その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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救援

アムロ・レイは必ず一度は宇宙を見上げ、何かを確認するかのように眉間に皺を寄せる。

その仕草はまるで癖のようで、しかしそれを意識を持ってやっているという事は、本人の言葉である。

 

「ねえ、本当に何も無いの?いつも空なんか見上げても、星とかコロニーが気になっているの?」

 

「いや、気になってるものがまだ宇宙にあるんじゃないかって、勝手に探っているだけだよ。何よりもう見つけたから、監視くらいかなって。それに、今の俺は君の下から離れるわけには行かないからね。」

 

そう言うとアムロ・レイは彼女の大きくなったお腹に手を当て、何かを思う。

そしていつものように机に行くと、線を引くのだ。

 

静かにただ線を引く音だけが響き渡る、ただ宇宙の事を思いながら。

 

 


 


 

艦橋から雲がながれる様子が見える。しかもその速度はゆったりとしたもので、加速して外を眺めるそれとは一線を画す絶景に一同驚愕している。

驚愕しているのは全く別の理由なのかもしれないが、景色が絶景なのは間違い無い。

 

「この機能……なんというか、今までの常識がひっくり返りますね。まさかこんなSF映画みたいな。」 

 

「擬似的な反重力システムと言うべきだろうな、なるほどこれなら確かに大気圏を離脱する事も可能だろうな。だが、問題が無い訳じゃ無いんだろう?」

 

単独で速度に依存せずに空を飛ぶ、そんな夢物語のような光景が広がるが、それでも俺達にとってそれは良いことばかりではない。

 

「えぇ、浮遊中は前方の連装砲が使用するのに制限があるそうですね。

尤も、大気圏離脱程の出力のトキくらいですかね?大出力を使用するのは。

高度2000フィートを飛行する位ならそれ程使いはしませんよ。

ただ、お客さんに見られないようにするのは少し難しいかと。」

 

「それは無理だろうな、しょうがない。アークエンジェルと合流するまでは、通常航行をしよう。

水の抵抗が増えている分、推力を少し上げるのがベストか?」

 

ゆっくりと水上へと降り立つイリスは、システム上の都合から船首の水の抵抗が増えたものの、この浮航システムのお陰で船が浸水することが無いのが唯一の救いか?

 

「アークエンジェルの未来予測位置はどの程度だ?」

 

「このまま前進し続けると、接触するのはマラッカ海峡を超えたちょうどオーブより南西1500キロの地点ですね、但しこの位置はカーペンタリアからほど近い事を考えますと、敵の襲撃を受け撃沈している可能性も……」

 

「それは杞憂だよ、あの部隊を血祭りに上げたなら嬉々として宣伝するだろうさ。

それよりも、襲撃前に到達できれば良いんだがな。」

 

浮上航行をする際、システムの影響でレーダーが完全にホワイトアウトするという、非常に厄介な性質を持っているからこそ、速度を出せないとはな。これは、敵にも適用出来るのか?

 

「副長、俺はMSデッキにいる。アークエンジェルが確認出来次第艦をアークエンジェルに向けて全力航行してくれ。

もしもの場合は、狙撃するからエネルギーケーブルをインパルス砲に直結して置く。」

 

「艦の主砲でも良いのでは?」

 

「そんな事してアークエンジェルに当たったらどうなる?俺達の艦の武装は貫徹力を重視しているせいで、最悪の場合ラミネート装甲すらベニヤのように撃ち抜くぞ?」

 

だったら俺が手ずから狙撃した方がもっとマシな戦果を期待できるさ。

 

 


 

 

ずず〜んと水柱が立ち上り、白亜の船がその奥から姿を表す。

アークエンジェルは大規模な襲撃を受けていた、それこそザフトを、カーペンタリア基地を上げての総攻撃。

部隊規模に似合わない戦果を上げてきた僕たちに対する、報復攻撃。

 

機体性能も船の性能も何もかもが僕達が上回っているのに、数で押されていく。

幸いな事は、アスラン達が僕達を襲ってきていないくらいなのかもしれない。

 

僕もフレイも、アークエンジェルから引き離されていく。どんなにこの機体が硬くても、バッテリーが切れればこの機体は一秒とも保たないかもしれない。

 

「なんでこんなにいるのよ!」

 

2機のエールストライクで、空を飛ぶ相手と戦っても今度は水中から相手が現れる。海と空の波状攻撃がアークエンジェルを襲う。

 

本当になんでこんなに相手が来る……まさか、僕達に救援が来る前に沈めるつもりなのか!

 

ずんと、機体に衝撃が走る。エネルギーがこのままだとまずい。

 

「ヤマト少尉、今グラスパーがそっちに向かっているそれまで持ち堪えろ!」

 

そんな事

 

「言われなくたってー!」

 

視界がクリアになる、この感覚。最近頻度が増えている気がする。

敵の動きが酷くスローしていて、僕に向かっている弾がゆったりとしている。

どこにどう動けば最低限の動きをすれば良いのか、そしてやむを得ないものだってある。

 

致命傷にならない程度、エネルギー消費の少ない部位ならまだなんとか数発受けられるはず!

