IS シュヴァルツェ・ハーゼはかく語りき 作:薄影 (黒ウサギ党)
冷たい風が肌を刺す春の季節に俺は現在フラムドライの前に立っていた。
「しかし、改めて見ると妙にスレンダーだよなコイツ」
ISってもうちょいゴツいってイメージがあったが、そういえばISには世代があるんだっけか。
ISの世代は大きく分けて三つ存在している。
第一世代は兵器としての完成系を目指した機体であり、確か白騎士と織斑千冬が乗ってた暮桜が該当するんだったよな。
第二世代は初期構想から後付け武装による用途の多様化をコンセプトにした世代。主な量産機はこの第二世代に分類される。日本の打鉄とフランスのラファールが該当する。
第三世代は操縦者のイメージ・インターフェイスを用いた特殊兵器の搭載を目標とした世代。今の専用機持ちの機体はここに該当する。
「すみません少尉」
「ん?」
こちらに話しかけてきたのはIS整備部隊に所属しているカティア・マルンフェルト准尉だ。
「フラムドライの説明をしても宜しいでしょうか?」
「あぁ構いません」
「あの私の方が階級は下なので敬語は必要ないですよ」
「あ、いや〜すいません。一応年齢的には自分が下でしたのでつい」
マルンフェルト准尉は俺より二つ上の年齢であり、俺的には歳が上の人にタメ口を使うのは慣れないんだよなぁ。
「それじゃあお互い敬語で手を打ちましょう」
「そうですね! それがいいです!」
こういう時はお互い敬語の方がトラブルがなくて済むんだよなぁ。なんせこの世の中だ、軍人とはいえ周りの圧が凄いから正直めんどくさい。
「それでは改めてフラムドライの説明を始めさせていただきますね!」
明るい笑顔が眩しいぞ! 准尉! ム〇カ大佐みたいになっちまうじゃないか!
「えぇお願いします」
俺は明るくなった顔をした准尉の顔を見ながら返答をしてフラムドライの説明を聞いた。
『シュヴァルツェア・フラムドライ』
第三世代ISであり、シュヴァルツェア・レーゲンとツヴァイクに次ぐ姉妹機でレーゲンは遠距離ベースでツヴァイクは中距離ベースに製作されておりフラムドライは完全な近距離ベースで作られた機体。
一応、遠距離武装はあるらしいが開発運営側のゴタゴタで開発が遅れているそうだ。まだ試験機であるため武装は少ないが今回のテスト状況で残りの武装の開発が進むらしい。
現在の武装はプラズマ
「と言った感じなのですが、なにか質問はありますか?」
「あ〜いや大丈夫です。何となくわかりましたので分からなくなったら質問させてもらいます」
「了解です! それでは早速乗り込んでください!」
「了解!」
俺はマルンフェルト准尉に促されてフラムドライのコックピットに乗り込んだ。
そして3日前に見たあの画面が現れ俺はその画面を押した。
この画面が現れて俺の人生は大きく変わってしまったんだよな。
そして俺の乗ったフラムドライからは起動音が聞こえ、後方からは排気熱と蒸気が唸りを上げた。
「起動を確認!」
「パイロットとの同調に問題ありません!」
「凄い……今までにない数値です!」
離れたとこから簡易的な指揮所でモニタリングしている整備員たちが嬉しい感情を込めて騒ぎだしていた。
「それでは少尉。立ち上がって貰えますか?」
「了解!」
立ち上がるかぁ、ガ〇ダム大地に立つってか。 何言ってんだ俺は……とにかく片脚ずつ、まずは右脚から地面につけてみるか。
「よし! 次は左脚だ!」
地面についた右脚は大きな音を立てて、機体は少し持ち上がった。そして左脚を持ち上げた時に俺は重量に負けて機体を後ろに傾けてしまったがスラスターを咄嗟に吹かしてバランスを取り戻した。
「あ、危ねぇ」
「大丈夫ですか!? 少尉!」
体勢を戻した俺の元にマルンフェルト准尉が駆け寄ってくる。
「えぇ大丈夫です意外と重いんですね」
「すみません、PICと補助装置の起動がまだ完全じゃなくて」
