その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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外交

二人にとってクローンというのは妥協の産物であった。

しかし、彼女はそれでも自らの大きくなるお腹に対して愛着を持って接した。

その姿は正に子を愛する母親の如し、しかしアムロにとっては非常に複雑な気分である。

 

クローニングにあたって、彼は自らの細胞のうちの一つを培養し、そこから胚を作り出しそれを彼女の胎内へと注入したのだ。

つまり、彼女の腹の中にいるのは自分自身、妙な考えが頭をよぎるが彼は決めた事を曲げるような男ではない。

 

だが心配にはなるのだ、自分は立派な父親になれるのかと。彼にある父親像は自分を15まで育ててくれた今は亡き父親の姿。父親の名を借りて生活する日々の中、彼は自分なりに生まれてくる存在を愛そうと静かに誓った。

 

 


 


 

アークエンジェルは僕たちを乗せてゆっくりと、でも確かに僕たちの故郷であるオーブのある方へと進んでいる。

でも、僕たちはオーブに寄ることは出来ないだろうって、そう言われた。

 

それはそうだろう、僕たちは地球軍の兵隊(外国の軍人)だから、僕達の船が入ったらそれは領海侵犯とかいう、国際的な犯罪行為になるのだと、理屈込みでナタル中尉に言われた。

正直、その事実にほっとしている自分がいる事に恐怖を覚えてる。

 

僕はいったいどれだけの人をこの手で殺してきたのだろうか?最近夢見は最悪で、聞いたこともない人の声が聞こえてくる。お前もこっちに来いって、お前だけ何でのうのうと生きているんだって、真剣に悩んでる。

まだ眠れなくなるなんてことは無いけれど、このまま続いたら僕はいずれ僕ではなくなってしまうんじゃないかって、そう思ってる。

 

1人で悩んじゃ駄目だって、解っているんだけれど皆に心配をかけたくなくて、どうすれば良いんだろう。

こうやって展望室で外を眺めながら、ぼ〜っとしているのが僕の性に合っているのに。

 

「キ〜ラ、何やってんのよこんなところで。」

 

「え?あ、フレイどうしたのこんなところに来て。」

 

悩んでるの見られたかな?

 

「なんか悩んでそうだなぁって、そう思っただけよ。で、たまたまアンタがここにいるかもなぁ〜なんて思っていたら、本当に偶々ここに来たって訳。

最近、勘が良く当たるのよこれもパイロットとして、熟練してきた証かしら?なんて。」

 

「え?いや、そんな勘とかそういうの僕は全然気にした事ないし、そう言うの感じた事ないよ。

えっと、たぶんだけどムウさんのあのなんて言ったけ?」

 

「空間認識能力でしょ?聞いてみたのよ、一応一番私達の中で詳しそうだから、そうしたらなんか曖昧な答えしか返ってこなかったからよ。」

 

空間認識能力ってなんだろうか、僕にも一応有るというか。人にはそれぞれ差異はあるけれど、絶対に持っているなんて事は聞いたことがある。

でも、フレイから感じるのはやっぱりムウさんのそれにとっても似ているような……。

 

「そんな事言ったって解らないものはわからないからしょうがないわよねぇ。

ねぇ、キラ。私ね、サイとの婚約白紙にしてもらうようパパに言おうと思うんだ。」

 

「え!?なんで、何かあったの!?」

 

フレイはあっけらかんとしつつ、外を眺めてる。

 

「あったじゃない、私がパイロットになって戦争してる事。

パパは何で私がパイロットなんかやってるのか知らないわ?勿論サイにも話してない。そのせいでね、サイに私の事解ってもらえなかったの。

 

心配なのは解るわ?

でも、私はキラに護ってもらってばかりだったから、自分でも見て見たかったの、キラがどんな思いで戦ってるのかって。

 

パパが殺されそうになった時、私はアンタを頼ったわ?自分では何もしないでのうのうと生きてきたツケが回ってきたんだって。

だから今は、あの時とは違うってね?

気が付いたら、キラの事ばかり考えてたのよ。」

 

え?それってどういう事?と聞き返そうとすると、僕の足を蹴って何処かへと走り去っていった。

 

「何だよ、はぁ~。」

 

フレイの事は好きだけど、フレイが僕の事どう思ってるかなんて解らないし、今のだってなんか意味があったんだろうけど。

フレイはフレイで大変そうだし、最近はなんかカガリが僕にちょっかいかけてくるし、僕って女難の相があるのかな?

