その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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平和

日々大きくなっていく彼女のお腹を見ると、心配になってくる事がある。それは子どもの寿命についてのことだ。

 

クローンという存在の寿命について、それは長年の疑問というべきもので、結論を先に言ってしまえば個体差があると言うくらいだろう。

 

テロメアが直接関与するもの、それは細胞分裂と言う一点であり、環境によってはテロメアは再生したり減少したりする事がある。 

人の遺伝子というものは以外にも強固なもので、不純物として受け入れられた性質は、次代には受け継がれなくなっていく。

 

それはトウモロコシ等の野菜のF1品種での事例が顕著だろう。

そして、クローンに最も近いものはじゃがいものような関係性で、じゃがいもは種ではなく芋の部分で増えたりする。

クローンと同じように。

 

従って、同じ病気にかかるリスクがあるのだ。そして、ガンのリスクが通常よりも高い。

 

ならば、生活環境によって通常の人間と同じ寿命に固定化することだって出来ると、このクローンとして産まれてくるであろう我が子の寿命に、アムロ・レイは断じた。

 

 


 


 

地球軍の軍艦がオーブに来ている。

そう、報道されるのも珍しく無くなってきた昨今、俺達の役割は充分に果たしていると思う。

アークエンジェルがオノゴロ島で修理している間、俺達はカモフラージュするかのようにこうやってお茶を濁しているというわけだ。

 

オーブという国は国土面積が狭くビル群というものも、取り分け大きいという訳では無い。

しかし、狭い国土を有効活用すべく殆どの島は地下を有効活用しているという。

 

俺達の眼の前に鎮座するこのアストレイと言われる実験機は、オーブの機体だ。

フレーム構造や駆動系から連合の匂いがする事から、技術を完全に盗まれたようだ。

 

「どうでしょうか、現状我々にはこれくらいが限界でした。」

 

「エリカ・シモンズ大尉……一尉でしたか?

確かに良い機体だとは思いますよ、ですが一点だけ言わなければならないですね。」

 

俺達はオーブが開発しているこの機体の建造オブザーバーとして、開発を手伝う契約となっている。

もっと言えば、オーブ国内を調査し出来ることならば連合のシンパを増やせとでも言うのだろうがそれは無理だろう。

 

「この機体は軽量高機動をコンセプトに試作されているようですが、これでは新兵は育ちませんよ?」

 

「新兵が育たない?とはどういう事ですか?」

 

「戦争というのは必ず紛れ当たりというものがあります。所謂誤射などもその典型例ですが、この装甲ではあらゆる角度から撃たれた時、一撃を耐えることができないかもしれないということです。一部のエースが乗ればダガーよりも良い機体ですが、それ以外の生存性に関して言えばダガー以下ですね。」

 

そう言う俺の意見に対してなるほど、と頷き何かを書き留めている姿を見るに、この人物はかなり生真面目なタイプだな。

 

「そう言えば、貴方の副官である彼女。たぶんですけれどコーディネイターですよね?

噂に良く聞くブルーコスモスである貴方が、どうしてコーディネイターを副官に置くのですか?」

 

どうやら、アズラエルは俺を本気でブルーコスモスに仕立て上げるらしい。中立国の人間にまで浸透しているとは、恐るべき広告力だな。ここは話を合わせるべきか?それとも。

 

「貴方がどうしてコーディネイターである事を隠しながら、ここオーブでこうやってMSを開発しているのか、深く詮索はしませんが敢えて言うなら、様々な視点の為だよ。

敵を知り己を知れば百戦危うからずと言うだろ?」

 

俺の言葉に表情が少し曇る、そんなにブルーコスモスは嫌われているのか?

最近の広告では地球のコーディネイターへの差別をやめるようにという、そう言う広告も出しているのだが……。

中立国というのはそういうものか。

 

「そう……ですか、そうですよね。」

 

 

落胆したという事か、希望を見出していた相手がそんなにも良い存在ではないとそういう答えか。そもそも、同盟を組んでいない以上、自分の素性をあまり表に出す訳にはいかないからな。

 

「それでも、希望は持っているよ。この戦争が終われば色々と蹴りが付くこともある筈だからな。」

 

エリカ・シモンズ。軍人としては少し顔に出すぎるが、やはり技術士官とはこういうものなのだろうか?

