渡り鳥、今の所から次の場所へ移動する。
そういう見方をするなら僕は渡り鳥、世界を旅する渡り鳥。
そういう運命に導かれた……一人の男だ。
渡り鳥生活の始まりは突然やってきた。僕が生まれた世界では転生は創作物の中でのみ、マンガ・アニメの産物の範疇でしか無かったのに不幸にも僕が事故で他界……ではなく、公園でくつろいでいる所で神様的な存在が『いっちょやってみっか!』と無理やり引き込んだために僕は神様に殺されて転生してしまった。
なんなんだよあの神。
とまぁ神様的な存在の無茶振りで渡り鳥生活を続けてはや5周目、いずれも日常系の世界だったので突然スタンドバトルに巻き込まれることもコロニーが落ちてくることも無く平穏無事に過ごせてきた。そんな僕はいくつかの世界を旅して気がついた事がある、一種の法則性を見つけ出したんだ。
①僕が元いた世界の創作物である事。
②二次創作ではなくオリジナルであること。
③転生する時に引き継げるものがあること。
の三つが変わらない法則だ。
この助かるような助からないような法則のせいで僕は無意味に3回は死んでいる、もうヤダ。
神様的な存在(以下神様)は僕の事を面白い舞台装置程度に考えていてどれだけやらかしても困っていても基本的に無干渉、更に気分屋なので何かされるか分かったものじゃない。この前の周回だと突然ハーレム系主人公にされたり百合の間に挟まれたりした。マジクタバレ。
それと引き継いた物はずっと引き継ぎ続けていく、つまりは蓄積していくようなので例えば一つ前の世界でお金を稼ぐとそれを引き継ぎ、次の世界で稼げばそれが蓄積されて次の世界に繰り越される。稼いだ金が腐らないのは良いが不意に現れた大富豪とか怪しすぎてまともに金が使えた試しがない。
と、つらつらと説明文的な解説をしてみたが……いかがだろうか? 誰か代わりにやってくれないか……? 駄目? そう……
なら切り替えて本題に入ろう。上記は僕の境遇を知ってもらうためであり、物語で言うところのあらすじであり、前説なのである。
現在僕は学校生活を悠々自適に送っている、ここまで何も無い、平穏無事そのものでありなんの危機感もない。
ちょっと気になる事と言えばこの世界の今から十五年前に発生した火星との戦争だけだがまぁー……そこまで……気にしない……しない……
やっぱつれぇわ……なんだよ火星との戦争って……転生の法則に当てはめるなら何かの作品なんだろうけど、どれだけキーワードを与えられても繋がらないのだ。なんだよロボアニメか? ガンダム以外は分かんねぇぞ俺。かと言ってガンダム世界に転生したくはない、行きたいと行きたくないの心が二つある。
現在の俺の立ち位置を明確にするなら新芦原市の高校生であり、普通にロボの訓練を受けている至って普通()の学生。学生と言うより学徒兵だよこれ!
さっきも少し触れたが火星とのいざこざが発展した結果戦争になったためにロボ、この世界ではカタフラクトという、その操縦訓練が高校生レベルでは必修課目となってますぞ。
これも全ては三万年前の古代文明の遺産ハイパーゲート(要はワープ装置)を人類が発見し火星への道と、『アルドノア』と呼ばれたオーパーツのせいなんだってさ、レイレガリア博士って言うヤベー奴がヴァース帝国を名乗りアルドノアの占有をウンタラカンタラ……
長くなってしまったが元を辿れば地球人と火星人(地球人)の主権争いだよ、いつものロボモノだな……外から見たらさぞ面白いのだろうな、外から見れば。中にいたらいつ死ぬか分からなくてソワソワしちゃうぜ? 僕は死んでも次があるから良いけども。
そんな事を通学中のバスの中で考えたりしていた。
「……ヴァース帝国ぶっ潰れねーかなー、なぁオコジョ」
「無理なんじゃねーの? レベルが違うって話だし何より潰れるより先にこっちが負けちまうよ、マック」
「言えてる」
あ、コイツはオコジョ、起助でオコジョなんだとさ、なんつーネーミングセンス、やっぱアニメだわ。特に個性的な見た目では無く黒髪の中肉中背の男子学生、ゲームが好きなやつ。つまり僕と馬が合うのだ。僕もゲーマーでだらけきった人間なのでな。
あと僕は今世ではマック・マーソンと名乗っている、この世界の親がくれた名前だから生きてるうちは大切にしておくさ、それに親譲りの金髪青眼のイケメンだぜ。
「マックもそんな事より勉強しとけよー! イナホに負けないくらい地頭は良いんだしよ!」
「カームさぁ、それってブーメラン?」
「ブーメラン乙、マックのパチモン」
「なんだよ二人揃って!? つかオコジョは俺と変わんねーぐらいに赤点だろーっ?! というかパチモンって言い草は酷すぎるだろうがっ!」
このバスの中でブーメランかましたやつはカーム、一応同郷の人間だが僕の親は日本で僕を出産したから同郷と言うのは厳密には違うかも。
とにかく面白いパツキンのにーちゃんだ、やんちゃな見た目からは想像できないくらいに普通にいい奴である、イジると良く反応する。
「そうだね、僕より頭はいいから僕も抜かされないようにしないと……」
「イナホぉ……それって煽りかい? 学年1位からの圧倒的煽りかい?」
「煽り?」
