その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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オーブ沖海戦1

私は……死んだのか?それともロンド・ベルに捕まり、連邦軍で拷問でも受けているのか?

暗闇の中、意識だけが朧気に露わとなり周囲の喧騒(無音)が私の耳の中へと入り込む。

 

あぁ、私は生きている。

アクシズはどうなったのだろうか?眩い閃光と共に、私は意識を刈り取られ継いにその光景を目の辺りにすることはなく、熱に浮かされぬ中へと放り出された事を思い出す。

 

なるほど、これが罰というものか。

宇宙をただ一人歩み、餓死に苦しめと言うことか…。それも良いな。

奴には完膚なきほどに負けた、欲を言えばナナイの横槍さえなければ、ガンダムがアクシズを押すような事もなかったのだが。

 

さて、ゆっくりと来る死を味わおうではないか、コレが私への報いならば……。

凍り付いていくコックピットの中、次第に意識を手放していった頃。

 

静寂の中

 

ゴンッ

 

とコックピットに振動が響く、何かに当たったか。どうせ岩塊だろうと高をくくった。

そして……急に身体にGが掛かるのを感じた。

 

 

 


 


 

 

ボズゴロフ級潜水艦、私の記憶にある限りではあるがマッドアングラーよりかは一回り小さい潜水MS運用母艦とでも言えば良いだろうか?

この潜水艦はその巨体ではあるが、MS運用に重きを置いているのだろう。

自衛用火器は最低限と言ったところだ。

 

尤も、潜水艦などミサイル一発、機銃弾一発貰うだけでも致命傷になるような脆い兵器だ。

防御力になど期待しないのが身のためであろう。

 

この地に降りて今まで見たものの中で、最も驚いた事は連合ザフト問わず、航空戦力の乏しさだろうか?

もしも現有戦力で私が地球連邦軍の一年戦争時の戦力とやり合おうとした場合、成す術無く敗退してしまうだろうな。

 

ディンという機体があるが、当初この機体が私は音速を超える速度が出るものと思っていた。

だが、現実は甘くは無かったようだ。

 

「アスラン君、少し良いだろうか?

このディンという機体速度はどの程度出るのかな?」

 

そう質問すると、答えはこうだ。

 

亜音速領域での戦闘を視野に入れていると。

 

亜音速、つまり音速よりも遅いという事だ

なんということだろうか、こちらの航空戦力は我々の世界よりも劣るという事だ。

 

我々ジオン軍が幾度となく苦渋を舐めさせられたデプロッグで音速の2倍

フライ・マンタですら3倍は出ていたと言うのに、こちらの航空機はそれ程遅いのか?

それではMSも空を飛ぶことが出来よう、空の王者が鷹ではなく羽虫ならば蚊蜻蛉も悠々と飛ぶことが出来よう。

 

こんな戦力で果たして勝てるのか?この戦争に。真面目にやるのなら、航空戦力は空力性能を鑑みて航空機の形を最低限取るべきものだ。

あのドップですら飛んで、航空優勢を作ってくれたのだ。プラントには航空優勢と言う概念がないのか?

MSに偏重し過ぎではないか?

 

「歳を取るとグチグチと言いたくなるものだな、無い物ねだりほど愚かなことはないか、今はやれる事だけやろう。」

 

私は機体を見渡しながらそう言うと、更衣室へと行く。

 

 

……

 

 

ロッカーには黒黒としたパイロットスーツがある。

私専用のパイロットスーツ、この年老いた身体をなんとか全盛期の如く動かすことが出来るようになる、私の補助機械。

本当に歳というものは取りたくないものだ。

 

「よお爺さん、あのさここは介護施設じゃないんだけどよ、こんなところで何してんだ?」

 

「ほお、多人数で1人の老人を囲うか。君達はいったいどんな教育を受けたのかな?」

 

軍隊にこういう人間が入るのはまま有ることだが、これは流石に酷いな。

パイロットというものは高等教育を受けるものだ、外交上の問題になりかねない行為も咎められる。

相手が理由の解らない相手ならば公私混同を避けると思うのだが。

 

いや、彼等は若いだけか。それもまだ年端もいかない少年と言っても過言ではないな。

アスラン君ばかり気にしていたが、普通はこの様に周囲を舐め腐るようなそんな年頃であるからな。

 

「ここは幼年学校ではないよ、君たちにはまだ早いと思えるがね?」

 

私のその言葉をどう受け取ったのか解らないが、顔を真赤にして怒りだす。

なんと短気な事か、これではスラムの子供と大差無いではないか。

 

「辞めろお前達!血気盛んなのも良いが、こんな時喧嘩など以ての外だろう。

だいたい、お前達は歳上への礼儀がなってない!

