IS シュヴァルツェ・ハーゼはかく語りき   作:薄影 (黒ウサギ党)

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なんだかんだあって5話まで何とか書けてます

今回から福音戦に入ります。頑張って書くので暖かい目で見てください。


第6話 水着選びは大胆にかつ慎重に

 シュヴァルツェア・レーゲンとの戦闘が終わったその日の夜自室でシャワーを浴びた後に机で日課の銃の解体してメンテと組み立て作業をしていると一夏がシャワーを浴びて出てきた。

 

「うおっ! 何やってんだ? それ?」

「見ての通り銃のメンテしてるだけだが」

「いやてかなんで銃なんて持ってるんだよ」

「なんでって……俺は軍人だぞ? 持ってるだろ普通」

「いや普通って……ここ日本だぞ」

 

 俺は一夏と会話しながらメンテの終わった自分の銃である《グロック34》を組み立てて最終確認をして壁にかけてあるホルスターに閉まった。

 

「そういえば聞いたが一夏お前も初戦で負けたんだってしかも今回の俺みたいに」

「ウッ! そうだよセシリアと戦って一次移行(ファースト・シフト)終えて千冬姉の使ってた雪片二型の零落白夜を使っんだが」

「ほうほうそれで?」

「零落白夜の能力を知らないで全力で使ってあと一歩って所でエネルギー切れで負けたってこと」

「ありゃりゃそれは惜しかったな、しかしその零落白夜ってのは諸刃の剣なんだな」

 

『零落白夜』

 一夏の専用機である白式に備わってるワンオフ・アビリティーであり、エネルギー性質のものであればそれが何であれ無効化・消滅させる白式最大の攻撃能力。しかしその発動には自身のシールドエネルギー、つまり自分のライフを削るという武器仕様であり、諸刃の剣でもある。その威力は全ISの中でもトップクラス。

 

 

「あぁエネルギー系なら無敵なんだけどエネルギーの消費が激しくてなかなか使いにくいんだよな」

「ならよ明日から放課後俺と練習でもしないか?」

「えっ?」

「聞いてたらよ白式って近接武器の雪片二型しかないんだろ? 俺も近接武器しか持ってないから立ち回りとか色々アドバイス出来るかもなって思ってよ」

「マジか! それはありがたいよ!」

 

 俺の提案に一夏がこちらにズっと顔を近づけた。

 

「そんなに喜ぶことか?」

「いやー前にコーチとしてシャルロットに教わっててそれなりに出来るようになったんだけどね他の4人が……」

 

 そう言う一夏の目が横にズレた。

 

 あ〜これは問題ありって顔だな。しかしラウラまで教えるのが下手と言うのは驚いたな。

 一夏の話を聞いて以下の通り

 

 篠ノ之箒の場合

 

『こう、ずばーっとやってから、がきんっ! どかんっ! という感じだ』

 

 なぜ擬音系? 

 

 セシリア・オルコットの場合

 

『防御の時は右半身を斜め上前方へ5度傾けて、回避の時は後方へ20度反転ですわ』

 

 いや分かりづらいわ! 

 

 凰鈴音の場合

 

『なんとなくわかるでしょ? 感覚よ感覚。……はぁ? なんでわかんないのよバカ』

 

 ちゃんと教えろよ。なんだ感って……

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒの場合

 ほとんど鈴と文面が変わらないので割愛

 

 

 それを聞いて俺は唖然としていた。仮に専用機を持った国の代表候補生が(篠ノ之さんは違うが)なんてアバウトな説明を……

 

「ハハハお疲れ様だな一夏」

「ほんとにそうだよ」

 

 呆れる俺と疲れ顔の一夏、もう乾いた笑いしか出ないわ。

 

「もう寝るか」

「あぁ」

 

 

 次の日俺はある場所に来ていた。その場所はIS学園の地下にある射撃訓練場。

 基本的には生徒は立ち入り禁止の区画だが俺は織斑先生に許可取ってここで自分の銃で射撃訓練をしていた。台に置いてある銃は3丁。部屋で整備していたグロック34そしてドイツから持ってきたAR-15とベネリM4の2つでそれぞれ用意されている的に向けて撃っていた。

 

「いい腕してるじゃない」

「ん?」

 

 振り向くとそこには1人の女性が立っていた。

 

 彼女の名前は『シャロン・ラングレー』IS学園の3年生で学園の警備部に所属している。

 この射撃訓練場も警備部が部室として使っている。

 

「ラングレー先輩」

「銃もちゃんと整備されてるし流石現役の軍人だな」

「いやいや自分なんてまだまだですよ」

「ちょっと撃ってみても良いかな?」

「えぇ良いですよ」

 

 俺の銃を取ってくまなく見るラングレー先輩は台に行くとマガジンを装填し安全装置を解除して銃口を的に向けて発砲した。

 全弾的のド真ん中に命中させて銃からマガジンを取り出して机に置いた。

 

「いや〜ほんとにいい銃だな銃口はカスタム仕様なのか!グリップも握りやすいしマガジンを取り出すのも簡単に出来る。これを調整した職人は相当の凄腕だな」

「ドイツに帰る日があったらその言葉を伝えておきますよ」

「あぁそうしてくれ! しかし君うちの部に入らないかい?」

「えっ?」

「IS学園はさ基本的になんかしらの部活動に入部しなきゃいけないんだよ」

「へーそうなんですね」

「だからさ腕前に自信がある君をスカウトさせて欲しいんだよね!」

「ん? ラウラは入ってないんですか?」

「ボーデヴィッヒ? あの娘も最初の方に誘ったんだけど茶道部に入っちゃったみたいでさ」

 

 茶道部!? 何故? 和服は似合いそうだけど随分と平和的な部活に入ったもんだ。

 

「いや〜茶道部の顧問誰だと思う?」

「誰ですか?」

「織斑先生」

「あ〜」

 

 納得が言ったわ。織斑先生が顧問なら入るわな茶道部に。

 

「まぁ考えさせてください」

「前向きな返答を頼むよ!」

 

 俺は持ち込んだ火器をバックに入れて射撃場を後にして部屋に戻った。

 