「いえ構いません。コイツも初めての起動でまだ寝ぼけてるんでしょう」
初の起動で問題が起こるのは世の常だ。ここから慣らしてしけばいい。
「さてと、とりあえずPICと補助装置の電源を入れるか」
俺はでてきたウィンドウを操作してフラムドライの基本設定を始めた。
簡易指揮所内
「凄いですね少尉」
「あぁ最初は肝を冷やしたが初めての起動であそこまでやれるのなら上々だろ」
IS第二訓練場に作られた簡易指揮所では整備員たちとクラリッサがモニターを見ながらデータを取っていた。
このデータは武器開発元であるシューゲル社に送られ、そのデータを元に各武装の調整や新規武装の製造が行われる。
「データは全て取っておけよ」
「「「「「はい!」」」」」
「さて。少尉! 聞こえているか!」
クラリッサは机に置かれてたヘッドセットを耳に着けて、俺の方に話しかけてきた。
場所は戻って第二訓練場
「はい! 聞こえてます!」
俺は事前に渡されていた片耳イヤホンから聞こえてくるハルフォーフ大尉の呼びかけに答えた。
「よしそれでは起動試験を終了し第二フェーズである武装展開シーケンスに移行する! 准尉もその場より退避せよ!」
「り、了解しました! それでは少尉ご武運を!」
マルンフェルト准尉は敬礼するとその場を後にし後方に下がって行った。
「さてと、まずはプラズマ手刀からやってみるか」
「よし! 少尉! 集中しろ頭の中で武器を出すイメージをしてみろ」
「了解!」
俺は目を瞑り頭の中でイメージを想像した。
そうすると両手首の部分から赤色の手刀が出現した。
「おぉ! これが! すげぇ……」
「うむ良くやった! ではこれから出すターゲットを手刀で攻撃してみろ」
そう大尉が言うと中央にハリボテのターゲットが運ばれてきた。
「機動近接戦テスト開始しろ!」
「アイコピー!」
脚のペダルは戦闘機と大差ないな、ならやってみるか!
俺はペダルを踏み込みスラスターを一気に加速させた。
「うわっ! ぐっ!」
加速した機体のGに体を押しつぶされそうになりながらもターゲットに向かって突撃した。
流石に加速させすぎたな、これは辛い。
「あっやべ! 通り過ぎた!」
加速させすぎてせいでターゲットを通り過ぎてしまったが、ここで終わるのは味気ない空軍パイロットとしての意地がある。ここで終わらせたら大隊のみんなに合わせる顔がないじゃないか!
「こうなったら一か八かだ!」
俺は左腕のプラズマ手刀を消して、そのまま左手を地面につけて円を描くようにターゲットの周りを半周し、その加速を利用してもう一度ターゲットに向かって突撃した。
「おらァァ!」
ターゲット前で少しジャンプし出現させたままだった右腕のプラズマ手刀をターゲットに向けて刺し込むとプラズマからなる熱でハリボテは綺麗に切れていた。
「ハァハァ…やったぜ」
「馬鹿者! いきなり最大加速するヤツがあるか!」
「ぐぉ!?」
イヤホンから大声でハルフォーフ大尉の怒声が聞こえて耳がキーンと耳鳴りが響いた。
「全く、まだテストは残っているのにいきなり全力を出してどうするんだ!」
「申し訳ありません!」
「はぁ、とりあえず次の武装テストに行くぞ」
「了解です」
やっちまった〜大尉の言う通りだ。楽しくなってマジになっちまうのは俺の悪い癖なんだよなぁ。
「えっと? 次の武装はワイヤーブレードか」
「よし! 次はその場でターゲットを攻撃してみろ。ワイヤーブレードは射出できるようになっているため中距離戦としては最適な武装だ」
俺はウィンドウ画面を開きワイヤーブレードがどこに装備されているかの確認をした。
「ん? マジで!? この指の先がワイヤーブレードなの?!」
ウィンドウ画面で見る限り指の先の部分の表記にワイヤーブレードと映し出されている。
いや確かに妙にエグく尖ってるとは思ってたけど、まさか飛ばせるとは思わないだろ。ガ〇ェインかよ!
