IS シュヴァルツェ・ハーゼはかく語りき 作:薄影 (黒ウサギ党)
第7話 夏だよ海だよ全員出動!
今日はついに臨海学校の日。IS学園1年生を乗せたバスの列が目的地に向けて進む中バス内では遠足気分の女子達の声でいっぱいだった。
現在バスはトンネルの中を進む。
そんな中俺はセシリアとチェスを箒と将棋の2面構図で対戦していた。
「ぐぬぬ」
「むむ」
ただのチェスと将棋ではないホログラムで投影されているので場所関係なく対戦ができる代物で今時に合わせて駒を変えることが出来るのだ。
現在の駒はISを象られており各国の量産機から専用機まで様々なISが場面に並べられている。
戦況はレオンが有利に進められていて箒とセシリアは眉をひそめていた。
「2人相手によくやるなぁ」
「せっしー! しののん! がんばっ!」
「くっ! これでどうだ!」
「ここですわ!」
2人とも勢いよく駒を置いた。その2人の顔はドヤ顔であった。
「うーん、そう来たか……」
「フフフ投了してくれてもいいのだぞ」
「えぇ諦めても私たちは笑いはしませんわ」
2人とも俺が悩むのを見て勝機を確信したのか降参を勧めてくるがそうは問屋が卸さない。
「んじゃま、ここに置くと王手詰みとチェックメイトだな」
「なっ!?」
「ッ!?」
2人は驚きのあまり目を丸くして開いた口が塞がらない。
「アッハッハさぁ! 次は誰だい?」
「海っ! 見えたぁっ!」
そんな中トンネルを抜けたバスの中でクラスの女子が声を上げる。
天気は快晴。陽光が反射する海面は穏やかで潮風にゆっくりと揺らいでいた。
「おーやっぱり海を見るとテンション上がるなぁ」
「う、うん? そうだね」
一夏の隣の席はシャルロット。しかし出発してからずっとこんな感じで、いまいち話を聞いていない。返事をしてはすぐに手元に視線を移す。
「それ、そんなに気に入ったのか?」
「えっ!? うん。まぁ、ね。えへへ」
シャルロットの左手首には銀色に輝くブレスレットが巻かれていた。これは一夏が買い物に付き合ってくれたお礼としてシャルロットにプレゼントしたものだった。値段的に見ればそこまで高い物では無いがシャルロットには関係なかった、一夏が選んでくれた物というのが重要であるためにシャルロットは時々思い出し笑いするかのように笑みを漏らす。
「うふふっ♪」
すごく上機嫌のシャルロット。
「全くシャルロットさんったら朝からえらくご機嫌ですわね」
通路を挟んで向こう側のセシリアが若干ムスッとした顔で言ってくる。
「うん。そうだね、ごめんね。えへへ……」
セシリアの言葉もなんのその笑顔で返すシャルロット。今の彼女にはどんな言葉も届かないだろう。いわゆる無敵状態である。
「昨日、途中に2人だけで抜けたと思ったら、まさかプレゼントとは……不公平ですわ」
「あ〜……。まぁ、その、なんだ。セシリアにはまた今度の機会にな?」
「や、約束ですわよ!」
「お、おう。あんまり高いのは無理だけどな」
そんな約束をした一夏の頭の中では『またバイトしないといけないかもな』と考えていた。
そんな光景を俺は見ながら隣でソワソワしているラウラに目線を変えた。
「ラウラ少しは落ち着いては?」
「い、いやしかし……」
「せっかくいい水着を買ったんですからもうちょい堂々としてくださいよ」
「う、うむ」
やれやれ『ドイツの冷水』なんて呼ばれてた人がこんなになるとは一夏の女誑しは凄いなぁ(棒)
「そろそろ目的地に着く。全員ちゃんと席に座れ!」
織斑先生の一言で全員がサッとそれに従う。指導能力抜群であった。