 

 

 IS学園学生寮1306号室

 

 この部屋はシャルロットとラウラの部屋であり、ラウラはいつもの様に早起きをしていた。

 

「早く起きすぎてしまったな一夏の所に行こうかと思ったが……昨日レオンにあれだけ言われたしな」

 

 ラウラは昨日の夜に食堂でカウンターに並んでいる時にレオンから注意を受けていた。

 

「ラウラ1つ言っておきたいんですけど」

「なんだ?」

「今朝の件なんですけど流石にあれは無いと思いますよ」

「な、なぜだ!」

 

 トレイを持ったまま勢いよく振り向くラウラに少し後ずさりする。

 

「どうせその知識もクラリッサさんからなのでしょ?」

「ウッ! その通りだ」

「はぁ……そんな事してると一夏に嫌われますよ」

「そ、それだけは嫌だ!」

「なら今後はあのような行動は控えるべきかと」

「うぅ……わかった」

 

 これで一夏の睡眠も少しはマシになるだろ。

 

 そのままカウンターで夜食を受け取るとまぁいつものメンツが集まっているテーブルに向かった。

 

 

 

 

「うーん早起きした事だしレオンを見習ってランニングにでも出るか」

 

 そうしてラウラは同居人であるシャルロットを起こさないように部屋を出て行った。

 一方その頃同居人シャルロット・デュノアは幸せそうな顔で寝ていた。

 

「ごめんね手伝ってもらっちゃって」

「気にするなよ」

 

 放課後の廊下に赤い夕日が差し込む中をシャルロットは一夏と歩いていた。2人ともその手にはこの間のIS授業のレポートの束を持っている。

 

「でも良かったの? 放課後にレオンとISの練習するじゃなかったの?」

「良いんだ。大体シャルロットにも教えてもらいたかったしな」

「えっ?」

「それに……まぁなんだ。こういう手伝いでも好きな相手と一緒の方が良いってことだよ」

 

 そう言った一夏の頬は僅かに赤く染っている。それは夕日の色だけではないように見えた。

 

「一夏……」

「シャルロット……」

 

 2人しか居ない廊下でお互いに相手だけを映した瞳。

 そこに言葉はいらなかった。

 オレンジ色の光景の中、2人の影が徐々に重なって…………

 

「…………あ、れ?」

 

 シャルロットは、ぼーっとした頭で状況を確認する。

 場所はIS学園1年生寮の自室。時刻は朝の6時半。

 

「………………」

 

 シャルロットはまだはっきりしてない意識のままだったが2回瞬きをしたところで今の現状を把握した。

 

「夢…………」

 

 はぁぁぁ……と深く深く深海2万マイル程のため息が漏れる。

 

(あ〜あ、せめてもう10秒くらい見れればなぁ……)

 

 夢の残骸に思いを馳せ、その名残を惜しむ。

 

(うわぁぁぁ、ぼ、僕はなんて妄想を、い、一夏と廊下で……)

 

 夢の内容を思い出しさらに顔を赤くしてシャルロットは顔を枕に埋めて足をバタバタしていた。

 

 シャルロットは1週間に2回は今のような夢を見るようになっている。

 

「はっ!?」

 

 ふと隣のルームメイトにこんな姿を見られたらと思い、ゆっくりと隣のベッドに目を向けると。

 

「あれ?」

 

 隣のベッドにルームメイトの姿がない。

 

「ラウラどこに行ったんだろう? もしかしてまた一夏の所に……いや無いか昨日レオンに言われてたし。そしたらどこに行ったんだろ?」

 

 シャルロットは少し考えたが。

 

「……まぁ、いいか!」

 

 そんな事よりも先程の夢の続きである。今眠れば、もしかしたら先程の夢の続きが見れるかもしれない。

 そんな淡い期待を抱いてシャルロットは瞼を閉じて眠りにつこうとした。

 

(せっかく夢なら、もうちょっとエッチな内容でも僕は全然構わないかな)

 

 

 

 射撃場から部屋に戻り軽くシャワーを浴びて制服を着替えながらルームメイトを覗くと枕にヨダレを垂らしてだらしない格好のルームメイトを見て目を細めた。

 

「はぁ、おい一夏起きろ!」

「ん〜もう少し……」

 

 俺が体を揺すって起こそうとしたがThe寝坊野郎特有の『あと5分だけ』が発動したのでちょっとイラッとしたので暴力的に起こそうと思う。

 俺はうつ伏せ状態の一夏のシャツを捲り、そして背中を思いっきり叩いた。

 

 バチーン!!! 

 

「痛ってぇーーー!」

 

 急に来た痛みにベッドから跳ね上がる一夏。

 

「な、何をするだァーッ!」

「おはよう」

 

 目頭に涙を浮かべながらこっちに怒鳴る一夏に俺は冷静に朝の挨拶をした。

 

「くァ〜痛ってぇ……」

「最初の時点で起きないからだ」

「せめて3回くらいは優しくしてくれよ。仏の顔も三度までって言うだろ?」

「神は死んだ……」

「そんな……」

「んな事はどうでもいい、さっさと着替えろ飯食えなくなるぞ」

「あっ! そうだった!」

 

 慌ててベッドから降り一夏も着替え始めた。

 そして俺たちは着替え終えて食堂に向かった。その途中で篠ノ之さんオルコットさん凰さんそしてラウラと合流した。

 あれ? デュノアさんはどうしたんだろ? 

