その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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平和2

宇宙での宇宙人騒ぎという、ある種のゴシップを声を通じて耳にいれる。

小さなスペース・デブリの中から人が発見されたという小さなニュースは、瞬く間に広がりを見せたが、ジョージ・グレンの誤認であり宇宙人とは全く関係のない事案と断じた事によって、その事実は消えた。

 

だが俺には解っている、奴の気配がした事を。

宇宙空間という過酷な環境下に適応する為のこの力が、地球において宇宙の物事を聞くことに使えるなんて、夢にも思わなかった。

 

俺が来てから5年の月日がながれている。それにも関わらず、奴の気配は突如として現れた。

空間を飛び越えるという事象にどのような物があるかは正確には解りかねるが、何か嫌な予感がするというのもまた事実だ。

 

趣味と実益を兼ねての設計も、まだ半分も終わっていない。目が見えないというディスアドバンテージも、あまり感じないが。

未だに0からの設計にはなれないものだ、便利なcadなんて無いから……。

そう思うと父さんは凄かったんだなと、痛感する。

あのガンダムを組み上げたんだ、想像を絶するよ。

 

そんな親を持った俺が今や父親。

一児の父親であるが、この子を果たして育て上げる事ができるだろうか?何故なら、この子は俺なのだからきっと気難しいだろうから、きちんと怒れるか?同じ趣味だからといって、厚遇するんじゃないのか?

理論的に話をできるように、教育はしないとな。

 

 

 


 


 

本当に俺達は戦争なんてしていたのか?なんて思えるほどに、ここオーブと言う国は呑気な日常を送っている。

大変なことと言えば雨の時間帯くらいなもので、洗濯物を外に干すという行為が好きな国民性からだろう、天気予報には非常に熱心だ。

 

特にNJC影響下ですらなんとか明日の天気を知ろうと、アメノミハシラと言う宇宙ステーションから直接衛星図を送るほどには、この国の人間は天気というものに敏感だ。

それは戦争中とは思えないほどの日常で、日夜困窮している前線の兵士たちに申し訳ないという感情が湧いてくる。

 

ここに来てから、キラ君等オーブ組は精神的な落ち着きを取り戻し、家族とともに過ごすことの大切さというものを、この目で目撃している。

だが、そんな日常の中に潜む非日常の光景、地下では休むこと無く急ピッチでMSの開発が進んでいく。

 

M1アストレイに乗り込み、機体の各部の反応を見る。

改設計によってよりコストが増えたと言う愚痴を入れの横でネチネチと言うシモンズ女史の言葉を、受け止めながらチェックリストを確認していく。

 

「良い機体に仕上がったな、OSの行動パターンにも限界はあるが、この機体の特性を良く解ったものだ。」

 

「当たり前でしょ、私達の国を守る為にワザワザ作っているのよ?

それに、改設計とかをしてもロールアウトには一月はかかるから、今のその機体は設計前なのだけどそれでも良い機体ですか?」

 

この前のことを少し根に持っているらしい、しょうがないだろう?正直に言って欲しいというのなら、正直に答えてやるというのが誠意ってものだものな。

 

「解っているよ、エース専用機として非常に良い機体だって事だよ。運動性に関して言えば、ダガーよりも上だ。」

 

「自分の国の機体と比べて正直に話すなんて、やっぱりあなた変わっているわね?」

 

「テストパイロットは正直な方が良いだろう?」

 

なんて、こんな風に会話が出来る程度には互いを理解できていると思う。

向こうには俺に対する敵意はないようだし、何より猜疑心無しに少しだが信頼してくれてはいるようだ。

どんなに繕っても、良い人というのは甘いのだろう。それに漬け込む輩には、この人はそんなに強くは出られないだろうな。

 

「今日は模擬戦だけれど、まずは同じ部隊同士ね?どちらが上なのかしら?」

 

最初の相手はスターシャか?

俺は相手の行動パターンが把握できると無意味と言うことで、相手が誰かを知らされていないが、なんとなく彼女だと思う。

 

「さて、じゃあ手厳しく対応していくか。」

 

そう一人コックピットでつぶやく、最近彼女に構っていないから何やら殺気立っている。

色々と溜まっているんだろうな、全力で来られるとこちらも相応の動きをしなくちゃならないんだがな?

