その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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低軌道会戦

孤児院での生活は、あまりにも彼女には毒だった。

嘗ての自分を忘れて子ども達と遊び学び、感情というものを彼女が獲得するまで簡単なものだった。

 

恋というものは人を変えると言うが、彼女が陥ったそれは正に恋なのだろう。

刺客としての自分を彼がもし知ったとしたらどうなるだろうと、彼女は必死に悩み抜いた。

 

打ち明けるべきか、判断は自分がくださなければならない。主の答えは沈黙である。即ち自我を持てという意味だろう。

 

決心し、彼女は彼へと自分の事を話した。彼はその事に驚くこともなく、彼女を迎え入れた。

それからの日々は早かった、子供達と一緒にいても彼と共に行動する毎日は輝いていた。子供が、欲しいと思ったのはそう言った頃だろう。望んでも手に入れられない子供を。

 

 

 


 


 

宇宙との別れ、それは惑星へと落ちて行くという事だ。即ち、地上への降下であるが、アークエンジェル隊は正にその状況が刻一刻と近づいていた。

彼女等は、連合本部へと降下してもらわなければならないため、降下迄の間、近接防空戦に従事してもらう事となった。

 

ストライクとゼロが見える。

ストライクには、嘗てあった迷いが全く見えなくなっていて、彼は何かを決断したことを意味する。

ゼロはそのストライクを信用するかのように寄り添い、互いに何か呼び合っているような、そんな感覚すら覚える。

 

それに対して俺達は、防空戦と言うこともあり艦隊近郊中域の航空優勢を確保する為にMA隊共々前線を張る。

家のスターシャが全体の指揮を取り、敵のジンを迎え撃つというものだ。

 

では、俺は何をすれば良いのか?

そう、俺の仕事は…

 

「ブースターはまだ持ち堪えるだろう?機器を正確に読み取れば、自然と上手く扱えるさ。君なら出来る、君はMA隊の中で一番真艫な教育を受けた筈だろう?」

 

「しっしかし、こんな事初めてで。」

 

Nジャマーの影響で使用できないレーダー網を掻い潜り、敵艦隊の直上から単機で攻撃を仕掛ける。

所謂強襲攻撃を仕掛けるという算段だ、尤も俺について来られる奴は限られるし、かと言って戦闘の指揮を取るやつがいないと困るだろうからという事もあるが。

 

「大丈夫、この作戦が終われば君は一人前だ。見ろ、Nジャマーを最大にしたおかげで、敵は俺達の事を見えていない。君はあと少しで目標を達成する、だから頑張るんだ。」

 

月面基地、所謂ハルバートン派閥ではメビウスへMS支援用に、俺達に倣って小改修してMS支援ユニットとしての戦力の固定化を目論んでいる部分がある。それ故にこの一機も、友人のメビウスに乗せて貰っているんだ。

 

後方で光が見える、どうやら戦闘が始まったようだ。総勢120機あまりのMAが3機一組+MSと言った具合に連携を取りながら、ジンを翻弄する姿が感じられる。大丈夫、誰も落ちていない。

 

「目標地点まであと10秒……3,2,1,上手く帰れよ!」

 

俺は機体の腕をMAから離し、敵艦隊の直上から狙いを定める。

戦闘は眼の前で起こっているだけじゃない、お前たちの上でも起きるんだ。

一隻気がついた艦がいる、そいつからラウの気配がした。

 

だが残念ながら俺の直線上のコースではない。だから葬り去ることも出来ないだろう。

俺は機体にアークエンジェルから回収したあまり在庫であるバスターの、インパルス砲を所持し、外付けのエネルギーコンデンサから供給された超高インパルス砲で敵艦の艦橋を狙撃した。

 

一瞬閃光がしたかと思えば、一気に艦艇が破裂するように罅が入り、ナスカ級が一隻轟沈した。

どうやら勘は正しいようだ、弱点を貫けばどんな船でも落ちるのは当たり前か。

 

それにしても

 

「直掩のMSがあまりにも少なすぎるな、こういう搦手を経験したことがないか?

それとも、戦争というものを一方的なものだと思いこんでいるのか?」

 

ジンとシグーがそれぞれ4機の合計8機が直掩か、艦艇の数から言えばなんとか良い方だろうか?

ラウ、お前が出てこないとこの艦隊は沈むぞ?

