その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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迷子探し

老人が歩き扉を開ける、彼は別に慈善家を自称していないが、周囲は彼を慈善家と呼ぶ。

 

「今日は皆さんのために、院長さんが来てくれました。はい、拍手〜〜」

 

パチパチと叩かれる手を見て老人は、目を細め微笑むようにその姿を見つめる。

青いコスモスを植えた花壇の中に咲き誇るようなより美しい子供たちの顔を見て綻ばせているのだ。

 

そんな拍手をしている物の中に、アムロ・レイは混じり手を叩いている。

ここはサンフランシスコ郊外の小さな孤児院、身分を持たない彼が隠れるにはちょうどいい場所。

日系人のコミュニティは彼を隠すには非常に便利に機能した。

老人は、金髪の壮年の男性をそこに連れてきた。

 


 


 

いつものメンバーが集まる会議室、そこには宙域図が映し出されている。

俺達が通った軌跡が映し出され、それは見事なα運動で舵を切った痕跡が解る。そしてそこにはもう一つの点が映し出されていた、ヘリオポリスである。

 

「俺達は現在、月とは逆のルートを即ち反自転ルートを通る事によって月基地に向かっていた。日数はかかるが、その分敵との接敵が最も少ないルートだからだ。」

 

俺は頭上に映し出されているそれを指差し、指でなぞるようにしそこから反転させる。軌跡に迷いはないが、だからといって死地に行くような趣味もないが。

 

「そして現在はルートを引き返すように、地球の自転と同じ方向に進んでいるが、この最初にとったルートから逆算すると、アークエンジェルが月へと直進した場合、俺等と同時に到着する事になる。ここまではいいな?」

 

皆が一様に頷くと、今度はヘリオポリスからアークエンジェルの辿る予測ルートをシミュレーションする。

アークエンジェルのカタログ上のスペックは、速度はナスカ級攻撃力はアガメムノンを上回る。

 

「だが、アークエンジェルは食料と物資が不足していると予測している、それは何故かわかるか?」

 

「まあ、そうなりますね。いきなりの攻撃にパニックに陥らないものはありません、しかも新造艦ですからそんな余裕ある訳が無い。それにコロニーが崩壊していますから、ミストラル位無いとやりようがありませんからね。」

 

「あ、まあだとすると。ガルシア少将のアルテミスによるね、これは絶対やりそう。でも、ねぇ?」

 

木馬型を動かして、地図上に照らし合わせる。補給が受けられると踏んで。その場合の予定日数は我々よりも4日程到着が遅れる事になる。

だが、そこで最大の問題に直面する。そうなった場合、数日の補給が0日になる。

 

「ただし、これは補給物資が残っている場合の想定だ。

殆ど俺達が積んでしまっているから、アルテミスに残っているのはMAの部品くらいだろう、そうなるとこうなる。」

 

「ユニウスセブンを抜けてくる……ですか、自分でもそうしますよ。餓死ほど辛い事はない、艦長もそうお思いで?」

 

死人に魂をやるほど、彼等も覚悟は決めていないだろう。

俺は静かに頷くとそこから算出される1日を加え、予測進路を再度図面上に落とす。

 

「つまり、合流はアークエンジェルがちょうど岩礁中域から抜け出した頃合いになる、という事ですか。

まあ、その頃には望遠レンズで捕らえられるでしょう。」

 

「しかし厄介ですね、相手の数がわからない以上こちらから仕掛ける訳にはいかない。」

 

「いや、その場合はメビウスに俺の機体を乗せて戦線近くまで飛んでいき、途中で俺単機で突入することも考えている。」

 

「それは止めてください、命を粗末にし過ぎです。」

 

ともかく、どんなに急いだとしても合流する場所は変わらない、それは全てアークエンジェル次第という事になる。

ただ、問題があるとすれば俺達が合流した場合、敵が躍起になって大艦隊にならないかだな。

 

ガルシアから聞いたが、プラントでは俺達に懸賞金がかけられたそうだからな。

これは、色々な勢力から狙われるな。

 

「いざというときは、あの捕虜の少女を使いましょう。

なぁに、私達にとってそんな事は不名誉でも何でもありませんからね。」

 

そうならない事を祈ろうか?

