その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

20 / 85
邂逅する者

金髪の男、アル・ダ・フラガは度々孤児院を訪れる。

有名な投資家である彼は、財界人との紐は持っているが友人と呼べる人物は少なかった。

 

彼の家系にはある特殊な能力を持った者が産まれやすく、彼はそれを使い、上手く投資をすることによって財産を積み立てた。

だが、他者の弱みを握る事が得意な彼は、逆に自らの力を過信し、その力に甘んじた。

 

孤児院を訪問する理由は、テムと会うこと。いやアムロと会うことが大きな目的となっていた。

自分と同じ様な力を持ちながら、自ら心を拒絶しアルにその弱みを見せないという、力を完全にコントロール下に置いている人物だ。

 

アルですら、そのような使い方をしたことが無い、いやそのような経験すら無かったのだから仕方ないのだろう。

相容れないと思っていた相手の心を見ることに終始すること、次第に互いに話をするようになった。

 

互いの欠点を話し合い、目の見えない彼に変わり他所へ働きかける事もあった。

はじめは老人の紹介とはいえ、これほどまでに人を信用したことは無かった。

 

 


 


 

不味いことになったな。

その事に気がついたのは、イージスとの戦闘の真っ只中であった。

突如として迷いを断ち切り、俺の反応速度に追い縋るように戦いを敢行した奴は、正しく一流の戦士だろう。

 

腕は未だ未熟であるが、その時の彼の雰囲気は静かなる怒りのようで、冷静にこちらの動きを見て分析する。

俺はそれに一瞬だが気圧された、スターシャとのやり取りで見たことのある現象ではあるが、それ程までに前後のキレが違う人物もそうそういないだろう。

 

俺はそれに手加減できなくなった。そのせいで機体の各所からのアラートが鳴り響き、ジンという機体の限界値を叩き出してしまった。

前々から騙し騙し搭乗していたから、ガタが来ていたというのもあるが、それにしてもイージスのパイロット。

アスラン・ザラ、というのだろう。

母を失った憎しみに震えながら、それでもなお人を憎みきれずにいる男が、どれ程強いのかというものだ。

 

結果的に俺は奴に勝ったが、機体限界が来るのがもう少し早ければどうなっていたものかと、内心冷や汗が止まらない。

もっと良いMSは無いものか?いや、無いな。あっても殆ど敵に強奪されたみたいだからな。

 

艦内はその広さとは裏腹にガランと言う音が響きそうなほど、MSが存在しない。

これはあまりにも、これ程までに空間が開くのだから強奪されたとしか言いようが無いだろう。

 

眉間に皴を寄せつつ機体から降り、周囲の喧騒を手で制しながらヘルメットを取るとちょうど同じくらいのタイミングで、痩せ身のヒョロっとした青年が、パイロットスーツを着て俺を見てくる。

彼がストライクのパイロット、そしてイージスのパイロットはその友人なのだろうな。

 

そんな彼を少し無視しつつ、主任整備士である恐らくマードックという人物に声をかけた。

 

「俺の機体なんだがもう駄目だと思う。スクラップにして良いから適当にストライクの資材にしてくれ。」

 

「え?ですが殆ど被弾の痕跡は無いですが、駄目とは?」

 

「フレームを見れば解るさ、浮かれているのは良いけれど、次の戦闘まではそう遠く無いような気がするからな。

それと、更衣室はあっちかな?パイロットスーツを脱ぎたくてね、少し借りるとするよ?」

 

説明不足なのは解っている、だが今はそれよりもアークエンジェルの状況を把握するのが先だろう。

 

……

 

手始めに、この艦を護ってきた守護神と話でもしようかと、

思ったが、パイロットスーツのままという訳にもいかないので、更衣室にいく。するとちょうど例の彼がいた、まったく鍛えられていない。正に一般人だな年相応の肉付きだろう。

 

「着替えながら話をしたいんだが良いかい?

