その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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虎穴に入らずんば

「どうです?良い風が来て気持ちいいでしょう?」

 

「確かに…風の中に微かに甘い匂いもあって、なんだろうな安らぐような。」

 

二人は病院にある、花園を歩いている。

日本では縁起が悪いと敬遠しがちな、根付いた植物たちは患者の精神的苦痛を和らげるには充分な働きを見せている。

現に、子供たちも遊んでいるのだ。

 

「いつも病院の中だけですから、こんなときこそ中庭ですよね?」

 

手を引かれつつ何も見ることも構わないかれは、あらゆる器官が発するその気配によって、全てを見通しまるであたかも見えているかのように、世界は映る。

だが、どんなに頑張っていたとしても眼球を通して見える世界と比べてしまう。

これがもし、最初から失明していたのなら決してこのような思考には落ち着かないだろう。

 

「最近、色々な方がいらっしゃったでしょう?難しい話ばかりで、難しい顔をして。」

 

「そうだね、だけど俺自身の趣味関連のものもあったし、別に退屈を感じていた訳じゃないけれど、やはり生の感覚は良いものだな。」

 

彼は貪欲だった、誰よりも外の世界を知りたがった、この世界を知ろうと彼は動き出す。

 

 

 


 


 

 

輸送艦隊が死に体で逃走を仕掛け、そしてそれは見事なまでに失敗する。

重元素を扱う技術は、プラントはかなり進んでいるとは言え原料である重元素が地球上にしかない事を鑑みるに、相当堪えている事だろう。

 

実際、ここ数回の内今回は敵の数も増えてきていた。まだローラシア級一隻とそれこそ大量にある鹵獲品を駆使して送って来ているが、艦隊が出張ってくるのも時間の問題かもしれない。

 

しかし、皆の動きも良くなってきたな俺達の汗と涙の結晶Education Type Computer略してETCを搭載してからというもの、どんどんと動きが最適化されている。俺の戦闘データから抽出した回避行動と、その行動までのプロセスをセンサーの反応という形で反映できたのは良い事だった。

 

「しっかし、プラントも案外馬鹿ですねぇ艦長。

それこそ、俺達がこんなにも落としているって言うのに、こんだけしか戦力を割いてこないなんて。」

 

「そうでもないさ、戦力というものは出し渋るものだ。俺達は一応、出された指令書の中から空域を絞って、ランダムに品目を攻撃しているから、向こうも戦力を絞れないんだろう。

そういう点では、連合の諜報能力に助けられているからできる芸当さ。」

 

だからこそ、たった一隻しか本国からの増援はないのだろう。カーペンタリアの奴らも大変な思いをしている事だろうよ。

だが、俺等がこんな事をしてカーペンタリアが干上がっても連合にここを落とす戦力はない。

 

前線を干上がらせようとも、連合の海上戦力はかなり擦り減らされているからな。

ザフトもそのうち慣れてくるだろうから、今やるべきでは無いな。

 

「次の攻撃の選定を予定変更するか……。」

 

良い気はしないが、致し方無い。敵は外だけではない、内側にもいるものだからな。

 

 

………

 

指令のやり取りは基本的に紙媒体で行う事となっている。

管理室の中の旧態依然とした本棚がずらりと並び立ち、そこへ一つ一つ要件を分派して保管している。

その中でも、プラント関連ではない第三国経由の一番手出ししたくない類の書類を手に取る。

 

「あまりやりたくはないが、これでもプラントへの間接的な打撃になるのなら仕方ないのか。」

 

それを取って幹部会議室へと向かう。

到着すれば大方の面々が揃い、緊急を要する案件で在ることを通達していた彼等に、一条の汗が滲み出ている。

 

「集まってもらってすまないが、次のプラントの船団への攻撃を一次中断し今度はこちらに移ろうと思う。」

 

俺が出した資料は正直言って味の良いものではない、なぜならそれは、連合にとっても非常によろしくない内容であるからだ。

 