言葉通りほどなくしてバスは目的地である旅館前に到着。バスから続々とIS学園1年生が降りてきて整列した。
「それでは、ここが今日から3日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員の仕事を増やさないように注意しろ」
「「「よろしくお願いしまーす」」」
織斑先生の言葉の後に全員で挨拶をする。この旅館には毎年お世話になっているらしく着物姿の女将さんが丁寧にお辞儀をした。
「はい、こちらこそ。今年の1年生も元気があってよろしいですね」
歳は30代くらいだろうか? しっかりとした大人の雰囲気を漂わせている。仕事柄笑顔が絶えないからなのか、その容姿は女将という立場とは逆に若々しく見えた。
「あら? こちらのお2人が噂の?」
ふと俺と一夏に目が合った女将さんが織斑先生に尋ねた。毎年お世話になっているとはいえ今年は男子が2人もいるのだから当然の反応といえば当然である。まぁISを動かしたを除いて男子が女子校にいたら普通に驚くよな。
「レオン・ブリューゲルです。ご迷惑をおかけするかもしれませんがよろしくお願いします」
「お、織斑一夏です。よろしくお願いします!」
「あらあらこれはご丁寧に。
改めて女将にお辞儀をすると女将もそれに応えるようにお辞儀を返してくれた。
「挨拶ができて偉いわね。立派な男の子ではありませんか織斑先生?」
「こっちの図体がでかい方はそうでしょうけどもう片方は見かけだけですから」
いや〜ズバッと言うなこの人。しかし身内に対する言い方はもうちょいどうにかした方が……ほら一夏が見てわかる通りの落ち込み方してるよ
てか図体がでかいってなんですか!? 事実ですけど……それが生徒に言う言葉ですかねぇ。
「それでは皆さん、御部屋の方に案内しますので迷子にならないように気おつけてくださいね。海に行かれる方は別館にて着替えられるようにしておりますのでそちらをご利用なさってくださいな。場所等わからないようなことがありましたら従業員に何時でも訊いてくださいまし」
女子一同は『はーい』と返事をするとすぐさま旅館の中へと向かって行った。とりあえずは荷物を置いてからなんだろう。
ちなみに初日は終日自由時間。食事は旅館の食堂で各自取るように言われている。
「ね、ね、ねーおりむ〜レオちん」
ムムっ! この独特な呼び方をするのはこの世で1人しか知らないぞ。
振り向いてみるとそこにはいつものようにマイペースなのほほんさんこと布仏本音さんがいた。
「2人の部屋ってどこ〜? 部屋割りに書いてなかった〜遊びに行くから教えて〜」
そういえば貰ったしおりには書いてなくて織斑先生に聞いたな。『お前たちは現地で教えやる』と言われたが。
「さぁ? 知らないな。廊下にでも寝るんじゃねぇの?」
「わ〜それいいね〜。私もそうしようかな〜。あ〜床つめたーいって〜」
おいおい花の10代女子がそんなみっともないことしちゃいかんでしょ。
「織斑、ブリューゲル、お前たちの部屋はこっちだ。ついてこい」
おっと織斑先生のお呼びだ。待たせる訳にはいかん。俺たちはのほほんさんに「また後で」と言って別れた。
俺と一夏は織斑先生の後に続いたがなんとまぁ沈黙が痛いのなんのって……
「あのー織斑先生? 俺たちの部屋ってどこになるんでしょうか?」
「黙ってついてこい」
このとおり言論封殺なのである。一夏が聞いてもこのとおりなので一夏は頭をガクッと項垂れていた。