 

「そう言えば、アルテミスから画像が送られてきています。

アークエンジェルと敵の交戦記録だそうですが、画像が粗く特定迄は至っていません。ただ、もしもあの捕虜が知っているのなら、部隊が判明するのでは?と思いまして」

 

「うん?俺に尋問しろと?まあ、良いだろうそれが一番手っ取り早いからな。」

 

お願いしますと深々とお辞儀をされる、尋問なんて柄じゃないんだがな。

 

 


 

クソッ、クソッ!ここに来て何日たった、食事は1日何回だ?時計もないから、時間の感覚すら解らない。

腕自体は固定されていないから、自由に動き回ることは出来る、だけどピッキングも道具になりそうな物も何も無い。

あるのはファスナーも何も無い寝袋と、偶に来る液体糧食の空くらいなものだ。

 

こんな事ならいっその事殺して貰った方が遥かに良い、こいつ等ナチュラルが私に会うときはいつも、お嬢ちゃんお嬢ちゃんって子供扱いしてくるし、挙句の果てには葡萄ゼリーだとかで私を釣ろうとしてくる。

 

私は子供じゃない、立派な成人した大人だ!

だと言うのに、いつもお腹が減ると必ず来てくれる彼等に、私の腹は屈服している。

運動すら出来ない私は、次第に脂肪が増えているように実感がある。

 

廊下の方がガヤガヤと賑やかになっている、腹時計で飯時じゃない事は、解る。だとすると、遂に拷問か?もしくは尋問が、始まるのか?

 

「ここだな、全員入ってこなくて良い。もし何かあったら、彼女を銃殺しても構わないからな。」

 

「しかし……」

 

そんな話し声が聞こえてくる、開いたらまず全員を制圧出来るか?いや、やらなきゃ私は一生ここから出ることなんて出来ない。

 

「では開けるぞ?」

 

シミュレーションは完璧だ後はそれを実行するだけ………?

 

ドアが開いた瞬間私は飛び掛かった筈だった、でも開けた人間を一瞬認識しただけでいつの間にか私の視界は天井を向いていた…。

何が起こったのか解らない、例え予想で迎撃したとしても完璧に受け流されるだとかそういうのは、目で見る限り不可能な筈なのに。

 

そして、私の腕はきれいに折り畳められ手錠をかけられ、奴が持ってきていたフットボール代の丸いロボットが、私に繋げられている。

ピコピコ耳なのか何なのか解らないもので、いやこれは見たことがある。そう、ラクス・クラインが持っていたアレだ。

 

でも確かこんなには大きくなかった筈なのに、どうして?

 

「うん?そいつはハロだ、無口なタイプでね君の脳波を検知して、嘘か本当か見抜いてくれる。そんな便利なロボットさ。」

 

「態々こんな形にして、ラクス・クラインの持っているアレに似せて……プラントを馬鹿にしているのか?」

 

なんだその顔は、私の言葉にどうしてそんな憐れんだ顔をする!

 

「いや、特に理由はないよ。今日は尋問に来たんだ、と言っても俺達が解らないことを確認して欲しいくらいなんだが、協力できるかい?」

 

「そんな事すると思うの?私はこれでも赤服よ、アンタみたいなナチュラル如きに話す口なんて無い!」

 

「でも、実際今話してるじゃないか、口があるんだから和解出来ないかい?」

 

出来るわけがない、血のバレンタインを起こしたナチュラルが私達から一切合切を奪っておいて何を言うか。

搾取された我々はおまえ達を正す(・・)権利があるんだ!

