よう実短編   作:徹底的ライチ

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2年生編のどこかです


コーヒーの味

土曜日の朝10時頃

外はぽつぽつと軽い雨が降り、出かけるには少し億劫な空模様だ

さして珍しくもないこんな日には、部屋にこもってだらだらと過ごすに限る

 

俺と恵はお互いを背もたれにしながら、ベットの上で背中合わせに座っていた

俺は読書を、恵はスマホゲームを始めてから30分以上経過していたが、その間に会話は一言も発していない

ただ恵はゲームが上手くいかないと俺に頭突きをかましてきたり、わき腹を突いてきたりと行動が何かと騒がしい

こちらが反応しないと攻撃が激化するので、たまに不意打ちで恵の首をくすぐってやり返す

 

そんな静か?な時間がしばらく続き、読書もひと段落着く

背中の感触からその様子を感じ取ったのか、恵が提案を持ちかける

 

「清隆。今日は私がコーヒー淹れてあげる」

「珍しいな。コーヒーメーカーの使い方は分かるのか?」

「大丈夫大丈夫。いつも清隆が使ってるの見てるから」

「それじゃあ頼む。コーヒー粉とフィルターは台所の棚の上だ」

「はーい。分かってるよ~」

 

恵がベットから立ち上がり、台所へ向かう

俺は本に栞を挟んで机の上に置き、今度はベットに腰かける形で座る

ベットの上でコーヒーをこぼしたら一大事だが、恵と一緒の時はここに座るのが暗黙の了解だ

 

「コーヒーの種類は私が選んでいい?」

「ああ。なんでもいいぞ」

「はーい」

 

部屋にはブルーマウンテン、キリマンジャロ、グアテマラの3種類のコーヒーを置いている

いつもはその日の気分で選んでいるが、たまには誰かに決めてもらうのもいいだろう

 

しばらく食器が鳴る音やコーヒーメーカーの機械音が聞こえてくる

俺もスマホを操作して時間を潰していると、しばらくして恵はニヤリと笑いながらコーヒーが入ったコップ2つをテーブルに置いた

 

「ではここで問題です。私はどの種類のコーヒーを淹れたでしょうか?」

「なるほど。今日はブラインドテイスティングか」

「不正解の場合は今日一日を使って私を甘やかしてもらいます」

「今日は読書を続けたい気分だから外すわけにはいかないな」

「じゃあ清隆が負けたら本は没収しまーす」

 

部屋に置いてあるコーヒーは3種類なのだから、一見適当に回答しても正解率は33%に思える

だがこの勝ちを確認しているような恵の表情から一筋縄ではいかないことを察する

まず匂いを確認し、次にコップに口をつける

 

「恵。これは部屋に置いてあるコーヒーじゃないな」

「ぎくっ。な、なんのことかな~」

「コーヒーを淹れるまでは自然だったが、その後は顔に出てるぞ。あとこれはモカだな」

「う~、正解。迷った素振りもなかったし・・・。清隆のばーか」

 

部屋には置いていないが、モカは先週に恵と行ったカフェで飲んだばかりだ

恵自身はコーヒーをほとんど飲まないからな

妙なものを選ばないために俺が一度飲んだものを選んで買ってきたのだろう

面白い試みだが、まだまだ詰めが甘いな

 

恵も俺の隣に座り、当てられたことに対する反撃とばかりに体を寄せて甘えてくる

このままだとコーヒーがこぼれてしまうので、バランスを取るために俺も恵に体重を預ける

 

再びモカを口の中に含み、普段あまり飲まないコーヒーを堪能する

何故か黙って俺を見守っていた恵だったが、俺が半分ほど飲んだあたりで再び話し始める

 

「最近気が付いたけど、清隆ってコーヒー好きだよね」

「そうか?飲めば眠気が覚めて嫌いではないが」

「コーヒーメーカー買ったり種類揃えたりこだわってるじゃん。それに何かをしながら飲むってことあんまりないよね。コーヒーを飲むだけの時間を作ってるって言うか」

「・・・まあ、確かにそうかもな」

 

自分では気が付かなかったが、確かにコーヒーを飲みながらリラックスする時間が多いかもしれない

さっきもコーヒーを飲みながら読書もできたはずだが、自然と本を置いていた

 

「・・・うー、にがい。コーヒーの味って全部同じにしか感じなくない?」

「いつも通りにココアにすればよかっただろ」

「清隆と好きなものを共有したかったんだもーん」

 

恵がコーヒーに挑戦するのは今回が初めてではない

デートで飲み物をシェアし合うことはよくあるが、コーヒーを飲むたびに似たようなことを言っている

 

「・・・仕方ないな。ちょっと待ってろ」

 

俺は自分のコップをテーブルの上に置き、台所へと向かう

別のコップに冷蔵庫から取り出した牛乳を少量だけ注ぎ、電子レンジで温めてからミルクココアを作る

再びベットの上に腰かけ、テーブルの上でこぼれないようにまだ半分残っている恵のコップにココアを注ぐ

不思議そうに見ていた恵だったが、コップに口をつけると表情が一変した

 

「おー美味しい!なにこれ、ちょっと不思議な味。苦いけどあまーい。私これ好きかも」

「カフェモカみたいなものだな」

 

まだ苦ければ追加でココアを足すこともできたが、恵はそのままコップの中身を飲み切る

せっかくなので残ったココアを俺のコーヒーに混ぜたところ、恵は今日一番のにやけ顔で俺が飲むのを観察してきた

 

こうして今日から俺の部屋では牛乳とコーヒーの消費が2倍に増えることになったのだった





今回は日常の一幕
いろんなジャンルで書く練習中です

こんな日が永遠と続くといいですね
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