そうこうしている内に新しいターゲットが運ばれてきた。今度は六つときたか。
「良いかその場で動いていいのは半径二メートルまでだ」
「了解しました」
そして俺はターゲットに向かって左手を向けた。そうしたら親指以外の指の先端からワイヤーが射出される。
射出されたワイヤーは見事二つのターゲットを破壊し手に戻った。
「すげぇ威力……」
マジでスラッシュ〇ーケンじゃねえかこれ。待てよこれを応用すればさっきやったやつをもっと効率よくできるんじゃねぇか?
「よろしい残り四つのターゲットも破壊しろ!」
「了解!」
俺は次に右手をターゲットに向けてワイヤーを射出しターゲットを二つ破壊し、その後飛ばしたワイヤーを横にスライドさせた、そうしたらワイヤーはターゲットを横に切断した。俺は更に左手のワイヤーブレードも射出すると両手のワイヤーを交互に切断して宙を舞っているターゲットを細切れにして見せた。
「最っ高‼」
俺はワイヤーブレードが両手に戻ってきたのを確認してから両腕を空高く上げて叫んでいた。
「凄いですね大尉」
「あぁ、まさかワイヤーブレードをこの短期間であそこまで使いこなすとはな、私もフラムの武装を見るのは今回が初めてだが中々実戦向けじゃないか」
クラリッサはモニター越しにフラムの動きを見てニヤリと笑った。
「さてと少尉。武装テストはここまでにしよう、次はいよいよEOSとの実戦に移るぞ」
「了解しました。ふぅ」
今回フラムが使える武装のテストが終了したことをハルフォーフ大尉から聞かされて俺は安堵のため息がこぼれた。
「と行きたいが準備に時間がかかるので暫く休憩とする」
どうやらEOS組の方が準備が整っていないようで俺は休憩するためにフラムをしゃがませてから降りた。すると奥の退避スペースからマルンフェルト准尉と他の整備員達がぞろぞろとやってきた。
「凄いです!」
「ホントに今日が初めてですか!」
「あのワイヤーブレードの操作お見事です!」
なんだなんだ!? モテ期到来か!?
俺の周りを作業服を着た女子達が囲み、各々賛美を言う者、質問攻めをしてくる者で少しカオスな状態になっていた。
「ち、ちょっとみんな落ち着いて」
准尉が隊員達に落ち着くように言うが興奮した女子たちの猛攻を止めるなんてできるわけもなく、准尉は女子達の波に飲まれ揉みくちゃにされていった。
「ええい! 貴様ら! 自分の持ち場に戻らんか!」
女子達の波を紅海を割る奇跡を起こしたモーセの如く掻き分けて現れたのはハルフォーフ大尉。そして群がっていた女子達は蜘蛛の子を散らすよう自分達の持ち場に移動して行った。
「やれやれ、レオンお前も少しは抵抗しろ」
「いや〜すみません。慣れてなくてこういうの」
「全く……とりあえずお前も休憩してこい準備が整い次第実戦訓練に入るぞ」
俺は照れながらハルフォーフ大尉に平謝りをし、その場を離れて簡易休憩所に行きベンチに座った。
「ふぅ意外と疲れるもんだな。まだ飛んでないのに……」
ベンチに座りひと息入れながらバタバタとしてる整備隊員たちを遠くから見ていると。右からフラフラと歩いてくる人影が。
「うぅ、酷い目にあった……」
「あっ准尉」
女子ズの荒波に揉まれた准尉が帰ってきた。服は所々はだけていて髪は乱れていてそれはもう見るも無残な姿になっていた。
「あ……少尉……お疲れ様です…」
「大丈夫ですか准尉。うわぁズタボロだ」
「あはは……もう滅茶苦茶ですよ」
乱れた服と髪を直しながら笑う准尉はどことなく可愛く見えた。
うんあれだな准尉は恋愛ゲームだったら主人公の幼なじみポジションだな。
「あっ少尉よろしければ、これをどうぞ」
マルンフェルト准尉は腰にあるウエストバッグから二本のエネルギーバーを取り出し俺に渡してきた。
「ありがとうございます准尉!」
俺は准尉からエネルギーバーを受け取り開封しようとして表面のロゴをなんとなく見てみた。
なんとそこには『スニ〇〇ーズ』の文字が!