 

 IS学園1年寮食堂

 

 各員席に座った。

 俺の隣は一夏さらにその隣にラウラ。一夏の正面に篠ノ之さん。ラウラの正面にオルコットさんが座った。

 ちなみにそれぞれのメニューは俺がソーセージパン4個とコーンスープ、そしてスクランブルエッグとヨーグルト。一夏は納豆と焼き魚定食。篠ノ之さんは煮魚とほうれん草のおひたし。オルコットさんはサンドウィッチと牛乳。ラウラはパンとコーンスープ、そしてチキンサラダ。凰さんは朝からラーメンを食していた。どれも美味しそうだ。

 一夏は納豆をかき混ぜてそれをご飯の上にかけている。

 それぞれが喋りながら食べていると。

 

「わぁぁぁっ! ち、遅刻っ……遅刻するっ……!」

 

 珍しい声が食堂に響いてきた。声の主はばたばたと忙しそうに食堂に駆け込んでくると余っている定食から一番近くにあったものを手に取る。

 

「よっシャルロット!」

「あっ、一夏。お、おはよう。それにみんなも」

 

 デュノアさんは空いていた篠ノ之さんの隣に座った。俺から見れば真正面にあたる位置。

 しかしデュノアさんがこんなに遅く食堂に来るとな一見生真面目そうだったんだが、人は見かけによらないということか。

 しかし今から朝食を取ったら急がない限り遅刻が確定してしまうのではないか? 

 

「どうしたんだ? いつも時間にはしっかりしてるシャルロットがこんなに遅くなるなんて、寝坊でもしたのか?」

「う、うん、ちょっと……そのー寝坊……」

「へぇシャルロットでも寝坊なんてするんだな」

「う、うんまぁ、ね……その……2度寝しちゃったから」

 

 急いで食べてるせいかシャルロットは微妙に歯切れが悪いの悪い言葉で、受け答えをしている。気のせいだろうか微妙に俺から目線を逸らしているような? 

 

「シャルロット」

「う、うん?」

「なんか俺の事避けてないか?」

「そ、そんなことは、ないよ? うん。ないよ?」

 

 一応1ヶ月も同じ部屋にいたんだ。なんとなくシャルロットが誤魔化している雰囲気は感覚でわかってしまう。

 

(でもまぁ、あんまり問い詰めても鬱陶しがられるし、やめておこう)

 

「うん? どうしたのブリューゲル君?」

「ん? あっ! いや〜デュノアさん妙に箸の使い方が上手いなぁと思って」

「あぁこれ一夏に教えてもらって上手くなったんだ」

「へぇーそういえば俺が入る前のルームメイトってデュノアさんなんだっけ?」

「僕ここに転入した時は男子として来てたから」

「男子? でもデュノアさんって女子だよね?」

「う、うん色々あって……」

 

 デュノアさんの男装………うん普通に似合う! というか似合いすぎる! ボーイッシュな見た目だと思っていたがなるほどなるほど。

 

「しかし改めて女子の格好をしてるシャルロットは新鮮だな」

「し、新鮮?」

「おう。可愛いと思うぞ」

「か、可愛い……!?」

 

 シャルロットはその言葉に顔をボッと顔を赤くしていた。

 そんなことを露知らずに一夏はお茶を手に取ろうとした所に俺は

 

 バチーン!! 

 

「痛ってぇ!」

 

 思いっきり背中を叩いた。

 

「何すんだよレオン!」

「お前はそんな言葉をよくもまぁ」

「どういう意味だよ!」

 

 こいつマジか……あ〜こいつあれだ天然の女たらしだ。恋愛感情の欠如してるタイプの俗に言う『朴念仁』ってやつだ。

 

 キーンコーンカーンコーン。

 

 あっ予鈴だ。

 

「うわぁっ! い、今の予鈴だぞ、急げ! ってあれ?」

「何やってんだ置いてくぞ!」

 

 慌てて立ち上がった一夏は周りを見てると誰1人いなかった。

 えっ? さっきまでレオンが隣に居たよな? なんで食器を片付け? いやそんなこと思ってる場合じゃない! 

 その後一夏以外のメンバーは食堂を出てダッシュしていた。

 

「ちょ待てよ! お、置いていくな! 今日は確か千冬姉……じゃない織斑先生のSHRだぞ!」

 

 織斑先生のSHR……遅刻即ち死である。

 

「私はまだ死にたくない」

「右に同じく」

「一夏よさらばだ!」

「一夏さん急いだ方がよろしいですわ」

「私は関係ないけど、じゃーね」

 

 クッソオオオ! どうせ死ぬなら一緒に死のうぜ!? 

 

 既に俺を含めて5人は教室に向けて走り出していた。

 

「ほら一夏っ!」

 

 シャルロットお前待っててくれたのか! 一緒に死んでくれるなんてお前ほんと良い奴だな! 

 

「一夏飛ぶよ!」

「へ?」

 

 聞き返そうとした瞬間、シャルロットの脚と背中に光の輪が広がり収束して弾けた。

 それはシャルロットの専用機である『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』の部分展開。脚のスラスターと背部推進ウイングを実体化させた状態になった。

 

「……おわっ!?」

 

 

 

 俺を含めた1組4人と2組の凰さんは階段を駆け上がっていた。チラッと見えた窓からデュノアさんがラファールを部分展開して一夏を引っ張りながら飛翔している姿が見えた。

 

 おいおい見つかったら終わり案件じゃないか……

 

 そして1年の教室の廊下に着いた時1組の前にきっちりスーツを着こなした我らが担任織斑先生が立っていた。

 俺たちは走る足を止めて歩いて教室に向かった。そして教室前の窓からシャルロットと一夏が出てきたが目の前の鬼教師に見つかった。

 

「本学園はISの操縦者育成の為に設立された教育機関だ。そのためどこの国にも属さなず故にあらゆる外的権力の影響を受けない。がしかし……」

 

 すぱーん! 

