その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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不気味な

アムロ・レイは今日も机に向かい、特殊な机に向かって座り何かを書いていく。

タブレット端末やパソコンと違い自らの直感と、手指に僅かに伝わる感触から、製図板を使って何かを書いている。

 

「お疲れ様、今日も書いてるの?」

 

「ああ、気晴らしにね。今の俺が組み立てるには荷が重いけれど、こうやっているだけで何か落ち着くこともある。」

 

全盛期とは打って変わり、めっきり使われなくなった道具をまるで手足のように器用に使い、みるみる内にそこには何やら描かれていく。

部品の規格表を片手に、その規格表を感じ取りそれを落とし込んでいく。

 

公差や接地圧の計算も行うが、そこは目が見えないが為に彼はその手伝いをアイラ・エヴァンスへとお願いしている。

二人は慣れたように互いに作業を行い2時間程作業したあと、二人で日課である散歩に出かける。

日はこうやって過ごすのだ。

 

孤児院の子供達も元気にはしゃぎ二人と一緒に過ごしている。

 

 

 


 


 

ガコンガコンと機材が宙でぶつかりながら、次々と外されていく。俺が搭乗していたジンは、駆動系への負荷でその50%の性能が低下しもはや戦闘では使い物にならないものになった。

そこで、俺は8艦隊との合流するまでの間に、機体の分解をマードック軍曹率いる整備士に依頼した。

 

ただ最重要な事は、使用できる資材とそうでないものとを選別することだ。

幸いなことに、俺も多少なりとも心得があるから艦内にあったツナギを着て、彼等と共にオイルに濡れる作業を行う。

これがまた、ストレスの解消になるのだ。

 

どうしてか、昔からこういうものをやっていると、気が晴れてもっとやってやろうと、そう思う事が多々ある。

オリジナルの親父の影響だろうが、それにしてもどうもこう言うのが性に合ってたまらない。

 

「中佐!この部品ですが、これはどうします?元々ザフトのものですから俺等にも少々解らないものがあるので、どうです?」

 

「うん?それか?それは、ストライクの内部にも同様の機構があるから、いざという時に代替品として使えるぞ?

多少性能は低下するだろうが、持っていて損はないと思う。ここはこんなにも広い格納庫があるんだ、一機だけしかないなら充分有り得るだろ?」

 

次々と解体されていく、流石に全て使えるわけもなく。特に関節駆動系の損耗が激しかった為に、その殆どを投棄することになった。

因数外の部材だ、どうせ利用価値なんてもうないのだから、きっぱりと諦めるのも肝心だ。

 

「そういやコイツはなんです?」

 

マードック軍曹が指さしたのは、ちょうどコックピットブロックの座席の下に入りそうな程の黒い箱、いやブラックボックスだが。最重要なものだ。これさえあれば、機体がなくなったとしても充分な価値はある。

 

「これはパイロットを補助するAIさ、容量を喰うからこんな形になるが、こいつをつければ新兵もたちまちACEパイロットの動きを網羅して、敵の攻撃を回避できるようになる。そんな代物だよ。」

 

そう言うと、おぉ~という声が聞こえてくる。なんとも、やはり気になるようだ。

 

「それって俺でもパイロットに慣れるってことですか?」

 

作業を終えた1人が聞きに来る、話を聞くに昔パイロットになるのが夢だったようだ。だが、士官するも試験で不合格挙句の果てに、ここに転属させられたという。

 

「一応のパイロット適性はいるが、アップグレードを重ねていけば行く行くは素人でも、ある程度は操縦出来る程度には。」

 

それでも、回避行動が困難な場合のアシスト機能だ。自転車にも坂を登るためにアシスト機能があるのと同じ様に、戦闘時相手をどの角度で撃てば良いのかそう言う指示をAIが判断する。

それを選別するのが人間だという話だ。

結局はパイロットの努力次第だが、それでも今までよりは遥かに早いだろう。

 

そうしていると、何処からか視線を感じた。アレは、ラミアス大尉かどうしたんだ?

いや、心配しているんだろうな俺がストライクになにかするんじゃないかって話でもある。

当たらずとも遠からず、俺はストライクにコイツを移植したい。勿論、コイツそのものじゃなく。俺等の艦で余っている奴だが、そうすれば生存率は上がるだろう。

 

不気味な嫌な予感がする、これは前々からそうなのだが、俺達がプラントの分遣艦隊を壊滅させてから、その感覚が遥かに強くなってきている。

これは……俺個人に対する物なのか、それとも俺達の艦に対してなのか、だがこうやって離れて見て改めて解ることもある。

どうやら、俺にこの膨大な敵意が向いているらしい。

 

だとすれば、俺がアークエンジェルにいる事が判明しているのなら、早晩来るだろう。

俺を狩るための、艦隊というものが。

これはその為の伏線でもあるわけだ、少しでも犠牲を少なくするというそう言う努力。

 