返答はしなくて良い、一方的な話だから聞かなかった事にしても良いし、喋りたいなら喋ってくれ。

 

俺はアムロ・レイ、連合軍の中佐をやってるものだ。

君はキラ・ヤマトくんだね。まずは、この艦を民間人という身分で守ってくれた事に深く感謝する。ありがとう、君のお陰で皆生きて帰ってこれた。」

 

彼は終始無言のままだ、少しの恐怖と戸惑いがある。

それはしょうがない、初対面の人間にこんな事を言われても普通、どうすれば良いかなんて考える人はいない。

 

「2つ目に、友人と殺し合うのはさぞ辛かったろう?俺も今君と同じように、友人と戦争をしているよ。」

 

「え……?」

 

彼はこちらに目を向ける、ちょうど士官服に着替えた俺と目が合う。

 

「イージスのパイロットは君の友人なんだろう?戦闘の最中、君には迷いがあるように思えた、だが君は彼と最後まで戦おうと決心し、俺が来るまで持ち堪えた。

それがどれ程立派な事か、誰も褒める人はいない。」

 

苦悶の表情にあるのは戸惑いと恐怖、

 

「あの、僕は……戦いたくなんて無かったんです。でも、この船には今友達が乗っているんです。だから、僕は……」

 

「君の気持ちも解るよ、クルーゼと言う敵の隊長がいるだろ?アイツは俺の昔からの友人でね、殆ど誰にも喋ったことはないんだが、君には特別に教える。似た者同士、仲良くしようか?」

 

俺は彼にそう告げると、手を差し伸べて握手をねだる。彼がその手を取るも取らずも彼の自由。暫く考えた挙げ句に、彼は一つの質問を投げかけてくる。

 

「どうして、僕とアスランの事を知っているんですか?誰にも話したことなんて無いのに。」

 

「勘だよ、良く当たるものでね。色々と助かっているんだ、さて手を取るのか?取らないのか?どっち?」

 

彼はゆっくりと俺の手を取った。

 

 

 


 

良いなぁこの艦、設備も新しいし何よりいる人皆、顔に傷があるような感じじゃないから、なんか落ち着く。

落ち着くのは良いけど、何か物足りないなぁと思いつつ更衣室で士官服に着替えると、とっとと中佐を探しに行く。

 

どこに行ったのか、更衣室に行ったのは解っているけれど、もういないだろうし、たぶん艦橋に行ったのかも。

ちょっと待っていてくれれば良いのに、どうしてそう行動力があるのか、本当に探すのは手間だ。

向こうが探してくれるなら、物の数分で会えるのになぁ。

 

艦橋への道すがら違和感を覚える、こんなにも士官がいないものだろうか?

普通艦橋の方へと行くのなら、配置されている下士官士官兵卒問わず誰かしらに遭うと思うんだけれど、これはいったい……。

 

更衣室に向かっていたのだろう廊下でばったりと出会った相手は、マリュー・ラミアス。階級は…大尉だっけ?データによると確か、G計画の技術士官その中でもかなりの重要人物。

確か、アークエンジェルの副官だった筈だけれど…?

無重力空間の中、床に足をつけ敬礼し合う

 

「マリュー・ラミアス大尉、はじめまして。アナスタシア・リシュリュー大尉です。

すいませんが、艦長はどちらにいらっしゃるのでしょうか?先程から士官下士官問わず、あまり軍属と出会わないのですが…?」

 

「自己紹介ありがとうございます。

本艦はクルーの大半をヘリオポリスで失い、現在は民間人の手を借りて運用しております。

よろしければ、艦の指揮をお取りになられますか?

私は士官とはいえ、技術士官でしかありません。本来のクルーに任せた後は、副長も辞する事になっていましたので。」

 

うわぁ、それはまた大変な事になってるな。それにしても、艦内の治安はまだ悪い方ではない。

家に比べればまだまだ全然、陽気なところも良いとこだ。

 

「いえ、我々もデータ上でしかこの艦を知りませんので。それに…、私ではなく中佐にその事を直接お話になられたほうが良いのでは?」

 

中佐の事を持ち出すと何やら嫌そうな顔をする、ポーカーフェイスが苦手な人のようだ。実直で士官ではなく技術士官なら、そう言うのはかなりコミュニケーションに必要なのだろう。

 

「顔に出てますよ?