 

 織斑先生の手に持っている出席簿が2人の頭に命中。

 おぉあれが昨日一夏が言ってた伝家の宝刀出席簿アタックか。

 

「敷地内でも許可されてないIS展開は禁止されている。意味はわかるな?」

「は、はい……すみません……」

 

 クラスでも優等生のシャルロットが予想外の規律違反にクラスメイトは衝撃的だったらしく唖然の表情を浮かべていた。

 ちなみに俺たちは2人が怒られている後ろを難なく突破し着席していた。一夏がこちらに『助けろよ』という顔を向けていたがこればっかりは自業自得である。

 

「デュノアと織斑は放課後教室の掃除をしておけ。2回目は反省文提出と特別教育室での生活をさせるのでそのつもりでな」

「「はい……」」

 

 2人は肩を落として着席。

 

 キーンコーンカーンコーン。

 

 空気の読めないチャイムが鳴りSHRが始まった。

 

「今日は通常授業の日だったな。IS学園とはいえお前たちも扱いは高校生だ。赤点なんて取ってくれるなよ」

 

 そう、ここは一応高校。授業数自体は少ないが、一般教科もIS学園では履修する。案内を読んだが、中間テストは無いが期末テストはあるらしい。それを赤点なんて取ったら夏休みは補習の連日になってしまう。それだけは避けたいな……夏のイベントに行きたいし。

 

「それと、来週から始まる校外特別実習期間だが、全員忘れ物などするなよ。3日間だが学園を離れることになる。自由時間では羽目を外しすぎないように」

 

 7月頭にある校外学習ーー即ち臨海学校がある。3日間の日程のうち初日は丸々自由時間に当てられる。もちろんそこは海なので、クラス基1年の教室では先週からずっとテンション上がりまくりなのだ。

 しかし海かぁ……水着持ってきてないし買わないとなぁ。今週末にでも一夏と見に行ってみるか。

 海軍に混じって海洋訓練して以来だな海なんて。

 

「ではSHRを終わる。各人今日もしっかり勉学に励めよ」

「あの織斑先生。今日は山田先生はお休みですか?」

 

 手を挙げて質問してきたのはクラスのしっかり者の鷹月静寐さんだ。確かにいつも織斑先生とツーペアでいるのに今日は居ないのは気になっていた。

 

「山田先生は校外実習の現地視察に行っているので今日は不在だ。なので山田先生の仕事は私が代わりに担当する」

「えぇ〜山ちゃん一足先に海に行ってるんですか!? いいな〜!」

「いやー! 私たちの真耶ちゃんのメロンパイがナンパ男の手に!」

 

 流石は花の10代、話題があれば一気に賑わう。それを鬱陶しく思った織斑先生は言葉を続ける。

 

「あーいちいち騒ぐな! 鬱陶しい! 山田先生は仕事で行っているんだ。それに校外実習先はIS学園のプライベートビーチだ一般の人間は1人も居ない!」

 

 はーい、と揃った返事をする1組女子。そういうところだけはチームワーク抜群だな。

 

 

 

 

「えーと3年4組は……ここか」

 

 放課後俺は3年生の教室に来ていた。目的は3年唯一の専用機持ちに会うことだ。

 本当は放課後に一夏と近接戦闘の練習をしようと思ったが朝の1件で今も教室掃除をしているため中止になった。

 聞いた話によると3年のダリル・ケイシー先輩は俺が使ってるフラムドライに使われてるシステム『赫灼』の共同開発元のボーイング社からの提供された熱伝導ケーブルを使用したISを使っているのでアドバイスでも貰おうかと思って来ていた。

 

「失礼します! 1年1組のレオン・ブリューゲルです! ダリル・ケイシー先輩はいらっしゃいますでしょうか!」

 

 扉から中に入り声を張り上げて中の先輩達に聞いた。

 

「おう! なんだい1年坊主? 俺になにかようかい?」

 

 窓際中央の机に腰掛けている女性こそ俺が探し求めていた人物だった。

 

「よっと!」

 

 彼女は机から飛び上がるとスタイルの良い脚でこちらに向かってきた。

 その特徴的なポニーテールならぬうなじで束ねた金髪(ホーステール)で身長は俺と同等くらい背筋を伸ばしているせいか更にデカく見える。更に自己主張が激しいのか制服の胸元は大胆にも開けられており豊満な胸が揺れる揺れる。

 

「んで? 俺に何の用だい1年?」

 

 この人すげぇ身長(タッパ)あるな俺と同等くらいか? あと胸も……山田先生並にありそうだな。

 

「はい! 是非ともケイシー先輩にアドバイスが貰えないかと思いまして!」

「アドバイスだ?」

 

 ダリルは怪訝な顔を向けてレオンを睨む。

 

「はい! 聞いているか分かりませんがケイシー先輩のヘルハウンドの製造元であるボーイング社は自分の使っているISに技術提供を受けており同じ炎系ISの使い手としてなにかアドバイスが貰えればと」

「なるほどねぇ」

 

 ケイシー先輩は俺のことを上から下へと目線を流してからもう一度俺の顔に自分の顔を向けてきた。

 

「良いねぇ……良し! ならこれからアリーナに行くか! お前の特訓に今日だけ付き合ってやるよ!」

「ありがとうございます!」

 

 そして俺とケイシー先輩は教室を出て元々一夏と練習するために予約していた第3アリーナに向かって歩いた。

 一方その頃レオンとダリルがアリーナに向かっているのと同時刻1年1組の教室では朝にやらかした1件で教室掃除をしていた。

 

 放課後の夕暮れ色に染まる教室で俺とシャルロットは2人で掃除をやらされていた。他の生徒は居ないーーーというのも、このIS学園は生徒に掃除などをさせないのである。毎日専属の清掃業者が教室に廊下、天井に至るまでピカピカにしてくれる。

 学舎の掃除を生徒にやらせないのは一時期保護者からの反発があり、曰く『僅かな時間でもIS教育に回した方がいい』との事で決着がついたらしい。

 という訳で、教室の掃除はもっぱら生徒への軽い罰として使われることになったそうだ。で、今まさにそれを体感している訳だがーー

 

「うーん。楽しいなぁ」

「えっ?」

「いや〜楽しいな。掃除は。特に普段使ってる教室だと余計に」

「そ、そう? 一夏って変わってるね……」

 

 えっ? あれ? シャルロットは同意してくれるかと思ったんだが。ちょっとショック……

 しかしまぁ気持ちはどうあれさすがシャルロットだ。掃除はしっかりと手伝ってくれる。

 

「ん、んん〜!」

「っと、無理するなよ。机運びは俺がやるって」

 

 ていうかそれアレだろ。岸里さんの机だろ。教科書全部入れっぱなしの……本人は『フルアーマー机』とか言ってたけど色々ダメだろそれ……

 

「へ、平気だよ。一応これでも専用機持ちなんだし体力は人並みにーー」

 

 と、言葉を続けたシャルロットが重量に負けて足を滑らせる。俺は咄嗟に後ろから体を支えた。

 

「あっぶね〜ったく怪我したら元も子もないだろ。ほら俺が代わるって」

「う、うん……あ、ありがとう……」

 

 後ろ側に滑ったシャルロットを背中から支えたので、ちょうど抱きしめる格好になってしまい。さすがに男に体を包まれているのが落ち着かないのか、シャルロットは妙に視線をさまよわせる。

 

「っと、わりぃ。離れる」

「あっ……」

 

 ん? なんだかシャルロットの声がすごく残念そうなんだが……なんでだ? 

