病院の地下深く、そこには空洞がありそこに大破したガンダムはその機体を死者の様に横たえる。
バラバラにされていく装甲、やっとの思いで切り開かれた胸部パーツ。
コックピットブロックを外すまで、実に3年の月日が流れようとしていた。
そこに降り立つのは、義眼を付けたアムロ・レイである。
「なる程な、確かにガンダムだな。」
装甲に手で触れ、叩く。ひんやりとした金属の肌触りは、彼が唯一別の世界から流れてきたという、証拠となりうるものだ。
「君の話を聞いたときには俄に信じられなかったが、装甲を外して改めて見たときには驚いたよ。確かにヘリウム3の反応があった、何よりペレットと思われるものの残骸も。」
アムロに詰め寄るように、彼ら研究者は歩み寄り一つの問いを投げかける。
「普通の設計であれば創り出せない、あれでは容器が耐えられない筈だ! どうやってプラズマを安定化させている?」
アムロは目を瞑る、超えるべき課題のその高さを知っているが故に。
ザフトの艦隊が近付いてくる。それなりに意思が多い。予定よりも早いし、角度が少し違うな。
暗号文はアルファベットの中にある。だが解読に齟齬は付き物だ。
敵の目標がどこであれ、俺達はそれを全うしなければならない。
「艦長、敵艦隊望遠レンズに確認できました。ナスカ級3、ローラシア級6隻の小規模艦隊です。敵戦闘艦の数は想定通りですが、巡航速度が想定よりも遅いですね。」
ジンのコックピットでその声を聞いて、思案していく。
「そうだな、通過予定時刻も半刻程遅い。目標が違うのかもしれないな。だとすると、この場合敵の集結時間と場所はどうなると思う?」
「このまま行きますと、地球の自転と軌道上での集積を鑑みまして。カオシュンかもしれません。」
ヴィクトリアと言うのは欺瞞か、だとするとカオシュンへの戦力が分散している今を狙われるか。
連合は後手後手だな。
「だが、俺達にはこいつ等を足止めするしか無い。作戦通り、浮遊体を用意してくれ。障害が多い程こちらに有利だ。副長、この艦の事は頼んだぞ?」
「了解しました。」
コックピットから外部映像を確認していく。ガルシアから譲り受けた余剰ブースターを小型の隕石群に取り付けた。
後1時間もすれば接敵する、できるだけ多く俺達のテリトリーを作らなければ。
「イリス、微速前進の後慣性航行へ移行、ブースター噴射30秒29・28・27……………………ブースター燃焼ストップ、慣性航行へと移行する。」
岩塊と共に進む艦は、ゆっくりと確実に敵艦隊へと進んでいく。
敵は突如として動き出した岩塊に目を向け、警戒を強める撃ち落とすのか避けるのかどちらか。
ゆっくりと流れる時間の中、ジリジリと近づいて行く距離に緊張感が艦全体を包む中、俺は不思議な程にリラックスしていた。
いや、これは俺というよりも俺の身体がそういうものなのだろう。
流れていく静寂を破ったのは、敵側であった。艦隊に近付いてくる岩塊を飛び抜くように、船体を上方へと軌道修正したのだ。
それが作戦開始の合図となる。
「後部ハッチ開放、スラスター最大出力、主砲副砲目標敵先頭艦ナスカ級。
ハッチ開放完了、MS隊発進せよ!主砲副砲撃ち方始め。MA隊分離開始!攻勢を開始せよ!」
機体をその身に降りかかる慣性とは逆方向に蹴り飛ばし、艦から置いていかれるように離れていく。
イリスの船体が右に傾き上方の敵を狙いながら下方へと進んでいく。
MS隊の前方にある小型の隕石に俺はスラスターを噴かしながら接近し、そのエネルギーを隕石を蹴りながら推進力へと転換する。
数度それを繰り返しながら敵2番艦へと近づく頃には、その速度は通常のジンの3倍の速度へと至る。
ザフトの艦艇の弱点は砲撃火力が少ないこと。つまりMS運用を前提に作られていることにより、比較的に装甲が薄い。
そして、MSの発艦に俺達の船のように強制性が無いことだ。
それ故に、超近接奇襲攻撃が成立する。
「各機、予定通りツーマンセルで敵艦のカタパルトと対艦兵装を優先して破壊しろ、この距離での近接防空は連中は素人だ。
敵艦の間に割り込め、攻撃の密度が極端に薄いぞ!!」
確実に1機また1機と敵の反撃能力を奪っていく。
ビーム・ライフルの火力がここに来て、敵の艦艇に牙を剥く。