「ナチュラル煽りストがよぉ!」
やっぱコイツ苦手だぁ! コイツはイナホ、我らが精神的リーダーであり学年1位の成績でありクソが付くほど真面目で正確なヤツ、色んな意味で堅い。まるで覚悟ガンギマリな主人公と言われたほうが都合がつく、もしかしたら主人公かもしれない。
「ちょっと男子! うるさいよ! 予習中なんだから!」
「そうだよ男子!」
「ニーナもインコも叫んだら一緒じゃないか……?」
彼女らは黒髪の大和撫子はインコ、金髪ツインテールはニーナ。
インコはめちゃんこ頭が良いというか、努力できる人で勤勉なのだ。ニーナはちょこちょこ動く小動物的な可愛さがありますあります。ニーナさん姓はクラインとお聞きしてナンダこのガンダムのキャラっ!? って素で驚いてしまった初対面。
僕、オコジョ、カームにイナホ、インコとニーナは良くつるむ仲間だ。特に僕は元々あったグループに入れてもらったフシがあるので一本下がるんだが中々楽しいんだこれが。
いつまでも続けば良いなこんな日常。
たぶん無理なんだろうな(達観)
それからそれから幾日が経った時。僕が家でテレビを見ているとこんなニュースが速報で流れてきた。
『火星より親善大使として、アセイラム・ヴァース・アリューシア王女の来訪が決定致しました』
茶の間でダラダラとしていたらこんなニュースが舞い込んできたものだから両親も友達も大層ギョッとしていた、ヴァース……もしくは火星に途轍も無い恨みを抱える人が多い、両親もその内に入るし親をなくした友達もそうだ。
十五年という歳月はとても短い、本当に短い。
そう、戦争が身近にあることもそうなのだがヴァース帝国と地球の隔絶した技術力から生み出される決定的な戦力差により戦争とは名ばかりの蹂躙だったらしくそれが更に火星やヴァースへの悪感情を増しているように思える。相手が無傷でこっちだけ殴られたら腹立つよな。
まぁ、そんなこんなでそのヴァース帝国のお姫様、気になるよね。めっちゃ美人らしいし。オコジョも美人って言ってたし。
だから姫様来日の当日は学校からさっさと下校して、予め予定された凱旋に使う道を下調べして観察スポットを特定しておいた。集めたデータから導き出した結果歩道橋の上から双眼鏡で見るがよろし。
「はい、だから諦めろオコジョ。これ以上無い作戦だった……!」
「だけど……! だってよぉマック! ガラスが!」
「遮光された厚さ200ミリの防弾スモークガラス、要人の為の車両としては今どき珍しくないってさ」
無慈悲なカームの宣言により僕とオコジョは撃沈した、なお一緒に来ていたイナホはお姫様より近所のスーパーのセールを確認していた、この無頓珍漢! 朴念仁! そんなんだからインコからのバレンタインでチョコ貰ってもナニコレって言ってキレられてこっちが被害被るんだぞ!
「切り替えよう、これだけの人がいるとアレだな。某天空の城のセリフとかいいたくならない? オコジョ」
「ラピュタは本当にあったんだ!」
「「そっちかいっ!!!」」
カームと僕が重なった声でオコジョに突っ込んだ。
本当は人がゴミのようだ! とか待ってたのにコイツ敢えて外してきたな、やりおるわい……
さて、冗談は置いとくとしても人が多すぎてギチギチに詰まってる、普段は四人が横並びで歩いても余裕のある歩道が人で溢れかえってまともに歩けないし歩道橋の上も多少余裕があるとはいえ人がいる。過重で落ちそう。
これだけの人が火星の姫を見ようとしてここに集まってきた、それだけの注目度があるし、重要度があるし、期待して居るんだ、完全な平和、火星との決着を。
これ同じ火星つながりで鉄血のオルフェンズなら姫様襲われるよな〜、ハト派の姫様をぶっ殺してタカ派の奴らがヒャッハーしたいからって……ないよな? 止めてくれよマジで教科書で見る限り火星とやり合ったら勝ち目ないぞ。
いらない心配で挙動不審になっていたらふとインコを見つけた、腕章してる……生徒会の活動? パレードの時にかい?
インコもこちらを見つけたので駆け寄ってきた、どうやら探していたようだ、我々を。
「あっインコ! どったの?」
「マック、それに皆もやっぱり来てたね! 生徒会が交通整理に駆り出されたのよ、人手が足りないって事でね」
高校生にまで交通整理頼むとかどれだけ人手が足りてないんだ……いや、それだけの人数がここに集中したことがやばいのか。可哀想な話だが……手伝いするのは面倒……
「声に出てるわよ」
「マジ? いやそんなつもりは……」
「ねぇ暇でしょ四人が手伝ってくれない? 腕章して立ってるだけで良いから、ね? イナホは手伝ってくれるよね! マックは言わなくてもやってくれるし……」
僕の扱い雑じゃない? やるけどさ……
僕が腕章をつけているとイナホがポツリとつぶやいた。
「逃げたほうがいい、今からミサイルが来る」
直後、爆風。爆撃による揺れと風圧によるガラスの破片が飛び散り、衝撃波は近くにいた人間を飛ばした。
ミサイルが着弾したのはお姫様が乗っているだろう車、さっき言っていた200ミリの防弾ガラスでは流石にミサイルは凌げず続く三発目、四発目のミサイルで完全に大破した。
あぁ、さらば日常。こんちには地獄。