 

「……別に良かったのに……」

「え?」

「な、なんでもないっ!」

「そうか?」

 

 今朝といい、なんだか今日は不思議なシャルロットだった。

 

(わ、わ、心臓がすっごいバクバクいってる……。か、顔大丈夫かな? 変な顔になってないよね?)

 

 罰掃除とはいえ願ってもない2人きりの状況にシャルロットの胸は自然と高鳴りが増していく。

 夕暮れに染まるオレンジの教室がふと今朝見た夢の光景と重なってしまってシャルロットの顔は耳まで真っ赤になった。

 

(ど、どうしよう……何か喋らないと……ぅぅでも言葉が出ないし話題が思いつかないよ……)

 

「そういえばさぁ」

「ひゃいっ!?」

 

 予想していなかった一夏からの話かけに咄嗟に返事をしたせいで、その声がみっともないくらいに裏返ってしまった。あまりにもおかしな声だったのでシャルロットは自分の口を押さえた。

 

「ど、どうした? 変な声出して」

「な、なんでもない。なんでもないないよ! ちょ、ちょっと考え事してたから、それだけ」

「ふーんそっか」

 

 特に疑問を抱いた様子もなく、一夏は机を運んでいく。これを全部戻し終えると掃除も終わり。そう考えると、どことなく寂しい気持ちになってしまうシャルロットであった。

 

「そういえばシャルに頼みがあるんだが」

「うん? 何かな?」

 

 突然の一夏からの頼み事に『?』マークを頭に浮かべていると真剣な顔で迫られ告げられた。

 

「付き合ってくれ」

「……へぇ?」

 

 シャルロットの世界が止まる音を聞いた。

 

 

 その日の夕食時、俺は放課後のダリル・ケイシー先輩からのアドバイスを頭で復習しながら今日食べるメニューを選びトレイを受け取って席を探していた。

 

「おや?」

 

 ある席に見覚えのあるブロンドヘアーの娘が1人で食事をしているのが見えた。

 

「デュノアさん?」

「うん?」

 

 俺はその席に向いその女子の名前を呼んだ。

 シャルロット・デュノア1年1組の専用機持ちの1人。しかし何故か彼女は不機嫌な顔をしていた。

 

「ブリューゲル君」

「ここ相席良いかな?」

「う、うん……」

 

 俺はデュノアさんの許可を貰い真正面に座った。

 

「それで? 何不機嫌になってるの?」

「えっ? そ、そう見えちゃった?」

「うん後ろから見ててなんか怒ってるって感じが伝わってきたから」

 

 お互いに食事をしながら俺はデュノアさんの不機嫌な理由を聞こうとしたら、それを誤魔化そうとデュノアさんは動揺した。

 

「誰にも言わない?」

「うん俺は口が堅いから大丈夫!」

「うん。実は放課後に教室掃除することになったんだけどその時に一夏から付き合って欲しいって言われて……」

 

 ほぉー一夏がそんなことを……ん? 待てよアイツは天性の朴念仁だろ……ってことは。

 

「もしかしてその後に買い物に付き合ってくれって言われたの?」

「……うん」

 

 あ〜やっぱりね。アイツ言葉足らずかよ。それゃ不機嫌になるわけだ。

 俺の見立てでは一夏の周りに集まってる専用機持ち+α‬は一夏に好意を抱いている。しかしあの性格と鈍さだ、苦労させられているのだろう。

 あれでわざとやってないんだから世も末だな。世の男から後ろ指を指されてるんだろうな今頃。

 

「それは災難だったね」

「良いんだよ。期待した僕が悪いんだから」

「それなら明日は思いっきりわがままを言うといい」

「え?」

「それぐらいしたって神様は怒りやしないさ。たまのわがままくらいなら」

「良いのかな……」

「理由はどうであれせっかくの2人きりの買い物なんだ楽しんだ者勝ちさ」

「うん……そうだよね理由はどうであれ一夏と2人きりの買い物……良し! 僕めいいっぱいわがままになるよ!」

「その意気だデュノアさん!」

「うん。ありがとうブリューゲル君! それとシャルロットで良いよ呼び方は」

「いいのか?」

「うん」

「じゃあ俺もレオンでお願いするよ」

「わかったレオン!」

 

 そして俺たちは食事を終えてそれぞれの部屋に戻った。

 

 

 

 次の日曜日、俺はIS学園にあるモノレールの駅にいた。

 IS学園には2つの移動手段がある。1つは陸路、学園と本島を繋ぐ巨大な橋を渡って行くルート。これは主にIS学園に物資などを届ける業者やお偉いさんが車を使う為の物だ。2つ目はモノレール。こちらは一般の生徒や教師が本島に行くために用意された物であり学園側に外出届けを出した生徒が使う。

 来週行われる臨海学校のための水着を買いに来た訳なんだが。

 

「何やってんだアイツら?」

 

 駅の看板裏でコソコソとやってる金銀髪とツインテールの女子ズを発見。

 関わりたくねぇ……はたから見たら怪しさMAXだろあれは。

 

「何やってるのオルコットさん凰さんラウラ」

「「うひゃっ!?」」

「ん?」

 

 俺が後ろから声をかけるとラウラ以外の2人はおかしな声を上げてこちらに顔を向けてきた。

 

「ちょっと! 脅かさないでよ!」

「し、心臓が飛び出るかと思いましたわ」

「少しばかり一夏とシャルロットの監視をな」

「一夏とシャルロットの監視?」

 

