六花Side
部室での一件で僕は花帆さんと一緒にさやかさんの練習を見ていた。理桜は大丈夫かな?
「さやかちゃん、良い感じ」
「ふぅ…」
「はい、タオル」
花帆さんがタオルを渡し、僕は飲み物を渡した
「すみません。花帆さん。花帆さんの練習もあるでしょうに、付き合わせてしまって…六花さんも」
「いーのいーの!あたしの時だっていっぱいサポートしてもらったし!これでもマネージャーやってたんだよ。あたし!」
「まぁ放っておけないからね」
「六花さん……花帆さん…ありがとうございます」
「えへへ。それにしてもやっぱりさやかちゃんは凄いよ!すっごく上手!」
「そう、ですか?……でもきっと花帆さんの方がずっときらめいていましたよ。花咲く、が少し分かってきたかもしれません。ライブの時の花帆さんは、本当に輝いていましたから」
「そ、そーかな?それは嬉しいけど、さやかちゃんに比べると出来ないことばっかりだし、まだ全然だよ」
「そんなこと…ありませんよ。最近停滞気味、って言ったじゃないですか。あれは少し正確ではないんです。私はただ、これまでフィギュアの経験を応用していただけで、始める前と今で、なんの変化も成長もしていないんです」
「そうなのかなぁ?」
「はい、そうなんです…さてもう少し頑張りますか」
「あ、うん…」
なんの変化も成長もしてないか……僕には昔のさやかさんの事を知らない。だけど本当にそうなのか……
「あのさ、さやかちゃん。あたし、さやかちゃんの歌もダンスも、すっごく好きだから!すっごく綺麗だと思ってるから!他の誰かがどう思っても、さやかちゃん自身がどう思っても!さやかちゃん見てると、頑張ろうって思えるから!」
「花帆さん…?」
「そ、それだけ!六花くん、飲み物取ってこよう!」
花帆さんは思わず恥ずかしくなってその場から逃げるように走って行く
「……僕は昔のさやかさんのことを知らない。だけど本当に変われてないなんて思わないよ」
「六花さん…お二人は本当に優しい人ですね。でも私は凄いスクールアイドルになれるって言われたんですよ」
「そうなんだ」
「はい、夕霧先輩はそう思って、スカウトしてくれたんです。なのにこんな有り様では、あまりにも情けないんです」
「無理も無茶もしない方がいいよ。僕や花帆さん、綴理先輩、梢先輩は勿論だけど、一番心配するのは…理桜だから」
「理桜さんがですか?」
「理桜にも何か色々とあったから……それじゃ花帆さんの所行ってくるよ」
理桜Side
綴理さんと一緒にさやかの所に向かった俺は、練習をしているさやかと合流した
「………さや」
息を整えながらさやかの名前を呼ぶ綴理さん
「夕霧…先輩」
「少し……いいかな?話が…したいんだ」
「話?どうぞ」
「ええっと…」
綴理さんはどう話すか悩み始めた。するとさやかが先に話をし出した。
「じゃあ、夕霧先輩。私から良いですか?謝らなければならないことがあります」
「謝る?さやが?」
「目を掛けてもらって、根気よく指導してくださっているのに、不甲斐なくてごめんなさい」
「さや……!?」
「言われたこと一つこなすことが出来ず、まるで成長出来ていないことがとても情けないです。だから本当に、ごめんなさい」
「さや、キミは何を言ってるんだ?」
「私が、夕霧先輩の足を引っ張ってしまって、あなたの望む理想に、私が追いつけないから。だからあんなに、花帆さんと乙宗先輩の演技を……」
「う、あ……」
「夕霧先輩の言いたいことは。いえ、夕霧先輩に判断して欲しいことは一つです。相応しくないと判断したのなら、私のこといつでも見限ってください……と」
さやかの話を聞いて、綴理さんは頭がパンクしそうだった。
「待って欲しい。おぼれそうだ……」
「せ、先輩!?先輩、お水を……」
「……いかないで」
「……あの」
「ボクは……ボクは、そんな事は何も思ってない」
「それじゃどうして……」
