ヒカルの碁に爸爸が居た場合   作:こしあんあんこ

8 / 14

日刊ランキングで44位になっておりました…!新作日刊で26位…?ありがてぇありがてぇ…!


変人が塔矢親子と出くわした

 

 塔矢行洋があの変人と出くわしたのは棋院内のことだった。互いに一礼し一言基本的な挨拶をする。無精ひげにモノクルを掛けた目の前の男は、こんにちはというだけだ。それ以上話す気はないのか切り上げようとしていた。男の名前は漢羅漢、行洋とは互先が出来る数少ない相手だった。人格に多少問題があれど、その実力は本物。万全の状態での羅漢では勝敗は行洋でも半分を切る。その一手も緻密で大胆。たとえ劣勢であっても立て直す手腕は最早怪物でしかなかった。それだけではなく将棋は負けなしで指せるのだから天才とはこういう男なのだと思う。行洋は少しだけ話をしてみたくて呼び止めれば狐目は更に笑みを深めた。

 

「聞きましたよ、ご子息がプロ試験に合格したらしいですね」

 

 たしか麒麟児だとか、囲碁界もこれから賑わいますな。社交辞令として言っているのか判断はつかないが、話に乗ることにした。

 

「羅漢九段の娘さんは囲碁をしないのかな?」

 

 女流棋士で四冠の鳳仙プロとの間の子であるのならばそれは素晴らしい棋士になると思っていたのだが。そういった話はとんと聞かない。疑問を口にすれば羅漢の目が僅かに開く、その隙間で若干目が輝いた気がする。藪から蛇だったか、そう思えども羅漢の口は饒舌に娘を語った。

 

「残念ながら娘は囲碁には興味がないようなのですよ、基本知識しか知らないので……」

 

 親子同士で一緒に対局というのも夢があったのですがね、悲しそうに羅漢はその眉下を下げた。……これはまた意外だ。息子のアキラは行洋を見て囲碁に興味を示したものだったが。

 

「薬の方に興味があるようなのでそちらに専念させていますよ」

 

「ほぉ、薬を」

 

「流石は妻の娘だと思うのです、突拍子もない発想で此方を驚かせるというか。その知識も既に……」

 

 延々と聞かされる妻子の話で羅漢がいかに家族を愛しているかがよく分かった。あの将棋番組でも見て思っていたのだが、羅漢はそこまで悪い男でもないのだろう。ある程度満足したのか羅漢はご満悦といった表情になっていた。

 

「そういえば、院生の中で面白い子がおりますね」

 

 不意に、羅漢はそんなことを言った。行洋はその言葉に面食らった。あの羅漢が興味を示す院生の子供とは誰か、話を更に催促するように頷けば羅漢は話を続ける。

 

「いやね、道に迷って目に入った碁会所に入っていたんですよ。その時に会った歩兵の子がね」

 

 最初は突っぱねられたんですが自己紹介したらこれがまた院生でして。そう続ける羅漢を見て行洋は考える。羅漢は時折人を将棋の駒で言うことがあった。行洋であれば竜王駒であったし門下生の緒方に至っては角行駒だ。大半の人間は変人の妙な言動だと捉えるが、行洋はそれの意味を知っていた。羅漢が将棋の駒で例えるそれは総じて一定の棋力を見抜いた時だ。あるいはその潜在能力を見抜くことに長けているらしい、大会の役割の振り分けで間違えることはない。とはいえ、それ以上仕事をしないのはどうかと思うが。行洋の施行をよそに羅漢は更に話を続けた。

 

「悪手と思わせて追い込もうとしてきたんです」

 

「……それは、」

 

 羅漢には見抜かれたとはいえ、悪手を好手に変えようとするとは中々に出来るのかもしれない。院生だからこそ未熟で追いつかない読みがあるとみて考えるとその潜在能力は計り知れない。

 

「あれはト金になりますね」

 

 中々筋も良い。そう締めくくって羅漢は話を終えた。名前はろくに覚えない男だが、此処まで言わせる程の者が院生の中に居るのか。興味が湧いて名前を聞けば羅漢が答えた。あの少年の名を再び聞いたのはこの時だ。あの子もまたプロになるだろう、そんな予感を胸に抱く行洋をよそに羅漢は別のことを考えた。

 

 口止めされているから言わなかったが、羅漢はあの竜王駒を考える。叔父貴と同じ駒はそれほど多くはない。先ほど話してたあの男も竜王駒だが、それ以外となると本当に数が限られる。知り合い程度で読み取れた将棋の駒だが今世では少し違うようで初対面でも見えるのだから不可思議だ。ああ、それにしても。あの歩兵のそばにいる竜王駒とも再戦したい。などと企んで羅漢はその場を後にしたのだった。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 塔矢アキラがプロになってから間もなくのことである。棋院に通いながらもあちこちでプロとして解説や指南をする。時折取材をこなしながらの激務はまだ中学生の身ではまだ体力はなく、正直辛いところがあるがアキラは勤勉に仕事をこなした。それでも続けて棋力を上げるのは追いかけて来るあの少年よりもずっと高みに向かおうという考えからだ。進藤ヒカル、忌々しくもそれでも心の中に残り続ける。

 

 かつて指導碁を行ったあの少年に鼻柱を折られ、次にやった対局は心をへし折られた。彼との対局から逃れようとも思った時期もあったが、あんな美しい棋譜を見れば対局したくなったが、失望して現在に至る。

 

――まだなお追いかけてプロだなど笑わせる

 

 その名を繰り返してアキラはその暗い心を燃やし続けていた。何故か、などまだアキラの中で終息が付けられなかった。沸々とした怒りをくすぶらせる中、アキラはあの変人モノクルに出くわした。

 




一応囲碁のお勉強始めた。初心者向けの動画とか見ながらですね…。
塔矢名人から見れば羅漢は悪い人ではないです。実際怠惰なだけなので悪い人ではないんですよね…。娘に実害がありますが。アキラ君と対局させようか悩んだけど公式戦では出来なさそうだしどうしたもんか…。



評価と感想があればやる気出ますので何卒…!!


評価ありがとうございました!
ルベさん、鉄竹さん、緋夏鐘成さん、就職希望者さん、夜市よいさん、ちはやしふうさん。本当にありがとうございます!
そしてコメントまで頂けてテンションが上がりました!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。