貴方も貴方だ、無視すれば良いでしょう。」

 

勝手な事を言ってくれるな、私を護りたいのだろうがその言葉はあまり良いものではない。

 

「てめぇアスラン、いくら成績優秀者だからって良い気になりやがって。だいたいてめぇ等が!」

 

これでは軍隊ではないな。

激情に身を任せ、他者と諍いを起こすこんな組織ネオ・ジオン以下だろう。

実力はどうあれ、連携は不得意というのはこういう事か、傲慢な性格の者が多いと言うのは、まるで人の坩堝だな。

 

その後数分間彼等は口論し続ける。当事者である私を置き去りにして。

 

 


 

机上図面に映し出されるのはオーブ近海の島嶼部、並びに海底の隆起、そして敵味方それぞれの艦艇の詳細な諸元だ。

これから起こるであろう、この海洋での戦闘に向け俺達は図上演習をしているのだ。

 

実際の連合艦隊は、これより240海里程離れた位置からの支援が予定されており、航空機中心の戦闘を展開することが予定している。

連合艦隊も戦術を転換してきたな、衛星等を用いたそれからwwⅡ型にシフトチェンジした形だ。これならば艦隊を危険に曝す事無く、俺達を支援できる。

 

従ってディン等に対して、俺達はそれらと連携しSFSを使用したMS隊による迎撃戦闘を心掛けることが義務付けられた。

 

「それにしても、カーペンタリア戦力の半数をこちらに割いてくると予想するなんて、連合も大胆ですよね。」

 

「そうでもないさ、ザフトは海洋を支配しようとしているが実際に通商破壊をしようとすればする程、それが難しい事が解るんじゃないか?

 

味方を作り辛いプラントとしては、無制限潜水艦作戦を取ることも出来ないし、連合には夏場には北極海ルートそれ以外の季節では、大西洋、北太平洋ルート、大陸ではシルクロードなんてあるんだ。

 

全てをカバーしようとしても、不可能なのさ。

だからこそ、今ここで連合艦隊を撃てば暫しの間海洋は取ったも同然と言うことなのさ。」

 

逆に連合艦隊に関して言えば、制海権を奪還する最大のチャンスだ。

MS部隊を俺達と言う目標に釘付けにしている間に、MS母艦を叩く最大のチャンスと言うことだからな。

 

「連合艦隊は新型の水中用MAを戦力として投入する予定になっていますから、限定的な対MS戦闘が可能です。

水中用MSの開発も行われているという情報もありますが、今回そのMSは戦力化できなかったとの事です。」

 

「だが、連合が満を持して戦力投入してくると言う事は、俺達には個艦防空戦闘に注力しろという事だろう。

アークエンジェルには光通信で連絡をとり、無線封止を徹底させろ。連合へのガイドビーコンは切るなともな。」

 

こちらの明確な位置関係をザフトが知っている場合これは悪手だろうが、連合の艦隊と通信をした場合連合艦隊が発見されるリスクが伴う。

空母機動戦術は、見敵必殺。敵よりも先に攻撃する事によって敵を行動不能にし、自軍の損害を無くすのがセオリーだからな。

 

「問題は敵部隊が連合艦隊の動きを知っていた場合です。

これほど距離が離れていた場合、互いにカバーするのは難しいかもしれません。」

 

「いや連合的に言えば、艦隊が殺られて俺達が帰還してもその分のMS運用ノウハウが全軍に行き渡る関係上、戦略的勝利。

逆に俺達がやられても、連合艦隊は艦隊を保全できてなおかつ新型兵装運用ノウハウを得られて、戦略的勝利。

 

逆に戦略的敗北は、双方の戦力を擦り減らされ後に全滅させられた場合だけだ。

悪いが、これは戦争だ。非情にならざるをえない事もある。」

 

悔しいが、1人の人間に出来ることには限度がある。

ありと汎ゆる戦場に対して参戦する事は叶わないように、護ることも出来ないだろう。

 

「アークエンジェルには事実を伏せたほうが良いと思うか?」

 

「それとなく伝えましょう、なぁに現状を解るのは士官くらいのものです。バジルール中尉とラミアス少佐、フラガ少佐は確実に理解してくれるでしょうな。

ところで、今回の作戦原案はあるのですか?」

 

「あぁ、恐らくはWW2のミッドウェー海戦をモデルにしたんだと思う。俺達はさしずめミッドウェー島で敵艦隊を誘引しろということだろうな。

上手く行けばだがな。」

 

こういう時、艦艇を扱う海軍や宇宙軍は似たような思考をして戦うだろう。

ザフトにも連合の動きは届いているだろうが、NJのお陰で逆に雲隠れできているだろう。

 

「副長、副長は艦隊運用をしたことがあるか?」

 

「机上演習以来です。艦長は言わずもがなですよね、なにせパイロットなのですから。

たった2隻の艦隊ですが、これは大変ですな。」

 

遭遇するとすれば、オーブから出て2時間と言ったところだろうな。それなら撃破可能範囲だろう、こちらはオーブに引き返せないし、相手は基地から離れすぎない。そんな距離だ。

ただ、何故か胸騒ぎがする、何も無ければ良いのだが。

 

 


 

アークエンジェルの格納庫は慌ただしく動いていて、誰かに声をかけようものなら殴られるのではないか?