ちなみに旅館の中はかなり広く綺麗で、1学年丸々収容できる規模の旅館というだけでも凄いが、その内装は歴史のある装飾と最新設備が見事に融合したものになっていた。適度に効いているエアコンが素晴らしい。廊下ですらひんやり快適だ。これなら寝れるな。
「ここだ」
「え? ここって……」
「教員室?」
連れられて到着した部屋のドアには『教員室』と書かれている。
「最初は個室という話だったんだが、それだと絶対に就寝時間を無視した女子が押しかけてくるだろうというとことになってだな」
はぁ、とため息をつく織斑先生が続ける。
「教員同士の話し合いの結果、私と同室になったという訳だ。ここなら女子共もおいそれとは近づかないだろう」
「アハハ……そりゃそうでしょうよ」
虎穴に入らずんば虎子を得ず。誰が冬眠してる熊の巣穴に潜ろうとするよ。
「一応言っておくが、あくまで私は教員だということを忘れるなよ。特に織斑」
「は、はい織斑先生」
「それでいい」
そうして部屋の中に入る許可が下り、織斑先生の後に続いて入ると
「おぉー、すげー!」
「いや〜絶景だな!」
目の前の窓から見える風景はこれまた素晴らしいくて海がバッチリ見渡せる。東向きの部屋だから、きっと日の出も抜群に綺麗に見えるだろうなぁ。
しかし教員用とはいえ広々とした間取りだな。こりゃ相当な好待遇だよなぁ。
さすがIS学園だな。
「あの〜織斑先生」
「なんだブリューゲル」
「ここには大浴場があると聞いたのですが、俺たちは使っていいのでしょうか?」
「あぁその事についても話そうと思っていたところだ。一応、大浴場も使えるが男のお前たちは時間交代制だ。本来ならば男女別になっているが、何せ一学年全員だからな、お前たち2人のために残りの全員が窮屈な思いをするのはおかしいだろ。よって1部の時間のみ使用可だ。深夜、早朝に入りたければ部屋のを使え」
「わかりました」
しかし俺がいるとはいえ、せっかくの姉弟だというのに千冬さんは職務に忠実とは全くもって尊敬しちまうな。たぶん一夏はさっきの注意がなければ千冬姉と言ってるんだろうなきっと。
「さて、今日は1日自由時間だ。荷物も置いたしあとは好きにしろ」
「えっと、織斑先生は?」
「私は他の先生との連絡なり確認なり色々とある。しかしまぁーーー」
ごほん、と咳払いをする織斑先生。
「軽く泳ぐくらいはするとしよう。どこかの弟が選んでくれたものだしな」
どこかの弟こと隣にいる一夏はなんとまぁ満面の笑みとはいかないものの頬が上に上がっていたので、とりあえず頭を叩いた。
「あいた」
「そんじゃ俺たちは海にでも行くか」
「そ、そうだな」
「羽目を外していらんトラブルを起こすなよ」
「「わかりました」」
俺たちは置いた荷物から水着一式と小さめのバックを持って部屋を出た。
しかし部屋の扉を開けたら山田先生が居たのは驚いた。宙を舞う書類を空中でかき集めて山田先生に渡したのを驚いた顔で一夏と山田先生が見てきたのは割愛しておこう。
いざ行かん! 麗しき海へ!
「………」
「………」
「………」
テンション上げて更衣室に向かう途中で俺と一夏は箒に出会ったのだが……それは良いんだよ。
旅館と別館を繋ぐ渡り廊下にある和式庭園に奇妙な光景があった。
地面に何か刺さっとる。
「ウサミミ……だよな?」
そうウサミミ、生のヤツじゃなくてなんかメカメカしい感じのやつが刺さってる? いや埋まってるのか?
しかもご丁寧に『引っ張ってください』と書いてある立て看板まで一緒に刺さっている。
何? 新手のUMA? それともJapaneseYOUKAI?