どういう作戦名で俺に向かってくるのか解らないが、素敵な命名でもするんだろうな。

 

 


 

二人が私達の艦に乗艦してから3日程、ジンは解体され暫く何やら話をしているレイ中佐を私は見下ろしていた。

もしも、艦長が生きていればあそこにいたのは私だったかもしれない。

何も考えずに、ただ眼の前の出来事に感心して様々な事柄について質問する……。

 

羨ましい反面、そんな呑気なことを等と今の私は考えてしまうのだ。

きっと疲れているのだろう、軍人として実直な部下と飄々として掴みどころのない同僚を持って、尚且つ素人を纏め上げなければならないという、この重圧に。

 

それにモンゴメリの乗員が加わったらどうなってしまうのかと、当日は戦々恐々としていた。

だけれど、レイ中佐が機転を利かしてくれたのかモンゴメリの乗員は、私達の眼の前にはいない。

負傷者が多数いることから、殆どが医務室にいるか乗員の部屋で過ごしている事だろう。

 

バジルール少尉に後を押され、休んでいてくださいと言われたけれど、わたしにはそんな休む暇なんてあるのかしら?

肩が凝って仕方が無い。

食堂で何かを摘もうか、そうすれば眠くなるのではないか?と思い、立ち寄ると胃痛の種の一つレイ中佐がいた。

 

「そんなに畏まらなくて良いよ、肩が凝って仕方が無いだろう?今更言うのも何だけれど、階級とか関係なしに貴女と話をしてみたいと思ってね?どうだろうか?」

 

「どう……と仰られましても、未だ軍務中ですのでそうやって話すのはいかがなものかと?」

 

眼の前の得体のしれない不気味な男、そもそもアムロ・レイという男は何者なのか?

ナチュラルでありながらMSを操縦し、挙句の果てにコーディネイター等歯牙にもかけないと、そう言わんばかりに戦い敵を葬り去っていく…。

 

馬鹿げた話にも程がある、MA乗りとして嘗ては知る人ぞ知るパイロットらしかったが、それがどうだ。まるで、MS戦に尤も詳しいのは自分であると言うような戦い方を、彼は私達の眼の前で行った。これが本当にナチュラル、であるか?

 

それでも…、彼はブルーコスモスの宣伝に良く利用されている。だとすれば、やはりコーディネイターではない。

けれどもブルーコスモスが出てくるのなら、彼は間違いなくブルーコスモスなのではないか?フラガ大尉はそれを否定していたけれど、戦争をやっているの。人は必ず変わるわ。

 

 

「訝しむのも良いけれど、きちんと本人に言った方がいいんじゃないか?

俺はコーディネイターじゃない、だけどねブルーコスモスでもない。君は、大分僕のことを警戒しているみたいだからね?」

 

「あら…………、声に出ていましたか?」

 

眼の前の男はそれを聞いて私をジッと見つめてくる、何なのだろうか。声にでていた?いいえ、声を出した覚えは無い。

 

「君のフィアンセは、落とされたんだな。一度あってみたかったよ。」

 

「……どういう事でしょうか、まるで人の心を読むように。」

 

「………率直に言って君の言ったことは的を射ている、俺には人の感情の起伏が解るという特殊能力がある。と言っても信じて貰えないだろう。俺だけじゃない、ムウや他のゼロパイロットも同様に。」

 

ふざけているのだろうか、そんな事信じられる土台は無い。第1そんな人がいるのなら戦争なんて。

 

「人というのは意思のあるものだ。どんなに見繕っても我が出てくるから、自ずと傲慢になる。それ故に戦争を起こす。

君にとっての我は、婚約者を殺された憎しみソレをMS開発という力で返そうとするもの。

だが、それ以上に君はキラ・ヤマトという少年を、俺から守ろうとしている。

彼から話は聞いたよ、戦いたくないことでも友人を守る力が自分にしかない事、そして友人と戦っている事。」

 

「友人と戦っている…?ですか?」

 

友人いったい何のことを言っているのか、でもならば合点がいくのではないか?時折、キラくんの動きが鈍くなることがある、それはいつもイージスと戦っているときだった。なら…。

 

「そう言うことさ、しょうがないとはいえ君は彼にとって最悪の決断をして挙句の果てに、戦争に巻き込んだ。

別に君を責める訳じゃない、ただ彼にもっと積極的に関与したほうが良いという事は助言として言っておく。

 

彼はこれからもきっと戦火の中で生きるかもしれない、そうなったとき1人にしては彼の優しい心は壊れてしまうかもしれないから。」

 

彼の言葉は確かに正しい、でもならどうすれば良いのか。

 