美味いんだよなぁこれ。
その後、准尉はフラムの元へ駆けて行ったのを俺は見送りベンチでエネルギーバーを食べ始めた。
「しかしまだ飛んでないが戦闘機とどう違うんだろうか?」
最初の加速でだいたいのGはわかったが、あれはまだ地面を滑ったに過ぎないからなぁ。
「早く飛んでみたいなぁ」
「その願い私が叶えようか」
「ん? うわぁ!」
急に後ろから耳元に声が聞こえて振り替えて見ると初老の男の顔が近くにあり俺は驚いてベンチから落ちた。
「わっはっはっ! 新鮮な反応をありがとう!」
「だ、誰!?」
初老の男性は声高々に大笑いした。
よく見ると男性は研究者が着る白衣を纏っている。いや待てよこの人どこかで見たことあるな。誰だっけ?
そんな事を頭で考えていると、俺達の方を見た大尉が慌てて駆け寄ってきた。
「シューゲル技師!?」
「おぉハルフォーフ大尉! ご機嫌はいかがかな!」
「はっ! 絶好調であります!」
「うんうん、それは何よりだ」
シューゲル技師と呼ばれた男性は一言一言発せる声が大きいのなんのって距離があってもうるさいぞ。ほらそんなに大きい声出すからみんなこっちを見てるじゃん。
ん? シューゲル? 待てよ、まさかこの人って。
「あのぉ大尉もしかしてこの方は……」
「そうだ、この人こそ我がドイツのIS産業の発展者でありシューゲル・カンパニー代表のアーデルハイト・フォン・シューゲル技術局主任技師だ」
『アーデルハイト・フォン・シューゲル』
ドイツの首都であるベルリンに会社を構える社長であり、ドイツのIS産業を飛躍させた第一人者でもある。そしてドイツにある財団の一つシューゲル財団の代表を勤めている。何を隠そうこの人は財団の代表とISの研究主任に社長を兼任しているヤバい人なんだよなぁ。そして前述した通りフラムの遠距離武装でゴネているのがこの人シューゲル技師本人なのだ。そして巷では
「それで何故シューゲル技師局長がここに?」
「む? あぁフラムが起動試験をしていると聞いてね、いてもたってもいられなかったので馳せ参じたのだよ」
「は、はぁ……」
えっ? この人科学者なんだよな? 頭より体が動くタイプの人なの?
うっそーん……
「それでフラムの操縦者というのが君かね少尉?」
「えっ? あ、はい! この度シュヴァルツェア・フラムドライのパイロットを務めさせていただいておりますレオン・ブリューゲル少尉であります!」
「うむうむなるほどなるほど」
俺はシューゲル技師に敬礼をした。そしてシューゲル技師は俺を舐め回すように見て何か自分で納得言ったという顔をした。
「少尉。君のファミリーネームはブリューゲルと言うのかい?」
「は、はい。それがなにか?」
「いや! なんでも無い気にするな!」
いや声がでけぇよ、で? 何? 俺のファミリーネームが何なの? 教えてくれよじゃないと夜しか寝れないよ。
「それよりシューゲル技師、本日の本当の目的はなんですか?」
「やれやれ大尉はもう少し遊び心を持った方が良いと思うんだがね。まぁいい今回はEOSの新武装を持ってきたのだよ!」
「新武装ですか?」
「そう! 今回フラムと殺り合うと聞いて昨日思いついた武装を急遽作り持ってきたのだよ!」
「はぁ…」
うわぁ噂通りのマッドサイエンティストだ……えっ? 昨日聞いて試作品をもう持ってきたって言ったこの人?
「それでいつ始めるだい大尉?」
「はっ! 現在我が隊のEOSの到着を待っておりまして到着次第始めたいと思っております」
「そうか! しかしやはり運搬に問題があるのかぁ」
そんな会話をしていると一台の大型輸送車が演習場に入ってきた。その荷台にはシートが被せられた物体があった。
「ハルフォーフ大尉。どうやら来たみたいですよ」
「ふむ、では始めるとするか」
大尉が輸送車の方に歩み出そうとしようとしたらそれよりも速く輸送車に向かう影があった。
シューゲル技師だった。速っ! あの人確か今年で五十超えてるんだよな!?