とかそう思える形相で、マードックさん達整備士があちらこちらを動き回っている。

 

僕はそれを横目で見ながら、パイロットスーツに着替える為に更衣室へと入った。

ちょうどその頃、ムウさんもいたらしくばったりとであった。

 

「ようキラ、元気そうじゃない。なんか良いことあったんだな、もうすぐ出港って言うのにこんなところに来るなんてさ。家族との別れは済ませていたのか?」

 

「見送りはしないでと言ったんです。戦争が終わったら絶対に帰ってくるって、それに二人共僕の関係者だって思われたら、何か大変なことになりそうでしたから。

たぶん、二人も解ってくれると。それに、色々と吹っ切れましたし。」

 

「おやおや?もしかして、お前告ったのか?だとすりゃ目出度いね〜、でどうだった?」

 

「いっ、一応了承してもらえたんですけど、なんか実感湧かなくて。」

 

ウヒョ〜と言いながら嬉しそうにしているムウさんは、まるで自分の事のように受け止めてくれてる。

 

「それで、指輪をプレゼントしたいなぁなんて思ってます。と言うか…、買いました。」

 

「おいおい、気が気じゃないぜ。まあ、俺がどうこう言える立場じゃないけどよ、そういうのは早めに渡しといた方がいいぜ?俺達には何があるかなんて解るもんじゃないしな。」

 

「はい、でも今渡したらだめな気がして、僕のロッカーに入れておこうかなって思いまして。」

 

渡しといた方が、良いんじゃない〜?

とか言う言葉を発しながらムウさんは、出撃準備に言った。

渡しといた方が良いのか、それとも渡さない方が良いのか、決心したのが揺らいでくる。

 

そのままグルグルとなっていると、

 

「キラいるの?」

 

と言うフレイの声が聞こえてきた。

慌てた僕は指輪を持ったまま出てきてしまって、それでそれを見られた。

 

「えっと……駄目…かな?」

 

「何がよ。」

 

「ぼ、僕と結婚を前提に付き合ってもらえるかなぁって……、ロマンチックとかそういうのは解らないけど、どうかな?」

 

僕は結果を見たくなくて眼を瞑る、どんな顔をしているのか。

 

「キラ、結婚前提とかはあまり考えてないけれど、一応貰っておくわ。ありがとう。」

 

嬉しさがこみ上げてきた。

 

……

 

ストライクのコックピットに乗りながら、さっきの事を思い出すと次第に口角が上がっていく。

嬉しいという感情が止め処なく溢れてくる。

 

「001ストライク及び003グラスパーはカタパルトにて、敵襲撃まで待機せよ。

別命あるまで、待機せよ。」

 

戦争が、いつ戦闘がはじまるかなんて解りようもないのに、こんなにも浮足立っては駄目だ。

 

「よお、結局渡したんだってな結果はどうあれ、それなら嬢ちゃんの事守ってやんないとな。」

 

「言われなくても守ってみせます。皆も、ムウさんの事だって。今ここにいる人達は皆、ヘリオポリスから一緒だったんだ。ここで1人も欠けないように、僕は勝つ!」

 

「おう、頼もしいな。ま、空回りしない程度にはしといてくれよ!

それじゃあ、坊主のそれもあった事だしなんとかしてみせましょうや、この不可能を可能にする男がな。」

 

船の揺れが一際大きくなっていく、これは何を表しているんだろうか、僕の心情?それとも…。

 

「敵艦、ボズゴロフ級の音紋確認、オーブ領海外で私達を見張っています。」

 

内心とは違い、とても緊張している。そうだ、これを切り抜け無ければ僕らに明日はないから。

 

「ヤマト少尉聞こえるか?」

 

「はい、キラ・ヤマト聞こえます。」

 

「敵は我々が領海から脱しても直ぐ様攻撃を加えてくることは無い。逆に奴等は我々を領海から引き剥がして攻撃を取るはずだ。

今は休めとはいえないが、せめて気を柔らかに持っておけ、どんなに優秀なエンジンでもオーバーヒートすればどうしようもないからな。」

 

リラックス…か。そうだ、これを無くさないようにしないとね、逆にフレイから貰ったネックレス。

タグと一緒になっちゃうけど、これで彼女と一心同体だ。

 

「キラ、くれぐれも気をつけてね。アムロさん達も充分強いけど、気を抜いたら最後だから。

だから、今はリラックスしておいてね。」

 

アスラン、僕には護らなくちゃならないものが出来たよ、だから僕は君と共に行くことはできない。

 

「ヤマト少尉、発艦を許可する。順次機体を発艦させる、上を取れば中々にこちらを攻撃できないだろうからな。」

 

「わかりました、キラ・ヤマト、エールストライク行きます!」

 

僕が発艦すると同時に、ムウさんの機体も空へと上がる。そして僕のすぐ後に、ピンクのストライクが飛び立つ。

アムロさん達も出てきた。

これで、準備万端。いつでも来てみろ。

 

 

 

 




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