「な、なぁこれって……」
「知らん。私に聞くな。関係ない」
「えっ!? 箒これが何か知ってるの!?」
「知らん! 私に聞くな! 関係ない!」
声を荒らげて足早に立ち去っていく箒の背中を見届ける。
なんか前に篠ノ之束博士の話をしようとした時の剣幕に似てたな。もしかしてこのウサミミって……
疑惑の目を向けながら謎のウサミミを見ていたが、こういう物には関わるなというのが昔からの教訓だな。海に行くかな。
「抜くか」
「はいぃぃ!?」
一夏の興味がこのウサミミに向いてしまった。そんな謎の物体よく触ろうなんて思うなコイツは。
「抜かなきゃ始まらないだろ?」
「はぁ、仕方ない手伝ってやるよ。一夏お前左な」
「わかった」
そして俺は右側の耳を掴む。
「良し! 行くぞ? 3で行くからな」
「おう」
「3.2.1! うわっ!?」
「うぇっ!?」
なにか埋まってると思い勢いよくウサミミを引っこ抜いたがズボッと抜けたのはウサミミのみでその先からはなにも付いていなかった。
刺さってるだけだったのでそのまま2人は盛大に背中を強打した。
「あ〜痛ってぇ!」
やべぇ受身取り損ねた。
「何をやってますの?」
「おっセシリア。いや今このウサミミを……あ」
一夏はついつい声の方に向かって視線を送ってしまい。倒れた体勢のままだったのでセシリアのスカートの中が見えてしまっていた。
「!? い、一夏さんっ!」
「す、すまん!」
一夏の視線に気づいたセシリアは、ばばっとスカートを押さえて後ずさる。ちなみに中身はレースのついた白だったそうな。(一夏談)
「いや、その、だな。ウサミミが生えてて、それで……」
「は、はい?」
セシリアは素っ頓狂な声で聞き返す。そりゃそうだ。俺だって人からそんな説明を受けたらそんな声が出るわ。
そんな2人の会話を聞きながら俺は空を見上げていると何か黒い物体が見える。
「なんだ? あれ?」
目に汚れでも入ったかと思い目を擦ってみたが空の黒い物体はあるしなんかさっきよりも近くないか?
キィィィィ……
「うおっ!? 一夏避けろ!」
「えっ? ぶへぇ!」
俺はセシリアの方を見ている一夏の顔面に向けて飛び蹴りをかます。
そして
ドカーーーーーン!!
謎の飛行物体は盛大に地面に突き刺さった。しかもその見た目が……
「いてて。レオンもうちょいやり方ってものが!」
「そんなことより一夏……あれ」
「えっ……に、にんじん……?」
俺と一夏とセシリアは落ちてきた巨大にんじんを見て唖然としていた。リアルな方じゃなくてイラストチックなデフォルメにんじんがそこにあるんだよな。
「あっはっはっ! 引っかかったね、いっくん!」
にんじんが真っ二つに割れてその中から笑い声とともに登場したのは某不思議の国の女の子の服装をしたウサミミの女性が現れた。
現れたこの人物こそ件の天才にしてISの生みの親である篠ノ之束その人である。
なんでこの人普通に登場しないんだ?
「や〜前にさミサイルで飛んでたら危うくどこかの偵察機に撃墜されそうになったからね。私は学習する生き物なのだよ。ぶいぶい」
ん? 今この人なんて言った? ミサイル? 撃墜されそうになった? ん〜〜あっ! まさか……
ちょっと時は遡り、俺がまだ訓練校時代の頃にある事件が起きたことがあった。
その事件というのがどこからか飛来してきたミサイルがドイツ上空を通過するという事件だった。
急遽戦闘機に乗れるパイロットが招集され、訓練生だった俺も招集される形となり偵察機約5機がスクランブル発進することになった。
あれの原因が今目の前にいるこの人が起こしたのかよ……やべぇドイツ本国に連絡するべきかな?