 

「新たな敵影を検知これは…!デュエル、バスター、ブリッツ、イージスです!」

 

こんなときにまで来るのか!

アスラン!

 

「フレイ!アークエンジェルに戻って!このままだと!」

 

「解ってる、解ってるわよけど!これじゃあ。」

 

もしフレイがここを離れればきっと僕への攻撃が集中するのは間違いない。そうなったら、僕はどうなるんだろう?

フフ、なんでだろう怖いのに、笑いが込み上げてくる。

 

「行け!フレイ!」

 

僕はディンに蹴りを見舞い、それに合わせて攻撃してくるアスラン達に向き直る。

機体のエネルギーはもう殆どない、けどここで僕が引けばアークエンジェルは、皆は殺される!

 

くっ!機体性能が戦力の差が開く、このままだと。

執拗に僕を狙うデュエルが、うっとおしい。お前なんかに落とされてたまるか!

 

そして、目の端に一瞬だけチラリと見える。アークエンジェルの艦橋眼前に迫るイージスの姿が、エンジンを狙うグーンの姿が2つフレイはグーンに気を取られアスランの事が見えていない。いや、それどころか敵が多すぎて足止めされているんだ。

 

アスラン、それはそれだけは!

 

「やめろー!!」

 

艦橋の中が見えた気がした、皆がいるのが見えた気がした。僕は皆を護れないのか!

ライフルを構えたイージスの姿が映り込み、憎しみが心を覆いそうになる。

 

 

 

……その瞬間イージスと艦橋の前に一条の光が真横より飛び現れ、イージスのライフルを破壊した。

衝撃波は艦橋を叩き、ビリビリと震えているように見える。それでも、イージスは回避の為に艦橋から一時後退すると、周囲のディンが一機、また一機と火を吹きながら落ちていく。

 

「キラ!おい、換装するぞ!」

 

「はい!」

 

グラスパーからランチャーパックを受領し、その隙にフレイが開けてくれた道から今度はアークエンジェルの上に降り立って、機動砲台となって敵を威圧する。

薄っすらと水平線上に見覚えのある艦のシルエットが映りだす。

あれは、アムロさん達の艦によく似ている。

 

バスターの砲撃がシルエットを見せた艦からの攻撃で打ち消される。

途轍もない射撃の精度で僕達を援護してくれる。

新手の出現に敵も動揺しているみたいだ。

 

「ヤマト少尉、アルスター准尉。13部隊が見えた、このまま前進し部隊へと合流を目指す!

なんとか保たせてくれ。」

 

ナタルさんがそう言って僕達を鼓舞する。どんなに繕っていたとしてもやっぱり怖いものは怖いのだ。

特にさっきみたいな九死に一生を得たような事が何度も起こったら心臓が止まってしまうかもしれない。

 

「13部隊からMS一機が分離、グラスパーもです!あっ!凄い、スカイグラスパーを土台にしてる!」

 

見覚えのある機体、あぁ僕たちはやっとここまで来たんだ。

こんなところまで来たのに、死んでたまるか!

アスラン、悪いけど僕たちはまだ前に進まなくちゃならないんだ、もしも僕の前に立つというのなら

 

「君は僕の敵だ!」

 

もう昔には戻れない。けれど、いつかまた君と友達として出逢いたい。

 

 

 


 

アムロさんが数発撃つと、今度はライフルを戻しカタパルトへと足を付ける。なにする気?

 

「スカイグラスパーを出してくれ、アレを足場にする。」

 

嘘でしょと思う間もなく

そう言ってアムロさんが狙撃後、すぐにカタパルトに接続して出撃していく。

全く、いい加減な人なんだから、出撃するならするで私達になんか言ってほしいんだけど。

 

「私達はこのまま艦で向かいつつ、実弾兵装を携帯して海中の敵を狩るよ。」

 

カタパルトからスカイグラスパーが出ていく、ストライカーパックが無くても充分な戦力になる高級機。

アムロさんが足場にするという意味は、スカイグラスパーの上に機体を載せるという事だ。

 

上手く載っている、だけどスカイグラスパーの推力って凄いんだね。

 

スカイグラスパーの配備数はお世辞にも多いという訳じゃない。それどころか、艦内の容積の関係上MSを犠牲にする訳には行かないからやっぱり一機しか積めないのだ。

改装するならもっと大きくしてほしかった。

 

数分後、アムロさんの戦いが始まった。相変わらず、スラスターの活用が上手い。ディンを足場にして、あっデュエルの眼の前に行った。うわっ、首が飛んでるしそのまま海中に落ちた。

怖いなぁ、デュエルって汎用機だけど水中の水圧で最悪の死に方するんじゃないの?

 

こういうときにSFSが欲しくなるよね。奪うか?

