その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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オペレーションタペストリー ユニコーン狩り

毎日のように続く彼との会話、アイラ・エヴァンスはそれに対して少しずつあるものを感じるようになった。

彼が自分以外の人間と話すときの憤り、自らのものを取られるような錯覚、そう感情の無い仮面の表情とは裏腹に彼女は嫉妬を覚えた。

 

自らのこのおかしな感情を主に話す、しかしそれが解決するわけではない。

次第に大きくなるそれに、彼女は突き動かされていく。

 

だが、ある日を境に状況が一変する。

彼女は彼と共に孤児院へと赴くこと、とされた。彼女は喜びの感情を覚えた。

これで、邪魔者はいないとそう思っていた。

 

そんな彼女のことを知ってか、彼が老人との契約の上に彼女の所有権を譲渡してもらっていた事を彼女は知らなかった。

 

 


 


 

ガヤガヤと錯綜する格納庫、内部の機材を刷新し輸送艦の方から新たなる戦力を受領する。

しかし、その作業も宇宙空間という関係上一度に搬入する場合、エアロックを介さなければならない為に、少し遅れ気味だ。

 

「これが新型か、一通りデータを見たが乗ってみないとわからない事もあるだろうな。」

 

 

【挿絵表示】

 

贈られてきた機体を見上げると存外悪くは見えない、兵器というものは格好の良い物は大抵良い性能を引き出してくれる。

 

 

「この機体はコペルニクスにて建造されました、GATXの競合機とでも言えば宜しいかと。RX計画機は汎用性を追求した機体です、オプションパーツに依存せず、あらゆる武装を使用する事をコンセプトに設計されております。

フレームはストライクの物と同様の物を使用していますので、兄弟機とも言えますな。」

 

 

【挿絵表示】

 

それと同時に送られてきた部隊員のMSも横に鎮座し、出撃を今か今かと待ちわびている様に思えた。

機体と共にやってきた女の技術士官に話を聞くが、それ程多い情報を持っているわけではなさそうだ。

 

「この装甲技術、出処はどこなんだ?」

 

「それは……企業秘密ですな。尤も貴方なら、簡単に予想が付きそうではありますが。どうです?ご自分の身体で情報料金を支払われては。」

 

俺に興味があるのは解るが、そんな事をしてまで人と接したいか?俺の予想が正しければ……いやよそう。

人の内に入るのは強制性のある場合以外、やっても侮辱以外の何物でもないからな。

 

「君の望みは叶えられないよ、籠絡されたくはないからね。もっと素敵な男性を見つけてくれ。

基本武装はこれだけか、他にどんな事が出来るんだ?」

 

「基本的にはストライクと同様のビーム・ライフル、ビーム・サーベル、75ミリ2基ですが、シールド裏に75ミリ対装甲ライフルが備え付けられてあります。連射は3点バーストのみですが、駐退復座機能によって多少反動は抑えられています。

後方腰部にウェポンラックがありますから、お好きな武装を一つつけられますが?」

 

ウェポンラックか、俺達の艦じゃ使えないな。

観音扉が外側に押されるように固定されるからと言って、そんなに広くなる訳じゃない。

肩幅以上の武装はつけられないな、ならジンの重突撃銃を付けるか?エネルギー武装が少なければ、継戦能力は上がるか?

 

「搬入まであとどれくらいかかる?」

 

「ざっと2時間と言ったところです、何か問題でもあるのですか?」

 

2時間、2時間も動けないとなると厄介な敵が来るまでの間、それに対する備えを終えるまで30分も無いな。

こんなところで補給作業をさせる上層部もそうだが、これならば月まで行ったほうがマシではないか?

 

「パイロット各員、パイロットスーツを着てMS格納庫に集合せよ、これより完熟訓練を始める。」

 

搬入中に悪いが、俺達も死にたくはないからな。

 

……

教本を片手に互いに質問をしあい、機体の動作レバーの位置関係を頭に叩き込んでいく。

一朝一夕でどうこうなるような代物ではないが、幸いな事にコックピットのレイアウトはジンの物とそう大差ない。

だが、それでも反射プロセスの中に思考プロセスが入るのは死に直結する。

 

それでもジンで敵を倒せるかどうかは、不安の残る問題だから今は少しでも早くコイツを戦力化出来るところまでパイロットを仕上げなければならないだろう。

 