「L3中域における連合と第三勢力に対する、海上破壊命令…ですか。」

 

「ああ、連合への間接的な打撃になるような命令だな。

極秘裏に開発されていると言う例の兵器、それの製造拠点であるオーブのコロニー、その周辺の敵の掃討と言う意味もあるわけだが。」

 

ざわざわとする、話し合いが始まるが正直言って、乗り気はしないな。

 

「全勢力を敵に回す行為ですね、仕事ならば仕方ありませんが…、因みに襲撃しない貨物はなんです?」

 

「リストに乗っていないものを、無差別で襲撃しろと言う事だ。民間軍事問わず。

オーブの影響力を削ぐと言う意味でも、連合とプラントの融和の為にもと言うことだ。」

 

「ふむ、我々は生贄と言うことですかな。ままならない物ですな、人は敵がいなければ纏まる事すら出来ないとは。」

 

嫌嫌やる作戦だ、民間シャトルなんてものを攻撃するつもりはないが、だからといって味方を殺す事に変わりは無いのかも知れない。

 

「すまないが各部署に通達しておいて欲しい、嫌なものは前線から外す。艦内の作業を中心に行ってもらえば良い。」

 

「艦長馬鹿言っちゃ行けませんぜ、俺達は艦長だからこそここにいる。艦長の判断に任せますよ。」

 

信頼されているんだろうな、俺は大黒柱か弱音を吐くところは見せられないな。

 

「嫌なことが有れば、是非私に。忘れさせて上げますよ?極上の快楽で。」

 

「医者がそんな事言ってると、ヤバい薬やってると誤解するぞ。いや、やってたんだったか?確か…ブースターマンだったっけ?」

 

場を和ませようとしているのか、そんな事を言う医者がそれを忠告する元諜報員が、それを横目に豪快に笑う元艦隊本部付きの参謀が。

それぞれの回答を胸に秘めている、唯一全員の心にあるものは、戦争の終結ただ一点のみ。

 

 

「それでは各自の持ち場に戻って作業を続けてくれ、以上を持って会議を終了する。」

 

ガルシアとの連絡をつけておこう、彼は確かアルテミスに左遷されているはずだからな。

それと、少しだけだが作戦開始まで期間がある、少しくらい羽目を外しても怒られないだろう。

 

 


 

静かなる宇宙、私達の旅路はいつもその言葉が適当な程に静かなエンジン音を響かせる艦が提供してくれる。

この規模の宇宙船としては余りあるほどの、大型エンジンを揃えた私達の艦。

だけれど、隠密行動を常としているから隠密航行時は基本的に小型スラスターを使用して前進している。

 

だからか、実際の巡航速度はネルソン級戦艦とどっこいであったりする。

こんなところをノコノコ見られていれば即撃沈だろう。

尤も、そのためのミラージュコロイドなのだが。

 

オーブのコロニー・ヘリオポリスというものがあるL3中域、近くにはアルテミス宇宙要塞が存在し、ザフトに睨みを効かせてもいる。

そんな場所への遠征する為にかなりの体力を消耗するだろう。

 

だからかだろうか、アムロさんは私達に特別手当を用意してくれた。

 

そう、ヘリオポリスへの短期旅行券である。

 

アルテミスに到着した私達はガルシア少将と話を付け、民間船隻を偽造しシャトルを用意してくれた。

そのさい、私達の戦闘データの一部をユーラシアへの供与を依頼されていたんだけれど、快諾したらしい。

寧ろ、大西洋連邦に対してご立腹だった。

 

艦長以外の幹部含めた人員で争った権利、アムロさんはどうやっても勝ってしまうからと辞退を表明して、代わりに私にお使いを頼んだ。

 

風が吹き、華やかな花壇にそれが当たれば良い香りが周囲に散らばる。

コロニーというものは建造した国によって中の建物だとかそういう様式が少しずつ違っている。

 