「お久しぶりです束さん」
「た、束さん!?」
セシリアは声を荒らげる。
「うんうん。おひさだねいっくん。随分と大きくなって顔もイケメンになっちゃって、ところでいっくん。箒ちゃんらどこに行ったのかな? さっきまで一緒だったでしょ?」
「えーと……」
「まぁ良いさ! この私が開発した箒ちゃん探知機を使えばすぐ見つかるし、じゃあねいっくん。また会おう!」
いつの間にか俺と一夏の手から取ったあのウサミミを持って走り去っていった。
「い、一夏さん。先程の方は一体……」
「束さん。箒の姉さん」
「え……ええええっ!? い、今の方が、あの篠ノ之博士ですか!? 現在、行方不明で各国が探し続けている、あの!?」
「そう、その篠ノ之束さん」
「相当破天荒だとは聞いてたがあそこまでとはな」
「レオン戻ってきたか」
「過去のトラウマが頭をよぎったよ」
俺が過去のトラウマを思い出している間に話は進んでいたようでとりあえず篠ノ之束博士は放っておく方向になった。
「まぁいいや。箒に用があるみたいだし今の所関係なさげだし。ところで俺たちは海に行くけどセシリアは?」
「え、ええ。わたくしも海へ。そ、そこでですね」
コホンコホンと咳払いをするセシリア。
「せ、背中はサンオイルが塗れませんから……一夏さんにお願いしたいのですけど……よろしくて?」
「ん? 友達に塗ってもらえばいいじゃないか」
はぁほんとにコイツはどこまでいっても鈍感なヤツめ。
「まぁそれくらいならお易い御用だよ」
「ほ、本当ですね!? 後からやっぱりナシは認めませんわよ!?」
「わかった。じゃあ、また後でな」
「ええっ! また後で!」
セシリアはルンルン気分で別館に向かって走って行った。
「お前、後で痛い目見ても知らないからな」
「な、なんだよ急に」
「さーて着替えに行くかな」
「あっ! おいレオン!」
男子の更衣室は別館の1番奥を使えとのお達しが来ているのだが……まぁ皆さんお察しの通り女子の更衣室の前を通らなきゃいけないわけですよこれが。
「わ〜ミカってば胸おっきい! また育ったんじゃない〜?」
「きゃあっ! も、揉まないでよぉっ!」
「ティナって水着だいたーん! すっごいよね〜」
「そう? アメリカじゃあ普通だと思うけど」
こういう話題が平然と飛び交うんだよなぁ女子校って……俺はともかく一夏はこういうのに慣れてないだろうな。
チラッと一夏の方を見てみたが顔が赤い。うぶだねぇ。
まぁこんなとこには長居は無用だ。さっさと着替えて海に行こう。
「レオーン!」
「ん?」
おや? 誰だろ? 外から俺を呼ぶ声がする。この女子をも魅了する声の持ち主は確か。
「おぉシャルロットどうしたん?」
「あっレオン。実はラウラが……」
「ラウラがどうした?」
要約すると更衣室で水着に着替えたラウラだったが出口付近にあった鏡を見たら顔面真っ赤にして本館の方に走って行ってしまったらしい。
「なるほどねぇ。で? ラウラの行き先に心当たりは?」
「たぶん部屋の方じゃないかな」
「OK! 悪いな一夏、先に海に行っててくれ」
「俺も行こうか?」
「いや、お前が来ると更にややこしくなるから海に行ってろ。シャルロット部屋に案内してくれ」
「う、うん。わかった」
そして俺とシャルロットは部屋へと逃げたラウラを追いかけるために本館の方へと駆け出した。ちなみにシャルロットにはそのまま走らす訳にもいかなかったので俺の予備の上着を羽織ってもらった。
本館1年の部屋の一室に到着した俺とシャルロットはとりあえず中に居るであろうラウラに声をかけてみることにした。
旅館の扉は横に空く襖なので入れることには入れるだろうがさすがにラウラが何してくるか分からないので外から様子見という形にしている。
「ラウラー」
「し、シャルロットか?」
「そうだよ。あとレオンもいるよ」
「ラウラ大丈夫ですか?」
「れ、レオンやっぱり無理だこんな格好で外など出れない!」
予想的中というか試着した時にはこうなるんじゃないかと予想はしていた。
「何言ってるですか? せっかく良い水着持ってきたんですから行きましょうよ海に」
「む、むむ、無理だ」
あちゃーこれはかなり重症だな。
「どうしようレオン。せっかくの海が……」
うーん。これ以上シャルロットの時間をとるわけにいかないし、こうなったら強硬手段に出ざるを得ない!
