じように変身していた。黒い竜の戦士、仮面ライダー──

 少年は悲痛な叫びを上げて、戦いの場へと走り出した。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「ドラゴンを探せ木鏡凌大(ききょう りょうた)」

 

 何度聴いたか分からない声が響く。

 

「お前の求める答えがそこにある」

 

 

 

 声が遠ざかると、視界が開けて1人の少女がこちらに手を振るのが見えた。

 

「先輩、あっ起きてくれましたね」

 

 ストレートの黒髪の少女が隣の席で突っ伏して寝ていた生徒──木鏡凌大に話しかける。凌大はヨダレを袖で拭いながらゆっくりと起き上がった。

 

「お待たせしました先輩、そろそろ帰りましょう」

 

「中野さん……? うーん、委員会は終わったの?」

 

「もうとっくに終わりました。それよりほら、早くしないと限定コロッケ売り切れちゃいますよ!」

 

 黒髪の少女──中野花菜(なかの かな)は凌大の腕を引っ張って下校を促す。

 入学して迷子になっていた花菜に教室の場所を教えて以降、凌大は学校周辺にあるグルメやアミューズメントスポットを彼女に紹介する奇妙な関係を構築していた。

 自身の生まれ育った月見丘(つきみおか)を自慢したい、または華奢で可愛げのある後輩にいいところを見せたい。思春期男子によくある見栄は1月の終わりまで続いている。

 

「大丈夫だって。17時ぐらいまでは残ってるはずだから」

 

「もうすぐ17時です」

 

「……マジか、ヤバ! 急ごう!」

 

 今度は凌大が花菜の手を引き、2年A組の教室からバタバタと出ていった。

 その様子を隣のクラスに在籍するツインテールの少女──伊藤恵美(いとう めぐみ)は教科書の山を抱きしめながら見つめていた。

 見ていた先は凌大ではなく、彼を追う赤い竜の影。それは廊下の窓にだけ映っており、凌大をはじめとした月見丘高校の生徒は恵美以外誰も気に止めていなかった。

 

「ドラグレッダー……アレを手に入れれば勝てる」

 

 恵美は教科書の山に隠していたカードデッキを取り出す。彼女の持つ黒いカードデッキには、金色のコウモリの紋章が現れている。

 カードデッキを取り出した恵美の傍らには、コウモリ型のモンスター『ダークウイング』が近くの廊下の窓越しに佇んでいた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「なくなってましたね。限定コロッケ」

 

 そう言って花菜はオーソドックスなコロッケを頬張る。凌大も同じくコロッケを頬張りながら肩を落とす。

 日もすっかり落ち、静かになった公園で2人はベンチに座っていた。

 

「ゴメン。次はちゃんと起きるようにするから!」

 

「もう、先輩は……いいです。次はこれだけじゃ許しませんからね」

 

 花菜は3個目のコロッケを食べ終えると、公園のゴミ箱に紙を捨てる。

 

「あれ……なんだろこれ」

 

 花菜は何がに気づいたのか、ゴミ箱の中に手を伸ばすと底にあった黒い無地のカードデッキを取り出す。

 

「先輩、何でしょうこれ」

 

 凌大は渡されてカードデッキを受け取ると、その形や手触りどこか懐かしく感じて眉をひそめる。

 その時、ポケットにしまってあったスマホのバイブレーションが響いた。急いで取り出すと、母からの電話のリクエストが映っている。

 

「ああ、母さんからか──」

 

 通話ボタンをスライドしようと画面に指を触る。すると突然、凌大の人差し指に白い糸のようなものが巻きついた。

 糸はスマホの中から伸びているのだろうか。確かめる間もなく、糸の力に引っ張られて凌大の身体はスマホの中に消えてしまった。

 

「先輩……先輩!?」

 

 目の前で起きた出来事に花菜は腰を抜かしてしまう。慕っていた先輩がスマホに食べられた、彼女の目にはそう映っていた。

 残されたスマホを覗き込んても、凌大の母が送った不在着信しか届いていない。

 助けを呼ぼうにも誰を呼べばいいのか、どこに呼べばいいのか分からない。そもそも信じてくれるかすら怪しい。だが助けの手は意外にも早かった。

 

「貴女は……1年の中野さんね」

 

 花菜とは対照的に、恵美は平静を保っている。残された凌大のスマホを取り上げると、電源を落としてベンチに立てかける。

 

「ちょっと、何するんですか!」

 

「木鏡凌大は私が頑張ってみる。そこで10分、目を瞑って待ってて」

 

 恵美の忠告は残念ながら届かなかった。花菜は目を時折泳がせてはいるが、依然として恵美の方に向いている。

 諦めた恵美は背負っていたリュックサックを下ろすと、中からカードデッキを取り出して凌大のスマホにかざした。すると彼女とスマホの画面に反射する恵美の腰にベルトのようなものが巻かれる。

 

「アナタは……一体……」

 

「変身!」

 

 恵美は右腕の拳を握りながら体の左前に出してそう叫ぶと、カードデッキをベルトのバックルに装填した。瞬間、彼女の体は鎧を纏った戦士と化す。

 紺のアンダースーツに銀色の装甲が装備されたコウモリの戦士『仮面ライダーリット』。それが変身した恵美の名前だ。

 リットはベンチに身を乗り出すと、凌大と同じくスマホの画面に吸い込まれる。彼女の前には鏡が辺り一面に張り巡らせた世界が広がり、目の前にバイクのようなマシン『ライドシューター』が置かれている。