「シューゲル技師! レオン、お前はフラムの所へ行け!」
「はい! 了解しました!」
ハルフォーフ大尉が若々しく走るシューゲル技師を追いかけていくのを見た後に俺もフラムの元へ歩き出した。
なんか向こう側で大尉とシューゲル技師となんか言い争ってる……
「マルンフェルト准尉。フラムの調整終わりましたか?」
「えぇ先程の少尉のデータを元に調整しておきました。これで少しは戦いやすくなると思います」
「ありがとうございます!」
俺と准尉はお互いに敬礼をし、俺はもう一度フラムのコックピットに乗り込んだ。
「さてと休憩は終わったぞ相棒。ここからが本番だ」
改めて輸送車の方を見ると四人娘が大尉の方に合流しているのが見えた。
何やらシューゲル技師が大声で喚いているな。そういえば新武装がどうのってこうのって言ってたが何する気だろう?
そんな事を考えながらフラムを起動させ立ち上がる。
そして輸送車の荷台からシートが剥がされ現れたのは……
「なんだ…あの丸っこいの?」
荷台から姿を現した物は何とも言えない丸いシルエットをした見た目からしたら可愛いデザインしてるんだよなぁ。なにあれマ〇・ロディ?
「あれがEOS?」
「はい。あれがEOSです。面白いでしょ.あんな鉄の塊がISの代替になるなんて」
「じゅ、准尉?」
「ただの鉄の塊がISみたいに空を飛べるなんて想像つかないでしょ! 装備だってISのようにスロットから呼び出すなんて出来ないし! ISのようにシールドでパイロットを守る機能なんてないからあんな薄いガラス板を付けてあるんですよ! ある意味の動く盾ですよあんなの!」
准尉は早口にEOSの文句を言い出している。口元は笑っているが目が笑ってないぞ准尉。
「少尉」
「は、はい」
「負けないでくださいね」
ニコッとこちらに顔を向けた准尉の顔はどことなく怖かった。これは負けられない負けたら何されるかわからない!
「さてとそちらの準備は整ったか!」
EOSの方にいるハルフォーフ大尉が通信越しでこちらに確認してきた。
「はい! こちらの準備はOKです!」
「よろしいネーナ、マチルダ、ファルケ、イオ、そちらはどうだ!」
「「「「準備完了です!」」」」
大尉は四人娘の方にも確認を取ると四人はハモリながら答えたがどうやら声が大きかったようで大尉の顔が少しひきつっていた。
「少尉悪いがEOSを四機まとめて相手にしてもらうぞ」
「えっ!? 四機まとめてですか!?」
「しかたないだろ。EOSは一応ISの代替になるとはいえISと比べれば全然なんだからな。これぐらいのハンデがあっても問題ないだろ」
まさか四機を同時に相手することになるとは……確かにEOSに比べればISは天と地の差、月とすっぽん並に差があるんだろうけど。
俺まだ初心者なんだけどなぁ。だって相手EOSとはいえ、それなりに慣れてるんだよなあの四人。
悩んでいても始まらない! やるしかないというかやらないとあとが怖い。
「よし!」
俺は気持ちを高くして演習場に歩き出した。
向こう側から四機のEOSに乗った眼帯四人娘がやってきた。EOSはガシャンガシャンと鈍い足音をたてながら歩いてくる。マジで鉄の塊みたいだなあれ。
黒ウサギ隊仕様のEOSは頭部って言っていいのか? まぁてっぺん部分にウサギの耳を模した飾りが付いている。あれが実戦配備機らしい。色合いは黒をベースにしており所々に隊のマークである眼帯ウサギと黒十字のペイントが施されている。よく見ると四人の機体はそれぞれ得意な武器を装備しているみたいで、おそらく専用機として運用してるみたいだな。
「覚悟しなさい! ぶっ飛ばしてやるから!」
「ふふふ楽しみですね」
「お、お手柔らかにお願いします」
「はぁ……疲れそう」
おぉみんな気合い充分みたいだな、約一名を除いてたが…
「よし! 双方準備は良いな?」
「ブリューゲル準備完了してます」
「こちらも大丈夫です!」
「よろしくそれでは……」
「始めたまえ!!!!!」
「ちょ、シューゲル技師!」
「良いではないか! 減るものでもあるまいし!」
いきなり耳元から大きな男の声が聞こえ俺たちは顔がひきつった。どうやらシューゲル技師がハルフォーフ大尉からマイクを奪いスタートの合図を出したようだ。
マジでなんなんあの人。
そんなこんなでシュヴァルツェア・フラムドライVSEOS四天王の戦いが今始まる。
「おりゃぁぁぁ!!」
「ぬぉっ!?」
一気にスラスターを吹かして接近してきたのはネーナだった。本来両手で持つ両手剣を片手で持ち大きく上段から振り下ろしてきた。
俺は咄嗟に後ろへ飛び攻撃を躱す。
「チッ! 逃したか」
「危ねぇ」
振り下ろされた剣先の地面は大きく穴が空いており、その威力が凄いものだという事が明らかだった。
いや! てか完全に殺す気で来てるよな!? そんなにフラムを取られたこと根に持ってんの!?