 

………

 

コーヒーカップを持ちながら、明かりを落としている艦橋に入り艦長席に座り込む。

疲れが溜まっているのだろう、それもそうだ大凡8時間ぶっ続けでMSを操縦させられたようなものだからな。

 

オーブとしては俺の戦闘データを少しでも欲しいところなのだろう、模擬戦で俺の動きを幾つも記録していた事が頭によぎる。

少しやりすぎてアストレイの関節を摩耗させてしまったのは申し訳ないが、アレは本気で殺しにかかってきたスターシャが悪い。

彼女が一番槍となって来たものだから、他の連中も俺への手加減不要と言わんばかりにやって来たのだから。

 

こっ酷くシモンズ女史に怒られたのだけは確かだが、内心ホクホクと言った感じだったな。

これも予定通りなのだろう、過負荷試験をすっ飛ばして検証できたんだからな。

 

「キラ君から聞いた事案もそろそろ決めなければな…。」

 

夜風も無いこの締め切った中に充満するコーヒーの香りと、それに包まれる俺の思考は少し苦いものだ。

アスラン・ザラがこのオーブにいたという、彼は友人との再会に嬉しさの反面最悪の事態になったことを予見している。

 

顔見知りがいたとなれば、必ず仕掛けてくるだろう。

外の景色が見えないこの秘密基地のようなドックの中、武装解除されているこの艦とアークエンジェルに危機が迫るだろう。

 

一応モルゲンレーテにはグゥルのような機材を発注し、既に艦に納品された。カタパルトデッキにワイヤーで括り付けてあるだけだが、もしもの戦闘にカタパルト無しで出撃出来る。

これで空中戦にも他が参加出来るのなら、安い買い物だ。

 

「あ、こんなところにいた。もう、突然いなくならないでくださいよ、一応送別会なんですから。」

 

「俺がいなくたって皆酒を飲んで騒いでいるだけだからな。それに、その方が気を使わないでいられるだろうしな。」

 

後3日、それでここから離れる。別れを済ませたもの、この国に帰るもの、アークエンジェルのクルーには様々な者たちがいるだろうことは考えるに難しくないからな。

 

「………来るんですね、奴等は必ず。」

 

「あぁ、俺は憎まれているからな。カーペンタリアの総力を上げて俺を潰しに来る。

連合も動いているから、艦隊が来る事が決定したそうだ、太平洋上の決戦だろうな。

これで勝ったほうが、制海権を保持するという決定的なね。」

 

そう言う俺の眼の前に立って彼女は片膝を俺に乗せ乗り込むように口づけをする。

突然の出来事で少し動揺するが、向こうも心配なのだろう。

長い時間が過ぎるような感覚がある。彼女が口を離す。

 

「死なないでくださいね?」

 

「あぁ、互いにな。」

 

闇夜の中互いに歩く、護るべきものはこんなにも近くにいる。

 

 


 

キラがいたことで、ここオーブに足付きとあの忌々しいユニコーンがいる事も判明した。

あと少しだったのに、アイツ等が来なければキラも救い出せたかもしれないのに。

 

「ザラ隊のアスラン・ザラだな?」

 

「はい、貴方は?」

 

数日前カーペンタリアに本国からの増援が来たという話がある。これは俺達の報告から、〘オーブが連合と接近している〙という事実に対する予防行動なのだが、この人物はそれに合わせて乗り込んできた。

 

プラントの戦力も払底してきているという事なのだろうか?こんな老人を俺の部隊にいれるなんて。

 

「申し遅れた、私はシャア・アズナブル。臨時任官でこの部隊に配属された。

こんな老骨だが、嘗ては私も軍に所属していたものでね。それでこのような前線に来たのだよ。」

 

「それは……、ところでパイロットとの事ですがやはりあの機体は貴方の?」

 

俺の乗艦するボズゴロス級に最近搬入されてきた、赤い塗装を施された新型機、名前は確かゲイツと言ったのか?がこの人の乗機だということに驚きを隠せない。

色が被っているなんて思いはしないが、俺の方が鮮やかだからそこは譲ろう。

 

量産機とはいえ最新鋭機、それも先行量産型と言うのだからこの男はかなりの実力者ということでもある。

だが、まだビーム・ライフルも装備出来ていないゲイツをして、果たしてG兵器を倒せるのか?

 

「ビーム兵器が無いからと言って、敵を倒せないとのたまうのは自らの怠慢とは思わないかね?

奴はジンをして君達を足蹴にしたそうではないか、ならば私に出来ないという道理はないな。」

 

「貴方はあのパイロットの事を何もわかっちゃいない!俺達の反射神経を遥かに上回る速度で戦い、手足のようにMSを扱う。

作られた化け物のように!」

 

「知っているさ、君達こそ奴の事を知らなさ過ぎる。アレは私が落とさねばならない相手だ、君達はただ母艦を叩く事だけ考えていれば良い。簡単な仕事ではないか?」

 

馬鹿にしている、この男は俺達のことを自分の遥か下に見ているということなのか?それとも、単なる助言か?

