その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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流星の瞬き

「そうか…君がどういう人間であったか、なんていうのは別にどうでも良いことだろう?

罪の意識とかそういうものがあるとして、今はこうして俺と一緒に孤児院の子供達を育てている。

そんな君が悪い人間なわけ無いだろう?」

 

アムロ・レイはそう言い放ち、アイラ・エヴァンスの告白を受け取った。

彼女の想いを彼は知っていて口に出さず、敢えて置いていた。

頭ごなし誰かを否定したとして、その人が本当に変わろうとしている事を咎めるなど、愚の骨頂であるから。

 

「私は貴方と番になりたいと、そう思っています。だからこうして、私は貴方に告白しているんです。駄目ですか?」

 

「駄目とかそう言うのは別にないよ、君の気持ちは正直に受け取ろうと思う。

僕自身君が嫌いではないし、どちらかといえば好きな方だからね。だから、その言葉をそっくりそのまま返すと僕と結婚してくれないだろうか?アイラ。」

 

彼女はひっそりと瞳から涙を流す、赤子の頃已来一度たりとも涙を流したことがなかった。己の瞳にしっかりと熱を宿して。

 

 

 


 


 

「おう、そっちの機体肘の関節部が曲がらないだ?おいおい、こりゃ大変だぜ。予備パーツ直ぐに無くなっちまうよ!」

 

格納庫の中はてんてこ舞いで、これでは静かに休憩すら出来ない始末だ。

この狭い艦の中に6機ものMSを収納するのは如何ともしがたいな。ジンよりはスペースに余裕が出来たのが幸いか?

修理が終わるまでは宇宙から降下するわけにはいかないな。

 

「後どのくらい掛かりそうだ?」

 

「後5時間いや、4時間半で済ませます。」

 

「いや6時間みっちりやって来れ、パイロット連中の休憩も兼ねるからな。その後、シートベルトをしっかり締めて休憩してくれ。」

 

速さがある事は構わないが、それで事故が起こってしまっては元も子もない。

だから、今から俺は文句をハルバートン提督に言いに行く。

 

艦橋に行くと第八艦隊が再編成を行いつつ、部隊の回収を行っている様子がリアル画像に映し出されていた。

艦橋のクルーも半舷休息させてはいる、これから一番大事なことが待っているんだ、そうしないと死ぬ。

 

「コンソール、ハルバートン提督に繋いでくれ。」

 

画面に提督が見える、顔は緊張が解れたからなのか想像よりも老け込んで見える。

疲れているんだろうが、文句を言ってやらねばなパイロット連中の気が晴れないだろう。

 

「おや、アムロ大佐か。ご苦労、君達のお陰で我々は勝利を得た。この戦争での大々的な勝利だ、きっと宣伝に使われるだろうが、将兵に勇気を与える事だろう。

それで、なんのようかね?」

 

「ええ、MS隊の中に機体の不具合を訴えられまして、どうも被弾していないのに、肘が動かないという事があったそうです。それで、厳重に注意してもらいたいと思いましてね?」

 

予想した言葉が、聞けたようで何よりだという感じだな。向こうも用意していた返答を言うことだろう。

 

「済まなかった、初期生産ロットというものは不具合は付き物だと思うのだが、さすがにこれでは戦力を失うところだった事に、私としても君達に謝らなければならない。」

 

「それは良いです、今後同じような事が起きないようしっかりと生産体制を整えてください。

それと、MS隊の早期の拡充をお願いします。でなければ、またぞろ同じ様に戦力をすり減らしますよ?」

 

本当に謝っているようで何よりだ、だが同時に俺達に対して心配をしている。

 

「もう降下するのかね?」

 

「いえ、6時間程時間を開けます。機体の修復が終わり次第降下を開始する予定です。」

 

「うん、君たちのような精鋭をこのような無謀な作戦に従事させるとは、上の考えている事は解らないものだよ。最悪の場合後退してくれ、こんな下らない作戦はやる意味すらない。」

 

概ね俺と同じ意見のようだ。やるのならもっと戦力を各潤させザフトがやったように奇襲に近い形でやるのが良いだろう。

 

「そう言えば、アークエンジェルは降下位置がずれたと聞きました。もしよければですが、一応助けに行くことは出来ますが?」

 

「辞めておきたまえ、降下したのは北アフリカだということは間違いない。砂漠の虎バルトフェルドの縄張りだよ、下手に行けば君達もやられるだろう。一応アークエンジェルにはMAとMSを一機ずつ付けておいてあるからな、上手く行けば戦力化するだろう。

君たちは地上でのMSの訓練はしていないのだろう?」

 

「シミュレーションでは幾つかやりましたよ、それに宇宙でイリスを受領する前に模擬戦を一通り。」

 

それでも良い顔はしない、俺だって出来ることならやりたくないからな。

 