 

「だが、工員として雇っていた相手が勝手に工場を乗っ取ったら、普通にテロリストと変わらないと想うんだが……、まあそこは良いよ。建設費や住民税だとかの一切合切を払ってくれれば、俺は別に独立は構わないと思っているんだけど。」

 

「そんな口からでまかせを、私はそんな事に騙されない!」

 

私達がテロリスト?ふざけるな、私達は正当な権利があるんだ、それをそれを!私達からお母さんを奪っておいて、ふざけるな!

 

「呪詛って言うのは恐ろしいな……。まあ良いさ、互いに理解し難い物があるのが人間だからな。

君に、聞きたいのはこれのことなんだ、見てもらうだけでも構わない。本当は教えてほしいくらいなんだが。」

 

この天然パーマの男が私に見せてきたのは、ぼやけた何かの戦闘を切り取った物だ。

片方は解らない、だがもう片方は……たぶんこの艦隊編成、に白い機体が混ざっているから……クルーゼ隊?

どうしてこんな事を聞く?だけどこれを話す訳にはいかないから……。

 

「見てくれてありがとう、予想通りだな。

この部隊は、いったい誰がいるのか知っているかい?勿論喋らなくて良いぞ?」

 

「誰が喋るか!」

 

確か、議員の息子達で構成されてたはず。

隊長に、ラウ・ル・クルーゼ

同期だと

アスラン・ザラ

ニコル・アマルフィ

ディアッカ・エルスマン

イザーク・ジュール、

ラスティ・マッケンジー

 

がパイロットだったはずだ。

確か後は魔弾ミゲル・アイマンが所属していた筈。

少しの間私は考えると、嘘を相手に教えてやろう。

 

「私はそんな事知りもしないし、だいたい話すわけ無いだろ!」

 

そんな返答の中、男は何やら手帳に書いている。こいつは一体何をしているんだ?

 

「ああ、ありがとう。だいたい解ったよ、君が嘘はついていないってことが。そうだ、ご褒美と言っては何だがチョコレート何てどうだろう?プラントだと合成品しかないんだろう?」

 

「だから何度も言ってるだろ、私は子供じゃない!だいたいそんな怪しいもの誰が食べるか!」

 

「ベッドにおいておくから、食べたくなったら食べれば良いさ、一欠片貰っていく。」

 

男が板チョコを割り、食べた。どうやら毒だとかは入っていないらしい。

ぺっと私は男に対してツバを吐く、男は偶然なのかそれを当然のように避ける。そして部屋には、私と大きなハロが残された。

一体何なんだあの男は。

 

 


 

「クルーゼ隊だそうだよ、彼女は正直者だから良く解った。」

 

良く解ったって、人の心を読むようにこの人のオリジナルも同じような人だったのだろうか?

 

「いつも思うんですけど、何でそんな事わかるんですか?」

 

「勘の延長線上だよ、特に人に関係があるものとかは見えやすい、でも完全に全てを理解できてる訳じゃないよ?

人は必ずなにかを隠したいだろうから、そこはなんとなく避けているかな?」

 

あられもない記憶なんて覗かれたら溜まったものじゃないだろうな、というかこの艦の人達ってこの事に対して全く動じないよね、なんでだろう?

 

「皆、俺なら人の心が読めてもおかしくないと思ってるみたいだよ。そんな事無いのにな?」

 

でも、ナチュラルにやってますよ?とは、口が裂けても言えない、言われたらあまり良い気分じゃないだろうし。

 

「そうでもないよ……。どうした?」 

 

「………いいえ、何でもありません。」

 

今のはわざと?それとも天然?どっちにせよ、別に驚くような事でもないか。

 

そうして私達は、クルーゼ隊に対する備えを万全にして、アークエンジェルの下に行くこととなった。

粘着質な相手と当たるなら、洗剤のように洗い流せるようなそんな準備がいる。

 

 


 