機体の速度を落とさずにぐんぐんと近付いていく、シグーが果敢に突撃してくるのを気にせず、2射目を撃ち今度はローラシア級が被弾する。

 

ちょうどコンデンサのバッテリーが尽きるとそれを投棄し、腰部ウェポンラックからビーム・ライフルを取り出すと、シグーの銃撃を掻い潜りながらすれ違い、感覚に従い左脇から狙撃する。

当ったのだろう、一瞬悟ったような感覚が駆け宇宙の塵となる。

 

駄目と解っている筈なのに、ハイマニューバ仕様というジンが連携を取りながら来る。

それを急制動をかけながら攻撃を交わすと、左にマウントした盾から3発バーストをそれぞれの目標に打ち込み、それに反応して反射で避ける方角にビーム・ライフルを置く。

 

それで光が機体を貫き、ジンは次々といなくなっていく。

 

「これで6つ次!7つ!あと一機か?いや、戦線の敵が戻って来たか?だが…」

 

G兵器がいない、いや一機は必ず来るはずだだがそれでもこれは戦線を突破したやつがいるのか、とするとまさかな?

殿の部隊が14機程イリス艦機に戦闘を挑んでいるが、弾が貫通しないのだろう、パニック状態になっているな。

 

「戻って来たのは28機か引き際の見極めは良いが、こんな艦隊のど真ん中で銃撃戦が出来るか?出来ないよな?」

 

例え艦隊の中央にいなくともやりようはいくらでもあるが、使えるものは使うほうが楽だ。

それを良い事に、俺は敵艦を利用して攻撃を封じつつ一つまた一つと、命を刈り取っていく。

 

ビーム・ライフルのエネルギーの節約という実益の下、ライフルを向けると的確に反応する癖を見て、シールドの対装甲弾でコックピットを撃ち抜く。

反応が良いというものは考えものだな、正直に動き過ぎで簡単に動きが読める。

なるほどエースパイロットなのだろうな。

 

次第に俺への感情が怒りや憎しみの中に、恐怖が現れていく。それでも攻めてくるのは、戦士としての意地かそれとも恐怖を取り除こうとする執念か?

 

「まだ来るか、こいつはイージス。アスラン・ザラという男か。それに、シグーが一機出てくるか…。連携ではさみ撃ちする気か?」

 

「アムロ・レイ!貴様のその力少々見くびっていた!」

 

勝手に言う、勝手に人を評価するか!

 

「昔から知っているのに、今更どういう事か!」

 

突貫してくる機体が急制動し、俺が構えていたライフルから軌道をずらすのを俺は頭部シュテルンで牽制し、後ろから来るイージスの格闘に前転の要領で上下に対する攻撃をそらす。

そこに間髪入れずにシグーが銃撃を加えてくるのを、盾を斜めにする事によって跳弾させ、反撃と見せかけ側頭部から後方へビーム・ライフルを撃ち、イージスの頭部を破壊する。

 

良い反応だ、咄嗟に後方下へ機体をずらしたのだろうコックピットを狙ったのだがな。

まだ機体の反応が鈍いな、ジンよりかはだいぶマシだがこれで最速か、まだまだ改善の余地ありだな。

 

腕を動かす反動と脚部スラスターを吹かしてシグーからの切りつけを蹴り上げると、バックパックを全力で吹かし戦線を後退する。

 

「流石に囲まれたら厄介だからな。」

 

それでも着いてきたマニューバに上方に回避しながら、慣性の法則を利用して、左肩からするりと手元にビームサーベルが落ちて来るように誘導し、斬りかかってくるタイミングで起動する。これでコックピットを一瞬にして焼き潰す。

 

「出てこなければ見逃したというのに、何故出てくる!」

 

刹那、違和感を感じて機体を傾け違和感の方へライフルを向けビーム・ライフルを放つ。直後、違和感が弱くなるが1条のビームが機体横を通り過ぎた。

 

「バスターからか、良い腕だが判断が遅いな。」

 

4隻沈めた、23機落とした。そろそろ帰ってもらうと助かるが、無駄な殺しはしたくないんだが、向かってくるのなら容赦はしない。

 


 

「アナスタシア大尉!艦隊へと帰還せよ!バスター、デュエル、ブリッツが艦隊に侵入した。MS隊は直ちに艦隊へ」

 

まったく、敵に侵入されたみたいね。防空戦って言ったって、後は護衛艦くらいしかいないから、このままだとまずいわね。

 