ガシッ! と扉を掴み。
「ラウラ……失礼します!」
バンッ! と思い切っり開け放した。
「うわぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」
いきなりのことで後ろに仰け反り転がる形で後退していくラウラに近づき脇に手をかけて近くの椅子に座らせた。
「な、な、な、なぜ入ってくる!?」
「いや、もうめんどくさくなってきて」
「私は行かんぞ! 何をされても抵抗するからな!」
「なら一夏が他の女子にあんなことやこんなことをされてもいいんですね?」
「うっ……そ、それは……」
「い・い・ん・で・す・ね!」
「うぅ……」
俺の気迫に負けたのか項垂れていくラウラ。
「とりあえず海に行きませんか? せっかく水着に着替えたんですから」
「し、しかし恥ずかしいのだ……」
「ん〜まぁ言いたいことはわかりますよ。でもラウラは可愛いんですから自信を持ちましょうよ」
「か、可愛い!?」
「えぇ可愛いです。ね、シャルロット?」
「えっ!? うん可愛いよラウラ!」
不意に自分の名前を呼ばれたシャルロットは少し驚いたが確かに可愛いラウラに対して自分の感想を述べた。
「ね? だから行きましょう」
「そ、そこまで言うなら」
「良し! ですが」
「ですが?」
「せっかくの水着姿なんですから髪型も変えましょうか」
「なっ!?」
「ほらほら後ろ向いて向いて」
「や、やめろーー!」
青い海、白い砂浜、そして輝く太陽! そしてはしゃぐ水着女子たち! (2人男子)すまんな世の男たちよここは
「あっ! ブリューゲルくんだ!」
「やっほ〜レオちん!」
「わ、私の水着変じゃないよね?」
「うわ〜腹筋バキバキだ〜」
海に着くなりのほほんさんたちと遭遇した。
「おっす! みんな何してんの?」
「これからビーチバレーやろうと思ってコート作ってるの」
「レオちんもやろ〜」
「そうだな、どうするシャルロット、ラウラ?」
「僕は良いよ」
「わ、私も構わん」
俺の後ろに居た2人にも参加するか聞いてみた。未だにラウラは恥ずかしいのかシャルロットの後ろに隠れている。いや可愛すぎか!
「てかのほほんさん、それ水着なの?」
のほほんさんの水着? はなんと言うか狐の着ぐるみのようで確か部屋着もこんな感じだったような?
「そうだよ。これ実は耐水製で泳げるんだよ〜あっ中にはちゃんと水着も着てるから安心して〜」
「へ、へぇ〜そうなんだ」
この世には面白い物がまだあったんだな。
「あと誰が参加するの?」
「えっとね織斑君が参加決定してるかな?」
「それとここにいるメンバーって感じかぁ人数半端じゃない?」
「それじゃあ3人チームでやるのはどうかな?」
「おぉ〜さすがデュッティ」
「ていうかボーデヴィッヒさんの水着なかなか攻めてるね」
「うっ……」
鷹月さんがシャルロットの後ろに隠れているラウラを見つけてその水着をマジマジと見つめる。それに気づいたラウラは更にシャルロットの背中を盾にする形で隠れた。
「おーい」
「あっ一夏!」
「ッ!?」
「おう一夏」
「おぉレオン! 来てたかシャルロットも」
「うん」
「ラウラは?」
一夏は俺たち2人が探しに行ったラウラが見当たらないようで周りを見渡していた。
「ほらラウラせっかく水着に着替えたんだから一夏に見てもらわないと」
「ち、ちょっと待て私にも心の準備というものが……」
シャルロットに引っ張られる形でラウラは一夏の前に出てきた。
その髪型はいつものロングヘアではなく左右で一対のアップテールになっている。
可愛いッ! (某悪魔的サイヤ人風)
「おぉ」
「わ、笑いたければ笑うがいい!」
「ほれ感想言ってやれ一夏」
「お、おう。ちょっと驚いたけど似合ってるぞ」
「なっ……!」
そんな一夏の言葉が予想外だったのか、ラウラは驚きに一瞬たじろいだあとそのままカーッと赤面した。
「しゃ、社交辞令ならいらん……」
「いや、世辞じゃねぇって。なぁシャル、レオン?」
「うん。僕たちも可愛いって褒めてるのに全然信じてくれないんだよ。あっ! ちなみにラウラの髪はレオンがセットしたんだよ」
「へぇ、凄いなレオン」
「まぁ俺以外の家族全員女だからな、よく妹の髪をセットしてたから慣れてるんだよこういうの」
「シャルも水着似合ってるぞ」
「う、うんありがとう」
シャルロットは褒められて照れくさそうに髪をいじり始める。その手首にはプレゼントされたブレスレットが光っていた。
「それ錆びたりしないのか?」
「大丈夫だよ。来る前に保護コートしてあるし、後で塩水は洗い流すから。せっかく一夏がくれたものだしね」
えへへ、と笑顔で言うシャルロット。相当気に入ってるんだな。
「おっりむらくーん! ブリューゲルくーん!」
「準備出来たからビーチバレーしようよ!」
「わー、おりむーと対戦〜!」
俺たちが話してる間にビーチバレー用のコートを準備していた女子ズはコートを完成させて俺たちを呼んでいた。
「それでメンバー分けはどうする?」
「ん〜バランス的に見てもブリューゲル君と織斑君のチームで分けてそこに2人ずつ入る感じで良いんじゃないかな?」
「それじゃあ公平にジャンケンで」
そして最初のチームが決まった。
レオンチーム、のほほんさん、鷹月さん。一夏チーム、シャルロット、ラウラ。明らかに戦力差でてないか?