 俺は看板裏から顔を出して3人が見てた方角を見ると一夏とシャルロットが手を握っているのが見えた。

 

 おーシャルロットやるなぁ。昨日言ったことを実現させてるな。

 

「それで? なんでストーカーまがいなことしてる訳?」

「ストーカーとは失礼ね!」

「そうですわ!」

「全くだ」

 

 とりあえず3人から話を聞いたが簡潔に言うと一夏をショッピングに誘おうと会いに行こうとしたらシャルロットと一緒に駅に向かうのを発見し跡をつけていたら途中でラウラに見つかりなんやかんやあって一緒に尾行することになったとのこと。

 そして3人で追いかけて駅の看板裏で俺に見つかって今に至る。

 

「なるほどねぇ。まっ頑張れ!」

「あっ!? ちょっとアンタも手伝いなさいよ!」

「おい! 鈴! 一夏達が動いたぞ」

「置いていきますわよ!」

「えっ? ああもう!」

 

 一夏とシャルロットが移動しそれを3人が跡を追うのを見届けた俺は1人ショッピングモールへと歩みだした。

 

 このショッピングモールは交通網の中心でもあり電車に地下鉄、バス、タクシーと何でもごされのそろい踏み。市のどこからでもアクセス可能、そして市のどこへでもアクセス可能である。

 そして駅舎を含み周囲の地下街全てと繋がる当ショッピングモール『レゾナンス』は食べ物は欧・中・和を問わずに完備、衣服も量販店から海外の一流ブランドまで網羅している。さらに各種レジャーは抜かりなく子供から御年寄まで対応可能。曰く『ここに無ければどこにも無い』と言われるほどだ。

 すげぇなおい。

 

「さてと男性用水着売り場は……」

 

 俺はショッピングモールの案内看板を見ながら自分の買い物をするための店を探していた。

 

「店は……1個上か」

 

 案内看板を見て店を確認しエスカレーターへと向かい上階に向かった。

 店に着き中で男性用水着を物色。

 

「これでいいか」

 

 俺は1つの水着を手に取った。

 カラーはブラックで右側に赤色の1本線が施されているシンプルなデザインの水着。

 水着を持ってカウンターに向かっていると店の入口の前を走って通り抜ける銀髪少女が見えたと思ったらバックで戻ってきた。

 

「レオン! ここに居たか!」

 

 入口から入ってきたのは銀髪眼帯少女ことラウラだった。

 

「ラウラどうしたんですか?」

「私の水着選びを手伝ってくれ!」

「へっ?」

 

 時間を遡ること数十分前、セシリア、鈴、ラウラの3人は一夏とシャルロットを追っていたが途中で勘づいたシャルロットに撒かれ各員3方向に別れ捜索に入っていた。

 そしてラウラはふと並べられている色とりどりの水着が目に入った。

 

(ふむ。そういえば私も水着を持っていなかったな、しかし学園指定の水着があるから別に良いが)

 

 IS学園の指定水着というのは今では絶滅危惧種を通り越して保護指定種へとランクアップした紺色の芸術ことスクール水着である。ちなみに名札付き。

 

(まぁ泳げればなんでもいいだろう。あの水着は機能的に優れているから代わりのものは必要ないな)

 

 そう思い赤い瞳で水着の列を眺めるラウラだったが、次の瞬間ラウラの白い肌がボッと赤く染まる。

 

「ラウラは可愛いよ」

 

 いきなり一夏の声がーーその言葉が聞こえたのであった。

 どうも千冬と2人で話しているというところまでは把握できたが盗み聞きをする趣味はないので会話を意識していなかったところへの不意打ちだった。

 

「…………………」

 

 突然の言葉に顔は熱を放って紅潮し心臓の動悸は一気に加速し鼓動が早くなる。ドキドキとバクバクと胸が高鳴って止まらない。

 褒めるがいいーーと何度も一夏に言ってきたラウラであったが、実際に褒めてもらったことはなく、もちろん『可愛い』と言われたこともない。

 そこへきて突然のこの言葉なのだから冷静沈着で『ドイツの冷水』と呼ばれたラウラが取り乱すのは仕方ないことだった。

 

(か、か、可愛い………? 私が、可愛い……可愛い……)

 

 意味もなくキョロキョロと周囲を見やってからラウラは胸に手を当てて瞼を閉じる。そしてポケットからスマホを取り出し震える手でタッチパネルを操作し何度もコールする番号を間違えながらとある人物に電話をした。

 

 

 

 同時刻、ホルシュタイン航空基地、黒ウサギ隊(シュヴァルツェ・ハーゼ)司令部。

 そこではいつものように隊員たちにクラリッサが指示を飛ばしていた。

 

「何をしている! 現時点で37秒の遅れだぞ! ……ん?」

 

 怒号を隊員たちに向けていると懐に入れていたスマホが震えだし画面を見ると敬愛しているラウラからの着信だった。

 

「はいクラリッサ・ハルフォーフ大尉です。どうされましたか隊長」

『く、クラリッサ……』

 

 電話口から聞こえるラウラの声はどことなく覇気がなく愛しささえ感じてしまうような声だった。

 

「ボーデヴィッヒ隊長!? どうしたんですか!? 何か問題でも!」

『あぁ……とても重大な問題が発生している……』

 

 その声の様子からクラリッサは作業している隊員たちにハンドサインで『訓練中止・総員集合』を伝えた。

 集まる隊員たちは何事かと不思議な顔を浮かべているのをよそにクラリッサはラウラに話しかけていた。

 

「それで何があったのですか?」

『うむ……その……私は可愛いらしい』

「えっ?」

『そう一夏が言っていたのだ』

「あぁなるほど」

 

 なんとなくラウラがこんな状態になった理由を察したクラリッサ。

 

「それで? 私で良ければお話を聞きましょう」

『あぁ今度臨海学校に行くのだが……その……水着の選び方がわからんのだ』

「了解しました隊長。それで現在隊長が所有されている装備は?」

『学校指定の水着が1着のみだが』

「ッ!?」

 

