アキラ君と打ちました、家に帰りました。それだけの話です。ついでにアキラ君の意識革命を更に深めて強化みたいな、感じ。
追記:短編で一発ネタ感覚で書いてたのですが話数が二桁になっちゃったので連載に切り替えます。
碁会所は賑わっていた。それもその筈、話題の塔矢名人の息子が此処に居るのだから。プロ棋士になる前からその腕前はプロだと言われていた少年が、今此処に居る。
それも今この場で対局が行われていた。塔矢アキラに相対するモノクルの男もテレビで見たことがある。確かあれは将棋だったような気がするが。そういえば元々は碁のプロだったな、と思い出している内に観客が増えていた。何にせよだ、滅多に見られない対局なのだから自然と手は止まる。気付けば碁石を置いて観客の群衆に混じってその対局を見始めた。
――――――――――
「……」
パチリ、碁石を打つ音と共に黒石が置かれれば、白石が一つ置かれる。隅に置かれた黒石に鏡合わせのように置かれた。互いに右上スミ小目、置かれた白黒の碁石が互いを睨むように立ち並ぶ。まずは初めの陣地を定めて星にまた一つ一つ石が増えた。パチリパチリ、静まり返った碁会所内で碁石を打つ音だけが響いた。注がれる周囲の視線はただ一つの盤上へ注がれる。
初めに仕掛けたのはアキラからだった。羅漢の白石にカカリを仕掛ける、右上にカカリをかけるも羅漢はコスミで受けた後ヒラいた。アキラは畳みかけて何度か応酬を繰り返していくうちに羅漢は定石を外れる。
――……きたか
アキラは僅かに眉を顰めた。羅漢の打ち筋はとにかく先が読めない。どう打ってくるのか分からず、決まった定石がないのだ。型破りと言っていい程の羅漢の棋風。父との棋譜を何度も見直しては打ってみたが対策しようがなく、それが今眼前で起きていた。
――本当に、読めない
だが、それでも。喰らいつくようにアキラは黒石をまた一つ盤上に打った。
――――――――――
トプトプと、紙コップにジュースが注がれる音がする。並々に注いだぶどうジュースを傾けて羅漢はそれを口にしていた。対局椅子でだらしなく座る姿は自宅でくつろいでいるのと変わりがない。実際寛いでいるのかあくびを嚙み殺していた。時折モノクルを外して磨く姿は対局に集中していないようにも見える。
「……ッ、」
こんなものか、というその態度はおおよそ許容できない。アキラとて幼い頃から父の師事を受けてきた。塔矢門下として、父の息子として。誇りをもって打ち手としてプロになった筈だ。長年囲碁と向き合ってきた矜持がある、何よりも積み上げてきた努力があった。だが、それでも壁が高い。また一つ黒石を置けど白石は遥か彼方へ駆け抜けた。上辺も隅も何もかもが白い。黒石を探すのは容易く、既に勝敗は明らかだった。
「……ありません」
置石あれどこれでは巻き返せない、そう判断した上の投了だった。深々と一礼するアキラに合わせて羅漢も一礼して顔を上げる。
「中々筋が良いね」
のんびりと言いながら、羅漢はアキラを褒める。モノクルを磨き終えたらしい、かちゃりと掛けたモノクルを左目につけた。先ほどまで付けていた右につけていたのでどうやら伊達のようだ。流石は変人と言われるだけはある。そんなことをぼんやりと思いながら、アキラは敗北を噛み締める。この局面を覚えながら、羅漢の打ち方を思い出しながら考えていると羅漢が立ち上がった。
「それじゃ、そろそろ帰るよ」
そろそろ妻も帰って来ると思うから。そう言い残して帰ろうとする羅漢をアキラは呼び止める。
「……検討は、しないのですか?」
羅漢は検討をしないことでも有名だが、それでも言わずにはいられなかった。羅漢はその問いに不思議そうに首を傾げた。
「何で?する程でもないだろう?」
今ので十分学べたんじゃないの?それは不思議そうに出た言葉で、正直だった。羅漢の中ではあの中で学べることはある筈だという意味が含まれているのだが、それが余計にアキラの心を抉る。つまり、検討する価値がないと言われたも同然である。父ならばしてくれる。そう出かかった言葉は口を閉ざして、必死に呑み込む。
「分かりました」
お相手ありがとうございます。かすれた声交じりに返して、きゅっと唇を少し噛んで堪えた。羅漢は振り返らないことが救いだった。湧き上がる感情は胸の中を穏やかにさせてなどいない。
――まだ、足りないのだ
決して自惚れてなどいないが、それでも。プロには、あんなのがゴロゴロといるのだ。改めて自分を戒めてある人物を思い浮かべた。アキラが未だに心の中に残るのはただ一人だけだ。
――こんなものではキミが追い付いてしまう
もっと前へ、アキラはまだプロとしての一歩を踏み出したばかりだ。尚も奮い立てたのは奇しくもその意識する相手であることに違いないが、それにアキラが気付くことはなかった。
――――――――――
妻を迎えに行って帰路につく。道中では互いに会話もないが二人は穏やかなこの時間が好きだった。家に着けば誰も居ない。
――猫猫は叔父貴のところだろうか?
周囲を見渡せばテーブルの上には書置きが置かれていた。案の定そこには書置きが叔父貴のところに行って来る、そんな旨を伝えるメモが一つ残されている。叔父貴のところへ連絡すれば叔父貴が応対する。
「猫猫には、いつも言ってから来なさいと言い聞かせているのだがね」
すまないね。困ったようなその言い方をされて羅漢は畏縮する。前世含めてこの人には変わらず頭が上がらない。そもそも此方からお願いしているのだから、謝られることなど良かった。医者の羅門の方が教えられることも多い、娘を預けていることもある理由はそこにある。猫猫はどうやら今日はあちらで泊まるらしい。了承して羅漢は鳳仙と共に変わらぬ日課を始めた。相も変わらず囲碁を打ち、将棋を指す。棋譜の積み上がる部屋は宝の山のようになっていたが、二人はさして気にすることもなく勝ち負けを繰り返した。
やはり囲碁用語はまだまだです。ふわっとしてますがご容赦を。そもそも描写はただ一部分置いた感じです。もうちょっと勉強しておきます。
猫猫は時々羅門のところで寝泊まりしてます。猫猫的には此方の方が好きという意味合いもありそうですがね。羅門は名医ですが容量の悪い人なので大学の医者としては失脚してのんびりと寂れたクリニックを運営してるイメージです。
毎夜の愛の棋譜は棋譜本にして発刊してそう。そもそも棋譜自体が著作権あるかどうかですし、公式戦じゃない限り出せないとは思いますが、妄想ならそれでも想像が捗る。
一応アンケです。仕事あるので日数飛んじゃいそうなのでぱっと思いついたネタで書きたい話を…。原作はちょくちょく進んでく流れで想像してるので。
評価と感想があればやる気出ますので何卒…!!
評価ありがとうございました!
かんじさん、tom_iさん、智如さん、玄狐さん、はやてだわきちさん、筋肉馬鹿さん、名無しの通りすがりさん、竜田揚げさん、アスパラーメンさん、丸餅Zさん、二連つくねさん、朽木_さん、(:3 っ)3二二二つさん、黒鷹商業組合さん。本当にありがとうございました!!
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