 

「さっきも話したように、このアストレイは素人向けではない。逆に言えば、練度を上げたものなら相応の機体ということだ。

少数精鋭なら、活躍の機会も増えると補足しておくよ。

そして、そういうパイロットを育てるのも俺の仕事さ。」

 

「ありがとうございます。それにしても、パイロットだとお聞きしていたのに、これ程機械工学に詳しいなんて正直驚きです。」

 

「これでもロボット工学でDr.Engを取得しているからね。こうやって話を出来るくらいには知識を持っていると自負しているよ。」

 

本当に叩き込まれたからな、AIの事も人型ロボットの駆動系統の事も、そして……

意味もわからない、欠陥品のような核融合炉の事も。

艦に帰ったらもう一度艦の機関を調べておいたほうが良いような、そんな感覚があった。

あの主砲も機関も何もかもが既存の技術体系じゃないからな。

 

 

 


 

視界が揺れる、足が縺れそうなほどに僕たちは足を動かしながら、走っている。

ここは別にグラウンドじゃないし、競技施設でもなんでもないにも関わらず。僕たちどうして体力作りをさせられているんだ?

 

〘ちょっと君達、軍人になったそうだね?じゃあさ、私と一緒に付き合ってもらって良い?〙

 

なんて聞いてくる13部隊のお姉さん達(筋肉質)からお誘いがあったんだ。

そう聞いた時僕は何故か直感で嫌な予感があったんだけど、サイやトールがどうしても行きたいって言うから

 

「僕はフレイと一緒に模擬戦が……」

 

とか言ったらその本人も13部隊の人達と一緒にいて

 

「私と模擬戦?キラは私に何を求めているのかしら?」

 

なんて言われちゃったからさあ大変、泣く泣く僕も連れて行かれて、こうやって扱かれている。

男性陣全員ダウンの中、どうしてかピンピンの女性陣体力とかどうなってるの?それに、フレイもミリアリアもケロッとしちゃって。

 

「あらあら、情けないわね。良い?女の子は日々の体型を維持する為に、これくらいは努力してるのよ?

男なのにこのくらいも出来なきゃ長期戦も無理よ?」

 

「嘘……フレイもミリアリアもなんで…。」

 

ぜぇぜぇと肩で息を切って、それでも身体がガクガクする。

 

「ヤマト少尉?うちの隊長を目標にしているならもっと頑張らないと、あの人特殊部隊員みたいに砂漠を丸一日歩いても何かしらの方法で生き残るような人だから。

だから、これくらいでへばっちゃ駄目よ?」

 

これから基礎トレーニングが始まって、自分の得意不得意とかが見えてくる。

反射神経は人よりも優れているみたいだけど、持久力が皆無……日頃の生活が悪いんだとか。MSパイロットも体力勝負だからって言われて、僕のメニューが決まる。

 

まずは基礎トレーニングからって書かれているけれど、こんな日が続くのかと思うと、身体がどうにかなっちゃいそうだよ。

 

「今日はこれで終わりね、さて最終日にはマラソン大会を開くわよ?だから、きちんとやらないと皆から酷い目を見られるわよ?ちなみに内の艦からはアムロさんと私、それとサム整備長が出るわ。

サムは陸上競技で大西洋連邦記録と40秒くらいしか変わらないから、誰がサムについて行けるのかってこともあるわよ?」

 

なんでそんな人が……いや、たぶん戦争だからか。

 

「それじゃあキラ私達は家に帰るけど、キラは今日も帰らないの?」

 

「え?うん、仕事が山積みだからね。」

 

じつは違う、割り振られた仕事は毎日進めているからそんなに窮屈じゃない。

だから家に帰る時間はある、だけどそうなったら僕は色々と当たり散らしてしまうかもしれない。

どうして僕をコーディネイターにしたのと、それにもしも答えられなかったら?

 

「キラ、どうしたのよ。あっ、皆いなくなっちゃって寂しいわよね。大丈夫、私は一緒にいるから。パパは連邦にいるし……。

そうだ!今から何処かに食べに行かない?」

 

「フレイ、どうしたの?そんな気を使わなくたって大丈夫だよ、僕は。」

 

フレイは最近なんだか僕に対してちょっかいをかけてくる、勿論悪い気はしないけれど、正直……うっとお

 

「ちょっと良いかな?