 

「おいおい、大尉。それは辞めた方が良い、敵だって馬鹿じゃないさ。それに、自分で出した命令を破るってか?」

 

「じゃあこうやってずっと指を咥えて見てろって?別に命令もないしさ。」

 

でも、地上戦はやりづらいな。特にこう言う海上だとMSの強みが出し辛い。

 

「スラスターで加速し、水中の敵に対して攻撃を開始せよ。

グーンの数はそんなに多くない、アークエンジェルは機関を損傷しているため速力が出ない、攻撃を開始せよ!」

 

命令が来た。これで、思う存分に行けるね。

 

「アナスタシア、リベレーター出るよ!!」

 

グッと背中が圧迫され、機体が宙を舞スラスターを吹かす。そして、アークエンジェルのすぐ近くにまで到着し水中へと機体が沈む。ねっとりと絡みつく、海が私達の眼前に広がった。

 

 

 


 

私達は眼の前に現れた友軍にホッと胸をなでおろし、今まで私達がどのような戦闘を切り抜けてきたのか簡潔に報告する。

 

「良く頑張ったね、これから向かうのはオーブの領海内だよ。これが入港許可証で、これが君達の身分証だ。」

 

「待ってください、オーブは仮にも中立国のはず。連合に加入したなどと言う事を聞いたことがありません。」

 

「良く知ってるね、俺も門外漢だからなんと言えばいいか。高度に政治的な話でね、君達にも少し協力してほしいことなんだが、良いかい?」

 

彼が説明する事柄を一字一句全て理解するに少し時間を要するけれど、要するに私達は連合に売られたのだ。

技術実証機としてのストライク、しかし彼等の存在が私達の重要度を低下させそのお陰でこうやって支援隊が来たという…。

 

喜んで良いのか、それとも悔しがったら良いのか。

私はG計画に参画した人間として、これ程の侮辱を感じた事は無いと思う。

私達の技術と血と汗と涙の結晶である成果だけ横取りされたような。

 

「それはどういう事だ!」

 

艦橋に無断で入ってくる声が聞こえ、私の思考の邪魔をした。

 

「どうとは?君は軍属じゃないようだが、ここは軍艦の中だどうやって潜り込んだ?」

 

「彼女は、私達が降下した地域の反ザフト勢力である明けの砂漠の関係者です。

故有ってここまで同行しているのです。」

 

「おいおい、だから勝手に入ってくるなって。何度言えば解るんだ?お前は、おいお目付け役ももっとしっかりだな!」

 

ムウが呆れ半分怒り半分で抗議しているのは珍しい、たぶんこの前行方不明になったのが相当頭にきたようね。

 

「どうしてお前達がオーブへの入港許可証なんて持ってるんだ!オーブは中立で、戦争になんて!」

 

「そうか……なるほどな。君がカガリ・ユラ・アスハか。なるほど、確かにお転婆娘だな。

だがな、他国の要人が身分を隠して軍艦に乗艦するという事がどういう事か考えたことはないのか?

政治利用されても文句は言えないぞ?」

 

はっとした、どうしてそんな事に気が付かなかったのか、他国のお姫様の名前なんて覚えたことが無かったから。

 

カガリさんが、苦虫を噛み潰したような表情をしながら、ふるふると震えている。

というよりも

 

「え?カガリ・ユラ…アスハ?俺等の国のお姫様じゃん、あっ!そう言えばそうだよ!なんか既視感あったけど謎解けた!」

 

「俺もだよ、そういう事か〜!」

 

呑気にCICのオーブ組はそんなことを言っている。

 

「アンタ達ね、こんな事もわからなかったの?私は気がついてたんだけど、と言うか私社交界で一度あった事あるから。」

 

「う…、お前約束守ってくれてたのか?」

 

「だって可哀想じゃない、正体明かしたら何されるか解ったもんじゃないでしょ?でも、解っちゃったんだよねぇ」

 

「別に取って食ったりはしないよ俺は。いまのは聞かなかったことにする、オーブは敵に回したくないからな。」

 

彼の善意とオーブへの暗躍、そしてこのカガリさんの所業など、私の胃はキリキリと音を立てた。

 

 


 

「すげぇ〜、連合の軍艦だ!見てみてよ、あれ良くニュースに出てるアークエンジェルだろ?

それと……あれなんだろう?見たことないなぁ」

 

少年達はそんなものを目にする。

機密性の高い事象であるものの、島国であるこのオーブ全ての目を封じる事など出来はしない。

ならば、とオーブは受け入れ連合との関係を悪いものとしないために、彼らを受け入れる。

 

それに対してプラントがどう思うのか等、想像に難しくないことなど解るだろうに。

覚悟を決めたものが、このオーブにはいるのだろうか?

 

 

一方、プラントは現在進行系で戦力の立て直しに躍起となっていた。そこに1人の老人の指示が入る。

機体の統合整備計画というものだ、各機体の互換性の無さを指摘した彼は、これ以降プラントに対して一定の発言力を持つようになる。

 




戦闘描写が段々と薄くなっていく……文字数増やそうかしら?まあ、地上戦と言うか海上戦に対する描写がseedでも結構薄いので、想像が難しいのかもしれない。
水中戦なら……、MAは連合のほうが進んでるしなぁ。


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