「大丈夫! なんとかなる!」
「鷹月さん意外とアバウト!」
「ルールはどうする?」
「ん〜お遊びルールで良いと思うよ〜」
「それじゃあタッチ3回、スパイクの連発禁止、キリがいいし10点先取で1セットで」
「「「「OK!」」」」
「それじゃあ戦力差があるからこっちのサーブでいいな一夏?」
「おう! 良いぞ」
一夏が持っていたボールをぽーんと放って渡す。受けっとたのはのほほんさん。
「わーい、いっくよ〜」
ぽーんっとめっちゃ優しいサーブを打つのほほんさん。ボールはふわふわっとゆっくり飛んでいく。
「大丈夫かあれ?」
ふわふわっと飛んでいくボールはそのままゆっくりと相手コートのネットギリギリの部分に入っていく。
「OK! シャル!」
それを一夏がレシーブしてシャルロットの方にパスする。
「任せて!」
そう言ってシャルロットはトスをして。
「一夏!」
ネット近くにいる一夏の斜め上にトスをする。
「よっしゃ! アタック!」
走ってジャンプし勢いよくスパイクをする。おいおい女子相手に容赦ないな。
だが。
「甘いぞ一夏!」
軌道上には既にレシーブの構えをする俺。
「鷹月さん!」
「OK! はい!」
鷹月さんが自身の真上にトスをする。
「アターック!」
「させるかー!」
一夏が俺のスパイクをブロックしようとジャンプするが1寸の差で俺の打ったボールがコート内に入るがその先にある人物が居た。
ラウラだ。しかしなにか様子が変だった。
「ラウラ!」
「うへ……グフッ!」
いつものラウラならこんなボール避けるか跳ね返すか出来たはずなのに何故か顔面でボールをキャッチをしてしまう。
「大丈夫!? ラウラ!?」
「うへへ……わ、私が……か、可愛い……うへ」
「大丈夫そうだね」
なんと幸せそうな顔をしているラウラをとりあえず端に寄せて一夏チームに代理として入ったのは自称7月のサマーデビルこと
その後はお互いチームメンバーを変えながら数セットやり、時間が過ぎお昼の時間になった。
「おっもうお昼かぁ。みんなこの後どうするの?」
「うーん海の家に行ってご飯みんなで食べない?」
「良いね〜焼きそば、焼きトウモロコシ、かき氷〜!」
「お腹壊さないようにね」
「あっ僕ラウラを起こしてくるね」
シャルロットが木陰に置いてきたラウラを回収してこちらに連れて歩いてきた。
「あっ! そういえば一夏たちの部屋って結局どこなの?」
「あー、それ私も聞きたい!」
「私も私も!」
「わたしも〜。冷たい床の情報は共有しよ〜」
のほほんさんの謎の発言に他のメンツはハテナ顔を浮かべたが、それは置いといて。
「えーと、織斑先生の部屋だぞ」
それまでワクワクとした顔で待っていた女子一同の顔が凍りついた。思考が止まったかのようだ。
それもそうだよな。`だってあの織斑千冬の部屋に突撃する奴いないもんな
「だからまぁ、遊びに来るのは危険だな」
「そ、そうね...。で、でも織斑君とは食事時間に会えるし!」
「だね! わざわざ鬼の寝床に入らなくても―」
「誰が鬼だ、誰が」
俺たちの後ろから聞き覚えのある声が聞こえて。一同、ギギギギ...と軋んだ動作で首を動かす。
「お、織斑先生...」
「おう」
織斑先生の水着はラウラとは真逆の黒色でいつもスーツを着ているからわからなかったが、中々良いスタイルで鍛えられた体が惜しげもなく陽光に晒している。
