校長の大事にしているマンドレイクが盗まれて探す話です。
ここは魔導学校の1年A組。今、朝礼中。プリントが配られる。
『4月8日。花壇に植えたマンドレイクが盗難された!見つけたものは報酬13000G 校長』
マンドレイクってあの?魔導師の中では有名な高値で取引される魔導アイテム。
見た目は長髪の緑色をした女の子なんだけど、頭の上に赤い花が生えている。植物だ。引っこ抜く時に大声で叫んで、万が一、声を聞いてしまったら、ダメージを食らう注意が必要なもの。ちなみにカミュ先輩の実家である魔導幼稚園にも生えている。
魔導学校ではそのマンドレイクを育てていたんだけど、校長先生の趣味の盆栽みたいなもので髪の毛が長くなる度に短髪にしていた特別なものだ。
近くの席のかすみくんとトプルくんが
「13000Gだって!オレの小遣いより多いぜ」
「賞金目当てで探す!!」
こういう会話って図書室にある漫画で読んだことがあるけど、魔導学校では実際ある。
そんなわけで今日は午後から全校生徒が集まって、マンドレイクの捜索に。
お昼を食べたらすぐに花壇のところに行った。生徒たちがたくさんいて、小柄のぼくでは見えにくい。1~3年も集まっていれば当たり前だよね。けど、黒いローブに身を隠している人は生徒なんだろうか?魔導学校は商人の出入りがあるからたまに部外者だったなんということがある。治安があまりよくないと思われそうだけど、こうして課題として報酬を出すことで生徒たちを育てるという学校だ。
学校に置いてある漫画も誰かの体験談なんじゃないかな。
人だかりの中、こういう時にもカミュ先輩の姿を探してしまう、ぼくがいる。会って話したい。
「ええと、先輩は」
「あんた、またカミュ先輩に頼るつもりなの?」
「え?」
「あんた、色々と噂になっているわよ」
「友達ができない後輩を面倒を見ているだとか、実は追っかけだとか」
追っかけはラーラちゃんのことだよ!思ったより目撃されていたみたいだ。小中学校の頃も訪れていたんだけど。…先輩を探すのは今はやめておいた方がいいみたいだね。
やっとの思いで花壇にはマンドレイクと思われる花が並んでいて、盗まれたのは朝のプリントで見たものだけ。盗まれた場所にはまるで大根を抜いたあとの畑のように大きな穴が空いている。クラスメイトのチカちゃんがまるで探偵のように虫眼鏡を持って、穴を覗き込んでいる。
「アヤシイわ!無理やり引っこ抜いたのならば、もうちょっと大きな穴が空いているはずなのに!」
言われてみれば、そうだ。無理やりに引っ張ると暴れて1メートルくらいの落とし穴が空いている筈なんだけど、それより小さい。とりあえず、ぼくは商人が集まる購買部に向かった。今日は月曜日。パララが担当の日だ。
「へい、いらっしゃい」
「マンドレイク、売ってますか?」
「…ない」
よりにもよって無口な商人が担当日だった。喋りにくいなぁ。同じクラスのカズくんがいる。
「アルルちゃんも来ていたんだね」
「うん」
「昨日の商人って誰だっけ?」
「よよよかな」
「来てから思ったんだけど、ここ学校だから商人って買取不可だったよね」
「あ」
魔物商人は校外はともかく、校内だと買取不可だ。校則違反になる。購買部で隣のクラスのルルーがいる。
「ぷよカードでお世話になった!」
「アルルと言ったわね」
「マンドレイクのこと?」
「違うわよ。わたくしはミノのエサを買いにきただけよ。それにわたくしは興味ないわ、お金なんて働かなくてもあるもの。サタンさまが欲しいというなら探すけども」
ルルーはお金持ちのお嬢様だ。サタンさまなる人物の為に魔導師を目指しているらしい。魔導師を目指す理由が誰かの為ということもあるんだね。サタンさまってどんな人物なんだろう?
