ゲーマー兄妹が月の聖杯戦争にログインしたようです 作:遠野ツキ
表現するなら、闇が近い。
唐突に放り出された色も音も光もない世界に、
しかし、それは一瞬。
姿も形も見えやしないが、すぐ近くに愛する妹、白を感じる。
それだけで空の精神は安定を取り戻し。
読めない状況を読むだけの余裕が生まれる。
そしてすぐに、自分の知らないはずの知識が『増えて』いることに気が付く。
あまりにあり得ない記憶の欠片を、思わず唇がなぞる。
「聖杯…戦争………ははっ」
そうだ、自分はそれを知っている。
かつて生きていた世界に存在したエロゲ。Fate。
魔術師達による、あらゆる願いを叶える願望機『聖杯』の奪い合い/殺し合い。
だが、しかし。空の脳内に刻まれている記憶は知っているそれとは大きく異なる。
舞台は、月。霊子虚構世界で開かれる聖杯争奪戦。
感覚のない両手に力を入れる/錯覚する。
白のてのひらの温度を感じる/錯覚する。
音の響かない世界でたった一人の名前を呼びかける/錯覚する。
物質の存在しない世界を通じて、白の意識が覚醒する気配を感じる。
これだけは錯覚ではない。
二人で一人。いつだって共にある唯一。
ここがどこであろうと、事実確認は二人で一緒に。
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──『こんな噂をきいたことがあるだろうか』──
それは都市伝説。そうだったら面白いのに、という人々の願望。
大半がデタラメであるが、非現実すぎる事実が都市伝説と化すこともある。
そんな噂のひとつ。インターネット上で囁かれる無敗のゲーマー『 』。
どの電脳空間にも存在する空欄のアカウントと、ただひとつの黒星もない対戦成績。
実在する不明の都市伝説。
誰かが言った。「まるでゲームの神様みたいね。」
人々の憧れる『 』という概念が、伝説となり形を成す。
+ + + + +
一人の少年の終わりを語るのに、多くの言葉は必要ない。
彼は平凡な少年であった。
彼は、毎日同じ学園生活を繰り返していた。
繰り返した。
繰り返した。
繰り返した。
繰り返した?
彼は繰り返される学園生活にどうしようもない違和感を覚え。
ノイズの混じるニセモノの世界で、必死に、真実に目を凝らした。
彼のクラスメイトであった名も知らぬ誰かを追いかけ、たどり着いたそこは扉。
ニセモノと真実の境目。
その、先。
真実への扉は開かれ、少年は自立人形を武器に足を踏み出した。
壁も床も、ガラスのように透き通り彩光を通す。
そこはもはや学校ではない。
まるで宇宙空間にぽかりと浮かんだような通路を、初めての戦闘を行いながらたどたどしく少年は進む。
さて真実の先にあったものは、どうしようもない現実。
彼のクラスメイトであった誰かが、体を横たえ冷たくなっていた、現実。
その傍らにあった誰かの自立人形が、戦闘を仕掛けてくる!
手が読めない。
敵の手が読めない。
自立人形にがむしゃらに指示を出す。
読めない。
──勝てない。
彼もまた、傷つき動かない体を地面に横倒しにした。
+ + + + +
『聞け、数多の魔術師よ。
己が欲望で地上を照らさんと。
諸君らは救世主たる罪人となった。
いかなる時代、いかなる歳月が流れようと、
戦いをもって頂点を決するのは人の摂理。
月に招かれた電子の世界の魔術師たちよ。
汝、自らを以て最強を証明せよ。
熾天の玉座は、
最も強い願いのみを迎えよう──』
聖杯戦争、開幕──!
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Fateっぽく、かつノゲラっぽい文章は無理ゲに近い。出来る限り頑張ります。
9/11 ルビを振れるなんて知らなかったんです刑事さん。訂正しました。