 

でも、こんな事考えている暇も無いのかも。行かなくちゃね格納庫に。

 

 


 

航路図に日程が書かれている。

この艦が改修されてから性能が大きく変わった、いや性能だけなら良かったんだがどう考えても同じ船だとは思えないんだが。

 

 

【挿絵表示】

 

 

いったいどうやったら船体の形状をこんな短期間で作っているんだ?俺が知らない間に、連合の建艦能力は数倍にでもなったのか?

それに妙だ。これで単独で大気圏を突破出来ると?

という疑問を抱きながら、今後の目的地であるオーブへと向かっている。

 

戦時中立を謳ったオーブに何故向かうのか、それはそこがアークエンジェルとの合流地点であるからという事だ。

通常、オーブの領海に入る事は戦時国際法に照らし合わせれば、これは違反ギリギリの状態だ。だが、同様の内容でザフトの申し入れを拒否しなければ、それはまた中立と言えるだろう。

 

 

勿論、政府筋での話し合いがあったのだろうが、その為に外交官を船に載せるか、それでも良くもオーブを説き伏せたな。

きっと裏でアズラエルが暗躍しているのだろう事が解る。

あの男はビジネスというテーブル上の話し合いでなら、敵を作ろうとも説き伏せてしまうような、妙な安心感があるのだ。

 

「後数時間か、2日という旅の中に敵の襲撃が無いとは言え、単艦での航行は気が抜けないな。」

 

アークエンジェルはこんな感覚で、休み無く動いているのだろうか?

数ヶ月前の俺達のように、いつもピリピリとした緊張感の中で動き続けると言うことは、並の軍人でも参ってしまうぞ?

 

「艦長、間もなくオーブの排他的経済水域に入ります。船足を落として、オーブの艦艇とともに航行するようにとのことです。」

 

「了解したと言っておけ、それと武装は全て格納しておく事有事の際以外は弾一発だけでも恐ろしい未来が現れることがあるからな。」

 

外に出ている主砲諸々を格納し、見えてくる艦影を確認する。

旧態依然とされた護衛艦が姿を表し、こちらにゆったりと寄り添うようにエスコートする。

 

「あの」

 

「なんだい?」

 

「どうしてオーブは急に態度を軟化させたのかと、思いまして。」

 

疑問に思っている事を良く聞く、スターシャ彼女の良いところだな。

 

「さてね、オーブで人気のウズミナラ・アスハは他の氏族からは、嫌という程敵視されていると噂があるよ。アスハは、オーブにとって最も重要な存在なのだろうな。

ただ、その剛胆な政治手腕を国民が皆支持するから、他の氏族は手出し出来ない。

 

神輿としては重すぎる、なら娘を担ごうかと言うが、昨今娘の動向が摑めないそうだ。おそらく、連合の情報部はその動向を掴んだのかもしれない。

あくまでも、俺個人の見解だ。」

 

おそらくアズラエルは、ブルーコスモスを使って世界各地から情報を集積し、それの中で似た人物をリストアップしたあと自ら確認したんだろう。

アイツは社交界にも出る事が多い、必然的に顔見知りになる事は充分に考えられる。

 

このまま港区へか、いったい何を話すのか?

 

 

……

 

俺達は所詮、水夫なのだろう。

港に到着しても下船は許されず、そのまま港に繋留された艦に残り夜の帳を眺めている。

数日が過ぎた、陸の上で何が起きているかなんてこと解るはずも無い。

日夜出勤していく外交官を尻目に、いつ出港しても良い様にして置くくらいしかない。

ワインの一つでも持ってきてくれれば良いんだけれどな。

 

艦長室に籠もり、1人黙々と書類仕事を片付け今後の計画を練り直す。

 

アークエンジェルが最後に確認されたのはマラッカ海峡、既に突破に成功したというのは新しい情報だが、しかし必ず何処かしら損傷しているのは明白だろう。

そして、必ずアークエンジェルはオーブ近郊部を通るだろう。

 

コンコンと言うノック音が響く。

 

「入っていいぞ。」

 

「失礼します。外交官のサミュエル・ジャンクです、貴艦の長期滞在並びにアークエンジェルの入港許可を取り付けました。

交換条件ですが、艦から幾人か技術者陣を選抜しオーブが独自で開発中のMSを手伝えと言うことです。」

 

外交官というものはそう言う仕事をする連中だと言うことは充分解っているが、それにしても急だな。

 

「アークエンジェルを発見後速やかに救援をしたい場合はどういう態度をすれば良い?」

 