キラ・ヤマトがまた余計なものを拾ってきた、ラクス・クラインを拾ってくるなんて正直何故そんな面倒事をと、激怒したいくらいだ。

軍隊である以上民間人を見て見ぬふりは出来ない、でもそのせいで私の胃が痛い。

 

だが、キラ・ヤマトも民間人である事にかわりはないから、そもそも私は責められる立場には無いのだ。それでもと、今は生き残りをかけた仲なのだ。

悪い事は悪いと言わなければと、自分の中の義務感に自分が押しつぶされそうだ。

そうなる前に、私は御守りを持って何とかメンタルを保っている。

 

アルテミスで貰った御守りは、私が部屋に置いてある物と寸分違わぬ作りで、実際同じ人物が作ったとしか思えない物だ。

何故ガルシア少将が持っていたのか、どうしてあの宙域にいるのかと、考えざるを得ない。

 

「はぁ、食堂でこんな事を考えてもしょうがないだろうに、私がなんとかしなければ、皆が駄目になってしまうかもしれないのに…。」

 

私ではなく、優秀な兄達ならどうしただろうか?考えずにはいられない、私なんかがこんな事していて良いのだろうか?

 

「フッ…弱音など…打ち明けられる訳もないのに…。」

 

「……ナタルさん、こんなところでどうしたんですか?」

 

聞き覚えのある声が後ろから響く、この便りのなさそうな声は、キラ・ヤマトだろう。

 

「食事をしているだけだ、貴様こそ休んでいなくても良いのか?アルテミスの1件から物資の補充まで、休んでいないのだろう?」

 

私達の出港直前に、来襲したブリッツの攻撃を受けて損壊したアルテミスから、命からがら逃げおおせたのだ。

ガルシア少将が、傘を畳まなかった事が功を奏したのだろう、出て直ぐの襲撃だったから、内部の損傷は最低限だろう。

 

ともかくだ、パイロットは休むべきだ、彼にだけ重荷を背負わせればいずれ潰れてしまう。

 

「いや、えっと。眠れなくて、僕も軽食でもと思ったんです。友達は皆寝ちゃったみたいですけど…。」

 

ラクス・クラインのせいで私は彼に言い過ぎたきらいがある、メンタルケアもままならない、子供だと言うのに。

 

「お前の役目も……もうすぐ終わる。」

 

「え…?どうして…ですか?」

 

「ハルバートン准将との連絡がついた、このまま合流出来ればお前が戦わなくて済むということだ。

だから耐えて欲しい、私にはこれくらいしかお前に言う事が出来ないがな。」

 

ポカーンと馬鹿みたいに口を開けて、本当にこいつは子供なのだな。

 

「あの、その、僕の方こそ色々とご迷惑をかけているので。なにか、力になれれば。」

 

「では、一つだけ。今は共に、食事を取ってくれないか?1人では寂しいのでな。」

 

私はなにを言っているのであろうか、こんな事頼む必要もないと言うのに。

隣で食事を始めた彼を見て、やはりというかまだまだ子供だという事がありありと解る。

こんな奴に戦いを任せられるわけがない、こういう奴は平和な世界に生きるべきだ。

 

「あの、その御守り誰からのなんですか?」

 

「…これか、片方は友人からのもう片方も恐らくはな、これがあるから私は生きていたのかもしれない。

これを作った物の名前は、アナスタシア・リシュリューという私の一つ上の先輩というものだ。」

 

「え?その人って金髪を肩で切り揃えたコーディネイターの?」

 

そうだそう、その

 

「何故お前がそれを知っている!私は誰にも話したことは……」

 

「一月以上前にヘリオポリスで、一緒に観光巡りをしたんです。ナタルさん?」

 

頭が痛いな、スターシャ姉様はいったいどんな作戦に従事していると言うんだ。

 

それから私は少しの間彼と談笑をした、他愛のないものから互いの趣味だとか。

やはり彼は平和の中にいるべきだ、だがこの力が惜しいと思う自分もいる。そんな自分を殴ってやりたい。

 

 

 

 




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