蓮ノ空の花と桜   作:水甲

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オリストに入らずに、本編になります


第29話 さやかに足りないもの

理桜Side

 

ある日の部室にて……

 

「…なにこれは?」

 

「ドングリ。この前のお礼」

 

そう言って綴理さんは机に大量のドングリを置いた

 

「……ええと?」

 

「わ、ちゃんと帽子被ってるやつですね。かわいい」

 

「そう。意外といなくて大変だった。かほにもあげる」

 

「それで?なんのお礼なの?」

 

確かに何のお礼なのか伝えてないよな……

 

「あ、うん。ごめん。待ってね。えっと……ボクは、こずとかほに…それにりっかとりおに、すっごく助けられた」

 

「僕は対したことしてないですよ」

 

「俺もだよ」

 

「そんな事ない。二人にも助けられた」

 

本当に俺は対したことしてないんだけどな

 

「助けられたのは、ボクがさやの手に気づかなかったことで、だからありがとう」

 

「…綴理」

 

「よく、分かりませんけど…でも、さやかちゃんが笑ってたし、綴理センパイとのライブもすっごく素敵だったと思います!だから良かったです!」

 

「かほ……うん、かほのおかげ。ありがとう」

 

「何か出来たか、分かりませんけど。ふへへ」

 

「こずも、ありがとう。りお、そろそろ行こう」

 

「あ、はい」

 

俺と綴理さんは練習場所に向かうのであった。

 

「変わるものね。あの子がお礼を言うなんて」

 

「梢センパイ?」

 

「ふふ…さて私達も練習始めましょう。あちらも大丈夫そうなことだしね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は二人の練習を見守っていた。前に比べて本当に良くなってきたな…

 

「っと、こんな感じ?……さや?」

 

「ぁ……いえ、夕霧先輩が、本調子に戻られたようで良かったです。本当に素敵だと思います」

 

「なら良かった。それで、やり方分かった?」

 

「……っ、やってみます」

 

試しに踊ってみせるさやか。綴理さんはそんなさやかを見て、少し悩んだ様子で……

 

「んー」

 

「あの。やっぱりダメでしょうか?」

 

「ダメじゃない。ダメじゃないよ。ボクは好き」

 

「……ありがとう、ございます。でもそれは…」

 

「さやが頑張ってると、とても魅力的に見える。それはほんとのこと。でも、なんかほっぺにご飯粒付いている感じなのも分かる」

 

「分かりませんが……」

 

「取ってあげたいなぁ」

 

「え。本当についているんですか!?」

 

「ついてないよ」

 

「多分表現的な事だと思う」

 

さやかは物凄く恥ずかしそうにしていた。

 

「でもなんか気になる。たぶんそれは、さやも思ってるんだろうけど」

 

「はい……それがどうしてなのか…ずっと分からないままで…夕霧先輩と振りは同じはずなのに、どうしてこうも違うのか…」

 

「よし」

 

「先輩?」

 

「分かるまでボクが踊ろう」

 

「分かるまで!?ちょっ、ちょっと先輩!?」

 

綴理さんは宣言した通りに踊り始める。何というか本当に自由だな……

 

 

少ししてある程度踊り終えた綴理さんは……

 

「……ふぅ、分かった?」

 

「いえ…」

 

「そっか…」

 

「本当に、すみません。ご迷惑ばかりおかけして…」

 

「じゃあ分かるまでやろう」

 

「ちょ、ちょっと待ってください」

 

「なぜとめる」

 

「止めますよ!毎日やって掴めてないものが、今日夕霧先輩にめちゃくちゃ頑張らせたからって変わるとも…思えませんし…」

 

「さや。よく分からないけど、こういうのは続けたからこそ分かるものじゃないんじゃないかなぁ」

 

「でもっ…」

 

「だけど、今日分かるかもしれない」

 

「夕霧先輩…」

 

「ボクも、分かったことがあるんだ。さやと一緒に、スクールアイドルになりたいって。だから、さやに出来ることは、何でもしてあげたいんだ」

 

綴理さんの言葉を聞いて、少し顔を赤らめるさやか。まぁそんなことを言われたらな

 

「最初から私の目的は夕霧先輩の凄いところを学ぶ事でした。なのに何の成果も得られないまま、挙句夕霧先輩にここまで言わせてしまっている自分が凄く腹立たしいです」

 

そう言って落ち込むさやかだけど、綴理さんはそんなさやかの頬に触れ…

 

「ねぇさや」

 

「むぎゅ」

 