 クラリッサは驚愕し開いた口が塞がらない状況に陥る。しかしそんなことよりもドイツが誇るオタク魂がこれは許せないと叫んでいた。

 そして大きく息を吸うと電話口に向かって

 

「何を馬鹿なことを!」

「うぇッ!?」

 

 急な副官の怒声にラウラ自身聞いたこともないような声がでる。

 

「確かIS学園は旧型スクール水着でしたね?」

『あ、あ……』

「確かにそれも悪くはないでしょう……だがしかしそれでは……」

『それでは?』

「色物の域をでない!」

「「「おぉ〜!!」」」

 

 クラリッサの迫真の叫びに集まっていた隊員たちは一斉に歓声をあげていた。

 

「さすが副隊長」

「伊達に日本のアニメや漫画を愛好されておられない!」

「そこに痺れる」

「憧れるぅ!」

 

 そんな隊員たちの目は憧れの眼差しと言っても過言では無い。

 

「確かに隊長は確かに豊満なボディで男を籠絡するタイプではありません。ですが、そこで際物に逃げるようでは『織斑一夏』には振り向いてもらえません」

『な、ならば……どうする?』

「私が直接選べれば良かったのですが、そうする訳にはいかないのでレオンに頼むのはどうでしょう」

『レオンに? なぜだ?』

「あぁ見えてレオンはファッションセンスが良いのです。隊長はドイツ軍発行のファッション誌をご存知ですか?」

『いや、あるのは知っていたが読んだことは無い』

「レオンは士官学校時代からあの雑誌に載る程でして恐らくこの基地にいる人間の中で1番のファッションセンスの持ち主かと。かくいう私も私生活での服選びをレオンにお願いしたことがありまして」

『なるほど、わかった。ありがとうクラリッサ!』

 

 ツーツーツー

 

 電話が切れクラリッサはスマホを耳から離して画面を切り替えていた。

 そして周りにいた隊員たちに解散命令をした。

 

(あぁ……どうして本国にいる間にこうして心を通わせあえなかったのだろう……)

 

 上を向き、会った時とは打って変わった隊長のことを思い少し目頭に涙を浮かべたクラリッサだったがすぐに拭い切り替えた画面に顔を向けた。

 そしてメッセージアプリを起動しレオンにメッセージを送り始めた。

 

 

 時は戻りカウンター前でラウラから水着を選んで欲しいと頼まれた俺は少し動揺していた。

 

「俺が選ぶんですかラウラの水着を?」

「そうだ」

「理由を聞いても?」

「先程クラリッサに連絡をしたらレオンが適任と言われてな」

「えぇ……」

 

 何言ってくれてるですかクラリッサさん! 

 

「さぁ! 早く行くぞ!」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「なんだ善は急げと言うだろ?」

「まず会計をさせてください……」

「あっ! すまない」

 

 俺はとりあえず自分の水着の会計を済ませてからラウラと一緒に下の階の女性水着売り場に向かった。その道中エスカレーターに乗っている時に俺のスマホにクラリッサさんからメッセージが送られてきた。

 

『隊長に似合う水着を選んでやってくれ』

『了解しました(*`・ω・)ゞ』

『そして試着したら写真を送ってくれ!』

『アイアイサー!』

 

 そして店に到着しとりあえず俺はラウラに質問を投げかけてみた。

 

「それで? どんな水着をご所望で?」

「うむ、それなんだが私はそういうのに疎くてな」

「そういうことならおまかせを!」

 

 ふむ。しかしラウラに合いそうな水着かぁ……うーん、ラウラは体型的に見て幼い。しかして幼すぎる水着は良くない可愛いが! ならここは大胆に行くのもいいだろう。

 

 俺は並べられている水着からめぼしい物を2着選び、それをラウラの元に持ってきた。

 1つは白色のレースをふんだんにあしらった水着で一見すると大人の下着(セクシー・ランジェリー)にも見える物、2つ目は黒のビキニでこちらは紫のレースを使っているが1つ目に比べて少なく普通のビキニタイプ。

 

「どちらにします?」

 

 俺はハンガーにかけられている2つの水着を両手で持ち上げラウラに質問をした。

 

「うーん、少し肌を露出しすぎではないか?」

「何言ってるんですか! 一夏に気に入られたいんならこれぐらいしなくては!」

「うぅしかし」

「良いから試着してください! ほらほら」

「お、おい!」

 

 俺は戸惑うラウラを試着室に放り込んでカーテンを閉めて待った。

 

「着たら教えてくださいね」

「あ、あぁ……」

 

 俺は待ってる間スマホをいじっていた。

 

 

 その頃ラウラは試着室で服を脱ぎレオンが見繕ってくれた水着を見ていた。

 

(私に似合うのだろうか……)

 

 見た目で言えばラウラは小さいし胸も発達している訳ではなく女性としてではなく少女として見られがち、昔は特に気にしてはいなかったが今は違う。愛する者がいてあいつ(一夏)に 少しでも褒めてもらいたい私を見ていて欲しいそんな欲が心を揺らした。

 

(いや折角レオンが選んでくれたのだ、とりあえず着てみるか)

 

 そしてラウラは1つ目の水着に手を伸ばした。

 

「レ、レオン……き、着替えたぞ!」

「はい!」

 

 俺はラウラに返事をした。試着室のカーテンが開かれると。

 

「おぉ……!」

「に、似合わないか?」

「いえいえ! とんでもない! 似合いすぎて言葉がでません!」

「そ、そうか!」

 

 やばかった……あまりにも可愛すぎて悶えるかと思ったわ。天使やんうちの隊長! 