大方、中佐がブルーコスモス何じゃないか?ってそう思っていますよね、無理もないですよ。あんなCM流されると。」

 

「い、いえ。別にそう言う事は…。」

 

言い訳を口にしようとする彼女を手で制する、仕方ないここは合わせるのが一番の得策だろう。

でもとりあえず艦橋に行きたいなぁ、イリスと連絡しなくちゃならないし。

 

「とりあえず艦橋に行きたいのですが、艦と連絡を取りたいので。」

 

渋々と言った感じで私を案内してくれる彼女、根は優しい人なんだろう。硬い人ならここで、用事があるからと受け流すもの。

無言…ただひたすらに無言、実務的対応。仕方ないよね。

 

艦橋に到着するとやっぱり中佐がいた。

 

 


 

「失礼する、艦長はいるだろうか?」

 

そう言いながら艦橋へと入ってきたのは、先程MSで戦闘を行っていたアムロ・レイ中佐であった。

何気なく入ってきた彼は我々クルーに会釈をするだけで、敬礼をしない。答礼しないというのはどういう事か?

その後にはキラ・ヤマトの姿があった。

 

「どうやらいないようだな、済まない。少し遅れたが、改めてアムロ・レイ中佐だ。バジルール少尉は君かな、ヤマト君から兼ね兼ね状況は聞いているが、まずは俺の艦との通信をお願いしたい。」

 

先程の戦闘時の雰囲気から一変してその表情は非常に穏和なもので、同一人物とは正直思えない。

それに、キラ・ヤマトは彼と何やら悪く無い雰囲気のようで、人心掌握術に長けているのか、たぶん…残念ながら私より彼の精神は幾分かマシになるだろう。

 

 

そんな私の気分を知ってか知らずか、淡々と事務的に艦橋内を練り歩き通信を始める姿には、少し違和感がある。

 

「ハムサット少佐、そちらの状況はどうか?」

 

「いたって順調です中佐。しかし、合流するにはこのままの相対速度では軌道上になりそうですな。

それまでそちらでお世話になってください。」

 

「解っている、だが俺の機体はもう駄目だろう。予備は無かったか?」

 

不安な単語が出てくる、正直理由の解らないことを。機体には被弾痕等見当たらなかったというではないか。

 

「あぁ、遂にですか。月艦隊からお土産があるそうですから、それまで持ちこたえてください。」

 

「解った。通信終わるぞ?」

 

落ち着き払った様子だが果たして、このままで大丈夫だろうか?

 

そうしていると艦橋のドアが開き、ラミアス艦長とスターシャ姉様が入ってきた。

 

 

……

 

「アハハハ、久しぶりナタル。どうしちゃったの、そんな硬い顔しちゃって。何?幽霊でも出たの?」

 

大尉の階級章を付けた彼女、アナスタシア・リシュリュー。まさかと思っていたけれど、本当に彼女だとは思いもしなかった。

 

「大変だったんだって?こんな素人しかいない中良く生きて戻ってこれたね?」

 

それには同意しかない、実際こんな集団で良くも生き残ったものだと感心してしまう程だ。尤も、非常事態とはいえ民間人の協力を仰ぐというあまり良くない事をやっているのだが。

 

「そう言うのはあとにしようか?

先遣隊の生き残りがこの艦にランチで移乗してきている、中には士官もいるが幸いな事に、階級は俺の中佐が一番上となる。

艦長以下、艦内クルーの配置はこのまま行きたいがどうか?」

 

「私は中佐の命令に従います、ですが何故民間人の彼等にまだやらせるのですか?」

 

それもそうだろう、普通こういう場合正規のクルーが付く方が良い、特に法の下で。

 

「アリバイ作りだよ、艦橋クルーもパイロットも民間人だとバレれば、今度は彼等に不幸が降りかかる。

なら、このまま艦隊と合流してその後軍籍から離れて貰えばいいさ。

それに、彼等よりもこの艦の事を知っている人間が先遣隊にいるとでも?」

 

一理ある、交代すれば最悪戦力の低下も免れない。

 

「向こうには俺が話を通しておく、だから憂いなく業務に励んでくれ。それとだ、ラミアス大尉。俺はブルーコスモスじゃないから、安心してくれ。」

 

その声に、一同彼女を見る。

目を、見開いて驚愕する彼女に敬礼をして去っていく彼の姿が対比しているように見えた。

 

「あら?なんか場違い感ある?俺。」

 

そこに、何も知らないように登場した緊張感のないフラガ大尉の声が艦内に響き渡っていた。

 

 




いつも誤字の訂正ありがとうございます。

どなたかMSを描ける人はいないだろうか。
スペック等は簡単に考えられるのですが、どうもMSを描けないので、あったほうが姿を想像しやすいと思いまして。
いらっしゃいましたら、メッセージにてご返答よろしくお願いします。
誤字、感想、評価等もよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。