ヒカルの碁に爸爸が居た場合   作:こしあんあんこ

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原作七巻にねじ込みました。院生と絡ませるタイミングがこれくらいしか思いつきませんでした。ワンクッションなので2000文字程度と相成りました。






変人は院生と(前編)

 

 

 

 

 進藤ヒカルはメキメキと棋力を身に着けていた。既に院生での順位は一組に繰り上がり既に十六位。とうとう若獅子戦に出られる域に到達したが、結局のところアキラとの対局は叶わなかった。若獅子戦は一回戦敗退、村上プロとの一局は相手のヨセの上手さに圧倒されてしまった。

 

 だがそれでもヒカルの中で何かを掴んだのだ。自分が強くなる感覚を感じ取っていた。また昨日みたいな対局がしたいと切に願う、もっと強くなれる。そう言って興奮した手が振るえばジュースを零してしまった。横倒れになるジュースを必死にふき取るヒカル、周囲にはそれを補助する院生たちが騒ぐ。その中で和谷義高だけがヒカルを見ていた。周りが手伝っているのに参加もせず和谷だけがあの時のことを思い出す。

 

――獅子戦のあの時、緒方九段とあの塔矢アキラだけがヒカルの対局を見ていた

 

 暇を潰すために見ていた訳ではなく、やはりあれはヒカルを見ていた?そんな疑念を抱きながら、確実にその背を追われる感覚を確実に感じ取っていた。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 棋院の仕事を終えて、暇になった。妻も遠征での囲碁ゼミナールの指南、娘もバイトとなれば羅漢は今手持ち無沙汰だ。

 

――さて、どうしたものか

 

 退屈そうに無精ひげを掻きながら考えていた。からかおうにも相手が居ない、愉快そうな噂もないとなると……。そこまで考えていると見知った将棋駒の配列を見た。おや、とまじまじと見て以前絡んだ相手と判断できた。

 

 羅漢は人の顔を覚えられない欠陥がある。大半は顔を忘れない部下に任せきりだが一人だけになる場合にそうした欠陥を自分で補っていた。大体は白黒の碁石にしか見えないが、それでも判断する材料はいくらでも作っている。例えば服装やその人特有の癖など、駒の揃い方や普段いるであろう場所でそうした判断を下していた。体型が分かりやすければそれはそれで上々だが、今回の相手は取り分けて分かりやすい。駒の並びは歩兵に、竜王駒。服装は竜王駒の狩衣で判断できた。羅漢の口角が吊り上がる。碁石も多いようだが、羅漢には既に関係がなかった。何もかも巻き込むことがこの男の性である。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

「やあ」

 

 皆で腹ごしらえを終えた帰りだった。ヒカルはその声に聞き覚えがあった。声の発信源を見るなりヒカルは途端に顔をしかめた。

 

「うげっ」

 

 見覚えのある中年だ。言わずと知れた、あの変人モノクルだった。声があからさまに変わる。

 

「ヒカル、またそんな……」

 

「羅漢九段、なんで……」

 

 佐為のいさめる声も聞こえる。和谷もその相手の名前を言い当てた。

 

「和谷知ってんの?前に碁会所で会ってさ」

 

「知ってるも何も、プロで九段だぞ!?」

 

 あの塔矢名人にも並ぶ、必死に説明して佐為の目が見張る。あの者と、内心で塔矢行洋の姿を思い浮かべる中、羅漢は用件を言い放った。

 

 

「以前の続きをしようと思ってね、ほらそこの「わーわー!」」

 

 佐為のことを言いかける羅漢をヒカルは叫ぶことで遮った。佐為が居ることは誰にも知られてはならないというのに、本当に危うい。最後まで聞こえなかったらしい、うるさい、とヒカルが怒られる結果となってしまい、理不尽にすら感じた。

 

「以前は邪魔が入ってしまったがね、今日は暇なのでこうして対局の誘いをしにね」

 

「そうなんだ……」

 

 時間はあるかね?そんな誘いを口にされて、飛びつきたくはなった。だがどうにも気乗りはしない。どうにもこのモノクルが苦手らしい、ヒカルの躊躇をよそに和谷が口を挟んだ。

 

「……あの、俺も良いですか?」

 

「構わないよ」

 

 羅漢九段程の相手を対局出来ることは滅多にない。それに飛びつきたくなったようだった。俺も、伊角も同様のようでその眼には真剣さすら浮かんでいた。私も、じゃあ僕も、俺も。必死に手を上げる中、ヒカルはその刺激を受けてハッとする。

 

――そうだ、さっきもっと打ちたいって言ったばかりじゃないか!

 

 俺の馬鹿、自分の考えを改める。食い入るように羅漢を見るも羅漢はあの狐目を吊り上げるだけだった。

 

「それで、対局するかね?」

 

「おう!」

 

 大きく頷いてみせたが、言わねばならないことが出来る。二人きりになったことを見計らって羅漢に再度の口止めと佐為との対局を後日に回して貰うことにして貰った。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 場所は変わって棋院。出戻りになる形で対局となる。とはいえ羅漢が対局する相手は多く、時間も未成年ならば限られて早碁となってしまうのも致し方ないことだった。

 

「誰からすればいいかな?」

 

 誰でも良いよ、そう言って羅漢は七人(・・)の顔を見る。竜王駒とは次回になったが歩兵が三人となれば存外楽しめるのかもしれない。そう考えた上で石を持てば、和谷が勇んで椅子に座った。

 

「まずは俺から」

 

「歩兵か、置石は三子でいいね?」

 

 歩兵、将棋の駒で例えられる意味が分からないが、今は目の前の対局に集中する。与えられるハンデを受け入れて、和谷は黒石を握った。まだ届かないのかもしれないが、この一局でその経験を呑み込んで見せる。ギラリと輝く瞳は真剣で、この対局に意識が向かっていることだけは気迫だけで伝わってきた。

 




私の中での評価として。羅漢の目でとらえた駒一覧。

・進藤ヒカルは歩兵
→成長の見込めますが負けることがあるので歩兵(成金)がふさわしい

・和谷も歩兵
→成長はいまいちですが、プロ棋士にはなれる程度なので歩兵。

・伊角も歩兵
→メンタル面がネックなのでまだ成金になれない歩兵ですね。

他のキャラはまだそこまで至れない白黒の碁石です。竜王駒は言わずもがな。


お仕事あるので次は三日後くらいにでも…


評価と感想があればやる気出ますので何卒…!!


評価ありがとうございました!
ホタテ土器さん、星雲 輪廻さん、町長さん、クリキントンキングさん、満朔さん、幻の犬@旧名は赤犬さん、ウィーン-MK-シンくんさん、機械仕掛けネコさん、アーマラさん、アルクシェイドさん、ござる猫さん、火の無い灰さん、サチ1231さん、トランプさん、ブレーメンさん、isellさん。本当にありがとうございました!!

評価の上にコメント頂けて嬉しいです。上手く現代には混ぜることはできましたがヒカルの碁のキャラに絡ませるのが意外と難しいです、ヒカルの碁というあの完成された部分に上手くねじ込めることが出来るか…。まだまだ私も未熟な点もありますが頑張ります!


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