だが、襲撃しようとも敵は必ず対応してくるものだ。
イリスが敵艦隊をすり抜け、今度は同航戦へと移ろうとする頃、敵の右舷側の最も被害の薄いローラシア級からMSの発艦が始まる。俺はそれに呼応して、MSを最優先として敵部隊に切り込んでいく。
味方が敵艦の攻撃力を削いでいく間に、俺はこの間そいつ等の相手をしなければならない。
最近になって、まともに連携をとって攻撃するようになったこいつ等を見て、俺は手練れと判断した。
合計にして14人分の殺気か、痛々しいね。
「スリーマンセル、三位一体か動きが良いのがいるな。」
嵐のような殺気をくぐり抜けると、視界の死角から件の3機が躍り出る。
左側、殺気は3人分影は1人か良い腕だな。
目の端で、味方機の識別信号に損傷がないのを悟りつつ、向かってくる敵の最初の切り付けを上方へと登る様に避け、ついでの銃撃を機体をロールさせるように反らし、最後の無反動砲をAMBACの要領で肩口に避ける。
避けがけに左腰の重斬刀のレーザーに出力し、腰から外さずに斜めの機体を利用して攻撃し敵のコックピットを狙うが、上手く下方に逃げられた。だが、それではメインカメラは使えまい。
それについで現れる敵機が近接でくる、左側半身を反らし抜け駆けに左腰のレーザー刀を入れ一瞬、機体を右に回転させる要領で敵機を溶断する。
向かってくる敵を一切の感情もなくただただ処理し、ローラシア級の艦橋を潰す。
火器管制は自立式故に、迎撃は続行してくるがそれでもやらないよりはマシだ。
その間にも果敢に攻めてくる敵の攻撃をヒラヒラと反らし、カウンターでコックピットに一撃を入れ撃墜する。
「これで6つ」
敵の戦力の凡そ半数が俺についているがそれでも、一機辺り2機を落としてもお釣りが来るか。
俺にはまだ余裕があるが、味方はそうはいかないな。
「3番機被弾しました。帰投する、援護を求む。」
俺達の部隊にも少しずつだが被害が出始める、MA隊は既に5機中2機撃墜された、無傷のMSは残り俺も含め4機内1機は弾切れ、敵の数は後16機短時間の間に敵の半数をやったが、機体のエネルギーの問題もある。
同航戦から離脱したイリスは、スラスター全開で戻って来るまでに後3分。潮時か。
「全機回避を優先しイリスへの移動準備だ。殿はオレがやる。」
背部ユニットに増設した信号弾を打ち上げると、辺り一面に光が届く。
ビーム・ライフルは後撃てて4発、威力はそれなりだが敵艦を確実に沈められる腕がなければ、使用するのは意味が無い。
被弾していない敵艦は無し、向かってくる敵のみを蹴散らしつつ後方へと飛んでいく味方を援護する。
後方への砲撃能力を潰された艦艇ですれ違っていく俺達を攻撃する事は不可能だ。ナスカ級ご自慢のエンジンも大破している、家のパイロットは良くやってくれているな。
惜しむらくは、俺達に残された攻撃手段は無いという事か。
艦隊に対して奇襲だとしても、一隻の戦力でこれだけの戦果を出したのだ。褒めてもらいたいものだが……どうやら、諦めの悪い奴が俺の方に来たようだ。
だが、そんなに戦列から離れては帰れなくなるぞ、いや無断で来たな?
これは…、オープン回線か。
「貴様等、裏切り者共め。どうして私達に牙を剥く!」
銃を突きつけて言う言葉がそれか?
若い声だ、たぶん10代後半かそれくらいだな。攻撃はしてこない、俺相手にやっても意味が無いと思っているのか。
激情に駆られて出てきたか、お陰で敵の攻撃が止んでいるんだありがたい事じゃないか?
こう言うときは、話を伸ばして最悪……人質に取るのがいちばんか。
「残念だが俺はナチュラルだよ、君等みたいに遺伝子はいじっていないよ。俺以外はコーディネイターだが、裏切り者は君たちの方だと皆言っていたがな?」
「何だと、私達がコーディネイターの主張を訴えてこそ、コーディネイターは初めて立ち上がれた。」
「ではなんだ?地球上で生きているコーディネイター達に、君たちのせいで無差別におきた自然の猛威は、暑さと寒さの中で死んだ人々が、君たちを裏切る理由がないと?恥知らずにも程があるな。」
「なんだと」
激高してこい、そうすれば簡単なものだ。若いっていうのは、時としてこういう過ちを侵す。
「どうした、反論できないのか?