「互いに考えていることを吐露すれば良いさ、正直に言えば彼は優しい人だからきっと、話してくれるさ。君も隠さなければ、という但し書きが付くけれど。

 

それと、もう一つ用事がある。君は、いや君たちは、俺やモンゴメリの連中に何か隠し事が有るんじゃないか?」

 

思案の中にある私に、様々な事柄を投げかけ停滞していた思考を、焦りの中にあった私の思考を少しだけ前進させた。

 

そして、白を切り通せなかった自分という人間はなんと弱いのだろうと、思わずにいられなかった。

 

 

 


 

暇ですわぁ……、お部屋の中は快適ですし全然暑くも寒くもありませんが、お話をしに来てくださらないと1人では寂しいです。

 

「ねぇピンクちゃん?また一緒にお外に行きませんか?」

 

でも、プラントでも同じなのですよね。偶に来るのは、お父様のお友達。更に偶に来るのは、アスランくらいで……。

あら?わたくし、お友達ってあまりいないのですね。

皆口々に、私の事を歌姫だとかそう言うのですがそう言えばそうですね。ならやっぱり。

 

「ねぇピンクちゃん、やっぱりお外に行きましょう。お友達を作りに、そうすればプラントと連合の架け橋になれるかもしれません。」

 

今まで私は戦争の事なんて外の話だと思っていた、プラントの中には私と同じ志を持った(・・・・・・・)人達がいます。今まで様々な人にお会いしました。

もちろん、お父様を支持してくださる方々です。私と一緒に色々と考えてくださると思うのですが…、今のままではいけませんよね。

 

「ラクス・クラインさん、今大丈夫かしら?」

 

「はい、開けても大丈夫ですわ。」

 

艦長さん、ラミアス様ですわね。それと、隣の方はどなたでしょうか?

 

「ラクスさん、お加減はどう?」

 

「はい、苦労していることはありません。ただ……」

 

「ただ?」

 

「1人でいると退屈なのです、キラ様達も偶に来るのですがお話相手になられる方が一緒なら。」

 

どうしたのでしょうか、わたしが話している間艦長さんの隣りにいる男性の事を私は、怖いとそう一瞬ですが恐怖を覚えた。これはいったい。

 

「こちらの人が貴女と話がしたいと、私よりも階級は上だけれど年齢は私と同じらしくて。中佐、流石に二人きりというのは犯罪的ですので、一緒に聞いていてもよろしいですか?」

 

「構わないよ、それよりも大分退屈そうだね。そのハロで、電子ロックを解除しようとしていたのかい?」

 

「……、いえそう言う気は無いのですが…。」

 

私がやろうとしていた事を、この人は私と会話せずに解ってしまったのでしょうか?

でも、なんでしょう私に対して警戒している様子は見えないですし、どういうお人なのでしょう?

 

「まあ良いさ、君くらいの年齢なんて友人と遊んでいたり、何かに夢中になっているのが健全なくらいだ。そう言うこともある。

単刀直入に聞くけれど、プラントに戻りたいかい?」

 

「それはそうですけれど、その宛はあるのですか?」

 

何やら悪い顔をしていらっしゃる。

確かに戻りたいですし、キラ様から聞きましたが今ならアスランのいる艦が近くにいるらしいですので、それなら早いほうが良いと思うのですが。

 

「あぁ、あるさ。ラミアス艦長、捕虜交換を提案したい。それと、艦を一度停止させる。そうすれば、家の艦とも合流出来るし、何よりこんな子供を政治利用したくない。」

 

「交換ですか、ですが向こうには。」

 

「だから、敵のMS。そうだなシグーと彼女、それともう一人引き渡したい娘がいる。」

 

あぁ、この方私の考えていることが解るのですね?素晴らしい人です、ナチュラルとかコーディネイターとかそんな垣根すら超えられる人なのでしょうか?

 

「兎に角、キラ君とも話をする。下の連中は俺がなんとかするから、艦内特に長いこと君の部下になっていた人たちを説得してくれ。」

 

そんな私のことを知ってか知らずか、彼は私に微笑みかけた。あぁ、やっぱりそうなのですね!マルキオ様が言っていた事、シードを持つ人というのはこう言う人なのでしょうか?

 

「過分な期待はしないほうが良いよ、でも信頼はしてくれて構わない。」

 

「ありがとうございます。私、ラクス・クラインです。シーゲル・クラインの娘の。」

 

私がそう言うと、彼は答礼?というものをした。

 

「俺は地球連合宇宙軍所属、アムロ・レイ中佐だ。以後お見知りおきを。」

 

私達を導いてくださる。いいえ、私達と一緒に歩んでくださるこの方にこの方の行く末に幸多からんことを。

 




いつも誤字、誤記の確認、感想等ありがとうございます。
そして今回も誤字、感想、評価等よろしくお願いします。
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