後ろに避けた瞬間、後ろ側に機影が見えた。
「後ろががら空きですよ♪」
「ッ!?」
背後にいたのはマチルダ。その両手にはハンマーが握られており勢いよくこちらにスイングしてきた。
ガンッ! との鈍い音を立てフラムのシールドバリアに当たり吹き飛ばされた。表示されている
マジかよ。あの一撃相当やばいな。
「流石に機体なれしてるだけのことはあるなぁ」
「フッフッフッどうよ! 伊達に四天王(自称)は名乗ってないのよッ!」
再びネーナが突っ込んで来る。その後ろにはマチルダが追随している。
二人に視線を移した時ISの警告音がなった。
「なっ!? ロックオン警報!?」
咄嗟に回避行動に移った瞬間、一発の弾丸がシールドをかすめって行った。
その方向に目やると対物ライフルを構えたファルケの姿があった。
「ファルケは狙撃タイプか!」
「は、はい。すみませんが堕とさせていただきます」
「…………私も……いる」
その声は俺の後方から聞こえ回避行動をしてその場を見るとイオが機関銃であるM42マシンガンを二丁構えて射撃しようとしていた。
大量の弾丸がこちらに迫ってきているのを感じ俺は空へ逃げた。
「なるほどね。いい連携がとれてる」
「そうよ! これぞ! 名付けて黒ウサギフォーメーションよ!」
確かに見事なフォーメーションの陣形だ。今空に逃げなかったら蜂の巣にされていたとこだな。
ネーナとマチルダが前衛で敵の目を集中させてそれをファルケとイオが援護殲滅するって感じか……なるほど結構厄介じゃん!
では! ここでブリューゲル少尉が忙しいのでこの私アーデルハイト・フォン・シューゲルが四人のEOSについて説明しよう!
EOSネーナ機は近接仕様にカスタマイズされた機体で左腕に盾を装備した中世の騎士を連想させるスタイルになっている。使っている武器は
EOSマチルダ機も近接仕様にカスタマイズされているがネーナ機と違い盾は付いておらず守りを捨てて攻撃に特化した機体になっている。使う武器は
EOSファルケ機は狙撃特化させたカスタマイズがされており他と比べると多少装甲が追加されており防御面においては他の機体より頑丈である。武器はヘカートII、フランスで作られた対物ライフルで12.7mm弾を使い作った会社のシリーズでは最大級の物だ!
EOSイオ機は射撃メインのコンセプトにカスタマイズされており、より効率的に動けるようスラスター部分を改良し機動性に特化した機体になっている。武器はMG42重機関銃二丁を両手に装備し弾帯ベルトは背面部に装着されたバレットボックス内に収納されているのだ!
以上で私の説明を終了する!