「………さや。怒らないで、聞いてほしい」
「え?」
「ボクは言葉が下手だ。伝えるのが上手くない。もっとボクがちゃんとしてれば、さやをこんなに悩ませたりしない。でも頑張るから。頑張るから、聞いて欲しい」
「先、輩?」
「ボクは、スクールアイドルになれない」
「え……?」
「ボクは、スクールアイドルが好きだ。初めて見たとき、本当に感動したんだ。ずっと一人でステージに立っていたボクとは違う。ボク自身もよく分かってないところで褒められて、凄いって言われてただけのボクとは違う。スクールアイドルは、一人じゃない。完璧じゃないかもしれないけど、みんなで頑張って、ステージに立ってるみんなでやると、地球上のどんなものより、綺麗に見えるんだ。ボクの一番好きで……一番届かない芸術。あなたは夕霧綴理であって、スクールアイドルではない。……そう言われた。ボクはあれからどんなに踊ってみても、スクールアイドルになれてない。でも、かほも、こずも、いつのまにか……だからごめん。ボクだ。ボクが、足りない。ボクが、よくない。さやは、きれいだよ。すごいスクールアイドルに、キミはなれる。えと……伝わった……かな」
綴理さんの話を聞き終えたさやかは少し怒った顔をしていた。
「……ません」
「え?」
「伝わりません!さっきから何を言ってるんですか。あなたこそしっかり聞いてください。私にとっては、あなたがスクールアイドルです!」
「……え?」
「初めてあなたのステージを見たときに、言葉なんてなんにも出なかった。こんなにすごい演技があるなんて知らなかった。こんなにすごい演技をする人が、スクールアイドルクラブの夕霧綴理先輩だって知った!誰が、あなた自身が、なんと言おうと!わたしにとって、あなたがスクールアイドルです!」
「なんで……」
「なんで?そんなの簡単ですよ!私はそもそもスクールアイドルを全然知りません!ずっとなにも成長出来てなくて、それこそ溺れそうで、どうすればいいのかも、何を目指せばいいのかも分からなくて。蓮ノ空になら何かヒントあるかもって、ほんとに最後の希望みたいに縋りついてきたこの場所で。どうしようもなく迷ってたときに、それを全部晴らしてくれた希望だったんです。まだ頑張れるかもって思えたのは、先輩の演技が見られたお陰です!見る人に希望を与えるのがスクールアイドルなのだとしたら、私がこの学校に来て良かったと心から思えた理由、その人がスクールアイドルじゃなくてなんだって言うんですか!!」
「ボク、が……でも、ボクはその時も一人で…」
「一人じゃダメとか知りませんよそんなもの。私の憧れに、あんまり酷いこと言わないでください」
「あ……」
「すみません。やっぱり今のなしで」
「さや……」
「……なんですか?」
「スクールアイドルに、なりたい。ボクは、ずっと。スクールアイドルに、なりたいんだ。キミは、ボクをスクールアイドルにしてくれるの?」
「何度でも言います。あなたは私にとって最初から一番のスクールアイドルです。でもそうですね。どうしても一人じゃダメっていうなら、私が隣に立ってますから」
「そう、だね。さやとなら……踊ろう、さや。今ならすごいことが出来そうだ」
それから二人は学校見学で素晴らしいパフォーマンスを見せた。そんな次の日の練習にて
「さや、もっとこう……お麩みたいに」
「お麩…」
「こうやって、こう」
「えっと…もっと丸くって事でしょうか…」
相変わらず綴理さんの言葉は一発で理解するのは難しいながらもさやかはしっかりと理解しようとしている。だけどこの間までと違い、しっかりと前を向いて進んでいる
「さや、ボク、頑張るから、だからなろう。一緒に……スクールアイドルに」
「……はい!」
俺も……前に進むべきだよな……
「あの、理桜さん……過去に何があったんですか?」
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