戦闘用に調整されたコーディネイターや、運動能力の良い者たちで構成している事が良い方向に進んだとは皮肉なものだな。

格納庫の一角に陣取っている俺達の事を、邪魔だと言う奴は誰もいない。俺が佐官だからというのもあるが、この艦の乗員は全員解っているようだからな。

 

「中佐!お話中失礼します、秘匿回線でアラスカ本部より緊急入電です。

貴艦は軌道上より降下しカオシュンの後方よりザフト軍を撃滅せよ!です。」

 

またぞろ無茶苦茶だな。2月に入ってカオシュンの防衛戦は8割がザフトの手に落ちているが、残りの2割でなんとか持ち堪えている。確かに宇宙港は落とされているが、台南で抵抗を続けている。

山岳を挟んでいるからこそ出来る、防御戦術が上手く行っているのだろう。

 

だが、だからといって戦力を磨り潰すような事をさせるとは、上はよっぽど俺達の事が嫌いらしい。

良いように使って宣伝し、いらなくなったら捨てられる。これが軍のやる事か?やはり、戦争の早期の段階で士官級が大幅に減ったのは痛手だな、あまりにも投棄的すぎる作戦だ。

 

「もし奪還が不可能だと判断した場合俺達は独自行動権に従って撤退すると言っておけ、どうせ彼奴等は俺達を磨り潰すつもりだ。」

 

「受けるんですか!?こんな命令を!」

 

こいつは見ない顔だな、8艦隊から派遣された補充要員か。

 

「俺達はそういう部隊だ、その代わりと言ってはなんだが独自行動権がある。解ったらさっさと通信をしに行って来い!」

 

「えっ、あ。追加条項!アムロ・レイ中佐は本日付けより大佐へと昇進する!です。」

 

2階級特進でもさせて少将に仕立て上げて、神輿にするつもりか?とことん嫌な奴等だな。

 

「すまないな皆、連戦になると思う。」

 

「いいえ、大佐殿!いつもの事であります!なんて言うしかありませんな、ハハハ!」

 

この状況を打破するには俺が上に行くしかない、その場合政治的な判断が出来る奴が欲しいが、誰もいないだろうな。

願わくば誰かそれを教えてくれる教師がいれば最も良いのだが。

 

 

 


 

「お兄ちゃん、今まで守ってくれてありがとう。」

 

そう言うと女の子は僕に折り花をくれる、この子は僕たちが保護したヘリオポリスの脱出艇に載っていた子だ。

僕はこの子の言葉を聞いて、ハッとした。もしもあのときアスランに着いていったら、この子はどうなっていただろうか?

 

もし僕が戦わなかったら、漂流中の脱出艇を拾わなかったらどうなっていただろうか?

それを想像して、ゾッとした。もしも僕が自覚もなしにそれを守っていたなら、どれ程のものを背負っていたのか。

胃の中からこみ上げてくるものがあるのを、グッと堪えて僕は彼女がシャトルに乗るのを眺めている。

 

「君は乗らないのかい?」

 

「僕は…、僕は行けません。皆が戦うのに、今まで僕が守ってきた皆が戦うっていうのに、僕だけが逃げるわけにはいかないから。」

 

僕には力がある。それは、たぶん皆んなよりも強いものだと思う、だけどそう言ってもあの人程じゃない。

アムロ・レイ、とても優しそうな人で同じパイロットだからと僕に対して叱責する事もなく、ただ僕が辛い事を最初に解ってくれた人。

 

彼がなんで軍人をなんてやっているのか解らないけれど、僕は出来るならあの人のように戦いたい。

覚悟を持って、何者にも負けない強い心を持った理想のようなヒーローのような人だ。

 

あの人にあってからラミアス艦長も少しずつ、僕に話をしてくれるようになって、僕のことを知ろうとしてくれた。謝りもされたけれど、そんなつもりは無かったのに悪いことをした気分になった。

 

バジルール少尉は、いつものように辛口に言われたけれど、あの人は前からそうだし、僕のことをたぶん一番気にかけてくれていたと思う。

僕のことを民間人として見ていたんだ、だから強烈な言葉は言うけれど強制的に何かをやらせようと最初はしなかった。

民間人と軍人を分けて考えられる、きっと素直すぎる人なんだと思う。

 

僕は考え事をしながら、ふらりと更衣室に向かう。そして、今まで使っていたスーツに自然と手をかける。

少尉……これを着たらもう後戻りはできない。

 

「キラ……どうしてここにいるんだ?」

 