君の父親であるヘルマン・グールドなら、果敢にナチュラルの排斥を謳うぞ?どんな犠牲の上でもな。」
嘲笑うように、嘲るように相手の神経を逆なでするように、ここ数ヶ月の間で身についたスキルだ。
こういうふうに毒づくのは性に合わない、正直嫌な作業だ。だが、子供を殺すのは流石に気が引けるからな。
「まあ、どうせナチュラルにすら勝てない君だ、怖くてできないんだろ、アイリス・グールド?」
正直な娘なんだろう、きっと友人が害されれば正義の名のもとに暴力を振るうことも厭わない、そんな性格なのだろうな。
だからこそ、攻撃してくるとも言える。
トリガーが落ちる前に射線から機体を横にすべらせ機体のすぐ横まで迫った銃撃が通り過ぎていく。
引き抜きエネルギー供給された重斬刀を下段から振り上げ、まずは腕を、後退りに合わせ機体を斜めに動かしもう片方を吹き飛ばす。
締めに機体を蹴り回転させた要領で、四肢をもぐ。極めつけはバインダーを破壊して、機動性を破壊し。
重斬刀の穂先でコックピット部を切り飛ばす、そうすると中身が見えるから機体を押して、慣性で飛び出してくるパイロットを捕獲する。
そして、それに合わせてイリスが迎えに現れる。
砲撃能力の無い敵は、俺達が去っていくのを見ているしかできないんだろう、イリスも損傷している。特にラッシュ・ウィングに穴が空いている、それに右舷の砲塔もこりゃ早晩修理が必要だな。
「全機収容したか?」
「はい、後ですね副官からお怒りがありますよ。」
こんな時でも平常運転だな、この切り替え大事にしないとな。
「ミラージュコロイドを展開後、アルテミスに向かう。修理してもらわないとな。」
さて、捕虜への尋問をどうするかな?
「アムロさんが敵を鹵獲したって聞いたけど、どうしたの?」
本当にあの人は、たぶん1人でなら余裕だったに違いない。でもたぶんエネルギー切れで、相討ちになるのを嫌がったんだと思う。こうやって、敵から捕虜攫ってくるなんて余裕があるくらいだし。
「それなんだけどね?まだ17くらいのガキでさ、おまけに女の子と来たよ。プラントっつうのは、20越えはそれなりに見たけどよ、少年兵まで出すのは嫌な相手だな。」
「尋問官のシマヅなんて見てみろよ、尋問しようにも自分の娘が頭にチラついて出来ねぇって言ってたんだぜ?
アイツ、子供が出来てから尋問が下手になったから俺等のところに送られてきたんだぜ?」
『だからね、ご両親の名前を教えてくれたら良いんだよ?』
色んな出自の人がいるが、この人もクセがあるな。強面でジャパニーズヤクザのような顔をしているけれど、優しそうな声で話してる。
「名前を見るにプラントのグールドって言ったら、急進派で有名な奴ですよ。俺達コーディネイターが迫害されてる原因の一つですね。」
「そうなの?私はあまりそんな人とは知らなかったけれど。」
「ヘルマン・グールドはナチュラルを目の敵にしてる、ナチュラル排斥論者さ。
お嬢様であるあなたには解らないと思いますが、一般のコーディネイターにとっては親の敵みたいに思われてますよ。
そんな人物の娘です、どういう教育をされたか知りませんが、大分洗脳が行き届いていますよ。」
そう言うと、供述ログが目の前に出される。
「うわぁ、ナチュラルなんて虫以下とか家畜も同じとか、相当だね。
でも何でアムロさんは彼女を捕虜に?」
「どういう思惑があるかは解らないが、たぶん切り札にするんだろうとね。」
「捕虜として?」
「いや、戦争を集結に導く為のあの人なりの駒の増やし方だろう、俺達はチェスをやっているが、あの人は将棋をやってるって事さ。」
手駒ってやつか、でももしも暴れたりしたら私がきっちり処理しなくちゃならないかも。
「じゃあ頑張って、私まだレポート出してないから。」
「おう、任されてやるよ。」
アルテミスまでは、完全には気を抜けないしね。
う〜ん、戦闘描写は難しい。
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