大事な話をしているのは解るんだけれど、少し外に出たいと思っていてね、ちょうどこの近辺の地理に詳しい人材を探してたんだ。キラ、少し付き合ってくれないか?」

 

そんなタイミングに現れるのはアムロさんだった。

 

……

 

「アルスター准尉、別に付いてこなくても良かったんだがな?」

 

アムロさんの運転する車に同乗して道案内がてら、外の景色を楽しんでいる僕とは対象的に、ムッスーとした機嫌の悪そうな顔をしているフレイが無理やりついてきた。

 

「いいえ、私もちょうど(・・・・)お腹が空いていたので助かりました。大佐殿!」

 

絶対に怒ってるよね、なんで怒ってるの?

 

「ハハ、それじゃあ俺のポケットマネーからできるだけ出せるようにするよ。店は選択してくれないか?」

 

「あ、はいじゃあ…。」

 

暗くなっていく町並みと、歓楽街の明かりが煌々と光り輝く街。

その一角にある大衆食堂くらいしか、僕に案内できるようなところは無い。

 

「お待ち遠様……、おや?ヤマトさん家のキラくん?随分と立派になっちゃって、こちらの方は?」

 

「えっと…」

 

「彼のカレッジで教員を務めているテム・レイといいます。こっちは彼のガール・フレンドのフレイ・アルスター。

今日は彼がヘリオポリスから五体満足で帰ってきた事を祝おうと言うことで、こうやって二人を連れてきたのです。」

 

ああ、平然と嘘をついている。

僕はそのヘリオポリスを破壊した張本人であるのに。

 

日替わり定食を3つ頼むと、前に出てくるのは鯵、はんぺん、レンコンの挟み揚げ等の揚げ物定食だ。

箸という文化に慣れていないのではないかという疑問に、アムロさんは器用に箸を使う事で答えた。

 

逆にフレイはそんなに上手じゃない、たぶんカレッジではナイフ・フォーク・スプーンで生活していたんだろうな。

アムロさんがそれを見て僕に目配せする……箸を教えろって感じの圧を感じる。

 

彼女に手取り足取り?と言うか箸の使い方を教えながら、自分でもゆっくりとご飯をたべる。

正直、こういう料理は久し振りだ。栄養を管理された、欧州のガッツリとした食事の多いアークエンジェルのそれと違って、こういう魚料理が懐かしくなるなんて……。

 

でも、本当は父さんと母さんに会いたい。家に帰りたい、人を殺してしまったこの手で家族の手を握ることが叶うのなら、どうか家族と一緒にこうやって食べたい。

 

帰り道、アムロさんは僕の教えた道とは全く違う道を走っている。僕にとっては懐かしい、その道を車は、ガタゴトと走っていく。フレイはお腹がいっぱいになったあとたぶん疲れてたんだろう、後部座席で可愛い顔で眠っている。

 

「疑問は解けたかい?」

 

「え?」

 

「家族に出会うのが怖いんだろう?解るよその気持ち、正直俺だって今やってる事を胸張って言えるか疑問を持ってる。

中立国の船を襲ったり、中立国を襲うようなそんな国に士官している自分をね。

 

だけど、親っていうのは普通子供がどう思っていたとしても、それを受け入れてくれるものさ。

君はまだ成人にも満たない子どもなんだから、そんな事考えずに親に甘えるべきだよ。」

 

「でも、それで両親を傷つけるんじゃないかって…。」

 

アムロさんは僕を気づかってこれをやったのだとしたら、僕はどれだけ周囲に迷惑をかけているのだろうか?

 

「謝る必要はないよ、その自己犠牲の精神は良いところもあるけれど、君の悪いところでもある。

君は神様じゃないんだ、考え、惑い、時には過ちを犯す。そんな時、君の両親なら君をどう受け止めてくれると思う?」

 

「それでも僕は……」

 

怖いんだ、僕は自分自身が。

 

「いなくなってからじゃ、謝ることもできないしな。」

 

そう言うと車が止まる、嘘でしょ?確かに懐かしいとか思っていた景色、僕が望んでいた景色だけれどこれは…どうやって。

 