「アナスタシア、残敵は任せてくれ。ヤマト少尉が危険だ、このままだと艦隊も駄目になる。」

 

「解ってる!」

 

機体の挙動も推進剤の効率もジンよりかは遥かにマシだ、でも。

ビーム・ライフルはエネルギー消費が激しすぎる、欠陥品も良いところだ。

待っていなさい、今すぐ行くから。

 

加速する機体と焦る心、あの船が降りられなきゃ連合に不利な戦局が続く……、いや待ってなんで?私達の機体があるのにどうしてそこまでしてアークエンジェルを…。

 

「アークエンジェルが降下を開始した、ストライク未だデュエル以下と交戦中。このままでは降下が間に合わない!」

 

くっそ、照準距離じゃない。マニュアルがこんなにもブレるなんて。

ガタガタと震えるマニピュレーター、ほんの微調整が難しい。

 

キタ!

 

引き金を引く、ビームはまっすぐに突き進みデュエルに命中することはなかった。

 

「クソが!」

 

その時だ、敵の艦隊の方から有効火力に満たないビームの1条が放たれる。何かに命中したのだろう、それが何かは解らないけれど。確かにデュエルの手元付近が明るく照らされていた。

 

アレはアムロさんの攻撃に違いない、あの距離から当てるのか。目で知覚できる距離じゃない、本当に特殊だ。

それを見てストライクが降下を開始するが、遅いアークエンジェルとは別の場所に落ちる。

 

追うようにして3機が降下していくのが見えた。

大気の中ではビームが減衰するから、どんどんと有効距離から離れていき私の帰還は無駄足に終った。

 

ちょうどその頃、敵の艦隊から発光信号が挙げられる。

望遠距離から見えるそれは、どうなっているのか解らないけれどアムロさんが隊長が仕事をきっちり終えたのは解った。

 

 

 


 

あいも変わらず凄まじい男だな、アムロ・レイと言う男は。敵の艦隊に放り込んでくれと最初に聞いた時は正気を疑ったが、きちんとやり遂げるとは。

 

メネラオスの席に背をもたれて、危機一髪と言ったところの修羅場をなんとか回避したが、今回は我々の勝利だろう。尤もアークエンジェルの降下先が問題であるから、完全な勝利とはならなかったが、それでも戦力の損失は免れた。

 

彼等がいたおかげで使い物にならないMA隊が使い物になり、私の想像通りに動いてくれた。このまま共に戦ってもらいたいのだがな。

 

良い部隊に巡り会えたと思う一方、アークエンジェルの降下角度が予測と違うことを知ってしまった以上もう後戻りは出来まいて。連合の勢力圏外だが、どうにかして援助出来ない物か。

 

「敵艦隊引いていきます。」

 

「こちらも護衛艦を六隻ほど食われたが、残存MAの集計を急げ、生き残りからはデータ収集の上すぐにアップデートに回せ。

MS隊の被害状況は?」

 

「全機健在です、一部駆動系に支障を来しているものもいますが、初期不良のようです。」

 

馬鹿者め、そんな事で大切な兵が死んだら元も子もないと言うのに。後で工場の方に文句の一つでも言ってやらねばな!

 

「アムロ機こちらに帰投してきます。それなりに時間が掛かりそうですが。」

 

「予備のMAに迎えに行かせよ、どれほど強くとも消耗はするものだからな。」

 

凄まじいな、機体性能もあるがあそこに単機で突っ込んでいって、360度敵に囲まれた挙げ句に敵を屠って戻っていく敵にしたら恐ろしいな。

ザフトにやられたことの意趣返しをできた事は素直に嬉しいが、それでもこちらの損害も馬鹿にならん。

やはり、MSの戦力化に待ったをかけた連中は馬鹿ばかりだったな。

 

「彼らの母艦は?」

 

「健在ですね、というよりも殆ど隠れていた様でした。確かに次の作戦がある以上船体を駄目にしたくないのはわかります。」

 

連戦になるだろうな、疲弊してすり潰されるように消耗させるには惜しいだろうに、どうしてこうも上という奴等は。

 

「提督、アークエンジェルの降下地点予想が出ました。アフリカ共同体です、最悪ですよあそこは虎と言われる男がいる。」

 

だが、生きているのだ。もしかすると、彼等は何かを成し遂げるかもしれない。

が、今は戦力を纏めることに集中せねばな。

 

 

 




う〜ん、戦闘は難しいゾッ!

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