「フラガ大尉、僕はストライクのパイロットです。だから、この艦を降りるわけには行きません。」

 

フラガ大尉、いつも飄々としているけれど艦内の低下する温度の中で浮いていた。でもそれは現状に対する彼なりの支え方だったんだって、周囲を見れる様になって初めて気がついた。

 

「お前…それがどういう意味か解ってるのか?」

 

「はい……だから、大尉!キラ・ヤマト本日付でアークエンジェル隊に復隊願います!」

 

敬礼なんて綺麗にできるわけじゃないけれど、せめて覚悟をするためにやっても良いんじゃないかって。

 

「おいおい、角度がなっちゃいないぜ?もっとビシッとさ、ヤマト少尉。

復隊歓迎するよ、帰ってきたんならこれからはビシバシ女のいろはも教えてやるよ。」

 

こんな人だけど、僕たちの戦闘隊長は頼りになる人なんだ。だからこそ、皆を守ってみせる。

 

 

 


 

眼の前に広がる光景は壮観と言えば聞こえがいいが、俺達が追ってきた奴等を落とすにはあまりにも戦力が各潤されすぎていて、逆に驚くほどだ。

 

「おい、イザーク顔の傷まだ完全に癒えてないんだろ、参加するこたぁないんだぜ?」

 

「解っている!だがな、この光景を見れば嫌でも奴等を意識せざるを得ないだろ!」

 

ナスカ級3隻ローラシア級4隻からなる、大規模な艦隊。総数42機からなる、大規模MS戦。誰もが経験するのは要塞のようなものを落とすくらいだろうか。

それが今正に行われようとしている、敵はあの第八艦隊の智将と言われるハルバートン。

 

だが、戦力としてはあまりにも過剰とも言えるものを見ながらも、艦長以下艦隊司令官の白服の顔は緊張を貼り付けたように固まっている。

 

「これより、作戦目標を通達する。1に戦略目標である脚付きの撃沈、2に白い悪魔、ユニコーンのアムロ・レイの殺害。

3に8艦隊並びにハルバートンの殺害だ。

この作戦の成否が今後のプラントの行く末を占う分岐点と言えるものだ。

 

脚付きに関しては諸君らは既に知っている艦影であるから省く、アムロ・レイに関してだが、基本的に白を基調とした色を好んで機体につけている。何処かしらにユニコーンを模したエンブレムをつけている。そして、途轍もない突拍子も無い挙動をするのが特徴である。」

 

この戦争が起きてから、俺達が幾度も煮え湯を飲まされたというアムロ・レイ。

俺は未だその存在に出会っていない。

 

俺に傷を負わせたストライクのような、高い性能を持った機体に搭乗していないという事がいかに恐ろしい事か。

 

奴が座乗しているという艦艇と戦闘を行ったが、奴は一度も出ることは無い。

アークエンジェルと行動を共にしている事は解っているが、どのような挙動をするのか、シミュレーションデータが殆ど残っていないという事がどういう事を表しているのかだけは知っている。

 

遭遇した場合、殆どのものは殺されているという意味でもあるその事を。

今、この艦隊にいるのはプラントでも指折りのパイロットだと言うところからも、奴の危険性というものが解る。

 

 

 

 

作戦名 タペストリー ユニコーン狩り

 

12人の狩人によって討ち取られる様々な獣を写したものだと言う。ここにいる殆どのものは見たこともないものだが、俺は知っている。良く母上に教養として教えられた、古い時代の絵だ。

誰が作ったのか、もはや誰にもわからないそれは今でも地球にあるという。

 

だが、俺は一つ危惧することがある。

本当に俺達はユニコーンを狩る事ができるのか、あのアスランですら性能が劣るジンで鎧袖一触にされたという、そんな奴が。

 

ユニコーン狩りの様に簡単に狩られてくれるとは思わない。

ただ、それはここにいるパイロット全員が簡単に行くとは思っていないだろうとは思う。

 

ユニコーンの有名なタペストリーにはもう一つ作品があったはずだ。六枚から構成される、何だっただろうか。

 

この重苦しい中でそれを思い出す事はできず、出撃への時間が静かに進んで行く。

俺はこれから起こる激戦に身震いした、きっとデュエルでなければ生き残れないという深い確信を持って。

 

 




いつも誤字報告、感想、評価ありがとうございます。
性能等のデータは後ほど公開します。

誤字、感想、評価等よろしくお願いします。
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