両手で挟んでいた。

 

「さやには全力を出してほしい」

 

「ぜん、りょく?」

 

「ボク、いつも思ってるよ。さやが全力出せば、凄いことになるって。そんなさやと一緒ならきっとボクも、もっともっとすごいことができると思う」

 

「待って、ください。ちょっと、ちょっと待ってください。そんな事言われても。だって…全力、なんです。これが。夕霧先輩にとってそうは見えない程度の、これが」

 

「?全力じゃないよ?」

 

「全力ですよ!でなければただ、夕霧先輩が私を過大評価しているだけです…」

 

「さや。違う。さやは全力じゃない。さやが分かってないだけ。だから、さや。どうしたらさやが全力出せるか、一緒に考えるよ」

 

「え……?」

 

「そして、さやが全力を出せたら、もっとすごいライブをしよう。ボクにできることをしたい。だからそのために、さやのこと、もっと知りたい」

 

「ですが…」

 

「何でもいいんだ。さやが、ほんの小さな砂粒くらいにでも、引っ掛かっているなにかがあれば、話して欲しい」

 

さやかは暫く考え込み、引っ掛かっていることを話し出した。それはスケートをやっていたことのこと……

 

「最初は、何でダメなのかも分からなかったんです。ある時から全然点数が伸びなくなって。技に失敗したわけでもなく、ちゃんとこなせたはずで、なのに他の子よりも点数が低く出たんです。どうしてなのか分からないままにはしておけなくて、色んな人に聞きました。コーチと審判員さん。それから一緒に滑るライバルにも。それで表現力の問題だと言われたんです。演技構成…音楽表現…他の子にあるものが、私には無いんだって」

 

「表現力?」

 

「はい。それで、どうにもならなくなって、何の解決策も浮かばないまま…気が付いたら高校生になっていました」

 

「そっかぁ。それ、ボクにはあるの?」

 

「それはもう。貴方のステージを初めて見た時に、これだと思いました。私に足りない全て…人を魅了する、きらめき……」

 

表現力……人を魅了する煌めき……俺はその言葉を聞いて、思い出していた。

 

『出来ないなら出来ないなりにやるだけ。誰がなんと言おうともね』

 

あいつの笑顔を思い出す度に俺は……

 

「一目で分かるものなんだね。その……きらめきっていうのは」

 

「はい。………私、お姉ちゃんがいるんですよ。私なんか足元にも及ばないスケーターで、将来は世界大会でも活躍するに違いないって、そう言われてたほど凄かったんです。お姉ちゃんの演技にも、やっぱり人を惹きつける力があった」

 

「ふーん。ボクとどっちが好き?」

 

「い、意地悪言わないでください!!とにかくそのお姉ちゃんの演技が凄く評価されてて、夕霧先輩のステージに重なるものがあって…」

 

「お姉ちゃんに聞けなかったの?」

 

「それだけは、出来ませんでした……2年前、お姉ちゃんは怪我をして…もうフィギュアは諦めなきゃいけなくなったんです」

 

「!?」

 

前を向こうと思っていたのに……俺はやっぱりダメだな…

 

「それで、ふさぎ込んで、もう二度とリンクにも来ないって……そう言って…」

 

「ごめん」

 

「いえ、良いんです。っていうと変ですけど。今はもうお姉ちゃんは元気です。私が家を出て寮生活を始めたときも、笑って送り出してくれましたし…ただリンクに戻ってくることのないお姉ちゃんに……フィギュアの話をすることは、やっぱり出来ませんでした。私がお姉ちゃんの分まで頑張ると言ったのにこの体たらくですから、余計に…だから夕霧先輩に出会えたのは、本当に幸運でした。その幸運を、私の力不足で無駄にしたくない」

 

「そっか……それでりお、大丈夫?」

 

「理桜さん?どうしたんですか!?顔色が悪いですよ」

 

思った以上にキテしまったのかもしれない。それだけ俺は重ねてしまっていた。

 

「……ちょっと…色々とな」

 

「ねぇ、りお…こずもりっかもずっと気にしてるよ。こずが怪我をしたときに、ずっと思い詰めているって…」

 

「………」

 

「あの、理桜さん……過去に何があったんですか?」

 

………話すべきなのか……じゃなければずっと心配掛けることになる………

 

「…………話すよ。だけどこの話は……スクールアイドルクラブの皆にも聞いてもらいたい……」

 

後々また話すよりかは、今全員に話すべきだよな




次回、理桜の過去について触れます
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