「第八艦隊はこのまま君達の護衛を行う、君達が降下したのを確認してから艦隊を戻すつもりだよ。」

 

「ありがとうございます。イリスがどれほど隠密性に優れていたとしても、そうなってしまっては元も子もないですからね。」

 

提督は画面のなかでも何かを目に通しながら受け答えをしつつ、質問に返してくる。

やはり優秀な人物だ、准将でいることに甚だ疑問を持ってしまう。

 

「こちらも少し忙しくてね、通信終わっても良いかね?」

 

「はい、提督。帰還までの間、ご無事で。」

 

互いに敬礼をしつつやり取りを終える。

小休止だな、副長は艦の運用をするようだから俺に休めと言ってきた。自分だって休んでいないだろうに、よくよく出来た副長だよ。

 

……

6時間後、俺は3時間の仮眠の後、2時間資料を集め1時間で敵基地のブリーフィングを終える。

実際問題、6時間で敵の動向がどう変わるかという事もなく、戦線が膠着状態となっているカオシュンは山脈のおかげで、南部は大陸からの支援の下持久戦に徹している。

 

どんなにMSが強くても、細い蟻の巣のような要塞内部までは入れない。

かなりザフトも頭に来ているようだ。

だが、逆に言えばそれしか無いので反撃する事もできず、ズルズルと戦線は押されていくようだ。保って後1週間という現状を打破するために、俺達は大気圏に突入するんだ。いや、後6日か。

 

1日に2度目の出撃、最近は非常に忙しいのだが何処か俺は活き活きしているのだろう。

戦争というもので自分の存在を証明する、本当はなんの為に作り出されたのか、親父は黙して語らず死んでいった。

 

クローンというものは、エゴによって作られるものだがお袋と親父は閉心して何も解らない。

何も喋らない、それならば俺の存在意義はこの力はなんの為にあるのか、それを証明する為にも戦わなくちゃならないのか?

 

「艦長……そろそろ時間では?」

 

「うん?あぁ、そうだな。ハルバートン提督には宇宙のことはよろしくお願いすると、通達してくれ。

各員、これより本艦はユーラシア大陸東部に位置する台湾島、そこにあるカオシュン宇宙港奪還の為大気圏に突入する。

 

大気圏では断熱圧縮と大気摩擦によって船内温度が上がる可能性がある、各員持ち場の安全を確認してくれ。

副長、済まないが艦の指揮を頼む。」

 

「了解しました、微速前進、艦底部の融除剤ジェル100%。これより大気圏に突入を開始します。」

 

艦の外部カメラが地球を映し出す、青い海と白い雲があるそこに今俺達は足をつける。

次第に、画面の中にある船体下部の方が赤く赤熱しているのが確認できる。

 

艦体の状況は良さそうだな、亀裂もない。状態は100%、俺の機体は外に尤も近いカタパルトの上、そこから気密された外は見えない。見えていたら大変なことになるからな。

 

身体に少しずつ重力が掛かっていくことが感じられる。全ての生命の産みの親であるこの星に、俺達は惹かれて落ちて行く。

途轍もない速度だろう、微細振動があるな。

数分後振動が止んでいく。

 

「これよりMS隊は規定高度より出撃を開始せよ、出撃せよ。」

 

カタパルトハッチが開放されるとともに、大量の空気が流れ込み周囲の機材が一時凍りつく。

見えてきた、高度一万フィート規定高度だ。

 

「アムロ・レイ、ガンダム出るぞ!」

 

敵の巣食う島への強襲攻撃が始まる。

 


 

グググと引っ張られる様に機体が下へと叩きつけられるのを、スラスターを吹かせるように猛然と着地する。 

眼の前には半壊した橋のような建造物、所謂マスドライバーが存在していてそこかしこに、ザフトのMSがいた。

 

上から降ってきた私達に警戒が薄かった防空隊はなす術なく撃墜されていく。

 

「シミュレーション通りね、問題は!!」

 

眼の前が突然吹き飛ぶ、上からの攻撃あれがディン!

羽根なんて生やしちゃって生意気に空なんて飛んでいるけれど、そんなに速くないじゃない!

ビーム・ライフルなら、簡単に当たる!