 搭乗したリットはアクセルを吹かして鏡の世界を抜けると、その先にある鏡の向こうにある世界『ミラーワールド』へ強引に突入した。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 ミラーワールドでは黒いボディの戦士が、ジグモのようなモンスター『ミスパイダー』に追われていた。見知った街並みのはずなのに道に迷ってしまった結果、戦士はミスパイダーによって団地の庭へと追い込まれてしまう。

 

「どうしたんだよ木鏡凌大、こんな姿になって変な化け物に襲われて……!」

 

 ミスパイダーの爪が戦士になった凌大に襲い来るその時、ミラーワールドに駆けつけたリットの剣がその攻撃を弾き返した。

 差し伸べられた救いの手にありがたがる間もなく、今度はその切っ先が凌大に向いた。

 

「驚いたわね。まだモンスターと契約してないライダーがいたなんて」

 

「モンスター、ライダー? てかその声どこかで……」

 

「……! まさか、貴方が木鏡凌大?」

 

 リットは剣を静かに下ろすと、彼に背を向けて再びミスパイダーに睨みをきかせる。

 

「貴方は先に帰りなさい。自治会館の入口の奥に私のライドシューターがあるわ」

 

「ライド……」

 

「鏡の奥にバイクがある! 鏡に入って、それに乗って帰って!!」

 

 リットに強く促され、凌大は疑問を抱えたまま花道を通って庭から出ていく。

 リットは彼を追いかけようとしたミスパイダーを斬ると、デッキからカードを1枚引く。そそして構えていた剣『ダークスキャナー』にカードを装填する。

 

【SWORD VENT】

 

 空から降ってきたダークウイングの尻尾を模した槍型の武器『ウイングランサー』を受け取ると、ダークスキャナーとの二刀流でミスパイダーに斬りかかる。

 

「はあっ!」

 

 闇雲に剣を振り下ろす無茶な戦い方だが、得物のないミスパイダーには十分効果があった。

 怯んだミスパイダーは口から糸を吐き出すと、リットの持つウイングランサーに巻き付けて奪い取ろうと試みる。

 しばらく2人の力は拮抗していたが、徐々にモンスターの方へ武器が引き寄せられていく事を知ったリットは次の手に出る。

 

「欲しいのならくれてやるわ」

 

 ウイングランサーを手から離すと、デッキからカードを取り出してダークスキャナーに装填する。

 

【NASTY VENT】

 

 ミスパイダーがウイングランサーを奪い取ったのと同時に、空から滑空してきたダークウイングが超音波攻撃をミスパイダーに仕掛けてくる。

 モンスターはせっかく奪った武器を捨て、耳を抑えて苦しんでいる。今がチャンスだ。

 デッキから切札を選ぶと、続けざまにダークスキャナーに装填した。

 

【FINAL VENT】

 

 地面に転がったウイングランサーがリットの手に戻ると、そのままミスパイダーの腹部に投擲して貫通させる。ミスパイダーは倒れて地面に仰向けになり痙攣している。

 ダークウイングがリットの背に合体してマントに変形すると、それを合図に上空に飛び立つ。マントで全身を包んで高速回転しながら、ウイングランサーの柄に目掛けて急降下した。

 

「はああああ!!」

 

 逃げることの出来ないミスパイダーに、リットはウイングランサーの柄を蹴りつけてその身体を貫く。着地と同時にミスパイダーの身体は木っ端微塵に砕け散った。

 間もなくモンスターのいた跡から光の球が空に浮かぶと、リットの背中から分離したダークウイングがそれを捕食してどこかに飛び去っていく。

 

「早く私も戻らないと」

 

 庭から立ち去ろうとしたその時、自治会館の方で爆発が起きた。そう遠くない距離にいたため、爆炎を見たリットは一抹の不安を覚えて走り出す。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 自治会館へたどり着いたリットに待っていたのは、変身した凌大と緑色のもう1人のライダー。そして凌大を狙っていた赤い竜のモンスター『ドラグレッダー』だった。

 凌大と共に倒れ込んでいた緑色のライダー『仮面ライダーコルト』は、リットを見るなり起き上がって彼女に詰め寄る。

 

「ライダーバトルは後だ。あのモンスターは俺がやる、邪魔しないでくれるかな?」

 

「それはこっちの台詞よ。ドラグレッダーを倒せば契約モンスターを更に強くできる。この機会は誰にも譲らない」

 

「そうか。じゃ、先に死んでくれるかな?」

 

 コルトは銃型の召喚機『マグナスキャナー』の銃口をリットに向ける。しかし背後からドラグレッダーが火球を放ったことで攻撃は阻止され、大きく吹き飛んだコルトは路駐していた車のフロントガラスに叩きつけられた。

 

「ぐはっ、クッソ……ふさげんな……」

 

 満身創痍のコルトは車のサイドミラーに姿を消す。

 残された凌大とリットは、ドラグレッダーの火球を避けながら自治会館の入口のガラスに飛び込んだ。1つしかないライドシューターに凌大は搭乗すると、後ろに無理やりリットを乗せて現実世界へとバイクを走らせるのだった。




次回の仮面ライダードラーグは

「君はB組の伊藤さんだよね?」

「最後の1人になったライダーは、どんな願いも叶えられる」

「ドラグレッダーを恐れるな」

「俺と契約しろ!」

それでも、夢に向かえ
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