正直言って学生じゃなかったらその場で告白してしまうかもしれない。
腰に当てた手はいつもと同じに見えるのに、今は色っぽく見えてしまう。それと同時にモデルのような格好良さも兼ね備えており、女子一同は色んな意味で圧倒されていた。
そして胸がデカい!! しかも、その胸の谷間がしっかりと露出するような水着で、みなの視線は必然的にそこへと吸い寄せられる。
「...一夏、鼻の下伸びている」なっ...!? しゃ、シャル? な、何言ってるんだよ。ハハハ...」
「見とれてたくせに」
うぐっ! それは...否定できない。
「一夏、実の姉に欲情はさすがに引くわ」
「な!? レオンまで! てか欲情なんてしてねぇよ!」
「そらお前たちは食堂にでも行って昼食でもとってこい」
「先生は?」
「私はわずかばかりの自由時間を満喫させてもらうとしよう」
言葉通りで教師陣はほとんど自由時間がない。それならその少ない時間を奪うわけにはいかないな。
「じゃあ、俺たちは昼飯に行ってきます」
「ああ、集合時間には遅れるなよ」
「はい」
それだけ言ってその場を離れる。ちょうど時刻は正午を過ぎたところなので、俺たち以外の生徒たちがぞろぞろと移動していた。
「ねぇ織斑先生の水着見た」
「見た見た、すっごいきれー。かっこいい~!」
「あー、私もあんな風になりたーい」
「いや、あんたじゃ無理でしょ」
「や、やってみないとわからないでしょ!」
そんな女子のきゃいきゃいとした感じで盛り上がりを見せている。横の一夏を見てみると身内を褒められているのが喜んでいいのか照れていいのかよくわからん顔をしていた。
しかし織斑先生の水着すげぇ似合ってたな……
正直言って教師じゃなくてモデルでもやっていけるよなあの人は……そういえば1度だけドイツ支社が出してる『インフィニット・ストライプス』の表紙を飾ってた号を見たことあったな。確か姉さんが代表になった時のインタビューが載ってたから買ったんだけっけか。
「一夏ってさ織斑先生みたいな人がタイプなの?」
「え!? な、なんだよシャル。いきなり……」
「別に。ただ、ずいぶん僕たちの水着を見た時と反応が違うなぁって思っただけだよ」
おぉ……シャルロットがご立腹だ。当の原因である一夏は……何で? って顔してやがる……な、殴りてぇ。
「はぁ……ライバルが多いなぁ……しかも強敵揃いなのに織斑先生まで入ってくるんだから」
「すげぇよな織斑先生は」
「一夏……お前勘違いしてるぞ」
「え? そうなのか?」
「はぁ……1番の強敵は
「まぁ考えても仕方ないよね」
「そうだな」
「えっ? 何2人で」
「ほれさっさと飯行こうぜ」
置いてけぼりの一夏を放っておいて俺とシャルロットは歩みを進めた。
「しかし昼飯なんだろうな?」
「やっぱり海だし刺身とかでたりして」
「お刺身! 良いね、新鮮なの大好きだよ」
ちなみにシャルロットは日本文化に適応していっている。セシリアはというと『お、お魚を生で!? し、信じられませんわ……』とのこと。そしてラウラは『安心しろ。私は生の食材を食べられるよう訓練を受けている。ジャングルで孤立無援になった時にも生き延びられるようにな!』と言ってたらしい。隊長そうじゃない。
「ん? どうした一夏?」
「いや、なんでもない」
(箒が見当たらなかったな、泳ぐの得意だったはずなのになんでだ?)
俺と一夏はシャルロットたちと別れて男子更衣室へと入った。