「さてどうしたものか」
イオ機からの銃弾の雨から逃げるために空中を飛びながら俺は思考していた。
近づけばネーナとマチルダが距離を取ればファルケとイオが攻撃してくる。実に単純だがこの連携を破るのは難しい。それでいて彼女たちの連携の密度がわかる。
だがEOSには致命的な欠陥がある。それはISのように
しかしイオのようにスラスターを改良し重さという弱点を克服することも可能だ。ある意味そこはEOSのいい点というべきだな。
EOSの唯一のいい点は武器類のインストールを必要としない点が挙げられる。拡張領域が無い為にインストールする必要が無い。そのため自分が乗る機体のカスタマイズが可能となっている。
「さて、そろそろかな」
その時イオの重機関銃から弾が出なくなり、ガチャンという音をたてた。そう弾切れが起きてしまったのだ。
「しまった!?」
「あんなにバカスカ撃つから!」
「ネーナが……悪い」
「なんでよッ!」
ネーナがイオにキレて余所見をしたのを見て俺はフラムで急旋回し一気にネーナに接近した。
「戦場で余所見はさすがに駄目でしょ!」
「えっ? キャーーーー!!」
俺は加速を利用してネーナに蹴りをお見舞いし、そのまま吹き飛ばした。
ネーナは地面に落下しその場所は土煙を上げていた。
「「「ネーナ!!!」」」
土煙が晴れるとネーナのEOSが倒れているのが見えてきた。見てみるとネーナは目を回していた。それはもう漫画みたいに目がぐるぐると。
3人がネーナに目線を向けた瞬間、俺は次のターゲットを決めスラスターを吹かした。
「なっ!?」
「さすがにスナイパーには退場してもらうぜ!」
俺は右腕のプラズマブレードを顕現させて、そのままファルケに向かって突いた。
ブレードはEOSのガラス装甲に当たり熱で融解し中にいるファルケが見える形になってしまった。その時EOSから警告音が鳴りそのままファルケ機が停止した。
『ファルケ機戦闘不能!』
「うぅ負けちゃったよ〜」
なるほどEOSはシールドバリアが無い代わりにあのガラス装甲が無くなったり壊れたりしたら機能を停止するように出来てるわけか。
「さて次は」
次のターゲットをどちらにするか迷っていた時
「うおっ!」
「油断はダメですよ〜」
またもや背後にいたのはマチルダだった。
なんだコイツ背後に回るの上手すぎるだろ! どんだけ影薄いんだよ! いやそれとも気配を隠すのが上手いのか?
「イオ〜! ファルケのライフル〜!」
「了!」
マチルダが気の抜けた声を上げてイオに合図をするとイオは機能停止しているファルケの傍にスラスターを吹かして行った。
「クソ! さすがにスラスターをいじってる分速いな!」
イオを追うとしようとしたが他のEOSと違ってスピード特化な分機動性があり離されてしまった。そして更に邪魔してるのが目の前にいるマチルダだ。
「行かせませんよ〜」
「いやこっちも行きたくても行けないんだけど」
こちらを威嚇するかのようにハンマーを振り回してくる。ブンッブンッと軽快な音を鳴らしている。
そしてマチルダの後ろを見るとイオがライフルを手にしており今まさに残弾の確認を終わらせていた。
「……準備完了」
「それじゃあ〜行きますよ〜」
そして今度はマチルダとイオによるコンビネーションアタックが始まった。
「えいっ!」
「ぐっ!」
マチルダの攻撃をブレードで受け止めるが流石に威力を殺しきれなくて膝を着いてしまった。
そこにイオの援護射撃が襲ってくる。
「クソッ! 攻撃に転じれない!」
「このまま……倒す」
ウインドウ画面のシールドエネルギーの数字が徐々に減っていく。
「まずいな! このままだと……」
「そのまま倒されてくださいねっ!」
「ぬわっ!」
マチルダが思いっきりハンマーを振る。俺は遠くに吹き飛ばされたがチャンスが到来した。
まだエネルギーはある! ここで決めるしかねぇ!
「教本で呼んだだけだがやってみるか!
