その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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軌道修正1

アイラ・エヴァンスは懺悔する。

アムロ・レイという男は彼女にとって、最も不可解な人物であった。

盲目の男であり、周囲の環境も何も知らずただ生きている骸のようなものであろうと初めは思っていた、

 

しかし、3日,4日と進むに連れ彼女は違和感を覚えた。

彼は全くと言って良いほどに周囲を視認できない、眼球が無いのだから当たり前だろう。

 

だが、気配を消すように現れる彼女が、部屋に突然現れようとも彼は驚くこともせず。

ただただ、挨拶をし対応する様子に疑念を覚える、

監視を続ける事に彼女のその疑念はいつしか、確信へと変わった。

 

彼は通常の人間と同じ様に生活している、まるで目が見える様にあらゆる作業を行っていく。

その姿は傍から見ればあまりにも不気味なほどに。

 

 

 

 


 


 

 

アークエンジェルが隣を進んでいく。

巨艦の割に結構速いな、まあ俺達の艦なんて数年後には退役していそうなものなのだが。

 

「中佐、8艦隊が見えて来ましたよ。もうそろそろです。追撃部隊もさることながら、アークエンジェルは良くやっていますよ。」

 

「確かにな、俺達の部隊の戦力もあるが。敵を良くも退けてくれる、彼は戦士としてかなり優秀だな。」

 

キラ君と共にラクス・クライン等の返還を行った後、俺はその足で一度アークエンジェルに着艦し、再度スターシャを載せてイリスへと帰還した。

 

それから数日もする間もなく、クルーゼの別働隊からの襲撃を受けるも、アークエンジェル隊並びに俺の部下達の手によって、襲撃を退けた。

しかし、PS装甲というものは厄介極まりないな、どう取り繕っても単純火器が通じないのは、技量は悪くはないんだが関節部を狙うなんてこと、隙を下すのと変わらないからな。

 

「彼は正式にパイロットになったんだろう?到着するまでは俺達の同僚だが、それでも子供のお守りはしっかりしないとな。」

 

艦橋内は声に包まれる、余裕が有るっていうのは良い事だ。だが、あまり気分が良くないのを顔には出せないな。

 

「アークエンジェルへ第八艦隊から通信があったようです。我々にはこのまま同行し、艦隊へと合流せよとの事です。それと、ハルバートン提督から直々の通信です。」

 

艦橋中央にある椅子から斜め上を見上げるようにモニターを確認する。

鼻の下辺りにヒゲを蓄えた、初老の男が映っていた。

 

「久し振りだな、アムロ中佐。皆も長期の任務ご苦労、今回アークエンジェルの救援並びに先遣隊の生存者の救出ありがたく思う。

さて、この距離での通信だ傍受されても別にやましいことも無いが、諸君等にはこのまま地球へと降下してもらう。

アークエンジェルと共にアラスカへ。」

 

「それは必然的な意味があるという事ですか、それとも。」

 

彼は口元をへの字に曲げて不機嫌そうな顔を隠しもしない。俺がまるで全てを知っているように、自信満々に返答したことに何かを思考しているのだろう。

 

「情報部がザフト本国の艦隊の動きを捉えた。

まっすぐにこちらへと向かってきているとの事だ、奴等の戦略上の目的は我々の駆逐であろうが、真の狙いは君だろう。」

 

「いいえ、奴等は獣狩を始めたんですよ。狙いは俺だけでなく、貴方も入っています。

俺達が降りたとしても、貴方を殺すまで奴等は止まらないでしょう。」

 

「獣か、君は所謂そのエンブレムであるユニコーンだとすれば、この宙域には鷹が1羽に私は何だ?」

 

「智将と恐れられている貴方なら、マッコウクジラとでも言えば宜しいかと。」

 

「マッコウクジラか。海で最も強く気高いものか、悪い気はしないな。

それならば話早い、君の為に機体を持ってきている。調整の時間はそれ程取れないと思うが、期待しているよ。

もしもの時は、頼むぞ?」

 

そして、通信が終わる。

ブラック・アウトした画面に宙域図が映され、艦隊の陣容が見て取れた。

MAによる戦闘態勢か、防御火力を狙った輪形陣。

だが、未だに艦隊の陣形は一考の余地有りだな、これでは対MS戦闘だと混戦になって互いの砲火で艦隊が崩壊するな。

 

「20分程休憩する、副長少しの間頼むぞ。」

 

椅子から腰を上げ艦長室に移動中、スターシャが俺の眼の前に現れた。

手に資料を持っているな、機体のデータか何かかな?

 

「どうしたんだ?」

 

「いえ、ハルバートン提督が私達へとMSを提供してくださるようで、それのスペック表をと。」

 

内容が気になるな、そんなに良いものなのか?

だとしても、完熟訓練をせずに彼女達に乗りこなせるか?

いや、MAから機種転換出来た人員だ、MSからMSへと搭乗機を変えたとしても、適応出来るだろう。

 

「解った、俺は少し休憩するんだが一緒に来るかい?」

 

「はい、ご一緒できるのなら。」

 

着いてきたところで何も用意なんてできないんだけどな。

 

……

彼女の持ってきたものに目を通し、機体の性能を書かれた資料に目を通す。

カタログスペックなんていうのは兵器には付き物だが、果たしてこれを実際出せるかと言えば、機材次第だが。

 

「この性能データどう思う?」

 

「指揮官機、これはアムロさんが搭乗するやつですね。

新規格の特殊対弾合金、どういうのなんでしょうね、対弾性はPSの70%で、重量は…半分?冗談みたいな話ですけど、本当なんでしょうか?」

 

そうだよな、おかしいんだよ。機体に使われている合金は、ジンに使用されているものよりも遥かに軽量でありながら、あまりにも対弾性が高すぎる。

これではPS装甲を作り出した意味がないのだが、ハイ・ローミックスか?