「連絡は取り付けてある、後は君次第だ。

それと、彼女も一緒に連れて行くといいよ。女の子をこんな歳の離れた男といっしょにさせてちゃ駄目だ。惚れているんだろ?」

 

僕は意を決して、車を出る。

 

「フレイ、起きてよ。ごめんね、ここ僕の家なんだ…一緒に来てくれない?」

 

「う……ん?うん、アムロさんありがとうね。」

 

歩く先に待つ家族の姿、僕は背の方から車のドアの閉まる音が聞こえた。

 

「ただいま、父さんと母さん。」

 

「おかえりなさい、良く来てくれたね。こちらのお嬢さんは?」

 

後でお礼を言わなくちゃならないかもしれない、たぶん僕一人だとウジウジと前に進めなかったから。

 

 


 

物凄い違和感を感じます。

私は、家でお父様の帰りを待っている、でも最近のお父様は焦っているのか、あまり家に帰ってきてはくださりません。

 

私はそんな日でも歌の収録だとかを行って仕事に行き、それでも毎日を平凡な一日を送りたいとそう願っています。

ですが、今日は何かおかしいのです。

 

コロニーの中の人工的な風は、いつもと変わらないはずなのに何処か憂いを感じます。

私はそれに合わせて歌を歌うけれど、それが広がるようなそんな気がしない。

 

コツコツと言う足音が何処からか聞こえてくる、複数人の足跡だ。誰でしょうかとそれを顧みれば、お年を召した方が付き人を従えて現れた。

彼等は、ザラ派の方々ですわね。

良くアスランが来る時に、何処かしらに隠れている方々。

 

「どなたでしょうか、ここをシーゲル・クラインの邸宅と知って入りましたか?」

 

自然と威圧的な口調になる、こんな声を出したくはないのですが、どうしてでしょうか?

 

「これは失礼した、アポも無しに貴女の下へ来た非礼お許し下さい。」

 

先頭の老人が手を胸に当てて謝る、こんな礼をする人がプラントにいるなんて思いもしませんでしたが、物凄く嫌な感じがします。推定距離、私なら歩いたら20歩程そんな距離しか無い。なにかされたらたぶん対処できないでしょう。

 

「良いでしょう。私はシーゲル・クラインの娘、ラクス・クラインです。貴方は?」

 

「私は、ジオン・ズム・ダイクンの息子、キャスバル・レム・ダイクンです。以後お見知りおきをと、現在シーゲル様と共にプラントの勝利の為に尽力しております。

是非御息女であるあなた様に、挨拶をと思いまして。」

 

私はこの人は嫌いです。なにか隠している、それどころかこの人からは嘘の匂いしかしない。

良くメディアとかにいるのと同じタイプの人間の、最上位のようなそんな気がします。

 

「私はそんなにも胡散臭い人間かね?」

 

「……いえ、そのようなことはありませんが。」

 

「そうか……、いや今日は顔合わせ程度にしておきましょうか。

あなたには合う準備が出来ていないようですので、ではこれにて。」

 

男は、ダイクンはそう言うと従者を連れて帰っていく。

お父様があのような男を信頼するとは到底思えない、騙されているに違いない、いやたぶん利用されているのではありませんか?

お父様がそれを解らないはずがありません!

だってあのシーゲル・クラインなのです、このプラントを作り上げたその1人なのです。

 

それがこのような人に…、まるで人の心を読むように?

まさか、いえそんな事は、でも。あの方と同じ?それなのにどうしてあのような絶望を知っている目をしているのですか?

急がなければならないかもしれませんね。

 

……

これは?

次の日、あの方が来た次の日に一つのメールが届いた。

これは誰からのものでしょうか?

私達の回線をどうやって…いえ、それよりもどういう事でしょうか?

 

あのダイクンと言う男とお父様の関係、CE42年のZodiac中域における宇宙人の噂、ジョージ・グレンの随想。

この写真は…、お父様にこの方はジョージ・グレンで、それでこれはあのダイクンとか言う男?

どうして、こんな写真私は見たことも聞いたことも。

 

ですが、もしかするかもしれませんね。

そして、あの方。アムロ・レイ、二人の共通点は?

 

これは?モビルスーツ?でも、これは壊れています。それに、どうしてアムロ様に似た方が写っているのですか?

ですが、もしかするとダイクンとこの方は知り合いなのでは?

 




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