「急な出港は出来ませんが………、この様に文書の偽造は可能です。何分向こう様も慌てていたご様子でしたから、簡単に取り次げましたよ。

ウズミでない相手など、正直どうとでもなります。」

 

舐め腐っているが事実なのだろうな。

 

「了解した、ではアークエンジェルを発見した際は出させて頂くが構わないな?」

 

にこやかにそう言う顔をする男に、薄っすらと不気味さと謙虚さを感じながら。夜は更けていった。

 

翌朝早朝から騒がしい艦内に一つの怒号も飛ぶことはない。全員がやる事を解っているのだ。

アークエンジェルが発見されたという知らせとともに、艦内は抜錨する。

その先に待っている戦場に向けて、傷つく翼を折り天より引きずり落とさんとする、ザフトを倒す為に。

 

 

 


 

暗い暗い星々の瞬く中それはまるで彗星の如く動き、周囲に存在する障害物などあってないように動く、機体の挙動を確かめるように動いていく姿は最早機体の限界を突き詰めるばかりの動きだ。

 

スラスターの微調整、AMBACの一挙手一投足にその無駄が存在しない。

人としての限界値を突き詰めるそれは、たとえコーディネイターであろうとも追随は許されないだろう。

 

内部に座る老人はその挙動に不満げだ、自らの肉体の衰えと技術力に対する限界というものに対して、怒りを持つように淡々と操縦していく。

 

「反応が鈍いな、もっと改善できないか?」

 

「機体の追従性は現在限界値になっています。これ以上引き上げる為には、何かしらのブレイクスルーを待たなければならない。」

 

「そうか……、パイロットスーツの方の調整はどうだ?」

 

彼の着るパイロットスーツは搭乗者の肉体を外部的に慣性からの保護を行う機構を取っている。

肉体の血流に対する、加速によって生じるGは並大抵ではなく通常のパイロットならば既に失神しているだろう。

 

しかし、彼はそれでも不満を持っているということはこの老人の過去、どれ程の存在だったというのか?

 

「はい、現在取得しているデータから新しく再度作り上げます。機体の反応速度に関しては、努力としか言いようがありません。」

 

アルバート・ハインラインはこの男の存在を訝しんでいた。

いくら尊敬するシーゲル・クラインの頼みとは言え得体のしれない人物に、プラント全ての技術の結晶それを関係させて良いのかと。

 

「ふん!これではまだまだ奴には勝てんよ。

実戦データが欲しいそうだな。ならば、やってやれない事もあるまい。」

 

金髪の老人、シャア・アズナブルと名乗る男はそう言ってMSを試していく。その動きには喜色が浮かんで見えた。

 

 

 


 

身体を蝕む痛みの中、深い微睡みの中から引きずり出されるように、私は目を見開く。

低軌道会戦での敗退とともに私に待っていたのは、長期間の休暇であった。

 

いや、敗北を隠す為の生贄という方が正しいのだろう。

嘗て私が望んだ、日常という夢のような光景の中朝食を済ませ未だに眠りについている私の弟分である、レイの願いをみる。

 

幼い頃の私と全くと言って良い程のその顔を見るたびに、嘗ての地球での暮らしがフラッシュバックする。

 

今の私のように絶望に濡れぬように育って欲しいと、あの心の芯が強い友人のように育って欲しいと、そう思わずにはいられない。

 

今日は朝から訪問者が来る、ここプラントでの私の友人であるギルバート・デュランダル。

私の主治医でもある男との、定期検診。そして、私に合わせたい男がいるという。

それがいったい誰だと言うのだろうか、それが重要だと言うのだろうか?

 

「失礼する。」

 

ギルバートの声が聞こえるが何処かよそよそしく、その口調はやけに格式張りまるで別人のようで、私の勘もそう告げている。

いつものように部屋で待っていると、その声の主が二人入ってくるではないか。

 

声の高さは全くと言って良い程に同じにしか聞こえない、だがギルバートのようなマッドサイエンティストと違い、眼の前の男からは私以上の死への渇望を感じた。

 

「君がラウ・ル・クルーゼ君か、私はシャア・アズナブル。君の力を少し借りたい事案があるのだがよろしいか?」

 

眼の前の男は要注意しなければならない、もしもレイに何かあれば私はこの男を全力を持って殺しに行くだろう。

そんな思いが、思考を過る。

 

それを知ってか、眼の前の男は

 

「良い目をしているな」

 

と、()をそう評した。

 

 




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