ここにいても駄目かな。廊下で「ルルーさま‼どこに行かれたんですか?」など。家来?と思われるミノタウロスとすれ違った。
ぼくは魔物飼育小屋に向かった。ここでは魔物が飼育されている。ハイフラワー、ドライアードといったマンドレイクに似た植物の魔物がいる。
「マンドレイク?あの校長のお気に入りの子?」
「あの子、時々こっそり外出しているんだよ」
「え?」
「真夜中になると、時々、月の光を浴びに行っているんだよ」
「ボクもたまに月の光を浴びに行っているんだよ!月の光を浴びると気持ちがいいんだよ」
「どこで浴びているの?」
「体育館の裏だよ」
ここに来てよかったよ!けど、真夜中かあ…心細い。カミュ先輩に頼もうかなと思ったけど、ラーラちゃんに言われたことが気になるよ。先輩とは知り合って10年以上。まるで家族のようになってしまって、いるのが当たり前の存在になっていたからかもしれない。
「カミュせんぱ」
「どうした?」
「どうして、ここに!?」
「今、来たばかりだ。植物に水をあげようと思ってな」
独り言のつもりだったんだけど、本人がいたとは。
「また、困りごとか?」
「で、でも…」
「なんだ、遠慮なんてするな!お前からダンジョンに誘われても、オレが指揮を取る。今まで何度も同じことがあったじゃないか!それを迷惑だなんて一度たりとは思ったことはないさ。他のことだって同じだ」
カミュ先輩が一瞬、知り合った時と同じように子供の姿で回想をされた。昔からこんな人だった。遠慮なんてする必要がないって知り合ったばかりの時にも言われたっけ。
「…要件はなんだ?」
「真夜中に魔導学校に来てほしい」
「了解だ。夜中になったら迎えに行く」
押されるように言ってしまった。ぼくはその場を立ち去った。でも、月の光を浴びてどこに行っちゃったんだろうね?これだけ魔導学校の生徒がいるのに、見つからないのも変だし。隠し部屋に隠れているんじゃないか?
とりあえず、今日は家に戻ろうかな。校長からの新しく依頼が出ている時はその日のみ、午後になると帰っていいことになっている。1日に依頼が数件あるいうこともある。
ぼくは家に帰ると冷蔵庫にももも酒が入っていることを確認した。マンドレイクはももも酒に弱い。まだ、昼間だし、ぼくは一眠りすることにした。
…。
……。
………。
ぼくは起きた。今何時⁉
23時15分だ。ぼくは冷蔵庫にあったももも酒を道具袋にしまって、遅い夕食を食べる。ちなみに食べているのはトルティーヤだよ。
食べ終わって食器を洗ったあとにドアを叩く音が聞こえた。
「アルル、起きているか?」
「起きているよ!」
「出発するぞ」
ぼくは鍵を外して、玄関に。魔法陣が光っている。魔導学校にワープした。
ライトの魔法を唱えて、体育館の裏にぼくたちは行く。誰かいるみたいだ。
音が聞こえる。小人のパノッティが笛を吹いている。
すると、そこには短髪のマンドレイクと昼間に会ったハイフラワー、ドライアードが踊っていた。
邪魔してはいけなさそうは空気だった。踊っている様子をただ見ていた。
「お姉ちゃん!」
「どうしたの?」
「パパにこのことを言わないで!お友だちとあそんでいたい」
「うん、わかった!カミュ先輩、帰ろう!」
「…いいのか?しかし、このままでは誰かに捕まってしまうぞ?」
「それならボクが!」
パノッティが笛を吹くのをやめて、短髪のマンドレイクの手を掴み、校外に行ってしまった。こうしてみると、子供が2人いるようにしか見えないんだけど、実際は魔物と魔導アイテムだ。
「あの子、行っちゃったわね」
「そのうち、戻ってくるでしょう。ボクたちだってずっと学校にいるのは苦痛なんだ」
ドライアードとハイフラワーがそんなことを。
学校の小屋にいる魔物からこんなことを言われるとは。魔導学校の魔物にもこんな事情があるんだね。このことは誰にも話さないことにする。見た目が女の子にしか見えない魔導アイテムをまるで娘のように可愛がっている校長って何者なんだろう?
魔物と人間の共存も難しいけれど、魔導アイテムとの共存も考えてしまった日になった。
もう丑の刻だ。ぼくはカミュ先輩の作った魔法陣によって玄関の前だった。
次の日の朝。とても眠い!!
「まだ、マンドレイクが見つかってないらしいぜ?」
「体育館の裏でパノッティの笛が落ちているのを発見しただとか」
「パノッティなんて学校にいたっけ?」
「さあ?」
クラスメイトの中でそんな話をしている。
真夜中に過ごしたカミュ先輩とぼくと小屋で飼育されている魔物だけの秘密の話だ。
自分で書いてて思いましたけど、私が書いたカミュは先輩というか保護者的な立ち位置になってますね。中身が大人びているから余計なのかもしれないですが。
魔導物語の二次創作自体を15年ぶりに書いた挙句、10代の頃に考えたオリジナル設定を引っ張り出すという事態に。小説を書くまでハーメルン自体を知らなかったので、何があるかわからない。
時に厳しく、時にやさしく接する雄々しい言動をするキャラクターって難しいですね。