特にここヘリオポリスは、中立国である為に戦争という存在の色が無い。あるとすれば、空前の好景気である事だろう。

プラント、連合問わずこのオーブと言う国は経済的な結びつきがあり、双方と軍需品に対しての交易を行うなどして暴利を貪っている。

暫定的な勝者は誰かと言われれば、私はオーブとそう応えるだろう。

 

くじ引きと、ジャンケンで決まったお忍びのヘリオポリス見学会なんてね。

ここはオーブの技術関連施設、その多くが集約された言わばオーブの第二の脳のような場所だ。

 

そんな脳みそのすぐ近くで、略奪者のように振る舞い、これからこのコロニーの宙域に気まぐれに出没して、住民の恐怖を煽ることになるなんて、まったく残酷なことだ。

 

そんなヘリオポリス内を案内無しに動くのは少し情報が足りないのだからどうしようか。

 

「ねぇ、誰かヘリオポリスの地理に詳しい人いないの?」

 

「俺達が旅行するたまに見えるか?知るわけねぇよ。」

 

残念ながら、旅行に詳しい奴はいないらしい。というか、旅行に来るのに何で興味無い人が多いのよ。

 

「俺達は行くとこ決まってるからよ、女子はショッピングでも楽しんでてくれや。」

 

「おう、最新の集積回路を拝むチャンスだからな。」

 

さて、男たちは勝手に盛り上がってどっか行くしどうしたものか。

 

「どうする?家族でこういうとこ来るときはいつも自家用の、運転手付きだったから解らないのよ。」

 

「これだからお嬢様は……解ったわ。こう言うときは、昼間なのに歩いている学生を捕まえるのが一番なの。」

 

そう言うと、ビッチもといヒッチホックは私を置いて何処かへと行ってしまった。おい、お嬢様を置いてきぼりにするなよ、解らなくてオロオロしちゃうぞ。

 

とりあえず、近場の公園みたいな場所があるからそこにちょっと入ろっと。ええと、ベンチは……あったここで待ってれば大丈夫よね。

 

辺りをキョロキョロと見回す、学生達が随分と多いこと。カレッジ生というやつなのかも、この子達は卒業したらオーブの国営企業だとかに就職するのかしら?

外で戦争やってるって言うのに呑気なことね、まあそれも後数日の内に変わると思うけれど。

 

「…あ………あの、どうかされたんですか?」

 

「え?あ、ううん。」

 

声を掛けられた方を見ると、黒髪の少年?青年?とその友人達であろう子たちがいた。

 

「あら、どうかしたのかしら?」

 

「いえ、あの。なんかお困りなんじゃないかなぁって……、あっいやその勘違いだったらすいません。」

 

優しそうでとてもなよってしている、家の人も少しは見習ってほしいなぁ。

 

「あら、気を使わせてしまったのね。ごめんなさい、でも声をかけてくれた事は嬉しいわ。

実際私困っていたの、観光に来たのだけれど事前にプランを考えて置かなかったせいよね。

良ければなのだけれど、案内していただけないかしら?」

 

「え、いや」

 

「勿論、お姉さんをエスコートできるなんて僕たち嬉しいですよ。な、キラ」

 

「お名前、キラというのがお名前なのですか?」

 

「は…!はい!キラ・ヤマトと言います!」

 

慌ててる、可愛いな、本当にアムロさんとは似ても似つかない、でもこういうなよってした子タイプじゃないし。

 

「キラ・ヤマトさんですか。覚えました、ヤマトさんとお呼びすればよろしくて?」

 

「オレ、おれは…」

 

等とそれぞれ続いていく、うん暇つぶしにはちょうど良いや、ヒッチコックが帰ってくるまで、遊んでいよう。

まあ、こんな子達に本名言っても大丈夫だよね、外はなさそうだし。

 

「私は、アナスタシア・リシュリュー。皆様、よろしくお願いしますね?」

 

あ、頼まれていたものとか、この子達に聞けばいっか。

 

 

 

 




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