 

目の端に映る景色、破壊されたリニア・ガンタンク這い出てきた乗員をその場で射殺したような後。

これはまるで、そうしている内に周囲にある小さなポツポツとしたものが何なのか見えてきた。

 

人の死体だ、それも一人二人ではない。夥しい数の死体が、連合の服を纏ったそれがところせましと並んでいる。それどころではない、まるでゴミの焼却前と言わんばかりに山に積もれているそれは全て人であったもの。その残骸。 

中には白い布を持ったものまでいたりする、それが意味するものは…。

 

「虐殺?なんでこんな酷いことを、これが正規軍のやる事か!!」

 

MSではない歩兵のザフトもいるけれど、それを蹴散らしながら攻勢を仕掛けていく。

空中では航空機やディンを足蹴にしながら空中を散歩するかのように、飛び回るガンダムが見える。

 

墜落したディンから白旗が上がる。私はそれに向けて銃を向け、こらえた。

ここで殺せば奴等と同じ穴の狢だ、怒りは抑えろ深呼吸深呼吸だ。

 

地上戦は宇宙なんかよりも遥かに凄惨に見える、それは大地が血を吸いドス黒く染め上がるように、重金属によって大地は黒黒として、生命の墓場のようであるからかそれとも。

 

腐りかけた遺体、どこいったのか解らないもの。

死体を啄む動物たち、それらがこの星の残酷さを象徴しているかのように。

 

 


 

目眩がする、どうしてこんな事になったのか地球軍の戦力を見誤ったのが敗因なのか、それともプラントを違法改造したのが不味かったのか……。全てだろうな。

 

あのとき、ユニウスセブンを改造しなければこのような戦争にはならなかった。

プラントは急ぎすぎたのかもしれない。

地球圏の工業製品はその殆どにプラントの影響が見えていたのに、今や地球の産業は盛り返してきている。

これが地力の差なのか人口の差というものか、我々は今や苦境に立たされている。

 

そんな事で頭を悩ませながら家に帰れば、つい最近やっと生存が確認出来た我が娘、ラクスが私を出迎えてくれる。

この娘は利口だ、私なんかよりも遥かに政治の事を理解できている。この戦争の帰結というものも、私よりも遥かに真剣に考えていることだろう。

 

「お父様お帰りなさい、どうかされたのですか?」

 

「あぁ、ちょっと心労が祟ってなプラントの今後が見えなくなってきているんだ。」

 

数日前、ラクスが帰ってきてからたった数日後吉報の後に凶報が届いたのだ。

これがどれ程堪えることか、最高評議会の面々は眼の前が真っ暗になった事だろう。

 

「お前にだけは話す、数時間前地球の低軌道上で第八艦隊と追討艦隊の戦闘があったそうだ。

結果は、見事なまでの敗北戦力の8割を失い、敵の戦力は2割程しか削れなかった。

新型のMSが確認できたと、しかもビーム兵器を標準装備してだ。」

 

「アスランは大丈夫だったのですか?」

 

なんと言えば良いのだろうか?

 

「アスランは軽傷ではあるが負傷したとのことだ。ラクス、この戦争もう1年も続かないだろう。プラントは敗北する。」

 

それを聞いたラクスは何かを考えるように顎に手を当て、その美しい顔で思考する。この娘の頭脳があったとして、1人の人間にできる事には限界はあるのだ。

 

「お父様、アムロ・レイと言う方はご存知ですか?」

 

「アムロ・レイ、あぁ。今、国防委員会で白い悪魔と噂されている危険人物か?そうか、アークエンジェルで会ったことがあるのだな?」

 

娘は首を縦にふるとその顔で笑みを浮かべて、その人物の事を嬉々として語る。まるで指導者を見つけた信者のようだ、この娘はSeedなる宗教に傾倒しているのだろうか?

 

「もし、そのアムロ・レイなる人物がSeedを持つとして、何故戦争の当事者となるのだ?」

 

「……、御自覚が無いのかもしれません。もしそうなのでしたら、それこそ救いではないですか?」

 

ふふ、何を行っているのやら。これでは旧世紀の唯一神の宗教に出てくる救世主ではないか。そんなもの信じても、失望が待っているだけだというのに。

 

「ラクス、宗教というものは安らぎのためにあるが、それに染められてはならない。全てがそうあるべきというのは、人の傲慢の象徴だからだ。」

 

「解っていますわ、所詮は神を語る道具でしかないですから、ですが可能性というものがあるのなら、信じて見たくなるものです。」

 

………、いや待て。私は似たような事ができる男を知っている。それも、私がまだ若かりし頃ジョージ・グレンと共にその男と話をした事がある。

人の未来の行き着く先を、その男は絶望を持った顔で話をしていた。

当時の私と15程離れていた年齢のその男は、名を何と言ったか?

 

ジョージ・グレンですら、その男の真意を計り兼ねていたが、それでも人の行き着く先に対してその男は雄弁に語ったのだ。

我々コーディネイターではなく、自然に人が至る道を模索しているというその話を、確かそれは人の新しい形「ニュータイプ」そう言っていただろうか?

 

今、あの男は何処にいたか?プラントの最初のコロニーであるZodiacの一角、誰も近づかない小さな屋敷に使用人とともにいただろうか?

 

「ラクス少し家を開ける、すまないな。」

 

愛娘によって思い出せたが、果たしてあの男を信じられるか?

 




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