 とりあえずクラリッサさんに写真を送らないと。

 

 スマホのカメラモードを起動して写真を数枚取りクラリッサさんに送った。

 

『1つ目の水着の写真送りました』

『( ◜ཫ◝)ヴッ可愛い』

『どうでしょうかね』

『流石だレオン次のも頼むぞ』

『了解しました(*`・ω・)ゞ』

 

 そんなやり取りをしている間にラウラは満足そうな顔をしていた。頬がすごく赤いが。

 

「次のを着ますか?」

「いやこれで行くとしようもう1着は予備として持っておこう」

「それじゃあ俺は店の外で待ってますね」

「あぁ」

 

 そして俺は店から出ながらクラリッサさんにメッセージを送った。

 

『隊長どうやら2着目は試着しない模様』

『なん.だと(꒪д꒪II』

『予備で買うとのこと』

『くっ( `ᾥ´ )仕方ないその時は是非写真を撮ってくれ!』

『かしこまり(*'∀'*)ゞ』

 

 スマホをポケットに入れて外にでたら一夏に遭遇した。

 

「おっレオン!」

「よっ! 一夏」

「何やってんだ? ここ女性物の店だろ?」

「あぁラウラの水着選びを手伝ってただけさ」

「へぇーどんなの選んだんだ?」

「それは現地に行ってからのお楽しみだよ」

「ふーんそういうものなのか?」

「そういうものだよ、で? お前は買ったのか?」

「あぁ……はぁ」

「どうした? ため息なんて吐いて」

「いやさっき変な女に絡まれてさ」

「変な女?」

「あぁシャルロットの水着選びを待ってた時にな」

 

 

 少し時を遡りシャルロットが水着を選びに店の中で物色していた時、一夏は店の中でシャルロットを待っていた。

 

「さてとシャルが選び終わるまでどうするかな?」

 

 一夏自身ここにいるのが場違いだということはわかっている。

 

(うーん……でもなぁシャルに意見を求められてるわけだし、ここは少し我慢しよう)

 

 今日が日曜日ということもあってかそこそこ女性客の姿が目につく。向こうも女物の売り場に男が入ってきたとうことをすぐに気づいたようだった。

 

「ちょっとそこなあなた!」

「ん?」

 

 キョロキョロと周りを見てもここには俺とシャルしかいない。

 

「男のあなたに言ってるのよ! そこの水着片付けておいて」

 

 名前も知らない相手からいきなり言われる。

 ISが普及した10年で女尊男卑の風潮があっという間に浸透していった。

 どの国(1部例外を除くが)でも女性優遇制度が設けられ男はこうして街を歩いているだけで見ず知らずの相手から命令される始末である。

 けれど俺はーー

 

「なんでだよ。自分でやれよ。人にあれこれやらせる癖がつくと人間バカになるぞ」

 

 そういうのが大嫌いだ。関係性のある仲ならともかく見ず知らずの相手にそんなことを言われる覚えはない。

 そして従いたくもない。

 

「ふぅん、そういうこと言うの。自分の立場がわかってないみたいねぇ」

 

 そう言って女性客は警備員を呼ぼうとする。ただでさえ女尊男卑の社会なのだ。『いきなり暴力を振るわれた』などと言われようものなら問答無用で有罪確定。なんて世の中だ。

 

「あのーそのくらいで良いでしょう? 彼は僕……私の連れですから」

 

 タイミングを見計らってシャルが口を挟む。同じ女同士なら話もこじれない。

 

「あなたの男なの? 躾くらいしっかりしなさいよね!」

 

 うわぁ……聞いたか。男=犬の構図だぜ。

 ちなみにここまで横柄な女はあくまで1部であって、多くの女性はある程度男の社会的立場というものを認めてくれている。

 しかしまぁ、それにしたってやっぱり女性のために男が働くといのは当然という考え方なんだけどね。

 

「全くこれだから男は……」

 

 ブツブツ言いながら女性客は立ち去っていった。なんだろ? 嫌なことでもあったんだろうか? ストレス社会は本当に人間に優しくないぜ。

 

 

「てなことがあった訳よ」

「大変だったんだな」

「シャルロットが居てくれて良かったよ」

「そうだなシャルロットに感謝しろよ」

 

 俺はそう言いながら一夏の背中をバンバンと叩いた。

 

「痛い痛い!」

 

 しかし、そんな女がこんなのどかそう場所にも存在しているんだな。

 俺が遠い目をしていると会計を済ませたラウラがシャルロットと一緒に店から出てきた。

 

「おまたせ!」

「なんだシャルロットもここの店だったのか」

「うんレジに並んでたらラウラと一緒になったんだ」

「うむ」

「それじゃあ、みんなで飯でも食べてから帰るか」

「あっ! その前にちょっとだけ待ってくれ」

「どうしたんだレオン」

「まぁまぁ」

 

 俺は通路を進み曲がり角に居る2人を引っ張り出した。

 

「な、何しますの!?」

「や、やめなさいよ!」

「良いから出てきなさいよ!」

「「わああああ!!!」」

 

 角から出てきたのはセシリアと鈴だった。

 どうやら2人とも一夏とシャルロットを見失った後も捜索していたらしくようやく見つけた時には俺たち4人になっているのを発見して出ようにも出れなくなっていたようだった。

 

「おぉセシリアと鈴も一緒に飯行かないか?」

「え、えぇご相伴にあずかりますわ」

「一夏の奢りなら良いわよ」

「はいはい」

「レオン行こうぜ!」

「おう!」

 

 俺はセシリアと鈴の後に続き歩きだそうとした時1階で何やら騒いでいる女性の姿が目に入った。

 

 あ〜あれか一夏が言ってた女って。ん〜〜、おっ! そうだ! 

 

 俺はニヤッと悪い笑みを浮かべて後ろの店の商品を取り1階の女のバック目掛けて投げた。

 見事投げた商品はバックに入り、女は満足したのかそのまま自動ドアに向かって歩いていく。そして外に出ようとした瞬間けたたましい防犯アラームが店内に鳴り響いた。

 そして駆けつけた店員と警備員にバックヤードに連れて行かれる女は「私はやってない!」と周りに抗議するがそれも虚しく周りからの冷たい目線だけが送られているのを上から眺めていた俺はニヤニヤとした顔をしていた。

 

 ふぅーこれで一夏の仇討ちは完了だな。

 

 そして俺はみんなの元に走って戻りマッ〇で昼飯を済ませ学園に帰ったのであった。




どうも薄影です。

今回の文字数脅威の1万7000……書きすぎだなこれ

しかし今年も暑いですね。皆さん熱中症にならないよう水分補給はしっかり取りましょうね。
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