だが、その言葉通りに受け取れるのなら足付きの、キラの機体に全力を傾けられる。

 

「貴方の待遇は私と同列と聞いています。勝手に行動することは構いませんが、くれぐれも作戦の邪魔はしないように願います。」

 

「善処しよう、寧ろ君達の手助けになると思うがね?」

 

金髪の老人、シャアなる人物は絶対の自信を持って俺にそう言った。

俺はその言葉が嘘ではないことを、深く深く願った。

 

 


 

今頃あの男はカーペンタリアでアスラン・ザラと共に行動していることだろう。

奴の目的を聞いた時、正直な話私の敵にはならないだろうと思っていた。

 

実際奴の目的は死ぬ事であるのだ。

ただ死ねば良いと言うこともなく、奴は戦いの中でアムロ・レイと殺し合いの果てに死にたいという。

その為ならば、地球とプラント等どうなっても構わないと、私との会話で言ってきたのだ。

 

その為にも、アムロと互角の機体を入手する為と言う作戦に私は駆り出された。

デモンストレーションとして、奴が私の変わりに地球へと降下しアムロと1戦交え、強さを見極めるなどという徹底的な準備だ。正直、頭がおかしいのではないか?と思った辺で、私は自分を客観視した。

 

私は人の業を背負い、人の業と共に死ぬ事を望んでいた。しかし、私にはまだ守るべきものがあるのではないか?

レイ・ザ・バレルと言う名に決めた彼はすくすくと成長している。テロメアの影響か、やはり寿命に響いていると思う。

 

だが、少年期の私との決定的な違いは良い環境下で育つと言う、私が望んでも手に入れられなかった、平和な日常。

フラガの跡取りとして厳しく躾けられた日々、そんな中の唯一の救いがアイツとのアムロとの遊びだった。たったそれだけだった。

 

だが、レイは違う。彼はギルと共に過ごし、様々な事をやらせてもらうのだろう。わがままも言うだろうが、それこそ子供の特権というやつだ。

そう言う意味ではレイは、私よりも長く生きる可能性があるのだろう。

 

「クルーゼ隊長、予定ポイントに到達しました。

しかし、本当に来るんでしょうか?その輸送船というやつは?」

 

私は今、月面都市コペルニクスにて建造されているという、月の連合戦力の新MSの一機を強奪せしめるために、ここに来ている。

連合ではない第三勢力、中立国より齎されたこの情報。完全に金儲けの為にやっているのだろう。

戦争当事国よりも知らぬ存ぜぬを貫く国ほど、利益の出るものではないか。

 

「そろそろだと思うのだがな?」

 

日付変更時刻が迫る中、一隻のマルセイユ三世級が通りかかる。民間船籍、更に言えばコペルニクスと言う中立都市ということで、武装は最低限しか保たないそれを、私達は襲う。

これでは海賊に他ならない、誰がこの作戦を了承した?

パトリック・ザラに他ならない。奴は自ら敵を作り出して何をしたいのか?

 

だが、この作戦もあの男が立案したというのだ、きっとプラントを孤立させ、世界の敵にでもするつもりか?

いや、連合もプラントも同じ存在であると思うからこその発想か…。

 

今開発されているNJCなどを連合に渡すよりも、よっぽど危機的状況に追い込まれるだろうな。

捨て身だからこそ他者を愚弄し、パトリックは彼の思惑にまんまと乗せられている。

シーゲルは、そんな事を知っている中、制御出来ないパンドラの箱を開けた事を後悔していることだろう。

 

 

 

そんな思惑の中の作戦。

襲撃はいとも簡単に行われ、手に入ったものは何であれ連合への打撃に違いない。

だがこれは……どういう事なのだろうな?

機体に関しては骨格のみで、外装や配線すらされていない出荷前の段階の上に、その肝心のパーツは存在しなかった。

 

カメラや聴音機器すら存在せず、既に輸送された後なのだろう。だが、私は途轍も無いものを目撃する。

恐らくはそれこそが本命であり、探し当てた最悪の物。

連合は、プラントの先を行くものを作っている。

 

その梱包された、ちょうどMSのバッテリーサイズのそれにはこう打刻されていた

 

〘Nuclear Fusion Reactor〙

 

あってはならないことだ、やっとの思いでプラントは核分裂炉から直接電力を取り出す物を小型化したというのに。

これは、MSを軍艦にでもするつもりなのか?

 

戦争の行く末は、早期の終結への道は…こんな事を考えるようになるとは、どうされているのだろうな。私はどうやらまだ、死にたくはないようだ。

 

 




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