瞬時加速とはISの後部スラスター翼からエネルギーを放出、その内部に一度取り込み、圧縮して放出する。その際に得られる慣性エネルギーをして爆発的に加速する。ただし使用中は加速に伴う空気抵抗や圧力の関係で軌道を変えることができず、直線的な動きになる。
「行くぞ!」
俺は機体を空中で体勢を取り直しマチルダに向けて瞬時加速の体勢に入りマチルダに急接近した。
「ぐおおお!」
「ふぇ!? 瞬時加速!?」
「取った!」
予想以上の加速に
接近し俺はマチルダに対して右の拳で殴りつけた。
「きゃあああ!」
マチルダのEOSが吹き飛びそのまま動かなくなった。そして俺がイオの方に振り向くと。
「降参」
ライフルを捨てて両腕を上げていた。
「えぇ〜」
『そこまで! 勝者ブリューゲル!』
ハルフォーフ大尉が終わりを告げる通信を告げると待機してた整備員達がぞろぞろと動かなくなったEOSに向かって行った。気絶しているネーナを3人がかりでコックピットから引きずり出したり他の隊員が出るのを手伝ったりと忙しく動き回っていた。
「やりましたね! 少尉!」
ルンルンっとスキップしながらニッコリ笑顔でマルンフェルト准尉が近寄ってきた。
「危なかったですが何とかなりました」
「いや〜見ましたかあの娘達の顔! 清々しい気分ですよ!」
満面の笑みを見えながら倒れてる4人娘を見る准尉はむふぅーと鼻息を漏らした。
「いや〜良き戦いを見えてもらったよ!」
「「ん? うわっ!!」」
気配なく俺と准尉の後ろに現れたのはシューゲル技師だった。その顔がすぐ真後ろにあり俺たちは驚いて飛び上がった。
「ハッハッハ油断大敵だよ諸君!」
「なんでいつも脅かしに来るですかシューゲル技師……」
「楽しいからだよ少尉」
何言ってんだこのオッサン……
「まぁそんなことは置いておいてこの戦闘のおかげで貴重なデータが取れた! このデータを元にフラムドライの最終調整ができる!」
「それは良かったですね技師」
シューゲル技師の後ろから歩いてきたのは我らが副隊長であるクラリッサ・ハルフォーフ大尉だ。
「おぉ! 大尉! 今回は非常に楽しかった! それでは私は自分の研究室に戻る! 少尉! 後日改めてフラムドライの調整に来る楽しみにしておきたまえ!」
そう言い伝えるシューゲル技師はそそくさと走って消えて行ってしまった。
本当に五十路なのかあの人? てか疲れるから二度と来ないで欲しい……
「んッんん! とりあえずシューゲル技師のことはもういいだろ。とりあえずレオンひとまず勝利おめでとう」
「はっ! ありがとうございます!」
「今回の試験運用は終了とする! レオンは後で報告書を提出しろ。さて私はアイツらを叱ってくるか」
スタスタと4人の元に歩いていく大尉。あっ! ネーナがビンタされてる。
うわぁ皆あからさまにしょぼんとしてるよ……後でデザートでも奢ってやるかなさすがに。
「そういえば少尉」
「はいなんでしょうか?」
「フラムドライを待機状態にしてみません?」
「待機状態?」
「えぇISは基本的に待機状態でいる状態の方が多いてので流石にこの大きさの物をそのままにしておくわけにいきませんから」
「なるほど」
「待機状態はアクセサリーになるんですよ。ラウラ隊長はレッグバンドなんですよ!」
「へぇフラムは何になるんですか?」
「すみません私たちも見たことないんですよね。ずっと整備室に置かれてたもので、ですから出来れば見てみたいんですよね」
ふーんなるほどね。待機状態かぁやってみるか。 俺は意識を集中させフラムに命令した。
すると体が宙に浮いた感覚が訪れて俺は地面に落下し着地した。
「おぉ消えたのか? ん?」
今まで自分が乗っていたフラムドライが消えて少し驚いているとふと手に何か違和感があり見てみると。そこには左人差し指に嵌っている黒い指輪があった。
「これがフラムドライの待機状態?」
「へぇ指輪なんて珍しいですね!」
「そんなに珍しい物なんですか?」
「そうですねぇ私が知ってる限りだと大半がブレスレットやネックレスなんかが多いですね。指輪タイプは聞いた話だと日本の代表候補生の1人がそれに該当するって聞きましたよ」
「なるほど」
「とにかく待機状態にも問題がないみたいですし今日はお疲れ様です!」
「はっ! お疲れ様です! お先失礼します!」
俺は准尉に敬礼をして第二訓練所を後にした。
こうして俺とフラムドライ対EOS四天王(自称)の対決は終了した。