いや、PSは確実にハイだ。それに一応PSを使うよう表記があるから、併用なのだろう。

 

「これ、私達の機体もそうですね。後ろの推進器の推力によりますけど、高空戦闘でディン並には飛行ができてしまうのでは?」

 

「そう思うよ、機体が軽すぎる。体積当たりの重量は水より軽い、だが自壊せずに形を保っていられる技術…出処は何処だ?」

 

装甲材の研究場所は何処か、この機体が何処で創られたのか。これを持ってきて、ハルバートン提督が何を目論んでいるのか?そんな事は今は解らないが、月で研究する場所があるとすれば一つだけだ。

 

「コペルニクスに何かありそうだな、一応中立地帯だから干渉なんて出来ないはずだから、これはGATシリーズとは別枠と言う訳かな?」

 

「ハルバートン提督は何か理由を知っているんでしょうか、彼地球連合ですよね?」

 

部隊長とその副官が話をするのは別におかしいことでは無いし、こうやってヒソヒソとすることは珍しくもないが、これは俺達の中の一番頭の良い奴なら感づくな。

 

もしかするともしかするかもしれないな、月はコロニーとは違って地球からの呪縛が強い場所だったんだがな、この機会に何かを起こそうと言うのか?

会わない間にいったいどうしたのか、ハルバートン提督は何に賛同した?

 

「だがまあ、今はこの援助に感謝しよう。機体のお披露目は受領してからみたいだからな。

戦術の立てようもない、これじゃあ貰った意味すら無いな。」

 

ポジティブ・リストか、スペック表をあくまでも信じるのならそれしかあるまい。もしそれよりも低ければ要検討の余地はあるか…、ジンをベースにした戦術に切り替えれば良いだけだ。

 

写真の無いただのスペック表で何処までしようとも、所詮は妄想に過ぎないからな。

今は精一杯出来ることに徹する他ない。

 

 


 

無重力空間の中、私の家への帰り道。私は船のゲストルームの窓枠からあまりにも暇なので外の様子を観察している。

ヴェサリウスと言うこの船から見る景色は、絶景とは思います。私の乗っていたシルバー・ウィンドとはまた違う景色で、とても嬉しく思いますが、私の為に死んでいった方々の顔が目に浮かびます。

 

「あの~、大丈夫ですか?」

 

私が物思いにふけっていると、声をかけてくださる方

アイリス・グールド様が私を気にかけてくれるようです。

本当はアスランに声をかけて頂きたいのですが、仮にも婚約者であると言うのに引っ込み思案なのか、それとも政治色の強いそれをあえて気にしているのかわかりませんが、私と距離を取るのです。今は軍務だからと。

 

そんなに軍務が好きならば、軍務と婚約すれば良いのではないでしょうか?全く、乙女心というものを知りませんね。

 

「いえ、大丈夫ですありがとうございます。ですが、私よりもあなたのほうが、大丈夫ですか?と、お声をかけられたほうが良いのでは無いですか?

そのような不安そうな顔をして、どうしたというのですか?」

 

「ラクス様は、あの男にお会いしたんですよね?あの優しそうな男に。」

 

優しそうな男、あのアムロ・レイ様の事を言っているのでしょうか、でしたらお会いしましたわ。

 

「貴女の言う方がどなたかはわかりませんが、アムロ・レイ様の事を言っているのでしょうか?

でしたらお会いしましたわ?たった十分しかお話をしませんでしたが、それだけで私の事を手に取るようにわかってくださいました。」

 

「やっぱりあったんですね?あの、〘白い悪魔〙に。」

 

〘白い悪魔〙それが何を意味しているのか、少し考えてしまいましたが、彼女はアムロ・レイ様に恐怖を抱いているのでしょうか?それ程、恐ろしい方とは思いませんでしたが?

 

「アイツは、私が見てきた中で一番ヤバい存在です。

いいですか?アイツは、人の心に土足で踏み込んできて自分の事を覗き込んでくる。

今何をしたいのか、何をされるのが嫌なのか、何をしてほしいのか。

それを全て解ったうえで行動してくるんです、恐怖以外の何物でもありません。」

 

「????、それのなにがいけないのでしょうか?人の為を思って行動してくださるのなら、それ以上の存在はいないのでは?」

 

私は彼女の瞳を覗き込んで、瞳に映るそれを見ている。

怯えている犬………、あまり生で見たことはありませんが、そう言う例えで使うのならばそれが一番適当なのかもしれません。

 

「私は怖かった、あんな恐怖二度と体験したくない。

まるで、神様とかそう言う非科学的な存在がいるのなら、ああいうやつなんじゃないかって……。クッ……。」

 

よっぽど怖かったのだろう、彼女は諮らずも泣いている。無意識に涙を流してしまっている。誰かに見られていないだろうか、このまま泣き続けられても、私はどうすれば良いのか解らないのですが。

そうですわ!

 

「〜〜♪…〜〜♪♪」

 

歌というのはこういう時にあるものですよね、でしたらこうやってやりましたら、泣き止んでくれるでしょうか?

 

「大丈夫、大丈夫ですよ?ここは、あの方はいらっしゃらないのです。ですから、存分にお泣きください。」

 

私は彼女の頭を胸に抱き、包みこんであげる。これで安心できるのなら、それで良いのですよね?

ヨシヨシと頭を撫でる、私の見る窓を幾つもの艦艇がすれ違い私達の通っていった道を戻るように進んでいる。

チラッと私はそれを見た、そして彼等が何をしようとしているのか、それを悟った。

 

 




次回 オペレーション・タペストリー

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